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Google Cloud Next 25: GoogleMapとAIの融合 Groundingのアップデートを体験してきた

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1. はじめに

先日ラスベガスで開催されたGoogle Cloud Next 25に参加してきました。

私は東急URBAN HACKSでバックエンドエンジニアとして東急線アプリ開発に参画しています。東急線アプリではFirebaseとGoogleCloudを採用しており、主に電車とバスのリアルタイム走行位置をはじめとしたナビゲーションサービスを提供しています。
https://ii.tokyu.co.jp/tokyusenapuri

今回Google Cloud Next 25では、昨今のトレンドとなっている生成AIとGoogle Cloudが提供しているAIプラットフォームサービスのVertexAIの情報収集を目的に参加しました。VertexAIの最新アップデートに加えて、東急線アプリと親和性の高そうなGoogle Mapにもアップデートがありましたので、本記事ではそれらをピックアップして紹介していきたいと思います。

2. ハルシネーションを削減して情報の信頼性を高める

生成AIで避けては通れない話題といえばハルシネーションがあると思います。Google CloudのVertexAIではハルシネーション対策のGroundingソリューションを展開しており、そのセッションに参加しました。

ハルシネーションとVertexAI Groundingについて

ハルシネーションとは、AIが事実とは異なる情報や、その情報をあたかも真実のように見せかける現象のことです。コンテキスト理解の限界だったり、学習データが過去のものでどうしても発生してしまうリスクがあります。

また、エンタープライズ分野での活用では情報の信頼性が重視されます。
(東急線アプリでもナビゲーションサービスという性質上、データの信頼性がより重要だったりしています)
Google Cloudはハルシネーション対策としてGrounding機能を提供しています。

GroundingとはRAGの1つであって、推論時に学習データだけではなく外部のデータも活用してハルシネーションを防ぎ、結果の正確性を向上させるアプローチのことです。

Groundingなし

Groundingあり

Google CloudではGroundingサービスとしてVertex AI Searchを展開しています。
GoogleのWeb検索技術を応用して特定のWebサイトや自前で用意したHTMLなどの静的データをGroundingに使用することができるほか、リテール向けの小売カタログのアプリに特化したサービスなども展開しています。

実際、Google SearchのGroundingを導入することでデータの信頼性はかなり向上するらしいです。

実際にGroundingしてみた

実際にGroundingを使用すると簡単に使用できることがわかります。

以下は東急の沿線雑誌のWebページ(ここではHTMLファイルをCloud Storageに配置)を使用してGroundingの検証をしてみたものです

Groundingのカスタムデータで使用するHTMLを用意します。

AI Applicationからデータストアを作成します。

VertexAI StudioのGroundingを有効化するために先ほど作成したデータストアを指定します。

実際にプロンプトを投げて結果を確認します。

Goundingのため先ほど用意したHTMLのカスタムデータを参照して、ページ内の実在するお店を最終的にリコメンドしてくれました。
実際のユースケースではここまで単純ではないとおもいますが、複雑なコードや知識無しにGroundingを試せました。

VertexAI GroundingをGoogle Mapのデータで

Google Cloud Next 25 ではGroundingで新たにGoogle Mapのデータを使えるようになる発表がありました。

新たにGoogle Mapのデータを活用できるということでルート検索やマップ上の場所データとそれに付随するデータをGroundingで使用できるようになるそうです。

デモブースにて

セッションの後実際にデモブースにいってGooglerに質問しながらプレビュー版を触ってきました。

デモ用のチャットからプロンプトを入力

(ロサンゼルスを)訪れた際に、どのようなアクティビティを体験できますか?

返答結果にはMapとスポットの情報が出力されてリコメンドされました。
Googlerいわく「情報はGoogle Mapのものを使用しているので常に最新のデータになっている」とのこと

ここで試したいことがあったのでプロンプト入力してみました。

(おすすめしてくれた)スポットへはどうやって行くのがいいでしょうか?何かおすすめはありますか?

残念ながらエラーが出てしまいました。こういうケースには対応できていないらしいです。
「こうしたケースはカスタムデータで代替するのがいいかもね!」とGooglerの方はアドバイスしてくれました。

別のGoogleMapとAIを使ったデモでは、ラスベガスで宿泊しているホテルからおすすめのレストランをリコメンドしてくれる体験ができました。

早く日本のルート検索やスポットデータをGroundingで使ってみたいですね。

3. BigQueryでGoogle Mapデータを分析

Google Mapに関連してBigQueryからGoogleMapのデータを活用するセッションにも参加してきました。

そこではGoogleMapのデータをBQで活用してどのようなビジネスインパクトを作れるのかデモ交えて紹介していました。

ラスベガスの人口とレストラン数をSQLで抽出

GoogleMapでは新しくAPIで活用できるデータセットをいくつか発表していました。

(おそらくBigQuery Studioから)クエリを投げることで構造化したGoogleMapのデータがシームレスに取得できるようです

結果

BQのクエリからラスベガスの正規化されたエリアの人口とレストラン数をSQLで抽出してグラフ化して分析

他のソリューションでは車の渋滞をテーマにしたものがあって、車社会と言われるアメリカではより関心が高いのかなと思いました。

ところで、VertexAIではGroundingにBigQueryによるデータセットを活用することができます。

セッションで直接は言及していませんでしたが、今後SQLライクに構造化されたGoogle Mapのデータを自社のデータと紐付けて、Groundingのカスタムデータとして活用できたりする未来もあるのではと思いました。

4. まとめ

Google Cloud Nextに参加して、LLMの弱点であるハルシネーションを克服するための最新のGrounding技術を調査してきました。
新たにGoogleMapがGroundingで使用できるようになることで用途がより広がる気がしております。ナビゲーション機能もより強化されそうな気がしております。
またGoogle Map Groundingの他にWeb Grounding for Enterpriseサービスも発表しておりヘルスケアや公共事業者向けのGroundingサービスとなります。東急のようなエンタープライズでかつ、公共交通機関である電車やバスの情報を扱う東急線アプリとしては、仮に生成AIを導入するとしたらGoogle Cloudはかなり相性がいいことを感じました。

執筆時点ではGoogle マップによるGroundingは現在米国のユーザーのみテストが可能なようです。これから日本でもサービスが使えることを楽しみにしています。

東急URBAN HACKS

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