Cursorで作るDDD Todo アプリ:AIとの対話で深めるドメイン駆動設計の理解
背景
C# でドメイン駆動設計(DDD) の勉強を始めました。
ドメイン駆動設計入門 ボトムアップでわかる! ドメイン駆動設計の基本を半分程度読んだ程度ですが、実際のコードベースでも、内容を振り返り理解を深めたい
と思うようになりました。
そこで、Cursor の Agent 機能を活用して DDD の観点で Todo アプリを作成しました。
このアプリを「学習教材」として、「どのファイルがどの DDD 概念を表現しているのか」「データはどのように各層を通過するのか」といった具体的な質問を AI に投げかけながら、DDD の理解を深めていきました。
本記事では、実際に作成した Todo アプリの作成過程(プロンプト)、作成したアプリのソースコード、DDD に関する質問・回答を共有します。
DDD を学んでいる方、特に「実際のコードベースでどう表現されるかを見てみたい」と思っている方の参考になれば幸いです。
作成した TODO アプリ
詳細は、以下 GitHub リポジトリの README を参照してください。
作成時のプロンプト
Cursor の Agent 機能を活用して、以下プロンプトを投げています。
# 実施してほしいこと
- ドメイン駆動設計(DDD)の観点で、todo アプリを作成してください。
# 目的と背景
- DDD の勉強を始めたのですが実際に DDD の観点で Web アプリを作成し、出来上がったものを確認して理解を深めたいと考えています。
- 私は csharp や ts 初学者で、基本構文などを勉強してきました。(spabase は未経験)
- 作成したソースコードには適宜コメントを入れていただき、初学者が見たときにわかりやすいようにしてください。
# 技術スタック
- フロント: react, TS
- バックエンド: csharp(.net9)
- DB: Spabase
- デプロイ: Vercel
## フロントエンドについて
- 利用するコンポーネントライブラリは shadcn/ui を採用してください
- eslint を採用してください
## バックエンドについて
- ドメイン駆動設計を採用してください
## DB
- 作成するにあたって、必要な情報があれば提示するのでコメントしてください。
# 作成 Directory
- 現在、~/project/csharp-todo-app という Directory がワークフォルダになっています。ここにプロジェクトを作成してください。
DDD に関する質問と回答
現状では、以下のような質問を実施しています。
実際には回答を Todo アプリの README.md に追加して後から確認できるようにしています。
※回答は長いので、アコーディオンで折りたたんでいます。
DDD の観点で、どのようにアプリが実装されていますか?
回答
ドメイン駆動設計(DDD)の実装
このアプリケーションは、ドメイン駆動設計(DDD)の原則に基づいて構築されています。以下に各レイヤーの責任と実装の詳細を示します:
プロジェクトディレクトリと DDD レイヤーの対応
backend/
├── Domain/ - ドメイン層
│ ├── Entities/ - エンティティクラス (Todo.cs)
│ └── Repositories/ - リポジトリインターフェース (ITodoRepository.cs)
├── Application/ - アプリケーション層
│ ├── DTOs/ - データ転送オブジェクト (TodoDto.cs など)
│ └── Services/ - アプリケーションサービス (TodoService.cs)
├── Infrastructure/ - インフラストラクチャ層
│ └── Repositories/ - リポジトリ実装 (SupabaseTodoRepository.cs)
└── Presentation/ - プレゼンテーション層
└── Controllers/ - API コントローラー (TodosController.cs)
フロントエンドは主にプレゼンテーション層の役割を担い、以下のディレクトリ構成になっています:
frontend/src/
├── components/ - プレゼンテーション層 (React コンポーネント)
│ ├── TodoForm.tsx - Todo 作成フォーム
│ ├── TodoList.tsx - Todo リスト表示
│ └── TodoItem.tsx - 個別 Todo アイテム
└── lib/
└── api-client.ts - バックエンド API とのインターフェース
レイヤー間の依存関係
- ドメイン層は他のどのレイヤーにも依存しない(内側レイヤー)
- アプリケーション層はドメイン層に依存する
- プレゼンテーション層はアプリケーション層とドメイン層に依存する
- インフラストラクチャ層はアプリケーション層とドメイン層に依存する(依存性逆転の原則)
ドメイン層
役割:
- ビジネスロジックの中核
- エンティティとその振る舞い
- 不変条件の実装
- 値オブジェクト
対応ディレクトリ: backend/Domain/
主要ファイル:
-
Todo.cs
(エンティティ) -
ITodoRepository.cs
(リポジトリインターフェース)
実装詳細:
-
Todo エンティティ:
- ID、タイトル、完了フラグ、作成日時、ユーザー ID の属性を持つ
- プライベートセッターでカプセル化を実現し、不変性を保証
- ファクトリメソッド
Create()
で新しい Todo を作成 - タイトル変更、完了/未完了の設定、完了トグルなどのドメインロジックを実装
-
ITodoRepository インターフェース:
- データアクセスの抽象化を提供(永続化の詳細からドメインを分離)
-
GetAllAsync()
: すべての Todo を取得 -
GetByIdAsync()
: 特定 ID の Todo を取得 -
AddAsync()
: 新しい Todo を追加 -
UpdateAsync()
: 既存 Todo を更新 -
DeleteAsync()
: Todo を削除
アプリケーション層
役割:
- ユースケースのオーケストレーション
- 入力検証とビジネスルールの適用
- トランザクション管理
- ドメインオブジェクトと DTO の変換
対応ディレクトリ: backend/Application/
主要ファイル:
-
TodoService.cs
(サービス) -
TodoDto.cs
,CreateTodoDto.cs
,UpdateTodoDto.cs
(DTO クラス)
実装詳細:
-
DTO オブジェクト:
-
TodoDto
: 表示用の完全な Todo 情報 -
CreateTodoDto
: 新規作成時に必要な情報 -
UpdateTodoDto
: 更新時に使用する情報(部分更新可能)
-
-
TodoService:
- リポジトリを注入し、アプリケーションロジックを実装
- ドメインエンティティと DTO の相互変換
- 入力検証とビジネスルールの適用
- 各操作の実装:
-
GetAllTodosAsync()
: すべての Todo を DTO に変換して返却 -
GetTodoByIdAsync()
: ID 指定で Todo を検索、存在確認 -
CreateTodoAsync()
: 入力検証後、Todo エンティティを作成 -
UpdateTodoAsync()
: ID 検証と部分更新の実施 -
DeleteTodoAsync()
: ID での削除と存在確認 -
ToggleTodoCompletionAsync()
: Todo の完了状態を切り替え
-
プレゼンテーション層
役割:
-
ユーザーインターフェースとの対話
-
API リクエスト/レスポンスの処理
-
データの表示フォーマット
対応ディレクトリ: -
backend/Presentation/
(バックエンド) -
frontend/src/components/
(フロントエンド)
主要ファイル:
TodosController.cs
-
TodoForm.tsx
,TodoList.tsx
,TodoItem.tsx
インフラストラクチャ層
役割:
- データアクセス
- 外部サービス連携
- 永続化
- キャッシュなどの技術的関心事
対応ディレクトリ: backend/Infrastructure/
主要ファイル: SupabaseTodoRepository.cs
(リポジトリ実装)
CRUD の処理別に、DDD の観点でデータフロー図を作成してください
回答
DDD アーキテクチャに基づく CRUD 操作のデータフロー図
各 CRUD 操作におけるデータの流れを、DDD の各レイヤーを中心とした視点でのデータフロー図を以下に示します。これにより、DDD アーキテクチャでのデータのライフサイクルと各レイヤーの責任範囲が明確になります。
新規 Todo の作成(Create)- DDD 視点
Todo リストの取得(Read)- DDD 視点
Todo の更新(Update)- DDD 視点
Todo の削除(Delete)- DDD 視点
依存関係逆転の原則を表現している場所はどこですか?
回答
依存関係逆転の原則(DIP)の実装箇所
このプロジェクトでは依存関係逆転の原則が以下の箇所で明確に表現されています:
-
ドメイン層でのインターフェース定義
-
backend/Domain/Repositories/ITodoRepository.cs
でリポジトリのインターフェースを定義 - このインターフェースはドメイン層(内側のレイヤー)に属している
namespace TodoApi.Domain.Repositories { public interface ITodoRepository { Task<List<Todo>> GetAllAsync(); Task<Todo> GetByIdAsync(Guid id); Task<Guid> AddAsync(Todo todo); Task<bool> UpdateAsync(Todo todo); Task<bool> DeleteAsync(Guid id); } }
-
-
インフラストラクチャ層での実装
-
backend/Infrastructure/Repositories/SupabaseTodoRepository.cs
でインターフェースの実装を提供 - 低レベルのインフラ層がドメイン層(高レベル)で定義されたインターフェースに依存する形になっている
namespace TodoApi.Infrastructure.Repositories { public class SupabaseTodoRepository : ITodoRepository { private readonly Client _supabaseClient; public SupabaseTodoRepository(Client supabaseClient) { _supabaseClient = supabaseClient ?? throw new ArgumentNullException(nameof(supabaseClient)); } public async Task<List<Todo>> GetAllAsync() { // Supabaseからデータ取得の実装 // ... } public async Task<Todo> GetByIdAsync(Guid id) { // Supabaseから特定IDのデータ取得の実装 // ... } // 他のメソッド実装... } }
-
-
アプリケーション層でのインターフェース利用
-
TodoService
が具体的な実装ではなくITodoRepository
インターフェースを参照
private readonly ITodoRepository _todoRepository; public TodoService(ITodoRepository todoRepository) { _todoRepository = todoRepository ?? throw new ArgumentNullException(nameof(todoRepository)); }
-
-
DI コンテナでの依存関係登録
-
Program.cs
でインターフェースと実装の関連付けを行っている
builder.Services.AddScoped<ITodoRepository, SupabaseTodoRepository>();
-
この設計により、ドメイン層はデータアクセスの実装詳細に依存せず、将来的にデータアクセス方法が変わっても(例:別のデータベースに変更)ドメイン層のコードに影響を与えずに対応できる柔軟性を実現しています。
質問は今後も追加予定・・・
回答
更新履歴
日付 | 内容 |
---|---|
2024/04/21 | 質問と回答追加: 依存関係逆転の原則を表現している場所はどこですか? |
2024/04/21 | CRUD 操作の全機能実装完了 |
2024/04/14 | 記事初版公開 |
まとめ
ドメイン駆動設計入門 ボトムアップでわかる! ドメイン駆動設計の基本を読んで、なんとなく理解した部分を、実際にコードベースで確認する事で解像度を上げることができました。
引き続き、本を読み進めていく中で、DDD の理解を更に深めていこうと思います。
また、学習スタイルとして、何かベースとなる書籍などで学びつつ、AI を活用してアプリを作成して全体をつかみ、掘り下げた質問を AI に投げることで、理解を深めていく今回の方法は学びが多いと感じました。(まだ検証中ではありますが。。。)
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