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新しいことを普及するために。

2021/07/25に公開

はじめに。

最近、組織になかなか新しいことが普及しない、素晴らしい・とてもよいことなのに残念だ、どうしたらよいかという声を最近ちょくちょく聞いて、ちょっと頭に残っている。それだけ新しいこと・普及したいことに取り囲まれているんだなぁ、幸せだなぁと感じている。
思い起こせば、今までも50数年、そうだった。これは普及していくだろうなぁと思ったことは、不思議と当たった [1]
で、あたらめて今まで組織に普及したこと・定着したことをあれこれ思い出し、徒然なるままに頭の体操がてら書いてみる。記憶ベースで書くので日時は不正確、うろ覚え。万が一、もし反響があったらもう少し正確になるように書きなおそう。

新しいことが普及することには20年、30年はかかる

インターネットが朝日新聞にのるようになって20年、オープンソースソフトウェア(OSS)となるとインターネットより遅かって30年くらいじゃないかな。まあ、そんなくらいはかかるもんです。
基本的なこと、社会に広く普及するようなことはなおさら。

自分が最初の当事者か2〜3番目の人で、夢中になって楽しいと感じられたらなぜか普及する

インターネットもOSSも、もっと専門的なところでいうと CI(Continuous Integration)も一番最初に実際に試してみたり活動してみたりして本当に楽しかった。支持している人が増え、仲間が増えていくさまはうれしかった。
正直、普及した時間は気にしたことがなかったです。確かに最初はなかなか普及しないものですが、ある日爆発的に増えていったので、そういうものじゃないかなと思っています。

自分が切実に身近に感じる30人程度を相手に、普及に勤める

ソフトウェア設計と違い、組織の場合30人以上のことを考えると、主語が大きくなり、どうしても話が抽象的で曖昧になりがち。どんなに多くても30人程度、顔がみえる人々が幸せになれるかを考えた場合はうまくいった。とくに、なんとかしたい、切実に感じられたときはうまくいったと思う。

たった30人かと思われるかもしれない。
でも、その30人の中の数人からまた30人、さらに30人と増えていけば最高じゃないですか。

普及したら、言い出した自分の名前をもう憶えていない。皆が最初の人だと感じたら絶対普及する

というわけで、ネズミ算的に繰り返して10世代くらいになったら、もう誰も最初に普及を始めた あなたの名前は憶えていません。皆自分が普及させたものだと思っている。
それでいいんじゃないかな。

普及させるための手(引き出し)は、48手もある

これはFearless Change アジャイルに効く アイデアを組織に広めるための48のパターンという本の受け売り。普及するためにはそれだけ あの手・この手の引き出しがいる。実際には亜流含めもっとあるだろう。

ただ、一度に全部引き出しをもつ必要はない。
たまに 今自分がどんな引き出しを使ってやっているか ふりかえってみてみるとよい。そうすると「こんなに増えているんだ」と驚くと思う。
また、「ちょっとやり方が同じパターン化しているな」と感じるかもしれない。そんなときには、違うパターンを意識的にとりいれてみるとよいかもしれない。
監訳者の川口恭伸さんのブログに Fearless Change のチートシートというのがある。チートシートという言葉に馴染みがない人もいると思うので補足しておくと、一覧表・カタログみたいなもの。この一覧表を仲間で眺めてみて、今どんな手がうっているのか、うまくいっていない場合は手に偏りがないか ふりかえってみると楽しいし、まなびも深くなるだろう。

新しいこと、その言葉をそのまま使わない、架け橋になる言葉を使う

聞き慣れない、新しい言葉を聴いたとき、どうしても人は身構え、受け入れにくくなってしまう。そんなときは多少間違っていてもよいので、相手の中にある言葉を使う。

例えば、上記のチートシートがそうだ。
「チートシートです、ぜひ使ってください。」というよりも、「一覧表、いってみれば通販生活のカタログみたいなもんです。一度眺めてみてやってくださいね (^^)」という方が、どちらが相手の人がみてくれだろうか。通信販売やっているひとならなおさら、後者じゃないかな。
世の中ベースで言葉が普及し出したら、もしくは組織内で完全に定着したら、実はここでやっていることはこの言葉のことだったんだと種明かしをすればよい。マジックの種明かしはわかってしまうとつまらないが、新しいことのこの「種明かし」はみんなが気づいたときが最高の瞬間、本当に楽しい。

新しいことを普及する際に、本当に定着したいことは何か常に考える

正確な言葉を使って普及していないのだから、その組織内に本当に定着させていきたいことは何かを常に考えていく必要がある。
自分が好きな言葉に「虎は死して皮を残す」という言葉がある。
その皮が何か、全部が全部残せないとして、何が残るかを考えて行動することは、普及を始めた人の責務じゃないかな。

さいごに。新しいことを普及させること、それは敗者なき最高のゲームだ。

ゲーム感覚で楽しんでいこう。
サッカードイツ代表を象徴する言葉で「ゲルマン魂」というのがあります [2]
その新しいことが本物で楽しいものだとしたら、最後までにゲームを諦めず、虎視眈々と、この手はダメだったか、じゃ次の手はどうだと、しつこく・しつこく。

あきらめたら そこで試合終了ですよ。

脚注
  1. 手前味噌かもしれないけど。 ↩︎

  2. ローターマテウスやユルゲン・クリンスマンが好きだったんです。 ↩︎

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