非IT企業で定期開催の社内勉強会を運用していた話
トレンドや技術についての移り変わりの激しいIT企業で働いていると、勉強会自体というのは当たり前のものだと思います。ただ、非IT企業においては、自社製品についての勉強会自体は行われることはありますが、エンジニアの行う勉強会のように一般に公開されている技術やトレンドなどについての勉強会や、書籍の輪読会をする機会というのは多くはありません。
そういった勉強会文化のない非IT企業で、定期開催の勉強会を始めて数年間継続したものの無期限の休止状態となったので、その反省を共有します。
勉強会を企画したときの環境
勉強会を企画した時の大きなモチベーションとしては、部署内で仕事のサイロ化が進んでいたことがありました。社内Wikiでやっていることや技術スタックについて積極的に書いてくれているメンバーもいましたが、少数派で多くのメンバーが自分の担当している仕事の文書を残してくれることはありませんでした。担当していた仕事のナレッジは個々人にはたまっているものの、何かあれば消失し、仕事がオーバーフローもその人しか触ることができないため、ヘルプに入ることが安易にできない状況となっていました。
その状況を打破するためには、まず個々人がやっていること、ナレッジを強制的に吐き出させるということを考えて勉強会を始めました。
勉強会の方針
勉強会の主な目的は「個々人にたまっているナレッジの開放」、「コミュニケーションの活性化」の二点で考えており、以下を方針としました。
- 毎週の定期開催
- 参加メンバーは持ち回りで発表をする(強制
- テーマは自由
- 仕事が忙しければ、短いものでもよい
毎週一人が何か持っている知識を紹介したり、最近気になったものを紹介、仕事上で得た知見や、作ったものの仕様の共有などをするような形で開催をしていました。おおよそ数か月に1回自分の発表の順番がやってくるような頻度です。
共有する内容などのハードルを下げるためにテーマは自由ですし、時間も短くてもOKでとにかく勉強会文化を根付かせることも影の目的として考えていました。
成果
お互いに持っていた知見や、技術の紹介、最近勉強したことを毎週持ち寄るため、そこから仕事に還元されたこともありました。エンジニアだけでなく、デザイナーやマネージャーなども知見ややっていることを持ち寄ることで、各々の仕事の理解や、開発中のシステムの情報共有なども頻繁に行われていました。途中からは、他部署にも門戸を開きし、自由に見てもらうことができるように共有もされるようになりました。確実に当初の目的であった「個々人にたまっているナレッジの開放」については成果があったように思います。ただ、勉強会の恩恵を感じていた人は多くなかったのかもしれません。
無期限の休止状態になった理由
最大の問題点は能動的にやりたいというのが自分だけだったのではないかという点です。上記の方針で勉強会をしていたのですが、一部同僚からは「ネタがない」という声は耳にしていました。仕事をまとめて共有してもらうだけでも良かったのですが、結局これまでやってこなかった「文書化」という仕事が増えるため、単純な負担増にはなってしまうということは確かにありました。
また、様々なロールのメンバーがそれぞれ講師となるため、様々な視点を知ることができるということは意義があったのですが、どうしても自分の仕事とは関係のないものも多く聞き流しが増え、どうしても能動的になれないということもあったように思います。
そのこともあり、数年間開催されたところで部内から頻度を下げる提案がされました。自分以外から反対意見が出なかったため、「事情がない限り確実に定期開催される勉強会」から、「いつあるかわからない勉強会」となり自然消滅となりました。
どうしたらよかったのか
- しつこいぐらいに方針を共有する
- 頻度を下げるにしても「確実に開催される頻度」にする
- 参加者のロールを限定する
方針の共有をする
勉強会で話す内容のハードルをできる限り下げるような方針を出していましたが、何年か経つとどうしてもそこは風化されてしまうという問題はあります。テーマはなんでもいいとしながらも、どうしても誰も知らない発表をしたい、「ええかっこしたい」というのが人の心理としてあります。日々の業務の中で「知りえたこと」や「気づき」といったことはあるはずで、同僚から出ていた「ネタがない」は、「勉強会で話すほどのネタがない」ということだとは思います。自分にとっては当たり前のことでも、人によっては「当たり前ではない」ことは少なくないです。そういった「自分にとっては当たり前」も発表してもらってよいですし、知見をより持っている人がいたとしたら、自身の知識の保管もされて一石二鳥なはずです。しかし、そのことは最初に共有したっきりであったために、徐々に「ええかっこしい内容」になっていったように思います。
確実に開催される頻度
頻度を下げる場合でも、開催頻度を単位レベルで明確にする必要があったように思います。毎週1回を減らすにしても、「隔週」だと今週が「実施される週なのか」は関心を持っていないと記憶には残りません。
頻度を下げるにしても、「週単位」から「月単位」。月単位だと頻度があまりにも低くなってしまうため、月に一回のまま一度の勉強会の時間を延ばして複数人が講師をやるという運用を変更することで自然消滅するということはなかったのかなとは思います。
参加者のロールを限定する
ほかのロールのメンバーの視点は新鮮で意味があるのですが、それが恒常的に続くとどうしても興味がわかないということは出てきてしまいます。そういったことを防ぐためにも、ちゃんとロールは分けて勉強会自体は開催するほうが良いかとは思います。
おわりに
勉強会は自分が勉強するきっかけにもなりますし、自分がこれまで調べていなかったことについても学ぶことができます。ほかの人の話を聞いて、自分の仕事に取り入れたことも多々あるので自然消滅したけれどもやってよかったなとは思っています。
ただ、今回の失敗を糧に、次の勉強会の企画を考える…というところまでモチベーションが回復いていないため、もうしばらくは勉強会を開催することはいいかなとも考えています。外部勉強会に参加をして、またモチベーションが上がってきたころにまた社内の勉強会について考えてみようかとも思います。
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