IT読書記録「コンピュータサイエンス探偵の事件簿」
最近読んだ主にIT関連の本を紹介する。必ずしも全章よんでいない。
タイトル
コンピュータサイエンス探偵の事件簿
~データ構造と探索アルゴリズムが導く真実~
基本情報
著者:Jeremy Kubica
訳:鈴木幸敏
発行元:O'Reilly Japan
発行年:2018年
価格:2500円+税
概要
元刑事の探偵がとある盗難事件の推理をするというお話。
彼の元上司である刑事が、助けを借りに来るところから始まるという王道ストーリー。
この本の特徴は、世界観。登場するすべてが、プログラミングとアルゴリズムに関するもので命名、形容されている。舞台となる町は、配列やソートの考え方によって効率化、プログラム化されたモノであふれている。
また、科学技術的にはすこし古いような描写だが、魔術師も登場するので呑み込めなくもない。
登場人物一覧に「クラノック夫妻:配列の好きな牧場主」と書いてある本はなかなかないのでは?
ポイント
一応データ構造と探索アルゴリズムの本なので、線形探索、二分探索などが物語に絡めて解説される。たとえば、入港順に並んでいる船の中から、19時間前に入港した船を2分探索でみつけるといった感じ。探偵が何かを「調べる、探す」行為をアルゴリズムでいうところの「探索」とうまく結びつけるように物語をつくっているのだと思われる。
章の区切りごとに各探索アルゴリズムに関する説明がコラムの用に追記されていて、話に登場した概念をより固く理解できる。
印象に残った点
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上でも述べたが、登場人物が特徴的である。
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クラノック夫妻:配列の好きな牧場主
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エクスポネンシャス:王国の転覆を謀る魔術師
このネーミングはうまいと思った。おそらく「指数関数的」という英語からとっているのだと思われ、その急上昇ぶりから「指数関数的増加」は恐ろしさの形容に使われることがあるので。
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魔術師の登場
普通に難局を乗り切るために魔法という飛び道具をつかっていた。読み始めは少なくとも世界観の理解の妨げとなった。わたしは。
感想
知らない人にはさっぱりなアルゴリズムの世界を、ナラティブに紹介しようとする試み自体はとても面白いと思った。それを志す上でのヒントになりそうな本。技術書と小説でいうと、小説の色合いが強い。
ただやはり、コンピュータサイエンスの世界を現実の事例に結び付けて説明するのは難しいのかなと感じさせられた。初学者におすすめかといわれると悩む。
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