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「データが変わればUIも変わる」Vue.jsのリアクティブシステムを理解しよう

2025/01/08に公開

Vue.jsのリアクティブシステムを解説 〜シンプルさと強力なパフォーマンスを支える仕組み〜

フロントエンド開発をしていると、「リアクティブ」 という言葉を頻繁に耳にしませんか? でも、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。「リアクティブって結局何?」と、Vue.jsのリアクティブシステムがなぜ優れているのか、なぜ他のフレームワークの「シグナル」と比較されるのか――表面的な違いだけでなく、その背後にある「思想」を掘り下げてみます。

🌱 Vue.jsのリアクティブシステムって結局何?

Vueのリアクティブシステムは、データの変更を 「魔法のように」UIに反映してくれる仕組みです。でも、これはただの魔法ではなく、「開発者を楽にするための賢い仕組み」 です。

例えば、普通のJavaScriptで「カウンターの値」を画面に反映させる場合を想像してみましょう。

let count = 0;
document.getElementById('counter').innerText = count;

function increment() {
  count++;
  document.getElementById('counter').innerText = count;
}

こんな風に、状態(count) の変更ごとにUI更新のコードを書かなければなりません。
でもVue.jsなら――

import { ref } from 'vue';

const count = ref(0);

function increment() {
  count.value++;
}

あれ? UI更新のコードはどこ?
それがVueのリアクティブシステムの凄さ。状態が変わればUIが勝手に更新されるんです。開発者は 「何を更新すべきか」ではなく、「何が変わるか」 だけを考えれば良い。まるでUIがデータに寄り添っているかのようです。

💡 Vue 3で進化したリアクティブシステム

Vue 3では、ProxyというES6の新しい機能が使われるようになり、リアクティブシステムがさらに効率的かつシンプルになりました。

✅ Proxyを使ったreactive()の仕組み

Vue 3のreactive()は、オブジェクト全体をリアクティブにするAPIです。例えば、以下のようなコードがあります。

import { reactive } from 'vue';

const state = reactive({
  message: 'Hello, Vue!'
});

state.message = 'Hello, World!'; // UIが自動で更新される

これが内部でどう動いているのか、簡単な擬似コードで説明します。

function reactive(obj) {
  return new Proxy(obj, {
    get(target, key) {
      // 依存関係の追跡
      track(target, key);
      return target[key];
    },
    set(target, key, value) {
      target[key] = value;
      // UI更新のトリガー
      trigger(target, key);
    }
  });
}

✅ 単一の値を扱うref()の仕組み

ref()は単一の値をリアクティブに管理するためのAPIです。

import { ref } from 'vue';

const count = ref(0);

function increment() {
  count.value++;
}

これも同様に、count.value が変更されるたびにUIが自動更新されます。

🔄 他フレームワークの「シグナル」との違いは?

Vue.jsと同じくリアクティブシステムを提供するフレームワークに、Solid.jsや最近のReactがあります。それらが採用しているのが 「シグナル(Signals)」 という仕組みです。

フレームワーク リアクティブシステム 仮想DOM
Vue.js ref() / reactive() あり
Solid.js シグナル なし
React(将来) シグナル あり

🧩 シグナルとは?

シグナルは、ある値が変更されたときに、その変更に依存しているコンポーネントに通知する仕組みです。これにより、必要な部分だけをピンポイントで再レンダリングできます。

Vueのref()も概念的には似ていますが、Vueは依然として仮想DOMを利用してUIの更新を管理しています。このため、Solid.jsのようなフレームワークに比べると若干オーバーヘッドがあります。しかし、次世代のVueでは 「Vapor Mode」 と呼ばれる仮想DOM不要のレンダリングモードが導入予定であり、将来的にはVueもシグナルに近い仕組みに進化する可能性があります。

https://github.com/vuejs/vue-vapor

💎 Vue.jsのリアクティブシステムが開発者に愛される理由

では、なぜVueのリアクティブシステムはこんなにも愛されているのでしょうか?
その理由を3つのポイントで説明します。

✅ 1. 学習コストが低い

Vueは、HTMLテンプレートベースの構文を採用しているため、直感的に使い始められます。{{ message }} のようなシンプルなバインディングが、UI更新の複雑なロジックを隠してくれます。

<template>
  <div>
    <h1>{{ message }}</h1>
    <input v-model="message" placeholder="メッセージを入力してください" />
  </div>
</template>

<script>
import { ref } from 'vue';

export default {
  setup() {
    // リアクティブな値を作成
    const message = ref('こんにちは、Vue.js!');

    return {
      message
    };
  }
};
</script>

✅ 2. 強力なリアクティブシステム

ref()やreactive()を使うことで、手動でDOM操作する煩わしさから解放されます。開発者は、「データが変わればUIも変わる」 という自然な流れを意識するだけで良いのです。

<template>
  <div>
    <p>現在のカウント: {{ count }}</p>
    <button @click="increment">カウントアップ</button>
  </div>
</template>

<script>
import { ref } from 'vue';

export default {
  setup() {
    // ref()でリアクティブな値を作成
    const count = ref(0);

    // カウントを増やす関数
    const increment = () => {
      count.value++;
    };

    return {
      count,
      increment
    };
  }
};
</script>

✅ 3. 柔軟なAPI設計

VueはOptions APIとComposition APIの両方をサポートしており、プロジェクトの規模や目的に応じて使い分けができます。特にComposition APIは、コードの再利用性が向上し、ロジックの分離がしやすくなっています。

<template>
  <div>
    <h2>Todoリスト</h2>
    <input v-model="newTodo" placeholder="新しいタスクを入力" @keyup.enter="addTodo" />
    <ul>
      <li v-for="(todo, index) in todos" :key="index">
        {{ todo }}
        <button @click="removeTodo(index)">削除</button>
      </li>
    </ul>
  </div>
</template>

<script>
import { ref } from 'vue';

export default {
  setup() {
    // リアクティブな値
    const newTodo = ref('');
    const todos = ref([]);

    // タスクを追加する関数
    const addTodo = () => {
      if (newTodo.value.trim()) {
        todos.value.push(newTodo.value);
        newTodo.value = '';
      }
    };

    // タスクを削除する関数
    const removeTodo = (index) => {
      todos.value.splice(index, 1);
    };

    return {
      newTodo,
      todos,
      addTodo,
      removeTodo
    };
  }
};
</script>

📌 まとめ:Vue.jsのリアクティブシステムがもたらすメリット

Vue.jsのリアクティブシステムは、次のようなメリットを提供します:

  1. 自動的な依存関係の追跡
  2. シンプルで直感的なAPI
  3. 効率的なUI更新

また、Vueは仮想DOMを活用することで、従来のフレームワークよりも効率的な再レンダリングを実現しています。今後のVapor Modeによって、さらに軽量かつパフォーマンスの高いレンダリングが期待されます。

Vue.jsのリアクティブシステムは単なる技術ではなく、開発者体験そのものを変える仕組みです。Vueの魔法の裏側を知れば、あなたのコードももっと楽しく、もっと美しくなりますよ。

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