dbtとは?
dbtとは?従来のデータ変換の課題を解決するモダンツール
データエンジニアとして、より効率的なデータ変換の方法を学びたい!
本記事では、dbt(data build tool)の概要と、従来のデータ変換における課題をどのように解決するのかについて解説します。
💡 対象読者
- データエンジニアとして成長したい方
- SQLは知っているがdbtは初めての方
- データ変換の効率化に興味がある方
📚 目次
- dbtとは?
- 従来のデータ変換における課題
- dbtが解決する課題
- dbtの主要機能
- まとめ
1. dbtとは?

dbt(data build tool)は、データエンジニアやアナリティクスエンジニアがSQLだけでデータ変換を自動化・管理できるオープンソースツールです。
1.1 基本的な概念
dbtはELT(Extract, Load, Transform)パイプラインの「Transform(変換)」部分に特化したツールです。
従来のETLアプローチでは、データを抽出(Extract)してから変換(Transform)し、最後にロード(Load)していました。しかし、モダンなデータウェアハウス(Snowflake、BigQuery、Redshiftなど)の登場により、ELTアプローチが主流になってきました。
従来のETL: Extract → Transform → Load
モダンなELT: Extract → Load → Transform
ELTでは、まずデータをそのままデータウェアハウスにロードし、その後SQLを使って変換を行います。この変換部分を効率的に管理・自動化するのがdbtの役割です。
1.2 dbtの特徴
dbtには以下のような特徴があります:
- SQLファースト: 既存のSQLスキルをそのまま活用できるため、学習コストが低い
- バージョン管理: Gitと連携した開発フローで、チーム開発が可能
- テスト自動化: データ品質を自動でチェックし、問題を早期発見
- ドキュメント自動生成: テーブル定義書やデータリネージを自動で作成
これらの特徴により、データエンジニアはより効率的にデータ変換作業を行うことができます。
2. 従来のデータ変換における課題
2.1 手作業による非効率性
従来のデータ変換では、以下のような課題がありました:
🔴 課題1: 手動でのSQL実行
毎回手動でSQLを実行する必要があり、時間がかかり、ミスも発生しやすくなっていました。
-- 毎回手動で実行する必要があった
CREATE TABLE customer_summary AS
SELECT
customer_id,
COUNT(*) as order_count,
SUM(amount) as total_amount
FROM orders
GROUP BY customer_id;
このような作業を毎日、毎週繰り返すことで、データエンジニアの時間が大幅に奪われていました。また、手動実行によるヒューマンエラーも頻繁に発生していました。
🔴 課題2: 依存関係の管理が困難
複数のテーブルが相互に依存している場合、実行順序を間違えるとエラーが発生します。
-- どのテーブルがどのテーブルに依存しているか分からない
CREATE TABLE daily_sales AS
SELECT * FROM sales_summary; -- sales_summaryが先に作られている必要がある
CREATE TABLE sales_summary AS
SELECT * FROM raw_sales; -- 実行順序が重要
このような依存関係が複雑になると、どのテーブルを先に実行すべきかが分からなくなり、デバッグに多くの時間を費やすことになります。
🔴 課題3: データ品質の確認が手動
データ品質のチェックも手動で行う必要があり、漏れが発生しやすくなっていました。
-- データ品質チェックも手動で実行
SELECT COUNT(*) FROM customers WHERE customer_id IS NULL; -- NULL値チェック
SELECT COUNT(DISTINCT customer_id) FROM customers; -- 重複チェック
SELECT COUNT(*) FROM orders WHERE order_date > CURRENT_DATE; -- 未来日付チェック
これらのチェックを毎回手動で実行するのは非効率で、チェック項目が増えると管理が困難になります。
2.2 チーム開発における問題
🔴 課題4: コードの共有・管理が困難
個人のPCにSQLファイルが散在し、チーム間でのコード共有ができませんでした。
- 個人のPCにSQLファイルが散在
- チーム間でのコード共有ができない
- 変更履歴の追跡が困難
- 同じような処理を複数の人が重複して作成
このような状況では、チーム全体の生産性が低下し、知識の共有も進みません。
🔴 課題5: ドキュメントの作成・更新が大変
テーブル定義書やデータリネージの作成・更新が手動で行われ、常に最新の状態を保つのが困難でした。
- テーブル定義書の手動作成
- 変更時のドキュメント更新漏れ
- データリネージの把握が困難
- ドキュメントと実際のコードの乖離
このような問題により、新しいメンバーがプロジェクトに参加した際の学習コストが高くなり、保守性も低下していました。
3. dbtが解決する課題
3.1 自動化による効率化
✅ 解決1: モデルの自動実行
dbtでは依存関係を自動で解決し、適切な順序でモデルを実行します。
-- dbtでは依存関係を自動で解決
-- {{ ref('raw_customers') }} で依存関係を明示
SELECT
customer_id,
COUNT(*) as order_count,
SUM(amount) as total_amount
FROM {{ ref('raw_orders') }}
GROUP BY customer_id
{{ ref('raw_orders') }}という記法により、dbtはraw_ordersテーブルに依存していることを認識し、自動的に実行順序を決定します。これにより、手動での実行順序管理が不要になります。
✅ 解決2: テストの自動化
dbtでは、データ品質テストを自動化できます。
# schema.ymlでテストを定義
models:
- name: customer_orders
description: "顧客の注文情報を集約したモデル"
columns:
- name: customer_id
description: "顧客ID"
tests:
- not_null
- unique
- name: order_count
description: "注文回数"
tests:
- not_null
- positive_values
このように定義することで、dbt testコマンド一つで全てのテストを自動実行できます。テストが失敗した場合は、どのテストが失敗したかが明確に表示されます。
3.2 チーム開発の改善
✅ 解決3: バージョン管理
dbtはGitと連携した開発フローを提供します。
# Gitと連携した開発フロー
git add models/
git commit -m "Add customer analysis model"
git push origin main
これにより、以下のメリットが得られます:
- コードの変更履歴が追跡可能
- チーム間でのコード共有が容易
- ブランチベースの開発が可能
- コードレビューが実施可能
✅ 解決4: 自動ドキュメント生成
dbtでは、ドキュメントを自動生成できます。
# ドキュメントの自動生成
dbt docs generate
dbt docs serve
これにより、以下のドキュメントが自動で作成されます:
- テーブル定義書
- データリネージ(データの流れ)
- 依存関係図
- カラムの説明
ドキュメントは常にコードと同期されるため、最新の状態を保つことができます。
4. dbtの主要機能
4.1 データ変換・モデリングの自動化
dbtの核心機能は、SQLを使ったデータ変換の自動化です。
- SQLモデル: 再利用可能なSQLコンポーネントとして定義
-
依存関係の自動解決:
ref()関数による明示的な依存関係の管理 - 増分処理: 効率的なデータ更新による処理時間の短縮
- マクロ: 再利用可能なSQLロジックの作成
これらの機能により、複雑なデータ変換処理も効率的に管理できます。
4.2 品質・ガバナンス管理
データ品質を保証するための機能が充実しています。
- データテスト: 自動化された品質チェック(NULL値、重複、範囲チェックなど)
- スナップショット: データの履歴管理と変更追跡
- バリデーション: スキーマ変更の検証
- カスタムテスト: ビジネスロジックに基づいたテストの作成
これにより、データ品質の問題を早期に発見し、修正することができます。
4.3 可視化・ドキュメント化
データの構造と流れを可視化する機能があります。
- DAG(有向非巡回グラフ): 依存関係の可視化
- 自動ドキュメント: テーブル定義書の自動生成
- データリネージ: データの流れの追跡
- カラムレベルの説明: 各カラムの詳細な説明
これにより、新しいメンバーでもプロジェクトの構造を理解しやすくなります。
4.4 開発プロセス・運用管理
チーム開発を支援する機能が充実しています。
- Git統合: バージョン管理との連携
- CI/CD: 継続的インテグレーションによる自動テスト
- 環境管理: 開発・ステージング・本番環境の分離
- パッケージ管理: 外部ライブラリの利用
これにより、本格的なソフトウェア開発と同様の開発プロセスを実現できます。
5. まとめ
dbtの価値
dbtを導入することで、以下の価値を得ることができます:
- 開発効率の向上: 手作業の自動化により、データエンジニアの生産性が大幅に向上
- 品質の保証: テストの自動実行により、データ品質の問題を早期発見
- チーム協働の改善: バージョン管理とドキュメント化により、チーム開発が円滑に
- 運用の安定化: 依存関係の自動解決により、運用エラーを削減
導入のメリット
dbtの導入には以下のメリットがあります:
- 学習コストが低い: 既存のSQLスキルをそのまま活用できる
- 段階的な導入: 既存システムとの併用が可能で、リスクを最小限に抑えられる
- コミュニティの充実: 豊富なリソースとサポートが利用できる
- スケーラビリティ: 小規模から大規模まで対応可能
🚀 目指せ「つよつよデータエンジニア」
この連載では、「データエンジニア × モダンデータツール × ベストプラクティス」に強い人材になるための成長ログとして発信していきます。
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