💣

「新卒エンジニア研修」はっきり言って無駄なので、やめた方がいいと思う👍

に公開

はじめに

4 月になると、多くのテック企業で「新卒エンジニア研修」が始まります。架空プロジェクトの開発、技術系の講義など、内容は企業によってさまざまです。一見すると「新卒に必要な学びの場」を与えてくれる素晴らしい制度。ですが、僕はあえて言いたい。

「新卒エンジニア研修、いらんくね?」

特に、いわゆるメガベンチャーや有名スタートアップのように、採用時点でかなりハイレベルなエンジニアを確保できている企業であれば、なおさらそう思います。

新卒エンジニア研修を、後輩エンジニアに勧められるかと聞かれれば、答えは No です。Absolutely no です。研修で足踏みしている新卒エンジニアを見ると、正直、気の毒に思いますし、時には憤りさえ感じます。

この記事では、そう考えるに至った前提と理由を整理しながら、「研修」という形にこだわらない育成のあり方について自分なりの意見をまとめたいと思います。

前提:この記事で指す「新卒エンジニア研修」とは

まず、話の前提を揃えておきます。

ここで言う「新卒エンジニア研修」とは、多くのテック企業が 4 月以降に数週間〜数ヶ月ほどかけて実施する、いわゆる集合研修型の育成施策を指しています。たとえば以下のような内容です。

  • 架空プロジェクトによるチーム開発
  • 講義形式での技術習得(Git、DB、AWS など)
  • 社内ツールの使い方ハンズオン講座

また、想定している企業は、名前はあげませんが、「採用で一定の選抜がなされている企業」、「入社難易度が高いと言われている企業」です。

この前提を踏まえると、「わざわざ集合研修をやる意味は本当にあるのか?」という疑問が浮かび上がってきます。

なぜ「無駄」だと思うのか

1. 新卒エンジニアのレベルがすでに高い

近年の新卒エンジニアは本当に優秀です。

  • 長期インターンで実務経験(技術選定・設計・運用など)を積んでいる
  • 自分でサービスを作って公開している
  • OSS にコントリビュートしている

こういったレベルの方がそれなりにいます。そういったすでに技術力があり、自走できる人たちに対して「Git の使い方」や「DB の基礎」から講義をするのは、時間の無駄でしかありません。むしろ本人たちにとっても退屈で、成長機会を奪っている可能性すらあります。
また、エントリーレベルの人もいれば、すでにミドル〜シニアに匹敵する技術力を持った人もいます。そんな技術力や経験に差がある中で、足並みを揃えて一律研修するのは合理的ではないと思います。

2. 実務では研修よりも圧倒的な経験値を得られる

もちろん、研修で得られる学びもゼロではありません。ですが、実務での学びと比べると、圧倒的に薄いと感じます。実務に入れば、以下のようなリアルな体験を通して学べます。

  • プロダクト品質や可読性を意識したコードレビューでの実践的なフィードバック
  • 多くのステークホルダーを巻き込んだ非同期コミュニケーション
  • 複数マイクロサービスとの整合性を踏まえた仕様設計
  • スケーラビリティを考えたインフラ設計

このような経験は、「架空のプロジェクト」や「座学講義」では得られないでしょう。

3. 配属が早いほどチームも助かる

社員の立場から見ても、新卒が早く配属されてくれる方が助かります。例えば研修が 1 ヶ月ある場合、その 1 ヶ月が実務に充てられれば:

  • バグ修正や小さな改善タスクを通してキャッチアップができる
  • 新機能の PoC に着手できることすらある
    • チームとしても即戦力になってもらえて、めちゃくちゃ助かる

逆に、研修に 1 ヶ月費やすと、その分だけ実務での成果が遅れます。また、研修でのアウトプットは本番環境の課題解決やユーザー価値に直結しないため、評価材料として扱われることは少なく、実績としても残りにくいのが現実です。

4. 足並みを揃える必要はない

新卒エンジニアの技術レベルは本当にさまざまです。すでに複数年の実務経験がある人もいれば、これから経験を積んでいく段階の人もいます。もちろん、報酬も人それぞれでしょう。そんな中で、「全員がゼロスタートで、同じ内容を、同じペースで学ぶ」ような研修を行っても、すでに知っていることを繰り返す時間が発生してしまいます。これは、その人にとって何の成長にもつながらないどころか、モチベーションを削ぐリスクすらあります。
一律の研修にこだわるより、個人のスキルや経験に応じた適切な環境やタスクを早く提供した方が、はるかに成長速度は高まると感じています。

じゃあどうするべき?

「研修が不要」と言っても、「放任でいい」と言っているわけではありません。大切なのは、研修という形にこだわらず、現場で育てるための仕組みを整えることです。たとえば明日からできる取り組みとして以下が考えられます。

1. 配属先でのオンボーディングタスクの整備

まず一つ目は、オンボーディングに適したタスクを日頃から蓄えておくことです。たとえば、

  • 小さなバグ修正
  • 既存機能の軽微な改善
  • 新機能の PoC

など、「緊急性は高くないが、やれば自然とサービスやコードベースに詳しくなれるタスク」ようなものを、普段からストックしておきます。これらを新しいメンバーに渡すことで、実務の中でコードの流れ、設計思想、開発フロー、レビュー文化、ドキュメントの書き方などを、リアルな形で学んでもらうことができます。この実務体験こそが、集合研修よりも圧倒的に学びが深く、成長スピードも早いと僕は考えています。

2. 社内ドキュメントの整備

もう一つ大切なのは、社内ドキュメントをちゃんと整備しておくことです。新卒エンジニアが自走できるかどうかは、「どれだけ適切な情報に素早くアクセスできるか」に大きく依存します。

  • 開発環境の構築手順
  • デプロイフローや CI/CD の仕組み
  • インフラ構成図
  • よくある質問やトラブルシューティング
  • 各サービスの概要や責務の説明

こういった情報が「いつでも、誰でも、正しい形で参照できる状態」になっているかどうかは、新卒に限らず全エンジニアにとって重要なことです。

新卒エンジニアへ

研修よりも、できるだけ早く実務に入って学んだほうが、圧倒的に成長できます。 1 年後には研修でやった内容をすっかり忘れてしまっている、といったことも珍しくありません。僕は完全に忘れてます笑。逆に実務で学んだことは不思議なことに覚えてます。
また、「これって意味あるのかな?」と感じることがあれば、リスペクトを持って人事や研修担当者にその思いを伝えてみてください。既存の仕組みにフィードバックを返すことは、新卒に限らず、誰にとっても組織をよりよくする大事な一歩です。

新卒エンジニア研修を担当している企業の方へ

「新卒だからまずは研修」、「例年どおり進めるのが無難」、「他社も実施しているから」というふうに、思考停止で研修を実施していませんか? 最近の新卒エンジニアは、実務で通用するスキルと自走力を持っています。また、企業はそういう人材を採用しているはずです。

だからこそ、「型どおりの研修」ではなく「実務を通じた学び」の場を用意することが、企業にとっても新卒エンジニア本人にとってもプラスになるのではないでしょうか。 配属を早めることでチームの戦力になるのも早まり、双方にとって良い循環が生まれると信じています。

「例年どおり」で進めるのではなく、「本当に今の新卒にとって価値のある時間とは?」を一度見直してみませんか?育成は研修だけではありません。実務の中でこそ、新卒エンジニアは最速で育ちます。

最後に

本記事は、あくまで僕個人の経験と考えに基づいた意見です。新卒エンジニアの皆さんや、エンジニア研修を設計・実施している方々など、立場によって感じ方はさまざまだと思います。だからこそ、いろんな意見や経験を聞いてみたいです。この記事に共感した点、違和感を持った点、あるいは自分の体験談など、気軽にコメントで教えてもらえると嬉しいです。

Discussion