ソフトウェアエンジニアでも取れるよ!特許!
ソフトウェアエンジニアでも取れるよ!特許!
こんにちは。
唐突ですが皆様は特許に興味はありますか?
たとえ無くとも、日常生活で「これ、もしかして自分が初めて思いついたのでは!?」「これ特許取れるんじゃね?」と、思うことはあるんじゃないでしょうか?
私はあります。そして実際に特許を取ってみました。
特許というとメカニカルな機構やビジネスモデルを想起しがちですが、ソフトウェアでも「発明であること」「新規性があること」「進歩性があること」が認められれば特許は取得できます。
最近ようやく特許の取得が完了したので、特許に興味がある人に向けて、この記事では私が特許を取得するためにやったこと、総額、期間、そして取って何が良かったかを記します。
TL;DR
取りやすさ
(アイディア次第だが)個人的には簡単だと思う。
かかった総額
約45万円
かかった期間
約3年
取ってよかったこと
興味本位で取ったものなので、正直実利的には良かったことはない。
ビジネス目的で取るならかなり意味はあるはず。
取得までに何をやったか
1. 思いついたアイディアが特許になるか調べる
一番最初にして、一番大事なことです。
特許を受けることができるのは世の中にまだ知られていない、新規な発明に限られます。
まずはj-platpatというサイトで、似たような特許(先行事例)が既に存在しないかを調べました。
そして先行事例が無くとも、自分のアイディアに新規性・進歩性があるかどうかを考えましょう。
この2つを満たしていなければ、出願しても認められません。
新規性とは
かなりざっくり言うと「客観的に見て、新しいかどうか」です。
特許は出てはいないけど、みんな知ってるようなことを特許として出願しても認められません。
進歩性とは
その発明に関わるプロの方々が簡単には思い付かないアイディアであることです。
今ある発明からちょこっと変更した程度では認められないということです。
詳しくは特許庁のPDFに記載されているので、ご興味ある方は是非。
私は調べたこととアイディアを、人に説明できる程度(6ページぐらいのスライド)に資料化を行いました。
また、ソフトウェア特許で注意したいのは、
- 数学的なアルゴリズムは特許として認められない
- 特許として出願するには中身・仕組みを公開しなければならない
ということです。
アルゴリズムといっても、例えば全く新しい画像処理アルゴリズムだと特許の取得は可能なのですが、数学的なアルゴリズムは自然法則ではないので特許法上の発明に該当しないとされています。
また、中身がブラックボックスのまま特許として出願することはできません。
もし第三者が模倣できないようなアイディアの場合などはあえて秘密にしておくために特許出願はしないというのを検討してもよいでしょう。
2. 特許事務所に相談する
特許を自分で出願書類を用意して出願することも可能ですが、特許の書類はかなりクセがあります。
自分で書いたとしても何度も却下を食らうだろうな。。。というのが予想できたので、今回は自分で出すことはせず、特許事務所に任せることにしました。
特許事務所の中には相談無料のところもあり、今回はそこを選んで相談しました。
資料としてまとめたスライドを送り、無料の範囲で似たような特許がないかを調査してもらうことができました。
調査の結果、似たような特許は無さそうで、このアイディアで特許が出せる可能性があるかもしれないことが分かったため、先方と擦り合わせるためのミーティングを行いました。
この時点での出費はないです。
3. 依頼するかどうかを決める
ミーティング後に見積もりをもらい、詳細な調査・出願などを依頼するかを決めました。
私の場合、この時点で出願着手金と印紙代で18万円ほど支払いました。
この時点で、見積もりは税込約50万円ほどでした。
4. 出願書類のチェックと出願
自分の資料・擦り合わせた内容をベースに、類似性のある特許は無いか本格的に特許調査を行ってもらいました。
そして特許明細書という出願のための書類を特許事務所に書いてもらい、そのレビューを何度か行なって、出願をしてもらいました。
ここまでで、特許事務所とのファーストコンタクトから2ヶ月ぐらいかかっています。
5. 出願審査請求要否
出願したからといって、すぐに審査されるわけではありません。出願してから3年以内に「出願審査請求書」を特許庁に送付して審査請求を行うと、出願は審査の順番待ちに入ります。
(特許庁から引用)
自分の場合は「出願しました」以降、特許事務所からの連絡は、出願から1年後に外国特許申請するかどうかの確認だけだったので、出願したことを完全に忘れていました。
(ちなみに自分は外国特許申請はしませんでした。)
「出願しました」から丸2年経ち、特許事務所から「出願審査請求要否しますか?」の連絡が来ました。上記の図でいうところの、方式審査が終わった後の段階です。ここから本格的な審査が始まるというわけですね。
請求項というのは、特許で保護される発明の「どこが新しいのか」「どこが優れているのか」を、1つ1つの文章で説明するものです。
請求項は、特許権の範囲を定める重要な要素です。請求項の数が多いと、特許権の範囲が広くなり、他人の発明を侵害してしまう可能性が高くなります。かといって、請求項の数が少なすぎると、特許権の範囲が狭くなり、他人の発明を侵害された場合に、特許権を行使することが難しくなります。なので、少なくてもダメだし、多くてもリスキーということです。
出願審査請求は、私の請求項の数だと18万円ぐらいかかるのですが、個人事業主でもあったため7万円ほどになりました。
6. 拒絶と再審査
私の場合、一度拒絶されてしまい、再審査のための補正書・意見書で12万円追加で支払うことになりました。(ただ、なぜかまけてもらって8万円になりました)
この時点で出願審査請求要否から1年、出願から3年かかっています。
ほぼ存在を忘れかけていた特許に対して、いきなり8万円を支払うことになりグヌヌ。。。となったのを覚えています。
もちろん、ここで審査を取りやめることも可能です。
7. 特許査定
再審査から1ヶ月後に、特許査定OKの連絡が来ました。
そこで、手続き及び印紙代で、合計12万円ほどかかりました。
これにて特許取得完了です。
この時点で3年と1ヶ月がかかっています。
終わりに
今回は自分の特許取得までの流れを書いてみました。
過去、メーカーに勤務していた頃は評価の目標に特許出願数があったため、実は何件か既に自分の名前が入った特許は持っています。とはいえ会社名義なので、自分のものとしての特許はこれが初めてです。
それと同時に、個人で特許取るのも金がかかるんだなあ。。。と思いました。
もしこの記事が特許を取ってみたいと思う人の参考になれば幸いです。
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