💰

給与に対する考え方と労働者のモチベーション特性

に公開

こんにちは。みやさんです。
最近、評価制度や報酬について考える機会があったので、自身の考え方を整理することも意図して文章としてまとめたいと思います。(稚拙な文章ですみませんが気になられた方は是非見て意見をいただけると嬉しいです。)

給与とは

まずは事業会社における給与の考え方を整理します。有名なのは資本論(Karl Marx 著)だと思います。
資本論における給与(賃金)の概念は、資本主義経済における労働力の商品化という観点から分析されていますが、注目したいのは、給与に関して"労働力は商品である"という点と"労働力の再生産に必要な価値"という点です。少し砕けた表現をすると、給与は時間により提供される労働力に対する対価であり、その金額は労働を継続するために必要な金額だと解釈できます。

例を挙げるとわかりやすいのですが、例えば個人で商店を開き、店員を雇うことを考えると納得がいきやすいです。ある仕事に対して、時給が1000円と2000円で雇える人がいた時に任せる仕事が同じかつ業務が十分に構造化されているのであれば、ほとんどの人は時給1000円の人を雇うと思います。事業としての利益を最大化することを意図すると人件費はできるだけ抑えたい力学が働きます。
ただ、一方であまり金額を抑えすぎると労働者が生活できなくなります。例えば時給が200円とかになってしまうと明日のご飯も食べられなくなってしまいますし家賃も払えなくなるため、結果として生活が成り立たなくなります。そうなると労働者はどんどん減ってしまい、経済が成り立たなくなってしまうので避けなければなりません。(このラインとして国が示す最低賃金等の設定があるとも言えるかもしれません。)

誤解を恐れずに書くと、低い金額で多くのアウトカムを出せた方が利益が大きくなるためありがたいわけですが、生活できないと働けなくなってしまうため働くために必要なお金を会社が出している。というわけです。

また、賃金は往々にして時間給や出来高として定義され支払われますが、これは労働者が完全な報酬を得ていると見せかけるイデオロギー的な装置だと主張しています。

上記の例を元に考えるとわかりやすいですが、経営において一定の利潤を得てそれを最大化するためには労働に対する対価は真の対価に対して一定以上の差を儲けることは必然となります。(決して間違ってほしくないのはこの仕組みを否定したいわけではありません。)
評価等の給与改定や目標設計においても出来高を想起させるコミュニケーションの裏では一定の原資の範囲で運用されていることがほとんどです。

給与とモチベーションについて

一方で労働者目線に立った時に、給与に対するモチベーションはどのように捉えているのでしょうか?
これはハースバーグの二要素理論が的を射ていると考えています。

この主張は、仕事の満足度と不満足度を引き起こす要因が異なるという指摘として有名ですが、ここで給与の扱いは衛生要因として定義されています。(参考
ハースバーグの2要因理論

衛生要因は充足すると満足するとは限りませんが、不足すると強い不満足感を与えると説明されています。
これも自身の例でイメージしてみるとわかりやすいと思いますが、例えば月額で給与が5000円増えた場合のモチベーションの上昇と給与が5000円減った場合のモチベーションの低下はイコールと考えられるでしょうか?おそらく低下する方が大きいと思う人が大半なんじゃないかと思います。

参考程度ですが、マズローの欲求階層でも関連づけて考えられそうですが、主に低階層である生理的欲求や安全の欲求に依存する事が多く感じます。これは意図せずだとは思いますが低階層の欲求を満たすという意図とマルクスの資本論でいう生活保証としての賃金の意図はこの相関でも説明できそうです。

市場や取り巻く環境による考慮

ここまで給与の定義と給与が与えるモチベーションの特性について書きましたが、労働者の目線で見た時にその他の要因でもモチベーションが影響を受けるケースがいくつかあります。

市場価値や他の企業との乖離

市場価値は主に職種や業界ごとに、その需給のバランスで相場が決まる事が多いです。特に企業による需要に対して供給される人員が少ない場合は相対的に給与が高くなりやすいです。
極論ですが、著名な芸能人の報酬が高いのはその唯一性故であると考えると説明がつきます。芸能人は自身を商売としてブランディングするため、需要が発生する場合に代替の効かない唯一の存在であるため報酬は釣り上がります。

また、会社のポリシーによっても報酬は大きく異なります。経営者の価値観や戦略、報酬制度や業績によって左右されます。

さらに、市場に対する相場は時期によって動的です。有名なものでは春闘によるベアはイメージしやすいと思います。これは主に大企業にターゲットが置かれていますが、業界に対するある程度基準を牽引している存在と考えることはできそうです。
厚生労働省が春闘に対する情報として統計を提供しています。(推移
5.33%の賃金上昇を実現している状況があると読み取れ、近年は下に述べる物価上昇率を加味して比較的上昇幅が大きくなっている傾向がありそうです。
賃上げ推移
引用:厚生労働省資料_春闘の賃上げ率統計資料より

物価上昇率の変化

お金そのものは相対的なものであるため、物価の変動により実質的な給与の価値は変動します。
統計局が出す消費者物価指数の資料によれば、直近では前年比3.6%程度、2020年と比較して11.1%の物価上昇を示唆しています。これ以上の賃金上昇が見込めていない場合は実質賃金としてはマイナスを示すことになるため、不満足に対するリスクが高くなると考えられます。

国民負担率の変化

直近では国民負担率も増加傾向であり、これも消費者物価指数と同様に実質的な賃金に影響します。(だから政府は賃上げを要請している背景もあると思われますね。。。(遠い目))
国民負担率は財務省が資料として提供しており、令和7年度は46.2%の見込みであるとされています。令和6年度は45.8%であるため0.4%増加しています。
直近ではほぼ横ばいですが、推移をみると、最初に述べたように長期的には増加傾向であるため、これも不満足の要因になりうると考えられます。

考察

ここまで給与の定義からモチベーションの特性と影響を与える外的要因について述べてきました。
これらから私の意見になりますが、まず、上記内容を加味してモチベーションを最大化することを考えると、給与面で相当捻出しないと実現しないと思いますので、それはまず難しいと思います。それぞれの会社の考え方や状況もあると思いますし、尊重されるべきとも思います。
ただ、会社として取りたいスタンスを明確にすること。特に衛生要因である給与をどのように社内のモチベーションコントロールに利用するかは明確にしておく必要があると思っています。(透明性の担保というのも合わせて考えたい。)組織のメンバーはマイナス方面のモチベーションを明言してくれる機会は少ないであろうと考えられるので、知らない間にネガティブな印象が蓄積している・・・という状況にならないことを確認したいですね。

次回は任意の会社における労働者の給与が決定する要素について書いてみようと思います。

Discussion