ReactのサーバサイドレンダリングAPIs
renderToStringからrenderToPipeableStreamへ
この記事では、ReactのサーバサイドレンダリングにおけるAPIの進化に焦点を当てます。
従来のrenderToString
メソッドから新たに導入されたrenderToPipeableStream
メソッドへの移行とその利点について解説します。
まずはrenderToString
の例から見ていきましょう。
これは、ReactコンポーネントをHTML文字列にレンダリングする最も基本的な方法です。
// renderToStringの使用例
import React from 'react';
import { renderToString } from 'react-dom/server';
import App from './App';
const html = renderToString(<App />);
console.log(html);
次に、renderToPipeableStream
の紹介とその利用方法に移ります。
renderToPipeableStream
は、React 18で導入されたAPIで、サーバサイドレンダリングを行う際により効率的なストリーミングを可能にします。
以下はその基本的な使用方法です。
// renderToPipeableStreamの使用例
import React from 'react';
import { renderToPipeableStream } from 'react-dom/server';
import express from 'express';
import App from './App';
const app = express();
app.get('/', async (req, res) => {
res.setHeader('Content-Type', 'text/html');
const {pipe, abort} = renderToPipeableStream(
<App />,
{
onShellReady() {
res.statusCode = 200;
pipe(res);
},
onError(error) {
console.error(error);
res.statusCode = 500;
res.end('Internal Server Error');
abort();
}
}
);
setTimeout(() => {
abort();
}, 10000); // エラーハンドリングのためのタイムアウト
});
app.listen(3000, () => {
console.log('Server is listening on port 3000');
});
このコードスニペットでは、ReactのrenderToPipeableStream
メソッドを使用してAppコンポーネントをストリームとしてレンダリングし、Expressサーバーを通じてクライアントに送信しています。
onShellReady
は、HTMLのシェルが準備完了したときに呼び出されるコールバックで、ここでレスポンスをクライアントに送り始めます。
エラー処理のために、onError
でエラーをキャッチし、適切に対応しています。
では、renderToPipeableStream
の利点についてもう少し詳しく見ていきましょう。
このAPIは、React 18で導入された新しいサーバサイドレンダリングの手法で、特に大規模なReactアプリケーションにおいてパフォーマンスの向上を目的としています。
以下にその主な利点を挙げます。
ストリーミングによるパフォーマンスの向上
renderToPipeableStream
は、HTMLをストリームとして送信することで、Time To First Byte (TTFB) を改善します。
これにより、クライアントは全てのHTMLが生成されるのを待たずに、受信した内容からページのレンダリングを開始することができます。
Reactの非同期機能のフルサポート
このAPIはReactのSuspenseや、データフェッチング時の非同期処理を含む、Reactの並行機能を完全にサポートしています。
これにより、サーバサイドレンダリング時にも非同期処理が必要なコンポーネントをより効率的に扱うことが可能になります。
エラーハンドリングの強化
renderToPipeableStream
では、レンダリングプロセス中に発生したエラーをキャッチし、適切に処理するためのオプションが提供されます。
これにより、エラーが発生した場合でもユーザーにフレンドリーなメッセージを表示しやすくなります。
使用例: 非同期データフェッチングを伴うサーバサイドレンダリング
Reactの非同期機能とrenderToPipeableStream
を活用したサーバサイドレンダリングの例を見てみましょう。
以下のコードスニペットでは、データを非同期にフェッチするコンポーネントをサーバサイドでレンダリングしています。
// 非同期データフェッチングを伴うサーバサイドレンダリングの例
import React, { Suspense } from 'react';
import { fetchData } from './fetchData'; // 仮のデータフェッチ関数
import { renderToPipeableStream } from 'react-dom/server';
import express from 'express';
const DataComponent = () => {
const data = fetchData(); // 非同期でデータをフェッチ
return <div>{data}</div>;
};
const App = () => (
<Suspense fallback={<div>Loading...</div>}>
<DataComponent />
</Suspense>
);
const app = express();
app.get('/', (req, res) => {
const { pipe, abort } = renderToPipeableStream(
<App />,
{
onAllReady: () => {
res.setHeader('Content-Type', 'text/html');
pipe(res);
},
onError: (error) => {
console.error(error);
abort();
}
}
);
});
app.listen(3000, () => console.log('Server started on port 3000'));
この例では、Suspense
を用いて非同期データのフェッチ処理をラップし、onAllReady
コールバックで全てのデータが準備完了した後にHTMLをクライアントに送信しています。
これにより、非同期処理を含むサーバサイドレンダリングがスムーズに行われます。
renderToPipeableStream
を使用することで、サーバサイドレンダリングのパフォーマンスと柔軟性が向上し、Reactアプリケーションのユーザーエクスペリエンスを改善することができます。
サーバサイドレンダリングのためのベストプラクティス
renderToPipeableStream
の導入により、Reactアプリケーションのサーバサイドレンダリングが強化されました。
しかし、この新しいAPIを最大限に活用するためには、いくつかのベストプラクティスを理解しておくことが重要です。
以下に、サーバサイドレンダリングを行う際の推奨される方法を紹介します。
サーバサイドとクライアントサイドのコードの分離
Reactアプリケーションにおいて、サーバサイドとクライアントサイドのコードを適切に分離することは、アプリケーションの保守性を向上させ、将来的な変更を容易にします。
特に、データフェッチングや環境変数の取り扱いなど、サーバサイドとクライアントサイドで異なる実装が必要になる場面では、この分離が重要になります。
環境変数の取り扱い
サーバサイドとクライアントサイドで異なる環境変数を利用する場合、環境変数を安全に管理する方法が必要です。
例えば、APIのURLはサーバサイドでは内部ネットワークを、クライアントサイドでは公開URLを使用することがあります。
// envs.ts
// 環境変数の型を定義
interface EnvVars {
API_URL: string;
}
// サーバサイド専用の環境変数
export const serverEnvs: EnvVars = {
API_URL: process.env.INTERNAL_API_URL || "http://localhost:8000",
};
// クライアントサイド専用の環境変数
export const clientEnvs: EnvVars = {
API_URL: process.env.PUBLIC_API_URL || "https://api.example.com",
};
データフェッチングの分離
データフェッチングは、サーバサイドレンダリングを使用する場合、特に注意が必要です。
サーバサイドではプリレンダリング時にデータをフェッチし、クライアントサイドではブラウザ上でユーザーのアクションに応じてデータをフェッチする必要があります。
// fetchData.tsx
import React, { useEffect, useState } from 'react';
import { serverEnvs, clientEnvs } from './envs';
// サーバサイドとクライアントサイドで実行環境を判断
const isServer = typeof window === 'undefined';
const API_URL = isServer ? serverEnvs.API_URL : clientEnvs.API_URL;
export const fetchData = async () => {
try {
const response = await fetch(`${API_URL}/data`);
if (!response.ok) {
throw new Error('Network response was not ok');
}
const data = await response.json();
return data;
} catch (error) {
console.error('Data fetching failed:', error);
return null;
}
};
// データを使用するコンポーネント
export const DataComponent: React.FC = () => {
const [data, setData] = useState(null);
useEffect(() => {
fetchData().then(setData);
}, []);
return (
<div>
{data ? <p>{JSON.stringify(data)}</p> : <p>Loading...</p>}
</div>
);
};
このように、環境変数やデータフェッチングロジックをサーバサイドとクライアントサイドで適切に分離することで、Reactアプリケーションの保守性と拡張性を向上させることができます。
コードスプリッティングの利用
大規模なReactアプリケーションでは、ページのロード時間を短縮するためにコードスプリッティングを行うことが一般的です。
React.lazy
とSuspense
を組み合わせることで、クライアントサイドのレンダリング時にのみ必要なコードを遅延ロードすることが可能です。
サーバサイドレンダリングでは、すべてのコードが事前にサーバー上で処理されるため、コードスプリッティングの利益が直接得られるわけではありませんが、クライアントのパフォーマンス向上には寄与します。
エラーハンドリングの徹底
renderToPipeableStream
は、レンダリング中にエラーが発生した場合にそれをキャッチし、適切に処理する機能を提供します。
サーバーサイドレンダリングを行う際は、このエラーハンドリング機能を活用して、ユーザーに適切なフィードバックを提供することが重要です。
エラーが発生した場合には、適切なエラーページを表示するか、またはクライアントサイドでのレンダリングにフォールバックすることを検討してください。
パフォーマンスの監視と最適化
renderToPipeableStream
を使用する際、サーバーサイドレンダリングのパフォーマンス監視と最適化は非常に重要です。
特に、大規模なアプリケーションや複雑なデータ構造を持つアプリケーションでは、レンダリングのパフォーマンスに影響を及ぼす要因を定期的に評価し、必要に応じて最適化を行うことが推奨されます。
パフォーマンスボトルネックの特定
サーバーサイドレンダリングのパフォーマンスを最適化する前に、まずはパフォーマンスのボトルネックを特定する必要があります。
Node.jsのプロファイリングツールやReactのプロファイラーを使用して、レンダリングプロセス中に時間がかかっている部分やメモリ使用量が多い部分を特定できます。
// パフォーマンス監視のための簡単な例(実際のプロファイリングはもっと複雑です)
import { performance } from 'perf_hooks';
const start = performance.now();
// renderToPipeableStreamを呼び出す部分
renderToPipeableStream(<App />, {
onAllReady() {
const end = performance.now();
console.log(`レンダリング時間: ${end - start}ミリ秒`);
},
});
不要な再レンダリングの削減
コンポーネントの不要な再レンダリングは、サーバーサイドレンダリングのパフォーマンスに大きく影響します。
React.memo
やuseMemo
、useCallback
を適切に使用して、不要な再レンダリングを削減します。
import React, { useMemo } from 'react';
const HeavyComponent = React.memo(({ data }) => {
// 重い処理を模倣
const processedData = useMemo(() => processData(data), [data]);
return <div>{processedData}</div>;
});
function processData(data) {
// データ処理のロジック
return data;
}
データフェッチングの最適化
サーバーサイドでのデータフェッチングは、レンダリング時間に直接影響します。
可能であれば、クライアントサイドでデータをフェッチするか、サーバーサイドでのフェッチングを最適化することが重要です。
例えば、非同期データのプリフェッチングやキャッシングの利用が考えられます。
import React, { useEffect, useState } from 'react';
const AsyncDataComponent = () => {
const [data, setData] = useState(null);
useEffect(() => {
fetchData().then(setData);
}, []);
return <div>{data ? `データ: ${data}` : 'ローディング中...'}</div>;
};
async function fetchData() {
// データフェッチのロジック
return 'フェッチしたデータ';
}
renderToPipeableStream
を使用したサーバーサイドレンダリングのパフォーマンスを最適化することで、ユーザーにより良い体験を提供し、アプリケーションの全体的なパフォーマンスを向上させることができます。
パフォーマンスの監視と最適化は継続的なプロセスであるため、定期的に評価を行い、必要に応じて調整を加えていくことが大切です。
まとめ
renderToPipeableStream
は、React 18で導入された強力なサーバサイドレンダリングAPIです。
ストリーミング、非同期処理のサポート、強化されたエラーハンドリングなど、多くの利点を提供します。
しかし、これらの利点を最大限に活用するためには、上記のベストプラクティスを適切に実践することが重要です。
サーバサイドレンダリングのパフォーマンスを最適化し、ユーザーエクスペリエンスを向上させるために、これらの推奨事項をぜひ実践してみてください。
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