📝

情報系の学生にとって応用情報技術者試験は簡単なのか

2024/10/21に公開

※ この記事の筆者は大学で出席を怠ってサークルに没頭し、なぜかその知識だけで単位を修得してきた不届き者です。この記事を読んだ情報系の学生は「あ、何もしなくても応用情報の試験合格できるんだ」といった勘違いを起こさないようにご注意ください。

要点まとめ

  • 情報系の学生からするとかなり有利
  • 試験範囲がバカ広く、問題単体の難易度が低い午前試験は基本的に対策必須
    • 過去問を利用すれば対応しやすい
  • 相対的に範囲が狭く、並程度の難易度が出題される午後試験は無対策でも解ける場合がある
    • (きちんと大学の講義を理解している人の場合)
    • (過去問1回分くらいはやった方が良い)

まとめると情報系の学生(あるいは開発経験が豊富な人)なら実力次第ではあるが午前の過去問丸暗記程度の対策で合格できる可能性がある、といったところです。同期の学生もそんな感じでした(結局のところ本人次第なので自信がない人はきちんと対策しましょう)

応用情報技術者試験とは

情報処理推進機構が年2回実施する国家試験です。マークシート式の午前試験と記述式の午後試験から構成されます。この試験は免許試験ではないので合格してもこれといった業務ができるようになるわけではありませんが、合格したことを履歴書に記載することができたり、別の試験での受験資格や免除資格を得ることができます。(もっとも情報系の学生からしたらこの試験は容易に合格できるのでこの試験を受けるより論文を1本学会に出した方が評価が高くなりると就活の時に人事の方に言われるそうですが...)

ちなみにこの試験に合格することで教員資格認定試験の高校1種(情報)を受験することができるので、教職課程をすっ飛ばして教員免許を取りたい人には有用かもしれません。[1]

受験当時の筆者概要

  • 大学4年生(修士課程進学予定)
  • 情報理工・情報通信専攻
    • 研究テーマはベクトルアクセラレータによる高速演算チップの開発
  • ハードウェア設計・製作にはかなり自信がある(人力飛行機の操舵・計測システムの製作など)
  • ソフトウェア製作経験は大量にはやっていないので、基本的な知識に留まる
  • プログラミング等の知識は平凡(AtCoderは触れたことがないので何色かはわからない)
  • 情報処理技術者試験の受験経験なし

統計資料から分析

IPAの公式サイトでは、試験申込時のアンケートのデータを統計情報として公開しています。その中に、大学生の合格率も「理工系の情報系」、「情報系以外の理工系」、「文系の情報系」、「情報系以外の文系」の区分で記載されており、それを読むことである程度傾向が分かります。

令和6年での各学生区分の合格時点は次の通りでした。

区分 申込者数 受験者数 合格者数 合格率(合格者数/受験者数)
大学院(情報系) 345 229 88 38.4%
大学院(情報系以外) 245 150 71 47.3%
大学(理工系の情報系) 1,520 1,127 323 28.7%
大学(文系の情報系) 189 137 32 23.4%
大学(情報系以外の理工系) 368 254 92 36.2%
大学(情報系以外の文系) 256 170 49 28.8%

※ 統計情報(応用情報技術者試験、高度試験、情報処理安全確保支援士試験)はこちらから参照できます。

大学で経験を積んできた学生が多く受験しているのか大学院生の合格率はかなり高いですね。(自信のある人だけが申し込んでいるためとも考えられる)

そして、大学生ですが、理工系の情報系の受験者数は多いものの、合格率は28.7%とあまり高くなく、逆に、情報系以外の理工系の学生は36.2%といった高い合格率になっています。

おそらくですが理工系の情報系の学生は「なんとなく受けてみよう」といった人が多く、申込者数は多くなるがほとんど初見の状態で突撃する人が多いのでしょう。しかし、この試験では結構試験範囲が広い上に普段使わないような用語を答えるような問題が多いため、大学で教育を受けてきた人でも初見では解けないような問題が多く存在します(特にテクノロジ以外の問題では顕著)。その結果、対策をまともにしない情報系の学生の合格率が低くなり、逆にちゃんと対策して受験する情報系以外の理工学系の学生の合格率が高くなるのだと考えます。

ということで大半の情報系の学生からすると、無対策で容易に受かるような試験ではないと考えることができます。(情報系の学生にとって難易度が高いというわけではなく、対策しない受験生が多いというだけ。この情報だけでは各学生区分にとっての難易度を論じることはできない)

午前試験対策

午前試験は80問(全問必答)の4択問題で、48問以上の正答で通過となります。試験範囲としては、テクノロジ、マネジメント、ストラテジ系からそれぞれ50問、10問、20問出題され、各設問の難易度としては基礎的なものしか問われないもののとにかく試験範囲が広いです。

最初はそもそもどういう試験なのか全くわからなかったので、初見で午前試験の過去問を解いてみたところ正答数が40/80問といった結果でした。自分の知っている分野に関しては「当たり前だろ」と感じるくらい個々の問題難易度は簡単ですが、それ以外の知識問題やマネジメント、ストラテジ系の問題が全く分かりません。また、テクノロジ系に関しても普段使わない用語に関してはお手上げでした。情報系の学生からしても午前試験を全く勉強せずに通過するのは難しそうです。

午前試験では20~25題程度の問題は過去6年程度の問題から使いまわされています(選択肢も同じ)[2]。つまりここをきっちり抑えれば60点は超えられるだろうということで、とにかく過去問を周回します。

今回はよく使われている過去問サイトである過去問道場を利用させていただき、直近1年の問題を除いた過去6年間の問題を解けるようにしました。理解が難しい分野については丸暗記です(というより問題文すらまともに読んでいない)。できるだけ勉強をサボりたかったので2週間程度の短期対策で臨みました。

午後試験対策

午後試験では、11問の大問から5問を選択して解答します(ただし情報セキュリティのみ必答)。問題を任意に選択できるため、テクノロジ系の問題のみを選び、マネジメント、ストラテジ系の問題を全く選択しないといったことも可能です。対策範囲が狭くなる分、午前試験と比べて問題の難易度は上がりますが、問題の分野に対してある程度実務経験があれば無理なく解答できる程度の難易度です。

私の場合、テクノロジ系の問題については絶対的な自信があったのでノー勉で試験に臨みました(は?)。

試験当日

起床試験

当日起きれない人がいるとかどうとか...。7,500円払って受験しないのはもったいないので前日は一夜漬けせずにさっさと寝ましょう(というより一夜漬けだと頭が回らないですし...)。ちなみに遅刻も30分まで認められているので余程寝坊しない限りは受験はできます。

午前試験

試験15分前から試験の説明があるのできちんと聞いておきましょう。携帯が鳴ったら退場、受験番号や生年月日のマークミスは未採点、退出禁止時刻(試験終了10分前以降)に退出したら未採点とするなど結構ルールに厳しかった印象です。

午前は多少対策していたのである程度は解答できました。2回ほど見直しをして途中退出します。受験番号や生年月日の記入ミスやマークミスが無いかは確実にしましょう(間違えて提出しても救済措置は無いので...)

なお、途中退出しない場合、試験終了後、答案回収後の枚数チェックなどで時間がかかり、昼休みが短くなってしまうので、基本的には途中退出した方が良いです。

昼休み

午前試験を途中退出した場合、試験終了時刻までは会場に入れないため、基本的には外食しながら待機します。この際、解答速報を使って自己採点するのは非推奨です。解答速報の精度が完璧ではないのでボーダー付近の点数だと不安を抱えながら午後試験を受けることになります...。

また、午後試験は午前と同じで鉛筆かシャープペンシルでの解答です。ボールペンではありませんので間違えないように。(私は直前に「あれ、筆記用具って何だっけ?」ってなっていました...)

午後試験

1回分の過去問すら読んでいないかったので完全に初見で解くことになりました。私が選択したのは以下の5題です。

  1. 情報セキュリティ(必答)
  2. プログラミング
  3. システムアーキテクチャ
  4. ネットワーク
  5. 組込みシステム開発

(問題冊子表紙の注意事項読むまで問題選択数を思いっきり勘違いしていたとか言えない)

プログラミングは多くの情報系学生が選択しますが、それ以外のどれを選択するかは人によると思います。おすすめ度を示しているサイト等もありますが、あまり惑わされずに自分が得意だと思うものを選択した方が結果的に良い得点を得られると思います。

なお、記述式の試験ではありますが、用語を問うような問題もそれなりに出題されたので、思ったより午前試験対策で習得した知識が活用できました。ただ時間配分を何も考えていなかったので見直しをする時間が確保できなかったのが痛かったです。これから受験する方は最低でも1回は午後の過去問を回して感覚に慣れておくとよいと思います。

解答時点ではそれなりに自信がありましたが、試験終了後に自己採点してみると思っていた以上に間違っている部分やケアレスミスがあったので、冷や汗をかきながら合格発表を待っていました。

事故採点

試験終了後、当日中にIPAから午前試験の解答が公開されるのでそれをもとに自己採点します。午後試験の配点や解答は別解などの検討が行われるためか、合格発表直前まで公式には公開されません。数日以内に解答速報を発表しているサイトもあるので、自己採点する場合はそれを参考にします(公式の解答ではないので必ずしも解答速報が合っているとは限りません)。

午前試験は63/80問で、安全に通過できました。午後試験については各大問ごとに次のような感触でした。得点は推定値です。

問題 得点(推定) コメント
情報セキュリティ 9~15(記述次第) 同じハッシュ値の要素を選択するところで文字を読み間違えるミス(何やってんの?)。記述は比較的容易だったが用語問題が難しい。
プログラミング 15 擬似言語の仕様を事前に確認しなかったのでその場で仕様を読みながら解くという珍プレーを実行。最後の最適化したコード穴埋めで不備があり満点を逃した。正常に動くかどうかのシミュレーションしかしていないとこうなる。
システムアーキテクチャ 14~16 計算項目は問題なくできたが、記述問題が実際にサービスを構築した人じゃないと難しいなぁといった印象。
ネットワーク 14 全く自信がなかったが、今年の問題が簡単だったみたいで助かった。と言いながら結構間違えた。
組込みシステム開発 14 今年の問題は難しかったらしい。しっかり理解している人でないとトンチンカンな答えを出してくるような問題設計だったように見えた。

※ 各問題の配点は20点

1~2個の大問は満点取りたかったなぁ...と思いながら自己採点終了。まあ派手にずっこけた大問は無かったので良しとしましょう。

結果

合格発表までの2か月半は気長に待ちます。結果は以下の通りでした。(画像は後で更新)

合格であれば、半月後あたりに合格証書が届きます。これにてようやく終了です。

脚注
  1. ただしこの試験は22歳以上といった年齢制限あるので基本的に学部卒業後にしか受験できないので注意 ↩︎

  2. なぜかは分かりませんが直近1年の問題からは使いまわされません ↩︎

GitHubで編集を提案

Discussion