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読書メモ:『ピープルウエア第3版』第 Ⅴ 章「肥沃な土壌」

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第 Ⅴ 部 肥沃な土壌(pp.201)

  • プロジェクトやチームに影響を与える企業文化について検討する

第29章 自己修復システム

  • 決定論的システムと非決定論的システム

    • 従来すべて手作業に頼っていたシステムを自動化した決定論的システムには、手作業による非決定論的システムには備わっていた自己修復能力が失われ、運用から外して組み立て直す必要がある
    • ある程度の特例を含むような業務であれば、それを自動化すること自体が誤り
    • 人手による非決定論的システムでは、人間がシステムの本来的な目的を熟知しているし、状況に応じて必要な処理が分かるので自己修復能力がある
    • 人間のチームも決定論的になっただけ自己修復能力を失う
  • 大文字のメソドロジー(方法論)と小文字のメソドロジー(コツ)

    • 方法論:思考を一つのやり方に集約し、意味のある決定はメソドロジーの作成者が行う
    • コツ:仕事を終わらせるための基本的な取り組み方で、作業者の頭の中にある
    • 方法論の信奉は、プロジェクトメンバーがあまり賢くないのでものを考えられないだろうという考えを前提としている
  • メソドロジーによる問題

・書類書きの泥沼化
・手法の不足
・責任観念の欠如
・全般的な意欲の低下

書類書き:書類を多く書けば問題が解決するという考え方

書類の山は問題の一部であって、解決の一部ではない。

手法:よりよい手法であっても標準化された手法でなければ採用されない

責任観念:作業がうまく行かなければ人ではなくメソドロジーに問題があることになり、誰も責任を負わない

意欲:メソドロジーを押し付ける決定は、上が部下を無能だとみなすメッセージであり、それ以上に意欲を失わせることはない

  • 悪意の追従:部下は時間の無駄であることを知りながら書いてある通りに作業をしてしまうこと
  • メソドロジーの効果は方法が1つにまとまることだが、そのための方法はメソドロジーだけではない

教育研修:人は、やり方をよく知っていることを行う。もし、方法の革新的なところを全員に今日言うすれば、彼らはその方法を使うようになる。

ツール:モデリング、設計、実装、テストのための自動化ツールを使う方が、紙の規則を渡すよりも、手法の統一が実現できる

ピアレビュー:活発にピアレビューを実施する組織(QCサークル、ウォークスルー、インスペクション、技術フェアなど)があるところでは、方法が自然に統一される傾向がある

  • 標準化は、穏やかに方法の統一を進めた後で考えればよい

  • デュポン社では標準を「反復される仕事を進めるための実証済みの方法」と定義し、「実証済み」とは「デュポン社内で実際に広く成功したこと」を指している

  • ホーソン効果

    • 人は、他と違った扱いを受けることに魅力を感じ、注目されることを好み、珍しいものに好奇心をよせる効果
    • ホーソン効果をうまく活用するには標準的でないアプローチを使う必要があり、標準は簡素で緩やかで例外が認められるものにすべき
    • 新しいことをやろうとする時はパイロットプロジェクトとして行い、標準的な手法だけが使っていけない手法になる

→ 過剰な標準化は効率化をもたらす一方で、チームの自己修復能力を奪ってしまう。標準化はホーソン効果も考慮して十分に効果を検証すべき

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第30章 リスクとダンスを pp.211-

リスクマネジメントが失敗するとき、その理由は社内の政治と文化にある可能性が高い。

  • プロジェクトが抱えるリスクはそのプロジェクトの価値かもしれない
  • 自分自身が失敗するリスクについてはマネジメントし損ないがち
  • リスクマネジメントは、リスクを追い払うためではなくリスクの現実ダメージを適切に緩和するため

発現する確率が極めて低いリスクはマネジメントしなくてもまったくかまわない。しかし、どのような結果になるのか「恐くて考えたくない」リスクをマネジメントしないまま放置することはあり得ない。

  • 望ましい結果を挑戦とみなしたがるような中堅マネージャーや役員は、利益を得るためにプロジェクトを安上がりに終わらせたがり、デッドラインを早めに設定する
  • その過程でリスクマネジメントが抜け落ちると日程上の莫大なリスクがついてくる
  • このようにリスクマネジメントなしでリスクを引き受けつつ、リスクを嫌うという相反した行動は、別の著書でも問題視している