"ホテルエンジニア"として半年間やったことをまとめてみた
はじめに
はじめまして。株式会社7gardenでテックリードを担当しているKeitaです。
これまでテックカルチャー寄りの企業でソフトウェアエンジニアとしてキャリアを重ねてきた自分が、ホテル企画・運営を専門とする会社で働き始めてから半年ほど経ちました。
自称"ホテルエンジニア"の活動記録をご覧ください。
入社の経緯
まずは入社の経緯がてらの自己紹介として、元々自分はオンライン完結のプロダクトというよりも、『リアル×オンライン』の分野にそそられるタイプです。
この趣向を持ちつつ、フロントエンドエンジニアをやったり、テックリードも兼任したりしながら数社を経験してきました。
まだ7gardenへの入社を決める前の段階で、2025年4月にオープンしたHotel Vintage 目黒不動前という施設に試泊させてもらった上で、宿泊中の様々な体験をDXしていきたい、という展望を持つメンバーとの会話を重ね、一気に事業への興味が強まったのを覚えています。
その中で、「全てをデジタルに寄せたいとは思っておらず、リアルだからこそ体験できる"おもてなし"が損なわれないようなDX/AXを追求していきたい」という会社のビジョンにも共感しました。
主な業務内容
以下の組織図において、自分はDXチーム所属となり、これまで主戦場としてきたフロントエンド開発を中心に、まだ固まり切っていない組織の体制作りにも注力しています。

そして、以下が弊社で企画・開発・運営を担っているホテル・宿泊施設の一覧です。

開業前の施設も含めるとなかなかの規模となりますが、DXチームはこれらをマーケター3名+エンジニア2名の少数精鋭で回していく方針です(今後多少の増員は検討しています)。
以下より、ホテルエンジニアとして半年間取り組んできた主な業務内容をまとめてみます。
ブランドサイト改修
自分の入社時点で素のHTML/CSSで実装されていたブランドサイトは、一部の外部会社管理となっていたものを除き、Astroで構築し直しました。
パフォーマンス改善、SEO(引いてはLLMO)強化や運用・拡張性を視野に入れたリファクタリングになります。
内部コードの多くはまだHTML時代のものを引き継いでいる状態なので、これらのリファクタも進めていく必要がありますね。
自分が入社したタイミングから、今後の既存サイトの運用や新規開業時のブランドサイト制作については基本的に内製化することになっています。
ブランドサイト改修においては、直販率向上のための施策、microCMSと連携したNewsセクションの追加、デザイン更新など、様々な開発Issueに着手しているところです。

福岡市にあるHotel Meiのブランドサイト
OTA依存の軽減&直販率向上が当面の課題となっており、この辺りの施策には特に力を入れているところです。ブランドサイトが重要な責務を担うことになるため、ホテルドメインならではの知見をキャッチアップしつつ、これまでの自分のフロントエンドエンジニアとしての経験を総動員して取り組んでいきます。
施設DXの推進
先のブランドサイト改修は主にゲストの集客にスポットを当てた業務になりますが、集客成功後のフロートとしては、ゲストの宿泊体験向上が当然ながら非常に重要になります。
この取り組みの一例として、ホテルTVシステムというものの開発を進めています。

ホテルTVシステム(プロトタイプ)
テレビ画面のリモコン操作で施設情報、ルームサービス、温泉場の混雑状況の確認などを完結できるアレです。
このシステムはWebの技術でも作れるものとなり、現在Next.jsの技術スタックで開発を進めています。
大まかにフェーズを4つに分けており、まずはMVP開発として、静的な施設情報の配信までを、特定施設の1部屋のみを対象して開発を進めているところです。
TVというデバイスに掲載するプロダクトの開発ということで、過去のWebエンジニアとしての経験では使ってこなかった部分の脳を働かせている感じがしてとても面白いです。実際に施設に導入できるようになった段階で、詳細の実装内容についてまとめたいと思います。
Slackでのホテル売上速報追
弊社が契約しているサイトコントローラー(複数のホテル予約サイトの在庫、料金、予約状況などを一元管理できるシステム)のAPIとGASを連携して、Slackにて各施設の売上速報の表示を自動化しました。

実際の投稿(具体の数字はボカしています)
マーケメンバーの要望に合わせ、表示項目は随時アップデートを行なっています。直近ではキャプチャにもある『部屋別売上』項目を追加したりしました。
リアルタイム性の高い情報を取得できるメリットに加え、この投稿にスレッドをつなげる形でマーケメンバーのコミュニケーションが活性化したことも良い効果になっていると感じています。
例えば、「昨日福岡で12月チェックインの予約数が異常に多かった」→「調査の結果、Sn⚪︎w manの福岡ドームでのライブが発表されたからっぽい」→「ライブ周りの日付ではプライシングを調整しよう」のような検知とアクションを比較的素早く起こせるようになっています。
あとはシンプルに、自社のホテルの売上情報に社内メンバーが簡単にアクセスできる状態を作れたことも良い取り組みだったと思っています。
Slack AIチャット
弊社ではマーケAXの取り組みとして、自社施設の分析に特化したSlack AIチャットの開発を行っています。
マーケちゃんという弊社のマスコットキャラクターがレスポンスをくれる仕様で、この子は弊社の各施設の種々の情報を保持しています。

AI部分はTypeScriptのAIフレームワークであるMastraでの実装を行なっており、こちらは主にバックエンド担当のエンジニアが開発を行なっています。自分はSlack SDKを用い、ユーザーとAI側を繋ぐフロント部分の実装を行いました。
このプロダクトも結構面白いことになっているので、追って主担当のエンジニアに存分に語ってもらおうと思います(ワクワク)
情シス業務
セキュリティ周りの対応、機器の管理、情報管理方法の改善を行なっています。
ホテルの宿泊体験としてはアナログとデジタルは協奏すべきと思っていますが、ホテルメンバーのITリテラシーについては明確な基準を設けるべきと感じており、この分野に関する研修会の講師を務めたりもしています。
この情シス業務には結構な工数を投下しているので、やってきたことを詳細に列挙したい気持ちではありますが、逆にこれまでの状態の方に注目が集まってしまう予感もするので、これくらいの記述に留めておこうと思います。
マーケ業務
過去の現場でもマーケターとの協業は経験してきていますが、宿泊施設というビジネスモデル上、頻繁にプライシングや在庫調整が発生し、マーケ業務にはより瞬発力が求められる印象があります。
そのため、人力依存な部分は極力自動化・効率化しつつ、深みとスピード感を持った分析を可能にし、エンジニアならではの拡張性を持たせることもホテルエンジニアの責務の一つです。
1on1などを通して各マーケメンバーが抱える課題は拾ってきていますが、結局のところは自分もマーケティング担当として当事者にならないと、ホテルマーケにおける思考法や作業フローの詳細を把握することはできず、エンジニアリングに繋げ切ることも難しいと感じました。
そのため、自分も1つ明確に主担当の施設を持つことにし、現在はマーケ領域における分析を進めているところです。
ちなみにこの記事を書いている現在は、自分がマーケ担当となった福井県にある施設にて、冬季戦略用の写真/動画撮影のための出張中です。
アジャイル体制への移行
DXチームにジョインし、まずはメンバー間でのコミュニケーションのあり方や、各人のタスク管理の精度をより高める必要があると感じました。
前述の通りホテルマーケには瞬発力が求められ、短いスパンでのPDCAサイクルが重要となるため、ウォーターフォールよりはアジャイルでの管理が適当だと思っています。
過去の開発現場でのアジャイル統括の経験をサンプルに、メンバーへの説明の上で、スクラムへの移行を実施しました。スプリントは1週間で区切り、notionで作成したボードにて各issueの管理を行なっています。
現状では、テックカルチャーの企業に所属している方が想起するような、いわゆるなスクラム体制とは乖離がある状態ですが、ホテルマーケの定常的な業務全てをチケットにすることの難しさや、各メンバーのバックボーンを踏まえると、ある程度はホテル業界用にカスタマイズされた状態が正解だと考えています。
まだ探り探りですが、理想的なタスクの進行方法と、メンバーがモチベーションを保ちながらバリューを発揮しやすい進行の在り方のバランスを取りながら最適化していきます。
ホテル運営メンバーのサポート業務
ホテルの現場に立つ運営メンバーを、エンジニアリング方面でサポートしていくのも重要な業務です。
『現場ではこんな課題がある』というものが一覧化されていれば簡単ですが、現場の方々視点だと、長期間定常的にこなしてきた業務を自動化・効率化できるかもしれないという発想自体が無いケースが多いと思っており、ここの課題発見自体が課題だと思っています。
当初は課題ベースで相談をいただく方式にしていましたが、エンジニア主導で業務内容のヒアリングをしてDXできそうなことを回収できるようにするため、何名かの現場メンバーとは定期MTGを実施するように調整しました。このMTGが、定点観測的な役割を果たしてくれる想定です。
既に「現場メンバーが数年間苦労してきたことが、自分の30分間のGAS実装によって解消された」みたいなことが実現できているので、とてもやりがいを感じています。
まだまだ自分が認識すらできていない課題が山積みの状態だと思っているので、ホテル運営メンバーの方々とのコミュニケーションのさらなる活発化とDXの推進は積極的に進めていきます。
最後に
これまでの経験を活かしつつ、ホテル業界という新しい領域ならではのチャレンジもしつつで、やりがいのある日々を送っています。
自分が所属するDXチームのタスクが多岐に亘ることはなんとなくおわかりいただけたかと思いますが、今後の棟数の拡大も踏まえると、新たなメンバーのジョインが必要になることは明らかなので、近々具体的に各職種の求人を掲載していく予定です。
現段階でホテルのDXについて興味をお持ちいただいている方がいましたら、ぜひお話しさせてください!
会社への理解が深まるであろう以下記事もよろしければご一読ください。
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