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ラプラス変換とZ変換

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フーリエ変換について:フーリエ解析と計算機

ラプラス変換

非周期関数f(x)を求めるフーリエ解析は、フーリエ変換を用いて

\begin{aligned} f(x) &\sim \frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}F(\omega)e^{j\omega x}d\omega \\ F(\omega) &= \int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-j\omega t}dt \end{aligned}

で表されるが、フーリエ変換は利用頻度の高い関数でも、積分が発散してしまう問題がある。
例えばf(t) = 1のとき、

F(\omega) = \int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-j\omega t}dt = \int_{-\infty}^{\infty}e^{-j\omega t}dt = 収束しない

となり、計算ができない。

そこで、関数f(t)を積分できる形に変形することを考える。
まず、関数f(t)f(t) = 0 \quad (t < 0)であるとする。
ここで、a > 0のときt \to \inftyで非常に速く0に収束する関数e^{-at}を考え、この関数とf(t)との積を考える。
つまり、関数f(t)に非常に速く収束する関数e^{-at}を畳み込むことで、関数f(t)に収束性を与えるのである。

元の関数 畳み込んだ関数

関数の積f(t)e^{-at}のフーリエ変換を考えると、

\begin{aligned}\int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-at}e^{-j\omega t}dt = \int_0^{\infty}&f(t)e^{-st}dt \cdots (1) \\ s &= a + j\omega\end{aligned}

が得られ、この(1)式の右辺を

\mathcal{L}[f(s)] = F(s) = \int_0^{\infty}f(t)e^{-st}dt \cdots (2)

と表し、(2)式を関数f(片側)ラプラス変換 という。
このとき、s = a + j\omegaは複素数であり、その存在領域を 複素領域s領域s空間などといい、変数tの存在する空間を t領域または t空間という。
なお、関数f(t)を全ての実数について考えることで

\mathcal{B}[f(s)] = F(s) = \int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-st}dt

を得ることができ、これを 両側ラプラス変換 という。
ここで、(2)式のフーリエ逆変換は

\mathcal{F^{-1}}[F(\omega)] \coloneqq \frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty} F(\omega)e^{j\omega t}d\omega

より、

f(t)e^{-at} = \frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}F(s)e^{j\omega t}d\omega

両辺をe^{-at}で割って

f(t) = \frac{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}F(s)e^{at + j\omega t}d\omega

s = a + j\omegaなので積分変数を\omegaからsに変換すると\frac{ds}{d\omega} = jであり、積分範囲はa - j\inftyからa + j\inftyとなるので、

f(t) = \frac{1}{2\pi j}\int_{a - j\infty}^{a + j\infty}F(s)e^{st}ds \cdots (3)

となり、この(3)式を ラプラス逆変換 といい

\mathcal{L}^{-1}[f(s)] = \frac{1}{2\pi j}\int_{a - j\infty}^{a + j\infty}F(s)e^{st}ds

と表す。

ここで、ラプラス変換の収束性を考える。
ラプラス変換がs_0 = a_0 + j\omega_0で求められたとすると、s = a + j\omega(a \geq a_0)となるsにおいて

|e^{-sx}| = |e^{-(a + j\omega)x|}| = |e^{-ax}e^{-j\omega x}| = e^{-ax} \leq e^{-a_0 x} = |e^{-s_0 x}|

となり、そのsにおいてもラプラス変換は収束する。
したがって、与えられた関数f(t)に対してRe[s] < aならラプラス変換が発散し、Re[s] \geq aならラプラス変換が収束するような実数aがただ一つ定まる。
このaのことを ラプラス変換の収束座標 といい、a = -\inftyのとき全てのsについてラプラス変換は収束し、a = \inftyのとき全てのラプラス変換は発散する。
また、収束座標aより大きい任意の実数を\alpha\forall\alpha \in \mathbb{R}, \alpha > a)とする時、f(t)が任意の有限区間で区分的に滑らかであれば、(3)式について

\frac{1}{2\pi j}\int_{\alpha-j\infty}^{\alpha+j\infty}F(s)e^{sx}ds = \frac{\lim_{a \to t-0}f(a) + \lim_{a \to t+0}f(a)}{2}

が成り立つことが知られており、これを ラプラス変換の反転公式 という。

ここまで、フーリエ変換を拡張してラプラス変換を導出した。
ある関数f(t)がフーリエ変換できない時、f_1(t) = f(t)e^{-st}を考えることでf(t)に収束性を与え、f_1(t)に対してフーリエ変換をおこなう、この一連の流れがラプラス変換である。
フーリエ解析とは、ある強さ(フーリエ係数)を持つ波(複素正弦波e^{j\omega t})を重ね合わせることで任意の関数を表せないか、というものであったが、フーリエ変換は単調な波の和を考えているためt \to \infty0に収束しない関数を変換できなかった。
そこで、ラプラス変換では増大する波(複素正弦波e^{st})を導入し、指数関数的に拡散する波の和を考えることで、元の関数の発散を抑えフーリエ変換を可能とするのである。

フーリエ変換 ラプラス変換

z変換

ラプラス変換によって、非周期で連続な関数f(x)に収束性を与えることでフーリエ変換が計算できる。
そこで、関数fが不連続な関数f[n]である場合についても、収束性を与えることを考える。
非周期で不連続な関数f[n]のフーリエ変換は、離散時間フーリエ変換より

F(\omega) = \sum_{n = -\infty}^{\infty}f[n]e^{-j\omega n}

で求められるが、ここでは関数f[n]f[n] = 0 \quad (n < 0)であるとする。
ここで、ラプラス変換と同様にa > 0のときn \to \inftyで非常に速く0に収束する関数e^{-an}を考え、関数の積f[n]e^{-an}の離散時間フーリエ変換を考えると、

\begin{aligned} \sum_{n = 0}^{\infty}f[n]e^{-an}e^{-j\omega n} &= \sum_{n = 0}^{\infty}f[n]e^{-(a+j\omega)n} \\ &= \sum_{n = 0}^{\infty}f[n]z^{-n} \cdots (4) \\ &z = e^{a+j\omega} \end{aligned}

が得られ、この(4)式の右辺を

\mathcal{Z}[f[n]] = X(z) = \sum_{n=0}^{\infty}f[n]z^{-n} \cdots (5)

と表し、(5)式を関数f(片側)z変換 という。
このとき、z= e^{a + j\omega}は複素数である。
なお、関数f[n]を全ての実数について考えることで

\mathcal{Z}[f[n]] = X(z) = \sum_{n=-\infty}^{\infty}f[n]z^{-n}

を得ることができ、これを 両側z変換 という。

ここで、z変換の収束性を考える。
aを定数として、関数f[n] = a^nのとき、z変換は

\begin{aligned} X(z) &= \sum_{n=0}^{\infty}a^nz^{-n} \\ &= \sum_{n=0}^{\infty}(az^{-1})^n \\ &= \frac{1}{1-(az^{-1})} \cdots (6) \end{aligned}

ここで、(6)式の無限等比級数が収束するためには、|az^{-1}| < 1 \Leftrightarrow |a| < |z|を満たす必要がある。
これは複素数zの平面(z平面)において、半径aの円の外側を指している。
このようにz変換の収束する範囲を 収束域 といい、一般に収束域は原点を中心とする円の外側になり、その境界となる円を 収束円 という。

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