エンジニアの能力開発について考えていること
はじめに
本記事では、わたしが仕事で育成面を担っている中で思う、エンジニアの「能力開発」について思っていることを述べています。(※このため、時々アップデートすることがあると思いますが、ご了承ください。)
なお、個人的に「育成」という言葉は若手に向けたイメージが強くなると感じてしまいます。こういう話は若手だけに向けたものではなかったので、わたしは「能力開発」みたいな表現を選んでいます。
対象読者
- IT業界に入った若手、中途採用者
- 育成担当者
- スキルアップを考えている方々
※この記事に自力でたどり着く習慣をお持ちでアウトプットもされている方から見ると、目新しいことは言っていない気はしますが、ご容赦くださいませ。
メタ学習
スキルアップにおいては、「どのように育っていくか」という点への理解があるのと無いのとでは向上速度に隔たりがあるという見解があります。
まずは、この「育つということ」について一読のうえ、理解をしておいていただけると嬉しいです。
プロセス
現在考えている能力開発プロセスは、まず下記のようなプロセスを活用してみては、と考えています。
1. スキルマップを利用し、現在の自分の力量を把握する
2. スキルマップから、自分の伸ばしたい領域を選択し、目標を立てる
3. 各領域の能力開発プロセスを参考に、伸ばしたい領域の経験を積む
4. 上記フィードバックループを半期ごとに繰り返す
ここで重要なのは、スキルマップは純技術的な要素だけではなく、「聴く力」や「伝える力」などのビジネススキル的な要素も必要であるということです。
「創れるエンジニア」は純技術的なスキルだけではダメで、問題解決思考やチームとしての行動なども求められる時代であると思っています。
大事にしたい、大事にしてほしいこと
強みを見つけよう
まずは、自分の強みを一本つくれるように行動してみましょう。
プログラミング言語でもインフラ技術でも、何か強みが一本あれば、その周りの技術を学ぶことも容易になりますし、学習の勘所も分かるようになってきます。
きっかけは配属された業務で求められた技術分野でも良いと思うのです。そこを強みに昇華したうえで、強みをどんどん深く or 広げていくことが良いと思います。
考え方を理解する
個々のやり方ではなく 方法論 や そのやり方に至る考え方 を理解することで、「以前教えてもらった内容/テンプレートと似たようなケースだが少し違う」という場合にも応用できるようになったり、改善提案もできるようになっていきます。この考え方は、ポータブルスキルとしても重要なことだと考えています。
振り返り
成長にとっては 「将来、自分がどうなっていたいのか」 と 「現在、自分は何ができて、何が足りないのか」 を意識しながらスキルアップを進めていくことが重要です。
定期的に上記の振り返りを行い、これから伸ばすべきスキルをメンター等と意識合わせしながらスキルアップを進めると良いと思います。
楽しんで学ぶ
論語に 「これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず。」 という言葉があります。「興味のないことをイヤイヤ学ぶ」よりも「好きなことを学ぶ」ほうが、そして「楽しんで学ぶ」ほうが格段に成長できます。是非、「楽しみ」を見つけて学んでいきましょう。ただし、"楽 (ラク)" と "楽しい" は違いますので、ご注意を。
自信を持とう
頑張っていくと「まだまだ強みとは言えない…」と思う瞬間も来ると思います。ダニング・クルーガー効果 (いわゆるチョットデキル曲線) の影響も受けますし、コミュニティに属すると周りは自分よりもデキる人がいっぱい集まっているため、自分が本当にちっぽけな存在のように思えます。
もちろん事実な部分はあるはずですが、実は自分で自覚できていないだけで、世界一とは言わないまでも自社の中ではトップクラスの人間になっている ようなことは往々にしてあると思います。慢心してはダメですが、自信を持つことも大切だと考えています。
取り入れてみると良い習慣
以下、具体的な実践として取り入れてみたい習慣などについて、以下紹介していこうと思います。
なにはなくとも、仕事で通して得られる知識
まずは研修や業務での学びを通して、業務で求められる必須の知識を身につけていきましょう。
基本情報処理技術者レベルの基礎知識の習得や、案件で使用している技術・製品の知識、コーディングをするのであればプログラミング言語の基礎などが該当すると思います。
はじめの一歩
次の段階としては、ちょっとしたインプットの習慣化から始めると良いと思います。次の段階と言いましたが、「なにはなくとも」の習得と並行して実施するのももちろん OK です。
プライベート時間の制約がある人は、業務時間のちょっとした空き時間で確認できるところから始めてみるのが良いでしょう。
技術系サイトの新着記事を読む
例えば「日経 xTECH」や「@IT」などにユーザー登録すると、定期的にメールが配信されます。 このメールの興味のある記事をチェックしてみる、とかはとっつきやすいかと思います。
雑誌の購読
「日経コンピュータ」や「Software Design」などの技術情報誌を定期購読し、読んでみます。会社で定期購読できるのであれば、金銭的にも行動しやすくなるので、ぜひ活用してみましょう。
SNS 等
「技術系サイトの新着記事」と同カテゴリですが、最近は SNS でも記事情報の発信をしているものも多いです。そういったチャネルをチェックするようにするのも良いです。良し悪しはありますが、さらに周辺の情報も流れてきやすくなるので、よりアンテナを高くすることができるようにもなります。
RSS
好みのサイトで RSS が配信されている場合は、RSS リーダーでチェックしていくとタイムリーにチェックできるのでオススメです。別途ツールやサービスが必要なので、他の項目よりは少しだけハードルが上がるかもしれません。
大事なこと
最初のステップでは、まず 「最新情報に触れる」ことについて習慣化すること を第一歩にしましょう。
日経の CM ではないですが、この「コツコツ」が後々に大きな差を生んでしまうことが多いです。本当は手段が目的化してはいけないですが、最初のうちは着実に実行できたらヨシくらいの目標感でも良いと思います。
発信してみよう (1)
インプットが習慣化できたら、そのインプットを基にアウトプット (情報発信) してみましょう。「こんな記事があって勉強になった!」などの小さいことからでも十分です。
チームに発信するのが気後れする場合は、まずは同期などの仲の良い集まりでも OK です。一緒に切磋琢磨する・リアクションがある集まりの方がモチベーションも続きやすいと思います🤗
プライベート時間の活用 (1)
次にハードルが来るのが、プライベート時間での勉強です。
プライベート時間の活用というマインド
賛否両論ある記事だと思いますが、まずはこちらを読んでみてほしいです。プライベート時間の活用の話では比較的有名な記事だと思います。
どうでしょうか? 「まぁ、プライベート時間は絶対に使いたくない、ってほどではないかな…」という感覚でしょうか?
まずは上記以上の感覚を持っていないと、プライベート時間の活用は無理強いになってしまい効果的な成果が得られにくくなってしまうと思うので、そういう場合は無理をしない (させない) ようにした方が良いかと思います。
人生は人それぞれ。悪い意味ではなく、「そういう人」なのです。無理はやめましょう。
#いくら「○○というアニメ良いよ!見なよ!」と言われても、興味が無ければ見る気ゼロですよね。頑張って少し見たとしても、そこで良さが分からなければ続きを見る気にはならないですよね。それと似ていると感じます。
なお、昨今いわゆる VUCA の時代、そもそも社外の時間で勉強しないこと自体が世界的に見るとおかしい、危機感を持った方が良いという感覚も大事だと思います。
無理強いは NG であるとは思いますが、一度けしかけてみるのはアリかと。
読書
さて、少しならプライベート時間も活用して良いと思ったら、「はじめの一歩」のことを広げていくか、読書の時間を増やしていくと良いと思います。
IT エンジニアの話ではないですが、読書時間は「社会人の約 7 割は 1 日 30 分未満」という調査があります。
IT エンジニア界隈はもう少し読書時間は多いのではとは思いますが、それでも習慣化できている人の方が少ないかもしれません。それだけで立派な習慣だと思います。
プライベート時間の活用 (2)
軽めの読書以上にプライベート時間を使えるという状況であれば、色々と手を出してみましょう。
以下の活動は人によって「合う」「合わない」があると思っています。直接的に仕事ではないので、自分の合う活動から始め、継続していきましょう。
もちろん、時代の移り変わりによって効果 (コスパ・タイパ) が薄くなる活動も出てくると思います。定期的に振り返る時間を作ることも大事だと思います。
セミナ・カンファレンスへの参加
コミュニティ主催のセミナやベンダの各種カンファレンスに参加してみましょう。
「アーカイブで見ればいいや」というのは、情報収集の面ではその通りな部分もあるのですが、オンサイトで「技術話に満たされた雰囲気を感じる」とか「その分野の有識者と会話できる」というのは意外とモチベーションに繋がるかもしれません💪
一日一本の動画を見る
AWS Black Belt Online Seminar など、現在は動画でノウハウを提供するコンテンツも多くなっています。こういうコンテンツに触れる習慣を増やすのも良いと思います。
ウォッチする範囲を広げてみる
今までの自分の得意領域以外にも、ウォッチの範囲を広げてみましょう。
Windows だけでなく Linux、Azure だけでなく AWS など、技術を横に広げていくも良し。インフラ技術だけでなくフロントエンド技術など、レイヤを広げるもよし。技術領域だけでなくビジネス領域に広げるのも良いです。
なお、元の情報にあたるのも大事ではあるのですが、まずは様々な情報の中からキュレーションしてくれるインフルエンサーをフォローするだけでも良いと思います。時間は有限ですしね!
発信してみよう (2)
ブログとか
まだまだブログは発信の場として有効だと思います。個人ブログでも良いですし、Qiita や Zenn などのプラットフォームもアリです。
「そこまでのネタは無いし…」や「誰か既に公開しているし…」「そこまで技術力ないし…」という口上は "あるある" なのですが、最初は 「そんなの気にするな」 と言いたいです。
まずは「やってみた」ログでも良いのです。もし何かに詰まって解消できたら、それはもう十分にアウトプットできるネタだと思います。同じエラーを踏んで困っている人がいるかもしれませんよ?
そして大事なのは、自分が書いている途中に「あれ、これってどうなんだろう🤔」と思ったこと、知的好奇心を大切にすることです。時間があれば深追いして、それをアウトプットに加えましょう!
勉強会とか
勉強会などでの登壇もチャレンジしてみることをオススメします。オープンな場でなくても、社内イベント等で登壇の機会があれば手を挙げてみましょう。短時間の LT などは取り組みやすいと思います。
ちなみに、「できるだけ短い時間… 5 分くらいの…」と思うかもしれませんが、5 分って相当短いので、逆に話す内容・時間配分に悩んだりするかもしれませんw
「育成」から「能力開発」へ
ここまできたら、基本的なマインドは培われていると思います。
日々、勉強だし、やりたいことも増えるし、時間は有限なので捨てるものも必要だし… と、色々と悩みも増えるかもしれません。
でも、前向きに活動できるんじゃないかな、まさに「能力開発」をしているんじゃないかな、と思います🤗 一緒に頑張っていきましょう!💪
おわりに
自動化技術の出現や DX の浸透など、エンジニアに求められるスキルは少しずつ変わってきており、生き残るためには個々人でも成長戦略が必要になっていると思います。
立場的には育成を任されることの多い昨今、この話は日常的に考えていきたい永遠のテーマですね。
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