囲い込み属人化と専門性は違う|ズルい戦略に負けないために
はじめに:その「頼れる人」は、本当に専門家ですか?
現場でよく聞く言葉に、こんなものがあります:
- 「この人がいないと回らない状態でヤバい」
- 「属人化しちゃってて、手が出せない」
一方で、そういう人が「専門性が高くて頼れる存在」として扱われているケースも多いのではないでしょうか。
属人化=専門性
そんな空気がある現場、意外と少なくありません。
でも、それって本当に正しいのでしょうか?
属人化の種類とは?
一口に「属人化」と言っても、実はいくつかのパターンがあります:
✅ 営業成果主義による属人化
顧客を「自分の顧客」として囲い込むことで評価される構造。情報共有が行われず、ブラックボックス化。
✅ 技術と営業の連携不足による属人化
顧客の要望や仕様変更の背景が技術者に伝わらず、属人的な判断で処理されてしまう。
✅ 経営の無関心・放置による属人化
標準化やドキュメント整備が後回しにされ、知見が個人に閉じたままになる。
✅ 業務範囲の広さ・漏れによる属人化
担当業務が広すぎて、結果的に「その人しか把握できない作業」が自然発生する。
✅ 技術者の知識囲い込みによる属人化 ← 今回の主題
自らの立場を守るため、技術やノウハウを共有せず、意図的に囲い込むタイプ。
今回はこの中でも特に問題視される
「囲い込み属人化」 にフォーカスを当てて考察していきます。
「囲い込み属人化」とは何か?
属人化とは端的に言えば、
「その人じゃないとできない仕事がある」状態
であり、業務のブラックボックス化を指します。
もちろん、長年の経験や高い技術力により簡単には真似できない仕事があるのは事実です。
しかし、それを理由に「誰にも教えない・共有しない」という姿勢になると、組織にとっては大きなリスクになります。
専門性とは何か?
一方で「専門性」とは、
「ある分野について深い知識や技術を持っていること」
を指します。
そして真の専門家は、その知識を他者に説明できるし、再現可能な形で残せるのが特長です。
専門書やマニュアルとして体系化されたものがそれに該当します。
なぜ「囲い込み属人化」が広まるのか?
属人化が広まる原因は、それが評価される環境が存在するからです。
最初は偶然だったかもしれません。
しかし「自分しかできない状態」で評価される成功体験があると、その後は意図的に囲い込みを行うようになることがあります。
周囲もまた「あの人に頼めば何とかしてくれるから」と依存し、さらにブラックボックス化が進む…。
ズルいけど賢い戦略とも言えるこの構図、身に覚えがある方も多いのでは?
属人化=専門家?という誤解
このように、属人化と専門性を混同してしまうと、
「囲い込み属人化している人 = 専門家」
という誤った評価が定着してしまいます。
その結果…
- 正直にドキュメントを整備し、業務を共有している人がスルーされ、
- 属人化を武器に評価される人物が「希少で価値ある人材」とされてしまう。
本来おかしい構図が、現場に蔓延してしまうのです。
経営者・企業の立場から見た属人化
企業は人を雇うことで業務の安定推進を目的とします。
その視点から見れば、属人化は明確なリスクです。
特定の人がいなくなるだけで業務が止まるようでは、継続的な運営ができない=経営リスクそのものです。
意図的であれ無意識であれ、属人化が放置されている状況は企業にとって背任的とも言える重大な問題です。
どう向き合うべきか?
結論から言えば、以下の3点が鍵になります:
1. 属人化と専門性は別物と理解すること
- 専門性とは再現可能な知識の集合体
- 属人化は知識を閉じ込めること
2. 属人化しないための施策を実行すること
- ドキュメントの整備
- 引き継ぎの仕組みづくり
- ナレッジ共有文化の醸成
3. 本物の専門家を目指すこと
- 「自分だけが知ってる」ではなく「誰でも使える形で残せる」ことこそ真の価値
- 長期的なキャリア形成においても再現可能性が鍵となる
最後に:ズルい戦略に負けないために
属人化によって評価される人を見て、
「自分も共有しない方が得かも…」と考えてしまうこともあるでしょう。
でも、そうなればチームも、自分自身も弱くなるだけです。
⛳ 正直で、共有する人が報われる組織文化を目指す。
そのためにも、
- 属人化しない姿勢を貫く
- 専門性を周囲に伝えられる形で残す
- 「本物の専門家」になる
という道を、少しずつでも歩んでいきましょう。
📝 あなたの知識は、あなた一人のものではなく、チームと未来を支える力です。
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