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量子確率過程(Partharathy)

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1 事象・オブザーバブル・状態

1.1 古典確率から量子確率

一般化という観点から理解するため,期待値 E(f) について検討する.

有限空間 \Omega=\{1,2,\cdots,n\}. とし,
離散確率変数 f:\Omega\rightarrow\{f(1),f(2),\cdots,f(n)\} の確率について次のように定められているとする.

P(\{i\})=p_i.

よって, f の期待値 E(f) は次を満たす.

\begin{aligned} E(f)&=\sum_ip_if(i)\\ &=(p_1,p_2,\cdots,p_n)\begin{pmatrix}f(1)\\f(2)\\\vdots\\f(n)\end{pmatrix}\\ &=\mathrm{tr} \begin{pmatrix} p_1 & 0 &\cdots & 0\\ 0 & p_2 & \cdots & 0\\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\ 0 & 0 & \cdots & p_n \end{pmatrix}\begin{pmatrix} f(1) & 0 &\cdots & 0\\ 0 & f(2) & \cdots & 0\\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\ 0 & 0 & \cdots & f(n) \end{pmatrix}\\ &= (\sqrt{p_1}e^{-i\theta_1},\sqrt{p_2}e^{-i\theta_2},\cdots,\sqrt{p_n}e^{-i\theta_n})\\ & \times \begin{pmatrix} f(1) & 0 & \cdots & 0\\ 0 & f(2) & \cdots & 0\\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots\\ 0 & 0 & \cdots & f(n) \end{pmatrix}\begin{pmatrix} \sqrt{p_1}e^{-i\theta_1}\\ \sqrt{p_2}e^{-i\theta_2}\\ \vdots\\ \sqrt{p_n}e^{-i\theta_n} \end{pmatrix} \end{aligned}\tag{1.1}.
  • (1.1)の二つ目の式は,すべての実数値確率変数の空間が線形空間をなし,確率分布はその共役の非負の要素であるという考えを強調するものである.(リースの表現定理にもつながる)

  • 三つ目,四つ目の式はそれを量子論風に記述してみたものである.(略)

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1.2 記法

ヒルベルト空間

  • 可分複素ヒルベルト空間 : \mathcal{H}

  • \mathcal{H} の内積 : \langle\cdot,\cdot\rangle あるいは \langle\cdot,\cdot\rangle_\mathcal{H}

  • \mathcal{H} のノルム : \|\cdot\|=\langle\cdot,\cdot\rangle^{1/2} あるいは \|\cdot\|_\mathcal{H}

  • \{u_n\}\subset \mathcal{H}u\in\mathcal{H}

    • \{u_n\}u収束する : \displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\|u-u_n\|=0.
    • \{u_n\}u弱収束する : \displaystyle\forall v\in\mathcal{H},\lim_{n\rightarrow\infty}\langle v,u_n\rangle=\langle v,u\rangle.
  • S\subset\mathcal{H}.

    • 直交補空間 : S^\perp = \{u\in\mathcal{H}\mid\forall v\in S,\langle v,u_n\rangle=0\}.
    • S^\perp\mathcal{H} の閉部分空間となる.
    • S^{\perp\perp}S を含む最小の閉部分空間となる.
    • SS^{\perp\perp} を生成する,SS^{\perp\perp} の総計であるという.
  • S の次元 : \dim S.

  • ヒルベルト空間の列 \{\mathcal{H}_n\} とする.

    • \mathcal{H}_n の直和 : \bigoplus_n\mathcal{H}_n=\{\{u_n\}\mid u_n\in\mathcal{H}_n\} また,u_n = \{0,0,\cdots,u_n,0,\cdots,0\} とみなす.
  • \mathcal{H} から \mathcal{H} への有界作用素の全体がなすバナッハ空間 : \mathcal{B(H)} とし,T\in\mathcal{B(H)} とする.

    • T の値域 : R(T)=\{Tu\mid u\in\mathcal{H}\}.
    • T のゼロ空間: N(T)=\{u\mid Tu=0\}.
    • R(T) は線形多様体.N(T) は閉部分空間.
    • N(T^*)=R(T)^\perp.
  • \mathcal{H} 上の自己共役作用素の全体 : \mathcal{O(H)}

  • \mathcal{H} 上の射影作用素の全体 : \mathcal{P(H)}

  • \mathcal{P(H)\subset O(H)\subset B(H)}

  • \{E_\alpha\} を射影の集合とする。

    • \lor_\alpha E_\alpha\bigcup_\alpha R(E_\alpha) を含む最小の閉集合への射影。
    • \land_\alpha E_\alpha\bigcap_\alpha R(E_\alpha) を含む最小の閉集合への射影。
    • 任意の射影 E,F,\{E_\alpha\} について,任意の \alpha について E\geq E_\alpha\geq F が成立するなら,任意の \beta について次が成立する.
      E\geq\lor_\alpha E_\alpha\geq E_\beta.

      E_\beta\geq\land_\alpha E_\alpha\geq F.
  • もし E

実・複素空間

  • n次元複素数空間 : \mathbb{C}^n
  • \mathbb{C}^n は次の内積を備えたヒルベルト空間とみなす : \langle u,v\rangle = \sum_i\bar{a}_ib_i.
  • \mathbb{C}^n の正準基底 : \{(1,0,\cdots,0),(0,1,\cdots,0),\cdots, (0,0,\cdots,1)\}
  • n次元実空間 : \mathbb{R}^n
  • \mathbb{R}^n\mathbb{C}^n と同様に定義されているとする.

l^2 空間

  • l^2 空間 : l^2=\{\{a_i\}\mid\sum_i |a_i|^2\lt \infty\}.
  • l^2 空間の内積 : \langle \{a_i\},\{b_i\}\rangle=\sum_i\bar{a}_ib_i.
  • l^2 空間の正規直交基底 : \{e_i\} ここで e_1=\{1,0,\cdots,\},e_2=\{0,1,\cdots\},\cdots.

L^2 空間

  • (S,\mathcal{F},\mu)\sigma 有限可測空間とする.
  • L^2(\mu) 空間 : L^2(\mu) = \{f:S\rightarrow \mathbb{C}\mid \int_S \|f\|^2_\mathbb{C}d\mu\lt \infty\}
  • L^2(\mu) 空間の内積 : \langle f,g\rangle =\int_Sf^*gd\mu.
  • S が位相空間で,\mathcal{F}_S をボレルσ代数とし,h をヒルベルト空間とする.
  • L^2(\mu,h) 空間 : L^2(\mu,h)=\{f:S\rightarrow h\mid \int\|f(s)\|^2_hd\mu\lt\infty\}
  • L^2(\mu,h) 空間の内積 : \langle f,g\rangle =\int_S\langle f,g\rangle_h d\mu.

必要に応じて追記する

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3 確率積分と量子伊藤公式

3.1 適合過程

  • \mathcal{H} を複素可分ヒルベルト空間とする。
  • \mathcal{F}_{\mathbb{R}_+} を正の実数上のシグマ代数とする。
  • \xi:\mathcal{F}_{\mathbb{R}_+}\rightarrow \mathcal{P(H)} (\mathcal{P(H)} は射影集合) を "jump point" がない \mathbb{R}_+ 値オブザーバブル、すなわち次を満たす写像であるとする。
    \forall t\in\mathbb{R}_+,\xi(\{t\})=0.
  • \mathcal{H}_S を次のように定める。
    S\in\mathcal{F}_{\mathcal{R}_+},\mathcal{H}_S=\rm{ran}(\xi(S)).

    たとえば、 \mathcal{H}_{[0,t]}=\rm{ran}(\xi([0,t])), \mathcal{H}_{[t}=\rm{ran}(\xi([t,\infty])) ここで \rm{ran} は値域。
  • \{t_1,t_2,\cdots,t_n\} について 0\lt t_1\lt t_2\lt t_3\lt t_4\cdots\lt t_n\lt\infty とすると、次が成立する。
    \mathcal{H}=\mathcal{H}_{t_1]}\oplus\mathcal{H}_{[t_1,t_2]}\oplus\mathcal{H}_{[t_2,t_3]}\oplus\cdots\oplus\mathcal{H}_{[t_{n-1},t_n]}\oplus\mathcal{H}_{[t_n}.
  • 初期空間 \mathcal{H}_0 を複素可分ヒルベルト空間とする。
  • ヒルベルト空間 \mathcal{H} とする。 \tilde{\mathcal{H}} を以下のように定める。
    \tilde{\mathcal{H}}=h_0\otimes\Gamma_s(\mathcal{H}).

    ここで \Gamma_s(\mathcal{H}) は 熱槽 (外部の雑音系) を表すヒルベルト空間。
  • \tilde{} について次が成立する。
    \tilde{\mathcal{H}}_{0]}=h_0.

    \tilde{\mathcal{H}}_{t]}=h_0\otimes\Gamma_s(\mathcal{H}_{t]}).

    \tilde{\mathcal{H}}_{[t}=\Gamma_s(\mathcal{H}_{[t}).

    \tilde{\mathcal{H}}_{[s,t]}=\Gamma_s(\mathcal{H}_{[s,t]}).
  • u\in\mathcal{H} に対して
    u_{t]}=\xi([0,t])u.

    u_{t]}=\xi([t,\infty])u.

    u_{[s,t]}=\xi([s,t])u.

    と定める。
  • \Phi_{[s,t]} , \Phi_{[t} , \Phi\tilde{\mathcal{H}}_{[s,t]} , \tilde{\mathcal{H}}_{[t} , \Gamma_s(\mathcal{H}) の真空状態とする。
  • \tilde{\mathcal{H}}_{t]}\tilde{\mathcal{H}} の部分空間である。というのも、次が成立する。
    \forall\phi\in\tilde{\mathcal{H}}_{t]},\phi\otimes\Phi_{[t}\in\tilde{\mathcal{H}}.
  • \tilde{\mathcal{H}}0\lt t_1\lt t_2\cdots\lt t_n\lt\infty について次が成立する。
    \tilde{\mathcal{H}} = \tilde{\mathcal{H}}_{t_1]}\otimes \tilde{\mathcal{H}}_{[t_1,t_2]}\otimes\cdots\otimes\tilde{\mathcal{H}}_{[t_{n-1},t_n]}\otimes\tilde{\mathcal{H}}_{[t_n}.

    これは次を満たすようなユニタリー同型 U を利用して示すことができる。
    Uf\otimes e(u)=[f\otimes e(u_{t_1]})]\otimes e(u_{[t_1,t_2]})\otimes \cdots\otimes e(u_{[t_n}).
  • \tilde{\mathcal{H}} の元 \phi_1\otimes\phi_2\otimes\phi_3\cdots について \phi_1\phi_2\cdots と書く。
  • 有界作用素の全体 \mathcal{B(H)} について次のように定める。
    \mathcal{B}_{t]}=\{X\otimes 1_{[t}\mid X\in\mathcal{B(\tilde{H}_{t]})}\}.

    ここで \{\mathcal{B}_{t]},t\geq 0\} は非可換フォンノイマン代数の増大系。このオブザーバブル \xi から導出された \{\mathcal{B}_{t]}\} はフィルトレーションの量子版である。

以上の条件で、適合過程を定義する。

定義 適合過程 Adapted process : D_0\subset h_0 とし、 \mathcal{M\subset H} を次を満たすような線形多様体とする。

\forall u\in\mathcal{M},\forall s,t\in\mathbb{R}_+,\xi([s,t])u\in\mathcal{M}.

D_0\otimes\mathcal{E(M)}\{fe(u)\mid f \in D_0,u\in\mathcal{M}\} のベクトルから生成される線形多様体とする。

次を満たすような \tilde{\mathcal{H}}\rightarrow\tilde{\mathcal{H}} 作用素の列 X=\{X_t\mid t\geq 0\}\tilde{\mathcal{H}} 上の (\xi,D_0,\mathcal{M})適合過程 という。(あるいは適合する過程という)

  • D(X_t)\supset D_0\otimes\mathcal{E(M)}.
  • \forall t\gt 0,\forall u\in\mathcal{M},\forall f\in D_0 について次が成立する。(これを 正規 (Regular) であるという)
    • X_tfe(u_{t]})\in\tilde{\mathcal{H}}_{t]}.
    • X_tfe(u)=\{X_tfe(u_{t]}\}\otimes e(u_{[t}).
  • 任意の f\in D_0u\in\mathcal{M} について 写像 t\rightarrow X_tfe(u) が連続。

ここで

  • D=\rm{dom}
  • e (多分) \exp
  • \mathcal{E(H)=\{e(v)\mid v\in\mathcal{H}\}}?
  • \Gamma_s : フォック空間?第二量子化(p148)?

マルチンゲールを定義する。

定義 \xi マルチンゲール : 写像 m:\mathbb{R}_+\rightarrow \mathcal{H} が次を満たすとき \xi マルチンゲールという。

\forall t,m(t)=m_t\in\mathcal{H}_{t]}.

\forall s\lt t\in\mathbb{R}_+,\xi([0,s])m_t=m_s.

次のような性質が成り立つ。

  • 二つの \xi マルチンゲール m,m' について \forall a\in\mathbb{R}_+,\langle m_t,m'_t \rangle=\langle{m_a,}\xi([0,t])m'_a\rangle.

よって \langle m_t,m_t'\ranglet の関数とみると、すべての有界区間で有界変分である。よって以下の関数は複素数値測度になる。

\llbracket m,m'\rrbracket([0,t])=\langle m_t,m_t'\rangle.
  • u\in\mathcal{H} とする。 u_{t]}=\xi([0,t])u\xi マルチンゲールになる。
  • u,v\in\mathcal{H} による上記によるマルチンゲール u_{t]},v_{t]} による測度を \llbracket u,v\rrbracket と書くことにする。

いかに紹介する集合は解析時に頻出するものである。

例24.1

定義 生成消滅過程 : h_0=\mathbb{C} とする。\~\mathcal{H}=\Gamma_s(\mathcal{H}) とする。m\in\mathcal{H}\xi マルチンゲールとする。このとき生成消滅演算子 a^*,a として次を満たすような線形写像 A_m^*,A_m:\mathbb{R}_+\rightarrow\mathcal{B(H)} を考える。

  1. D(A^*_m(t))=D(A_m(t))=\mathcal{E(H)}.
  2. \forall u\in\mathcal{H},A_m^*(t)e(u)=a^*(m_t)e(u)=\{\frac{d}{d\varepsilon} e(u_{t]}+\varepsilon m_t)\mid_{\varepsilon=0}\}e(u_{[t}).
  3. \forall u\in\mathcal{H},A_m(t)e(u)=a(m_t)e(u)=\{\llbracket m,u\rrbracket([0,t])e(u_{t]})\}e(u_{[t})

このとき、列 A_m^*=\{A_m^*(t)\mid t\geq 0\}A_m=\{A_m(t)\mid t\geq 0\}(\xi,\mathbb{C},\mathcal{H}) に適合している過程である。このような場合は、\mathbb{C} を省略して (\xi,\mathcal{H}) に適合していると書く。

このような A_m および A^*_m生成過程 または 消滅過程 という。

A_m(\xi,\mathcal{H}) に適合しているのは、 \xi が連続なスペクトルを有するため写像 t\rightarrow A_m(t)e(u) が連続であるためである。

また、この生成消滅過程について次のように書くことがある。
$ A_m=A_{\ket{m}}. $

例24.2

H\in\mathcal{B(H)} とし、\forall t,H\xi([0,t])=\xi([0,t])H=H_t を満たすとする。\Lambda_H(t)\in\Gamma_s(\mathcal{H}) を以下を満たす作用素とする。

  1. D(\Lambda_H(t))=\mathcal{E(H)}.
  2. \forall u\in\mathcal{H},\Lambda_H(t)e(u)=\lambda(H_t)e(u)=\{\lambda(H_t)e(u_{t]})\}e(u_{[t}).
    ここで \lambda(H)=\lambda(\frac{1}{2}(H+H^*))+i\lambda(\frac{1}{2i}(H-H^*)).

ここで定理20.13 : \langle\lambda(H_1)e(v),\lambda(H_2)e(w)\rangle=\{\langle H_1v,w\rangle\langle v,H_2w\rangle+\langle H_1v,H_2w\rangle\}e^{\langle v,w\rangle}. を用いると、次を示すことができる。

\|\Lambda_H(t)e(u)-\Lambda_H(s)e(u)\|^2=\|\lambda(H\xi([s,t]))e(u)\|^2\\ =\{\llbracket Hu,Hu\rrbracket([s,t])+|\llbracket u,Hu\rrbracket([s,t])|^2\}\exp(\|u\|^2).

\xi の non-atomicity から \Lambda_H=\{\Lambda_H(t)\mid t\in\mathbb{R}_+\} が正規な (\xi,\mathcal{H}) に対する適合過程である。この \Lambda_H\Gamma_s(\mathcal{H}) についての H に関する conservation 過程という。

例24.3

定義 維持過程 (Conservation process) : m,m'\xi マルチンゲールとする。\Gamma_s(\mathcal{H}) 上の作用素 \Lambda_{\ket{m}\bra{m'}}(t) が以下を満たすとする。

  1. D(\Lambda_{\ket{m}\bra{m'}}(t))=\mathcal{E(H)}.
  2. \Lambda_{\ket{m}\bra{m'}}(t)e(u)=\lambda(\ket{m}\bra{m'})e(u).

このとき、次の\Lambda_{\ket{m}\bra{m'}}(\xi,\mathcal{H}) に対する正規適合過程である。

\Lambda_{\ket{m}\bra{m'}}=\{\Lambda_{\ket{m}\bra{m'}}(t)\mid t\geq 0\}.

このような \Lambda_{\ket{m}\bra{m'}}(m,m') に関する conservation 過程という。

例24.4

\xi マルチンゲール m とする。\xi と可換な自己共役作用素 H とする。H_t\xi([0,t])H の閉包とする。W_t をワイル作用素 W に対して以下を満たす写像とする。

\forall t,W_t=W(m_t,e^{iH_t}).

t についての写像 m_t が連続で t についての写像 e^{iHt} が強連続なので、写像 W_t も強連続である。

(強連続半群とは、(1) T(0)=I, (2) \forall t,s\geq 0, T(t+s)=T(t)T(s) (3) \forall x_0\in X,\|T(t)x_0-x_0\|\rightarrow 0 , as t\downarrow 0 を満たすような作用素 T の全体である)

(Weyl 作用素とは、次を満たす作用素である

W(u,U)e(v)=\{\exp(-\frac{\|u\|^2}{2}-\langle u,Uv\rangle)\}e(Uv+u).

このとき m_0=0 かつ e^{iH_t}=I, as t\downarrow 0 なので W(m_0,e^{iH_0})=I, as t\downarrow 0 であるということで確かに W_t も強連続半群の元=強連続作用素になる
)

このとき、演習20.21(下に記述する) により W=\{W_t\mid t\geq 0\} がユニタリ作用素の集合を値域とする \Gamma_s(\mathcal{H}) 上の (\xi,\mathcal{H}) に適合する正規適合過程であることがわかる。

X を上で議論した A_m^*,\Lambda_H,A_m,W のいずれかとする。写像 t\rightarrow L_t:\mathbb{R}\rightarrow \mathcal{B}(h_0) が強連続写像とする。\mathcal{H}=h_0\otimes\Gamma_s(\mathcal{H}) 上の作用素 Y_t を以下を満たすとする。

  1. D(Y_t)=h_0\otimes \mathcal{E(H)}
  2. Y_tfe(u)=L_tf\otimes X_te(u).

このとき Y=\{Y_t\mid t\geq 0\}(\xi,h_0,\mathcal{H}) に対する正規適合過程である。

演習20.21

ヒルベルト空間 \mathcal{H}_1,\mathcal{H}_2 とし、\mathcal{H}=\mathcal{H}_1\oplus\mathcal{H}_2 とする。ワイル作用素 W(u,U) を用いた因数分解 (Proposition 19.6) \Gamma_s(\mathcal{H})=\Gamma_s(\mathcal{H}_1) \otimes\Gamma_s(\mathcal{H}_2) を考える。オブザーバブル p(u) および \lambda(H) を (20.2)(20.10)(20.11) にしたがって定義する。このとき次が成立する。

  1. \forall U_j\in \mathcal{U}(\mathcal{H}_j),\forall t_j\in \mathcal{H}_j,W(u_1\oplus u_2,U_1\oplus U_2)=W(u_1,U_1)\otimes W(u_2,U_2).
  2. \forall u_j,v_j\in\mathcal{H}_j,p(u_1\oplus u_2)e(v_1\oplus v_2)=\{p(u_1)e(v_1)\}\oplus e(v_2)+e(v_1)\otimes\{p(u_2)e(v_2)\}.
  3. 任意の \mathcal{H}_j のオブザーバブルを H_j とする。このとき
    \forall v_j\in\mathcal{H}_j,\lambda(H_1\oplus H_2)e(v_1\oplus v_2)=\{\lambda(H_1)e(v_1)\}\otimes e(v_2)+e(v_1)\otimes\{\lambda(H_2)e(v_2)\}.
  • \mathcal{U(H)} : ユニタリー作用素の全体?

証明

1を示す。Weyl 作用素の定義から

W(u,U)e(v)=\{\exp(-\frac{\|u\|^2}{2}-\langle u,Uv\rangle)\}e(Uv+u).

であるので

\begin{aligned} &W(u_1\oplus u_2,U_1\oplus U_2)e(v)\\ &=\{\exp(-\frac{\|u_1\oplus u_2\|^2}{2}-\langle u_1\oplus u_2,U_1\oplus U_2 v\rangle)\}e(U_1\oplus U_2v+u_1\oplus u_2) \end{aligned}

最初に係数部分だけ考える。v=v_1\oplus v_2 と分解して

\begin{aligned} &\exp(-\frac{\|u_1\oplus u_2\|^2}{2}-\langle u_1\oplus u_2,U_1\oplus U_2 v\rangle)\\ &=\exp(\frac{\|u_1\|^2+\|u_2\|^2}{2}-(\langle u_1,U_1v_1\rangle+\langle u_2,U_2v_2\rangle))\\ &=\exp(\frac{\|u_1\|^2}{2}-\langle u_1,U_1v_1\rangle)\exp(\frac{\|u_2\|^2}{2}-\langle u_2,U_2v_2\rangle) \end{aligned}

よって分解できた。eの中も同様に分解できるので、 1 が成立することは確かめられた。

2 を確認する。(20.10)より p(u) は次を満たす。

W(tu)=W(tu,1)=e^{-itp(u)}.

ここで求めたい式は以下のようであるが、これを証明するために必要なのは p(u_1\oplus u_2)=p(u_1)\otimes p(u_2) である。これを示すために両辺を e^{-it} に乗せる(次の式のようにする)

e^{-itp(u_1\oplus u_2)}=W(t(u_1\oplus u_2))

これを 1 と同様にすると

W(t(u_1\oplus u_2))=W(tu_1)\otimes W(tu_2).

なので、

p(u_1\oplus u_2)=p(u_1)\otimes p(u_2).

が示された。よって以下が成立する。

\forall u_j,v_j\in\mathcal{H}_j,p(u_1\oplus u_2)e(v_1\oplus v_2)=\{p(u_1)e(v_1)\}\oplus e(v_2)+e(v_1)\otimes\{p(u_2)e(v_2)\}.

3 を確認する。 (20.11)より \lambda(H) は次を満たす。

\Gamma(e^{-itH})=W(0,e^{-itH})=e^{-it\lambda(H)}.

これは2と同様にすればよいだろう。(略)■