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マーケティング・ミックス・モデルは全体的な投資対効果の推論であって施策の具体的な作用機序を推論しない

Kien Y. KnotKien Y. Knot

結論はタイトルである

Robynの例

Robynのドキュメントには分析ガイドがある(やさしい)
Analytics guide to MMM

Marketing mix modeling (MMM) is a privacy-friendly, highly resilient, data-driven statistical analysis that quantifies the incremental sales impact and ROI of marketing and non-marketing activities.

この1文で端的に述べられている通り、MMMはマーケティング予算と、マーケティング成果と、事業KPI(ここでは売上)を使ったROIを算出するためのモデルフレームワークである。

一方マーケティング施策には、例えばCVRの最大化であったり、顧客のブランド認知率向上であったりと、それぞれに目的が存在すると思われる。
もっというと、顧客を主語にして考えれば、AIDMAモデルで表現されるような生活者意識意識と購買行動の連関、ないしは構造があり、それを前提にしてマーケティング施策による目的を設定する。

MMMは、こうしたマーケティング施策個別の具体的な評価を必ずしも実現しないと思っている。
つまり、顧客がコンバージョンするために、どういった意識変化があり、どういったサイト回遊を行った上でコンバージョンしたのか(=大体カスタマージャーニーと思ってよい)、それがマーケティング施策の策定時に目論んだ通りの経路であったのかについては評価しない(もとい、出来ない)、という理解でいる。
そもそもCookieがなくなるとか、生活者の具体的な行動・意識の追跡のために必要な情報の収集が限られるという課題のもとで再評価されている技術領域であるのだから、それは当たり前ではある。

故にMMMは「特定の顧客にフィットした施策を高い確率で当てられているか?」と言う問いには答えられない。その代わりに集計値として「どれくらいの割合の顧客に、フィットした施策を与えられたか」を変数にして「マーケティング施策全体がどの程度効率よく機能したか」という問いの粒度であれば、解釈可能な答えを与えることができると思われる。

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Googleの例

GoogleのLightweight MMMでも、基本的にはスコープは同じ。

Marketing Mix Modeling (MMM) is used by advertisers to measure advertising effectiveness and inform budget allocation decisions across media channels. Measurement based on aggregated data allows comparison across online and offline channels in addition to being unaffected by recent ecosystem changes (some related to privacy) which may affect attribution modelling. MMM allows you to:

  • Estimate the optimal budget allocation across media channels.
  • Understand how media channels perform with a change in spend.
  • Investigate effects on your target KPI (such as sales) by media channel.
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MMMの統計学的な表現

数式で表せば概ね以下の回帰モデル。media(マーケティング施策)やother(外部要因/競合要因など)は複数あっても良いし(というかそれが一般的)、それぞれにいわゆる回帰係数がつく。
baselineは切片で、施策や外部要因をfixしたときに実現できるKPI。マーケティング的な解釈をすれば「何もしなければこの程度の売上だが、マーケティング施策をすることで、そこにプラスしてこれだけ売上が増やせた」というロジックを、このモデルで表現している。

KPI = baseline + trend + seasonality + media + others

mediaothersは残存するという仮定を置くことが多い。例えばある週でWeb広告を投下した場合に、
その週の広告効果は、次週以降にも一定の比率で影響すると考えることが自然であると考える。
現実的に考えても、先週テレビのCMでみた商品を偶然お店で見かけて、買ってみる、みたいな行動は想定できる。
RobynやLightweight MMMはこれらの効果をS字の曲線で表現し、その形状パラメータも同時推定する。

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博報堂や電通がGoogleと協業してガイドブックを策定した。
博報堂
電通

基本前半はそこまで大きな違いはない(TJOとかが監修しているはず)。

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また最近仕事でMMM需要が増えていて、みんな「広告効果はあったんだ!」って信じたいんだろうが、割と外部要因や制御不能要因がメインで、広告によるインクリメンタルなんて微々たるものだろ、と思ってしまうのでMMM向いていない。