光に関する物理量の定義は分かりにくい。光に関する物理量の定義と計算方法をまとめた。
放射束 [単位:W]
単位時間あたりに通過する光のエネルギーの量。光が一様な放射束 \Phi で立体角 \Omega の範囲で放射されているとすると放射強度 I は I=\Phi / \Omega である。
光束 [単位:lm]
波長 \lambda, 放射束 \Phi の光の光束 {\Phi_{\nu}} を
\begin{aligned}
&\Phi_{\nu}=K\Phi \\
\end{aligned}
のように視感効果度 K を用いて定義し、単位は [\mathrm{lm}] (ルーメン)である。
ただし、
\begin{aligned}
&\text{視感効果度: }K=V(\lambda)K_m \\
&\text{比視感度: }V(\lambda) \\
&\text{最大視感度: }K_m \\
\end{aligned}
である。比視感度は明所視標準比視感度(または単に標準比視感度)、分光視感効率ともいい、下図のグラフのように定義され波長が 550 \mathrm{\, nm} で最大となるような関数で定められている。 5 \mathrm{\, nm} ごとの比視感度の値は計量単位規則(平成四年通商産業省令第八十号)の表から知ることもできる。

比視感度と波長の関係 出典:[1]
これは人間が最も明るく感じるのが 550 \mathrm{\, nm} 付近であるからである。人間の感じ方を反映するために比視感度というものを定義し最大視感度に掛けて補正することで視感効果度とするのである。 1 \mathrm{\, lm} の量をどのように定めるか、すなわち最大視感度の値は光度の単位 [\mathrm{cd}] (カンデラ)の定義によって決まり、 K_m \simeq 683 \mathrm{\, lm/W} である。
定義はややこしいが実際に使う計算式は下のようにシンプルである。
\boxed{
\begin{aligned}
&\Phi_{\nu}=V(\lambda)K_m\Phi \\
&K_m \simeq 683 \mathrm{\, lm/W}
\end{aligned}
}
光度 [単位:cd]
光度は立体角あたりの光束
\boxed{
\begin{aligned}
&I_{\nu}=\frac{\Phi_{\nu}}{\Omega} \\
\end{aligned}
}
で定義され、単位は [\mathrm{cd}] (カンデラ)である。
第26回国際度量衡総会の決議に基づき1カンデラは周波数 540 \times 10^{12} \mathrm{\, Hz} の単色放射の視感効果度 K_{cd} を 683 \mathrm{\, lm/W} と定めることにより定義されている。周波数 f_{cd}=540 \times 10^{12} \mathrm{\, Hz}に対応する真空中での波長は \lambda_{cd}=555.171 \mathrm{\, nm}、空気中での波長は例えば屈折率 n=1.00027 を用いて \lambda_{cd}=\frac{c}{nf_{cd}} によって求めると \lambda_{cd} = 555.017 \mathrm{\, nm} となるように通常 \lambda_{cd} \simeq 555 \mathrm{\, nm} としてよく、 V(\lambda_{cd}) \simeq 1 と近似できるので光束のところで述べた視感効果度の式 K=V(\lambda)K_m に代入して
\begin{aligned}
&K_{cd}=V(\lambda_{cd})K_m \\
\text{i.e.}\quad &K_m \simeq 683 \mathrm{\, lm/W} \quad(\because V(\lambda_{cd}) \simeq 1,K_{cd} = 683 \mathrm{\, lm/W})
\end{aligned}
となることが分かる。
照度 [単位:lx]
単位面積当たりの光束で定義される。
参考文献
[1] 〈光とあかりの基礎知識〉標準比視感度(明所視) - ライティング共通 - Panasonic. https://jpn.faq.panasonic.com/app/answers/detail/a_id/101168/~/〈光とあかりの基礎知識〉標準比視感度(明所視)
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