Vue認定資格を(多分日本で初めて)取った話
Vue認定資格って?
JavaScriptフレームワークであるVueに公式の認定資格があるのをご存じでしょうか?
正式には「Vue Certification」という名前で、Vueの作者であるEvan Youさん監修の元、Vue Schoolが主体となって提供している資格です。
英語でしか情報が提供されていないので日本ではあまり知られていませんが、2023年に初級資格である「Vue.js Developer Level I」が、2024年に上級資格である「Vue.js Senior Developer Level II」がそれぞれ受験可能になりました。
(多分)日本人で初めて取ったよ!
まずはこちらをご覧ください。
Vue.js Developer Level I | Vue.js Senior Developer Level II |
---|---|
資格、取りました。
元々Vueというフレームワークが好きだというのもあり、公式ページで資格の案内があったその日に応募し、Level I は公開された日に、Level II は Level I 所有者向けに先行公開された次の週に(ちょっと出遅れた……)受験して一発で合格しました。
興奮冷めやらぬうちにX(旧Twitter)で「取得したよ!」ポストをして社内でも報告してうれしさを共有したものです。
ただ、残念なことに世間的に盛り上がってない……。
自分以外誰も話題にすらしてないし、運営元が公開している専用Discordサーバーも100人くらいしか参加していない上に誰もコメントしていない。
Vueの公式ドキュメントでも大々的に広告しているのに何でこんなに盛り上がっていないのかと悲しくなるレベルです。
(恐らく、Reactに比べると人気がないうえに、みんな資格に興味がないんでしょうね……)
誰も話題にしないならせめて自分は情報発信しようと、ということで筆を執っています。
資格の種類
前述の通りVue Certificationには2つのレベルが用意されています。
それぞれについてザックリご説明します。
レベル共通の事項
- 試験は自宅のPCから受けられる
- 試験時間は105分間
- 選択問題30問(30分) + コーディング問題2問(75分)
- コーディング問題は新規実装1問とバグ修正1問
- 対応言語は英語のみ(文法や単語は高校レベル以下なのでそこまで高い英語力は求められない)
- 出題範囲は Vue公式ドキュメント に加えて、主要なツール(TypeScript、Vue Router、Piniaなど)の基礎知識
レベルごとに異なる事項
Vue.js Developer Level I | Vue.js Senior Developer Level II | |
---|---|---|
対象者 | エンジニア | シニアエンジニア |
求められる能力 | Vueを使ってフロントエンドの開発ができる | Vueを使ってフロントエンド全体の構成検討やアプリケーションに合わせた最適化ができる |
大まかな出題範囲 | Vueアプリケーションの構築 コンポーネントの基礎 プラグイン カスタムディレクティブ Vue Router 関連ソフトウェアの概要 その他基礎知識 |
コンポーネントの応用 コンポーザブル テスト Providerパターン 状態管理 TypeScript パフォーマンス SSR セキュリティ その他応用知識 |
受験資格 | なし | Level I に合格していること |
受験料 | $220~ | $499~ |
※出題範囲についてはVueの最新バージョンに準拠するため、受験時期によって変更される場合があります。
購入パッケージの種類
Level I、Level IIともに購入可能なパッケージが3種類用意されています。
Exam Only | Exam & Preparation Bundle |
Exam, Preparation & Bootcamp Bundle |
|
---|---|---|---|
金額 | Level I : $220 Level II: $499 |
Level I : $499 Level II: $1057 |
Level I : $999 Level II: $2257 |
準備ガイド | ◯ | ◯ | ◯ |
下位レベルの受験資格 | ◯ | ◯ | ◯ |
Discordコミュニティへの招待 | ◯ | ◯ | ◯ |
トレーニング問題と解答の閲覧 | ◯ | ◯ | |
不合格時の再試験(1回限り) | ◯ | ◯ | |
トレーニングプログラムへの参加 | ◯ |
自分はExam & Preparation Bundle
を購入しましたが、正直に言うとExam Only
で十分だと思います。
Exam & Preparation Bundle
の最大のメリットはサンプル問題を本番前に試せることと1回ミスってももう一度受けられることですが、金額を見ればわかる通りExam Only
を2回購入した方が安いです。
内容も公式ドキュメントに載っている情報以外のものは特になく、Exam & Preparation Bundle
を買うことによるアドバンテージはあまり大きくないように感じました。
セール中などで半額近くになっていて、「ぶっつけ本番は怖い!」という方はExam & Preparation Bundle
を検討してもいいかも、ぐらいの感覚です。
Exam, Preparation & Bootcamp Bundle
は英語にしか対応していないですし、何よりマジで高い(円安の今なら30万円超え……)ので、同じ金額を出すのであれば日本人のシニアエンジニアを雇ってコーチングしてもらった方が有意義じゃないでしょうか。
ちなみに、5人以上のチームで購入するとちょっと安くなります。
勉強方法
元々実務でガッツリVueを使っていましたし、公式ドキュメントもソースコードも一通り目を通していたので大体のことは分かった気になっていましたが、これで受からなかったらダサいのでそれなりにちゃんと勉強してから試験に臨みました。
勉強方法はいたってシンプル。出題範囲としてリンクされている公式ドキュメントのページを片っ端から読むだけです。
Vueの公式ドキュメントは構成がちゃんと考えられて組まれていて、開発に必要な情報はほぼすべて網羅されているので、これ以上に優れた参考書は存在しないと思います。
実際に試験を受けた結果を見てもこの勉強方法で問題なさそうです。少なくとも自分には合っていました。
ドキュメントの読み込みに加えてトレーニング問題も一通り解きましたが、それを含めても勉強時間はLevel I、Level IIそれぞれ20~30時間程度です。
私の場合は過去にドキュメントを読んだことがあり、おさらい程度で済みましたのでこの程度の時間に収まっていますが、初めてドキュメントを読むという場合でも一般的な資格試験に比べればそこまで勉強に時間をかける必要なないかな、というのが個人的な感想です。
ただし、いくつか注意事項があるので詳しくご説明します。
ドキュメントは英語で読む
Vueの公式ドキュメントはしっかりと日本語訳されているので、開発にまつわる知識を得る分には翻訳版で勉強しても問題ありません。
ただし、試験を受ける場合は話が変わります。
Vue.js Certification は上述の通り全編英語の試験なので、問題文も選択項目も当然すべて英語です。
日本語で勉強していても日本語の単語と英語の単語がリンクできなければ、設問が何を聞いているのかわからないという事態が起こりえますし、ドキュメントに書かれている英文を読める程度の英語力がないと試験を受けること自体難しい可能性があります。
特に、「○○を××することを何という?」のように特定の処理を示す動詞を問うような問題では英語での表現を知らないことが不要に回答難易度を上げてしまうので、英語の勉強も兼ねて原文を読むことをお勧めします。
主流なパターン以外も確認する
簡単なアプリケーションを作る場合、Vueが提供している関数の使用方法は最もシンプルなものを選択しがちですが、実際のアプリケーションでは様々なカスタマイズが必要になります。
試験ではそうしたカスタマイズ性や応用についても問われるので、様々なパターンを把握しておくことが重要です。
例えば、アプリケーションインスタンスを生成するための関数 createApp
のメジャーなのは、 App.vue
という基幹コンポーネントをSFCで定義して
import App from './App.vue'
const app = createApp(App)
の様にインポートしたコンポーネントを第1引数に設定するという方法ですが、SFCを使わずに
const app = createApp({
template: '<div></div>',
setup() {
// do something
return {}
}
})
の様に無名でコンポーネントを定義することもできます。
また、 createApp
には第2引数で基幹コンポーネントのPropsに渡す値を設定することも可能です。
このようにVueが提供している各関数や機能には複数の使い方や設定方法があります。
すべてを完全に扱える必要はありませんが、試験では「これらの内、正しい記法はどれですか?」というような問題も多く出題されるため、最低限どのようなパターンが存在するのかを頭の片隅にでも入れておきましょう。
細かい注意事項も読む
Vueの公式ガイドを見ていると、各所に緑色や黄色で囲われたNote
セクションがあります。
見出しの通り備考事項が書かれているセクションで読み落としがちですが意外と重要なことが書いてあることが多いです。
同様にNote
以外のセクションについても本文の下にちょろっと書かれている1文などもなかなか重要です。
これらの内容がそのまま選択問題で問われることもありますし、こうした知識がないと解けないようなコーディング問題もあります。
ただ、コーディング問題回答中はVueの公式ドキュメントにアクセスすることができるので完全にすべてを覚えきる必要はありません。
受験方法
パッケージを購入したら試験はいつでも自分のPCから受けることができます。今のところ受験の期日はないので十分に準備をしてから臨みましょう。
試験に必要なものはカメラ付きPCと顔写真付き身分証明書です。
試験開始時にカメラで周囲360度の撮影をする必要があるため、デスクトップよりもラップトップの方が手間取らないと思います。
コーディング問題はありますが、コード量は数十行程度なのでタイピング速度は気にしなくて大丈夫です。
身分証明書は免許証やマイナンバーカードなど公的な物であれば問題ありません。言語も日本語のもので大丈夫です。
また、受験の環境には下記の条件があります。
- 静かな部屋
- 試験中は常に録音され、ノイズが入ると注意を受けます
- PC以外に何も載っていない机
- PCのカメラに対してまっすぐ向き合うことができる席
- 試験中は常に録画され、頭の向きがカメラに対して正面を向いていないと注意を受けます
- 複数モニターが接続されていないPC
- 拡張機能が無効化され、受験ページ以外のタブが閉じられているGoogle Chrome
ちなみに机にさえ何も載っていなければ良いので、周囲に物があってもおそらく大丈夫です。
少なくとも私が受験した際には、技術書などが入っている本棚にすぐ手が届く席でも特に注意は受けませんでした。
コーディング問題を解いている間はVueの公式ドキュメントを受験ページ内から閲覧することができます。
ただ、拡張機能や他のWebページなどは利用できないので翻訳はできません。英語は自力で読み解いてください。
まとめ
技術者の資格というと一般的には就職に有利になるとか箔が付くとかが取得理由になりますが、Vue認定資格はほとんど認知されていないので、正直ちょっとすごいかも(?)程度の効果しか今のところないです。非常に残念ですが。
取った人間としては認知度を上げて価値のある資格になってほしいところである一方、難易度の割に受験料が高いので取得をお勧めするかというと微妙……。
自分も「誰も取ってないだろうしレア資格として話題にできるかな」というしょうもない理由で取っただけだったりします。あとはノリと勢い。
ただ、開発メンバーでLevel IIの資格を持っている人がいればフロント全般の開発を任せて問題ないだろうと思う程度には実用的で幅広い知識が求められます。
もし高校レベルの英語が読める開発初心者がメンバーに入ってきたら、この資格の取得を目指してもらうと結構戦力になる人材に育つのではないでしょうか。
興味がある人はぜひ取って仲間になろうぜ!
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