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読書メモ:『ピープルウエア第3版』第 Ⅲ 部「人材を揃える」

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このメモについて

  • これは要約

これは本文の引用

これは本文の独立した太字テキストの引用(本書のメッセージに関わる部分)

→ 自分からのコメント

第 Ⅲ 部 人材を揃える(pp.105-106)

  • 近代の経営学においてマネージャーの役割は戦略家、戦術家としてとらえられ、人々の個性や才能に関心を持たない
  • 第 Ⅲ 部ではこの考えを改め、次の原則に基づいて確実な成功を得るやり方を考える
    • 人材を揃える
    • 人々に満足感を与え、辞めないようにする
    • 人々を束縛から解放する

第14章 ホーンブロワー因子(pp.107-112)

  • 人材を揃える

    • C・S・フォレスターのナポレオン戦争を題材にしたシリーズ小説に登場する将校ホーンブロワーは究極のマネージャーであり、役立つ部下を見抜いて活用する才能があった
    • マネージャーが部下の本質を変化させる影響力を持たないのは当たり前なので、最初から仕事に向いている人を揃えることが重要
    • 採用スキルを上げるには、組織が潜在的に押し付けている「標準」という無意識の圧力を恐れることを克服し、同じような社員を採用しない必要がある
  • 標準的服装

    • 力のあるマネージャーはメンバーの成果を誇りに思うのものであり、服装を一向に気にしない
    • これまでのいくつかの改善の提案に意味がなくなるくらい、(制服を含む)服装規定は個人から自由裁量の余地をかなり奪い、会社を手遅れにする

→ 制服着たら仕事できるようになるわけじゃないもんね。そんなら喜んで買うよ。

  • 「プロ」
    • 自信のない中間管理層は、標準から外れた行為に不安を感じるので、そこが顧客と接しない内部の部門であれ、均質化された規則を押し付けることで支配関係を表現する
    • プロらしくないという言葉は不安の表明である
    • プロフェッショナルという言葉は同じように見える人に対して適用される

→ プロらしくない(笑)。「だらしがない」という巧妙な言い換えもございましてよ(笑)。

  • 企業エントロピー
    • 企業のエントロピー(=均質性)は、態度、外見、および思考過程の画一性であり、増え続ける
マネジメントにあてはめた熱力学の第二法則:
エントロピーは組織内では常に増加する

[本来の熱力学の第二法則:高温物体から低温物体へ
熱が流れる減少は、不可逆であって元には戻せない]
  • 続き
    • これが、古い企業の多くが若い企業より管理が厳しくて面白くない理由
    • 成功するマネージャーは自部門の均質性を撹乱し、標準からかけ離れた人材を集める

→ 会社が社員を同じようにしたがる理由の一端には、社員を会社ブランドのパーツとみなす向きがあるように思う(やっぱりモノ扱いじゃん)。不衛生なのは論外というなら分かるけど、結局のところ「生産性と何か関係があるんですか?」という問題に行き着きそう。不衛生は生産性と相性悪そうだからね。

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第15章 リーダーシップについて話そう(pp.113-117)

あの忌々しい「動機づけ」ポスターの一つは、「リーダーの速度が群れの速度を決める」とのたまう。


†LEADERSHIP†

→ Succesories 社が 1985 年から制作しているポスター「Motivational Posters」のこと。もしかすると派生したネットミーム "Demotivational Posteres"(デモチ)の方が有名かもしれない。「動機づけ」ポスターという訳もなんだか回りくどいので、「モチベポスター」と呼んでおく。格言はラルフ・ワルド・エマーソンのものらしい

  • リーダーシップ
    • モチベポスターが言うようなリーダーシップは、部下の仕事の質を問わず、量を増やすことが目的であり、権限と地位上の権利をその道具にする
    • 最良のリーダーシップは仕事を引き出すのではなくサービスであり、地位上の権威を持たない人が発揮することが多い
    • それには次のことをしなければならない

・自ら仕事を引き受ける。
・明らかにその仕事に向いている。
・あらかじめ必要な準備を済ませ、万全の態勢で仕事に向かう。
・全員に最大限の価値を与える。
・ユーモアと明らかな善意のもとに事にあたる。

  • リーダーシップとイノベーション
    • 最良のリーダーシップの発揮はイノベーションを引き起こす
    • 最良のイノベーションが成果を出すには反抗が必要になる
    • 例えば……

・社員は全員 100% 仕事に追われており、イノベーションのための時間など与えられていない。
・ほとんどのイノベーションは、変化への対応を迫られるため、どのような形でも歓迎されない。
・本物のイノベーションは、イノベーターの周囲を越えて広がっていくため、イノベーターは下から組織を動かすのではないかと疑われがちだ。上層部は、とかく疑念をふくまらせてこのようなものの見方をしがちである。

→ 本文中で何度も出てくる「上層部」は原文では "upper management" であり、上級管理職=経営幹部を指している。中間管理職=マネージャーとの対比だろう。

  • 続き
    • イノベーションを起こしたいのであれば、その担い手を通常業務から引き離し、組織改革を強力に進める
    • リーダーシップについて何か言ってる暇があったら(あなたが)やれ(原文:The Talk and the Do)

→ サービスとしてのリーダーシップの話は、ボランティアといえばしっくり来る。真に良いリーダーシップはボランティア的なものなのかもしれない。マネージャーの仕事はボランティアを助けるものであって欲しい。
→ 暗に、社内の地位は使役関係を表すものじゃないぞ、と言っているように読んだ。マネージャーはマネージャーの役割が、プログラマーにはプログラマーの役割があるということだろうか。

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第16章 ジャグラーを雇う(pp.118-123)

  • ポートフォリオ

    • 開発部門のマネージャーは、技術者、設計者、プログラマー、グループリーダーなどを採用しようとする時、なぜか過去の仕事のサンプル(ポートフォリオ)を見ようとはしない
  • 適性検査

    • 適性検査は採用直後に典型的な左脳を使う仕事を対象としていて、その後の右脳を使う仕事の適正はわからないので、採用に使うのはよくない
    • 社員の自己評価には役立つ(詳しくは第 37 章)
  • オーディション

    • 応募者に、過去の仕事について 10分〜 15分で発表してもらう
    • 発表テーマの例
      • 新技術を初めて試した時の苦労
      • 苦労を通じて得られたマネジメント上の教訓
      • 興味のあるプロジェクト
    • 組織の業務と密接に関係あることを話すように念を押す
    • 開催理由をよく伝えておく
      • コミュニケーション能力を見るため
      • 採用面接に同僚となる人を参加させるため
    • 終了後、各人が仕事への適正やチームにうまく適応できるかについてコメントする
    • 採用者はチームにスムーズに受け入れられる可能性が高い

→ プログラマーは実力さえあれば、いや、実力だけあれば良いとか偉いとか、そんなふうに思っていた時期が私にもありました。

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第17章 他者とうまくやっていく(pp.124-126)

  • 異なるルーツを持ったチーム・メンバーをまとめるのは難しいが、メリットもある

  • ソフトウエア産業への女性進出

女性たちは、新しく進出した産業に、労働時間だけでなく、はるかに多くのものを与えた。彼女たちは、チームの編成方法やチームメンバーのやり取りの形を変えた。彼女たちは、バレー、育児、家族関係の新しいイメージで、私たちの古臭いスポーツのたとえ話を補ってくれた。彼女たちがマネージャー層に移ると、私たちの同僚のシーラ・ブレイディが「スカートマネジメントの座」と呼ぶ新しいスタイルのマネジメントを導入した。今日では、全員が男性のチームは、底が浅く、エネルギーがフルに充填されていない感じがする。女性は、この産業を大きく変えた。

  • 多国籍・多文化な食事とチーム形成
    • さまざまなメンバーが出す料理を楽しむのと同様に、かれらの仕事のやり方、思考形態、コミュニケーション方法も尊重する必要がある

私が参加したあるチームでは、月に1度、「エスニック料理でランチ」というイベントを始め、あまりにも好評だったので、月に2度するようになった。料理は、さまざまな出身のチームメンバーが準備してくれるもので、どれも少しエキゾチックだった。――Timothy Lister

  • 増えていく契約プログラマーに受け身でいる限り、チームは結束できないし、人々は確実にチームにならない

→ 同じような人を採用しない、という話の延長線上にあるテーマだと思う。「いやいや同じ日本人でも相当違うんじゃないか?」「それが男性でも違うんじゃないか?」と疑問が湧いたら、いっぺん所属を思い浮かべてみてから考えた方がいいかもしれない。ジェンダー、国籍を始めとする多様性(diversity)の確保は、同じだと思っていた人々が意外と同質ではないという、当然だけれども注意を向けてこなかったポイントへの気づきを与える機会を積極的に作るのかもしれない。ここでいう diversity を、名目上の属性が色々であること(variety)と混同してはいけない。

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第18章 幼年期の終わり(pp.127-130)

  • テクノロジーと環境
    • テクノロジー:成長期にはなかったが今はあるもの
    • 環境:成長期にすでにあったもの
    • ある世代のテクノロジーは次の世代の環境となる

極端に単純化して言えば、社内の新しい世代的断絶は、注意の向け方である。若い人々は注意を多方面に分散させるのに対し、年長の同僚たちは、1つか、多くても2つまでの仕事にかかりきりになる。

iPod で音楽を聞き、テキストメッセージの洪水が送受信され、24時間オープンの SNS サイトがあり、歴史の宿題のウィンドウの横に、ときどきビデオゲームが表示される。このような環境のなかで育ってきた世代は、マイクロソフトの元バイスプレジデント、リンダ・ストーンが「継続的な注意の分散」と呼んだ特徴を備えている。

  • 新世代の経験する環境が備える「継続的な注意の分散」という状態はフロー状態の逆
  • フロー状態に入れないエンジニアは力を出せないだけでなく、様々な世代で構成され結束したチームになじめない
  • 労働契約を説明することで、制限範囲を越えた継続的な注意の分散は許容されないことを理解してもらおう

→ 章末にはeメールの話が入っていて「新世代は生産性よりも帯域幅を尊重する」という要約を考えたけど意訳が過ぎる気がするので、コメントレベルで書いておきます。
→ Teams、ChatWork、Slack といったビジネスチャットツールで「通知」の行き先や頻度に配慮してコミュニケーションをとる必要性がなんとなく分かった。全章までを踏まえれば、経験した環境の違う世代の人々を尊重することになるし、未来の自分を尊重することにもなるのだろう。いつまでも若くない。

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第19章 ここにいるのが楽しい(pp.131-140)

  • 簡単なクイズ(社内の誰かが答えられれば合格)

    • 質問1:あなたの会社のここ数年の年間退職率はどのぐらいでしたか?
    • 質問2:辞めた人を補充するのに、一人当たり平均どのぐらいのコストがかかっていますか?
  • [1] Bartol(1983) の調査

    • 年間退職率:33〜80%
    • 平均在職期間:15〜36ヶ月
  • 退職の隠れたコスト

    • 社員の退職は目に見える部分だけで全人件費の 20% のコストを費やす
  • 退職率の高い企業で起こること

    • 社員は短期的に物事を考える傾向がある
    • 優れた人材を辞めさせないために早く昇進させる
    • 社員の 85% が管理担当、15% が作業担当という頭でっかちな人員構成で、その底辺には非常に軽量な人材が配置される傾向がある
    • 退職率の低い会社では、勤続 10 年でやっと昇進する

→ 退職は目に見えるコストに加えて目に見えない深刻な影響を会社にもたらす

  • 退職率 30 % 以上の会社の退職理由

・腰掛けメンタリティー:この仕事を長く続けようという雰囲気を同僚がかもし出さない
・使い捨てにされる予感:経営者が社員を交換できる部品としか考えない(退職率が高くなれば、なくてはならない人はいなくなる)
・会社への忠誠なんて馬鹿ばかしい、という意識:人を部品と思っているような組織に誰が忠誠心を持つだろうか?

  • 会社の移転に伴う弊害

    • 通常の企業経営:経営者は社員の職業生活を支配する
    • 会社の移転:経営者は社員の個人生活さえ支配する
    • 共働き夫婦に深刻な影響とストレスをもたらす
  • 最良の組織

    • 意識的にベストになろうと奮闘し、強力な結束を生む
    • ベストになることは長期的に取り組むべきことなので、ずっと勤め続けるのが当然だという感覚が広く行き渡っている
    • 退職率が最も低い会社に共通した特徴は、生涯教育プログラムの充実で、変化に必要な能力は会社が身に着けさせてくれる
    • 再教育がずっと居続ける気持ちを育て、低い退職率と強いコミュニティ感覚を生むことを認識している
脚注
  1. : Bartol, 1983.: Bartol,K. "Turnover Among DP Personnel: A Casual Analysis." Communucations of the ACM, vol.26, No.10(Octover 1983), pp.807-811 ↩︎

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第20章 人的資産(pp.141-147)

  • 社員の教育に投じた給与と経費の投資は消えてなくなる経費ではない
  • あるプロジェクトのメンバーが退職した後にやって来た入れ換えメンバーが元のメンバーの生産性に追いつくまでの作業量は、そのメンバーが会社の投資で獲得した能力や技術レベルへと入れ換えメンバーが到達するために必要な投資でもある(図 20.3 の影をつけた部分)


図20.3 メンバーの入れ換えによる生産性の低下

  • 新人アプリケーションプログラマーなら追いつくまでの期間は6ヶ月が妥当だろうが、高度な仕事ならもっと長期を見込む必要がある
  • 熟練技術者のレイオフで給与と関連経費は節約できるが、投資した金額は失われる
企業活動の目的は規模拡大であり、縮小ではない。

人への投資をきちんとマネジメントしている企業は、長い目で見ると繁栄する。知的労働者を集める会社は、人に対する投資が企業の将来に最も大きく影響することを十分認識する必要がある。

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第Ⅲ部 まとめ

第14章

同じような考え方の人を採って同じような見た目をさせると社員に悪影響だよ

第15章

リーダーシップについて一家言がある? ではまずやって見せなさい

第16章

チームになじむと判断された人を採りなさい

第17章

色々なルーツや属性の人をまとめて結束を強くするやり方もあるよ

第18章

プログラマーが本当の仕事をできる環境を理解してもらおう

第19章

長く居てもいいと思ってもらえるような施策をしなさい

第20章

社員への投資はマネジメントの対象だよ

このスクラップは2023/08/16にクローズされました