Chapter 05

確率 前編

📌 はじめに

プログラミングにおいて,処理の分岐や度合いを確率に基づいて決定することはよくあります.例えば,スマホゲームでよくあるガチャの提供割合や,AIの行動を確率によって分岐していることもあります.また,迷惑メールの判定でも確率は使われています.そして,CGでもレンダリングの計算時に確率が使われることがあります.そこで,確率を扱うときに重要な確率分布について基礎から理解できるようにまとめてみました.確率分布はモンテカルロ法によるレイトレーシングのサンプリングや,物理ベースレンダリングのライティング計算における反射の割合,分散シャドウマップ法による遮蔽計算などで出てきます.確率分布にはその特徴を表す平均値や分散というのがあり,それらを調整したり,分布そのものを変えることで結果を変えるといったことができます.

今回は,確率の基礎である場合の数からはじめ,確率分布,平均値,分散,そしていくつかの有名な確率分布について触れていきます.

と思って書いていたのですが,思った以上に長くなってしまい,また時間がかかりそうだったので前編と後編に分けることにしました.前編は確率の基礎になっています.

📌 確率の考え方

世の中に明日(未来)のことが分かる人がいるなんて思いませんし,私や皆さんも分からないと思います.明日が平日の場合,社会人なら会社に出社し,学生なら学校に行くでしょう.もしかすると休日の人もいるかもしれません.また,何かしらの原因で交通手段がなくなってしまい,駅で待つか,自宅待機になるかもしれません.明日の予定は決まっているけど,明日になってみないと予定どおりにいくかどうかはわからないわけです.

ここで,社会人に対して「あなたは明日通常どおり出社できますか?」と聞かれたらどう答えるでしょうか.まあ,ほとんどの人は「できる」と答えるでしょうね.そこで,次のような状況を考えます.あなたは,電車を使って出勤しています.最寄りの駅を使いますが,この駅から発車する電車は一日1本です.極端ですね.しかも,この電車は数日に1回は故障してその日は走行できないポンコツです.そんなところに住まないし,電車を使わずに車や自転車を使うって野暮な選択はなしです.あと,寝坊とかしないでその電車の発車に間違いなく間に合うマジメ君とします.その状況で,もう一度「あなたは明日通常どおり出社できますか?」と聞かれたらどうでしょうか.まあ,私だったら「わからない」でしょうね.では,数日に1回ではなく100日に1回故障するということでしたらどうでしょう.「多分大丈夫」と答えるかもしれません.さらに,故障が100年に1回なら「出社できる」と答えそうですね.

ここで注目したいのがある期間中に故障する回数がわかっていると,明日故障するかどうかの予測が直感的にできるということです.もちろん,実際に故障するかどうかは偶然によって決まりますし,予測がはずれることもあります.ですが,ある程度予測できるなら対応もやりやすくなります.そのための道具が 確率 です.

もし,明日の故障が高い確率で起きるということがわかっていれば,人によっては電車ではなく車や自転車を使って出社しようと考えるかもしれません.また,高い確率という表現は結構曖昧で,その確率を定量的に表現できれば,もっと的確になります.例えば,その電車について100日に1回故障したデータがあった場合,明日は 1/100 の確率で故障すると言えます.これは

\text{故障する確率} = \frac{故障した回数}{観測した日数}

と計算した値です.これを一般的にいえば,ある事象が発生する確率は

\text{確率} = \frac{ある事象が起こる場合の数}{すべての事象が起こる場合の数}

となります.先程の例でいうと,ある事象が起こる場合の数は故障した回数で,すべての事象が起こる場合の数は観測した日数ということになります.
このように確率を計算するためには,ある事象の場合の数とすべての事象の場合の数が必要です.この2つの場合の数を正確に数え上げることが大切です.

📌 集合

集合と要素

互いに識別できる「もの」の集まりを, 集合 といいます.たとえば,1から5までの自然数 1, 2, 3, 4, 5 の集まりは集合です.この場合, \{1,2,3,4,5\},あるいは A=\{1,2,3,4,5\} と表します.1つひとつを 要素 といいます.要素をまったくもたない集合のことを 空集合 といい, \phi で表されます.また,ある集合 A の要素の個数は n(A) と表します.

共通部分と和集合

集合 B の要素がすべて集合 A の要素であるとき,BA部分集合 であるといいます.そして B \subset A, または A \supset B と表します.

一般に,集合 U を全体の集合とし,この中で部分集合を考えるとき, U全体集合 といいます.部分集合 AB の要素を合わせた集合を 和集合 といい,A \cup B と表します.また,部分集合 AB のどちらにも入っている共通の要素を 共通要素 といい, A \cap B と表します.全体集合 U のうち,部分集合 A ではない要素を A補集合 といい, \overline{A} と表します.

全体集合 U,部分集合 A,補集合 \overline{A} は次のような関係になります.

A \cup \overline{A} = U, \quad A \cap \overline{A} = \phi

📌 場合の数

確率の計算において,場合の数を正確に数え上げることが大切です.実際に場合の数を数え上げる場合には,複雑で面倒な条件がついた場合の数が何通りで,その場合の数を考えたりして数え上げなければなりません.つまり,いかに場合の数を求めるかが確率計算の基本となります.まずは基礎となる2つの法則を見ていきます.

和の法則

例題:大小2つのサイコロを同時に振るとき,出る目の数の和が4または5になる場合の数

サイコロの出る目は \{1,2,3,4,5,6\} です.大小2つのサイコロの目の和が4になる出目は

2018-11-17_02h00_14

大小2つのサイコロの目の和が5になる出目は

2018-11-17_02h00_18

目の和が4になる事象を A ,目の和が5になる事象を B とします.事象 A が起こる場合は3通りです.場合の数を n(A) で表すと, n(A)=3 となります.同じように事象 B が起こる場合は4通りなので n(B)=4 です.ここで,事象 A と事象 B は同時に起こらないことがわかります.このような関係の事象は 互いに排反である といいます.
求めたい事象は「目の和が4か5になる事象」なので,この2つの事象が同時に起こらないならば,この事象が起こる場合の数は

n(A) + n(B) = 3 + 4 = 7

となります.これを 和の法則 といいます.これは3つ以上の事象でも成り立ち,一般に事象 A,B,\ldots,N があり,どの2つの事象も同時に起こらないならば,事象 A,B,\ldots,N のどれかが起こる場合の数は

n(A)+n(B)+\cdots+n(N)

となります.

積の法則

例題:伊藤,加藤,佐藤の3種類の姓と,太郎,花子の2種類の名前を組み合わせて,何通りの人名が作れるか

3種類の姓の事象を A ,2種類の名を事象 B とします.姓から1つを選ぶと,それに対して2つの名を選ぶことができます.他の2つの姓でもそれぞれに2つを選ぶことができます.結局,次のように人名が6通り作れます.

2018-11-17_02h00_25

これは,事象 A の起こり方が n(A) 通りあり,その各々に対して事象 B の起こり方が n(B) 通りあるなら,事象 AB がともに起こる場合の数は

n(A)\times n(B) = 3\times 2 = 6

になります.これを 積の法則 といいます.これも3つ以上の事象でも成り立ち,一般に事象 A,B,\ldots,N があり,事象 A,B,\ldots,N がともに起こる場合の数は

n(A) \times n(B) \times \cdots \times n(N)

となります.

例題:1, 2, 3, 4の4個数字を使ってできる整数で,各けたの数字が異なる4けたの整数は何個ありますか

1度使った数字は別のけたで使用できないことを考慮して,まず千の位で使える数字は4個全部なので4通り,次に百の位では千の位で使った数字以外の中から選ぶので3通り,同じように十の位では千の位と百の位で使った数字以外なので2通り,最後に一の位では残りの数字なので1通りとなります.表で表すと次のようになります.

2018-11-17_02h00_30

千の位,百の位,十の位,一の位での場合の数をそれぞれ事象 A,B,C,D として積の法則を使うと,各けたの数字が異なる4けたの整数の数は

n(A)\times n(B) \times n(C) \times n(D) = 4\times 3\times 2\times 1 = 24

となります.

📌 順列

ある集合について,それらを順序をつけて並べることを考えます.例えば \{雪,月,花\} という集合があったとき,

2018-11-17_02h00_38

の6通りあります.一般にいくつかのものを順序をつけて1列に並べた配列を 順列 といいます.ここで,積の法則で出てきた例題をもう一度見てみます.

例題:1, 2, 3, 4の4個数字を使ってできる整数で,各けたの数字が異なる4けたの整数は何個ありますか

この整数を列挙してみると次のようになります.

2018-11-17_02h00_43

これは4つの数字の順列になっています.ここで4個ではなく n 個の数字を使って,各けたの数字が異なる n けたの整数の数は

n\times(n-1)\times\cdots\times 3\times 2\times 1

で求まります.この式は1から n までのすべての自然数の積で n! で表し,これを 階乗 といいます.

n! = 1\times 2\times 3\times \cdots \times(n-1) \times n

例題の場合, n=4 なので

4! = 4\times 3\times 2\times 1 = 24

と表します.

例題: \{1, 2, 2, 2, 3, 4\} の数字を左から順に1列に並べてできる整数は何個ありますか

今度は6桁の整数で,同じ数字が含まれています.2が3つありますが,これら3つを互いに区別できるものとして考えると,先程の例題と同じように個数を求められるので n=6 として

6! = 6\times 5\times 4\times 3\times 2\times 1 = 720

となります.例えば 321224 という数字を選んだとき,「3●1●●4」の●をすべて区別して数えていることになります.この場合,●の順列 3! 通りを1通りとして数え直す必要があります.結局,求める場合の数は

\frac{6!}{3!} = \frac{720}{6} = 120

となります.この同じものを複数個含んだ順列を一般式で考えてみます.

例題: n 個のもののうちで, m_1 個, m_2 個, \ldots , m_k 個がそれぞれ同じ種類のものであるとき,この n 個で作られる順列の総数はいくつになりますか.ただし n=m_1+m_2+\cdots+m_k である.

求めたい場合の数を x とします.ここで, m_1 個が互いに区別できるものとして考えて並べると m_1! 通りあることになります. m_2,\ldots,m_km_2!,\ldots,m_k! とし,積の法則を使って次のように計算します.

x\times m_1! \times m_2! \times \cdots \times m_k!

この数は n 個のすべてが異なっているものとした順列の総数と一致します.よって,

x\times m_1! \times m_2! \times \cdots \times m_k! = n!

ここで,式を変形して x を求めると

x = \frac{n!}{m_1! \times m_2! \times \cdots \times m_k!}

となります.

例題:MISSISSIPPIというアルファベットを並び替えてできる単語の総数はいくつになりますか

アルファベットの総数は11個で,Iが4つ,Sが4つ,Pが2つなので, n=11, m_1 = 4, m_2 = 4, m_3 = 2 となって

\frac{11!}{4! 4! 2!} = \frac{11 \times 10 \times 9 \times 8 \times 7 \times 6 \times 5}{4\times 3\times 2 \times 2} = 34650

となります.

例題:1から6の数字が書かれたカードが6枚あります.この6枚のカードから3枚選んで並べる方法は何通りありますか

最初に1枚選ぶときは6通り,次に選ぶときは5通り,3回目は4通りとなるので

6\times 5\times 4 = 120

もし3枚ではなく4枚選んで並べる方法の場合

6\times 5\times 4 \times 3 = 360

となります.これは n 個の中から r 個のものを選ぶ場合

n(n-1)(n-2)\cdots(n-r+1)

と表せます.ここで,先程の 6\times 5\times 4

\frac{6\times 5\times 4\times 3\times 2\times 1}{3\times 2\times 1}

と変形することができます.階乗を使えば

6\times 5\times 4 = \frac{6!}{3!} = \frac{6!}{(6-3)!}

一般式にまとめると

n(n-1)(n-2)\cdots(n-r+1) = \frac{n!}{(n-r)!}

となります.順列の数は,順列(Permutation)の頭文字 P を使って

\frac{n!}{(n-r)!} = {}_nP_r

と表記します.ここで, r=0 のとき

{}_nP_0 = \frac{n!}{(n-0)!} = \frac{n!}{n!} = 1

となります.また, r=n のとき

{}_nP_n = \frac{n!}{(n-n)!} = \frac{n!}{0!}

となりますが,これは n 個のものから n 個を選んで並べる方法なので, n 個の順列の総数と同じです.よって

{}_nP_n = n!

となります.これにより 0! = 1 でなければなりません.

例題:1から9までの数字から異なる3個の数字を選んで3桁の整数をつくるとき,その総数はいくつになりますか

n=9 , r=3 なので

{}_9P_3 = 9\times 8\times 7 = 504

例題:AからZまでの26文字を使って4文字からなる単語を作るとき,何通りの単語が作れますか.同じアルファベットを複数使ってもいい.

4文字のうち,最初の文字は26通り,次の文字も26通り,他の2文字も26通り選べます.積の法則から総数は

26\times 26\times 26\times 26 = 26^4

一般に n 個の異なるものから重複を許して r 個を取り出して並べてできる順列の総数は n^r で, {}_n\Pi_r と表します.

{}_n\Pi_r = n^r

📌 組み合わせ

順列では並び順も考えて場合の数を計算しましたが,並び順は考えないで場合の数を計算することもあります.例えば,3枚のカードから3枚を選ぶ組み合わせは1通りです.これが順列なら 3!=6 通りとなります.
それでは,この組み合わせを求める一般式を考えてみます.異なる n 個のものから r 個を取り出した組み合わせの数を組合せ(Combination)の頭文字 C を使って {}_nC_r と表します.組合せの数に r! を掛ければ,積の法則より

{}_nC_r\times r!

となって,これは全体の順列の数と一致します.よって

{}_nC_r\times r! = {}_nP_r

式を変形して組合せの数を求めると

{}_nC_r = \frac{{}_nP_r}{r!} = \frac{n!}{r!(n-r)!}

となります.ここで, rn-r を代入すると

{}_nC_{n-r} = \frac{n!}{(n-r)!(n-(n-r))!} = \frac{n!}{(n-r)!r!} = {}_nC_{r}

また, n=n とすると

{}_nC_n = \frac{n!}{n!(n-n)!} = \frac{n!}{n!} = 1

例題:10枚のカードから4枚のカードを取り出したときの組合せは何通りありますか

n=10, r=4 なので,

{}_{10}C_4 = \frac{10\times 9\times 8\times 7}{4\times 3\times 2} = \frac{5040}{24} = 210

例題:1から9の数字から8個の数字を取り出したときの組合せは何通りありますか

n=9, r=8 ,また, {}_nC_r = {}_ nC_{n-r} を使うと

{}_9C_8 = {}_9C_{9-8} = {}_9C_{1} = \frac{{}_9P_1}{1!} = 9

例題:9人を3組のグループに分ける方法は何通りありますか.ただし1組の人数は2人以上とする

3つの組の人数をそれぞれ l,m,n とし,それらの組の組合せの数を (l,m,n) として表すと, (5,2,2), (4,3,2), (3,3,3) の3通りの人数の組合せがあります. (5,2,2) の場合,まず9人から5人,次に4人から2人,残り2人の組合せの総数をそれぞれ計算し,積の法則で総数を計算します.次に,2人の組が2つありますが,入れ替わっても組合せは同じなので, 2! 通り余計に数え上げられていることになります.そのため,総数を 2! で割って,調整します.

(5,2,2) = \frac{{}_9C_5 \times {}_4C_2 \times {}_2C_2}{2!} = \frac{126 \times 6 \times 1}{2} = 378

同様に (4,3,2), (3,3,3) の場合を計算します.

(4,3,2) = {}_9C_4 \times {}_5C_3 \times {}_2C_2 = 126 \times 10 \times 1 = 1260
(3,3,3) = \frac{{}_9C_3 \times {}_6C_3 \times {}_3C_3}{3!} = \frac{84 \times 20 \times 1}{6} = 280

最後に和の法則から,3組の場合の数を足し合わせて

(5,2,2) + (4,3,2) + (3,3,3) = 378 + 1260 + 280 = 1918

となります.

例題:赤,青,緑の3つの色がついた玉があります.この中から4つの玉を取り出したときの組合せは何通りあるでしょうか.同じ色の玉は何度でも取り出せることとします

すべての組合せを列挙してみると

2018-11-17_02h00_53

このように15通りあります.これを一般式にしてみましょう. n 個の異なるものから,重複を許して r 個取り出す組合せを考えます. n 個のものを n-1 の点(・)で区切ってみます.

2018-11-17_02h01_03

次に r 個の取り出したものを●に置き換えます.

2018-11-17_02h01_09

この●と・の並び方はすべて異なっています.この並べ方は組合せと1対1に対応するから, n-1 個の点と r 個の●の並べ方の総数を求めればいいことなります.これは n-1 個の点と r 個の●を含めた全部のところから r 箇所の場所を取り出す組合せと考えることができます.

各箇所に番号を割り振ると ①②③④⑤⑥ となって

2018-11-17_02h02_36

と表せます. n 個の異なるものから,重複を許して r 個とる組合せを {}_nH_r で表し

{}_nH_r = {}_{n+r-1}C_r

となります.

例題:赤,青,緑の3つの箱に,区別のつかない7個の玉を入れる場合,何通りありますか.また,どの箱にも少なくとも1個の玉を入れるとすれば,何通りの入れ方がありますか

重複を許した組合せなので, n=3, r=7 として

{}_3H_7 = {}_{3+7-1}C_7 = {}_9C_7 = {}_9C_2 = \frac{9\times 8}{2\times 1} = 36

となります.また,どの箱に少なくとも1個の玉を入れる場合は,あらかじめ各箱に1個の玉を入れておき,残り4個の玉を3つの箱に入れることを考えて

{}_3H_4 = {}_{3+4-1}C_4 = {}_6C_4 = {}_6C_2 = \frac{6\times 5}{2\times 1} = 15

となります.

例題:異なる3つの箱に玉を分けるとき,赤い玉が5個の場合と赤い玉が5個と白い玉が2個の場合の分け方は何通りありますか.玉を入れない箱があってもいいとします.

赤い玉が5個の場合は {}_3H_5 なので

{}_3H_5 = {}_{3+5-1}C_5 = {}_7C_5 = {}_7C_2 = \frac{7\times 6}{2} = 21

となります.次に,赤い玉が5個と白い玉が2個の場合は,まず白い玉が2個を異なる3つの箱に入れる場合の数は {}_3H_2 なので

{}_3H_2 = {}_{3+2-1}C_2 = {}_4C_2 = \frac{4\times 3}{2} = 6

赤い玉が5個の場合と白い玉が2個の場合の積となるので 21\times 6 = 126 となります.

📌 2項定理

展開公式としてよく知られたものに

\begin{aligned} (a+b)^2 &= a^2 + 2ab + b^2 \\ (a+b)^3 &= a^3 + 3a^2b + 3ab^2 + b^3 \\ (a+b)^4 &= a^4 + 4a^3b + 6a^2b^2 + 4ab^3 + b^4 \end{aligned}

があります.これを一般化して, (a+b)^n の展開を示す公式を 2項定理 といいます. n = 1,2,3,\ldots のとき

(a+b)^n = (a+b)(a+b)(a+b)\cdots(a+b)

となりますが,これを展開すると,各項は a^{n-r}b^r (r=0,1,2,\ldots,n) の形になります. a^{n-r}b^r の係数は, n 個の因数 (a+b) から, br 個選ぶ組合せの数 {}_nC_r となります.したがって, a^{n-r}b^r の係数は {}_nC_r となり,これを 2項係数 ともいいます.2項定理をまとめると次のようになります.

\begin{aligned} (a+b)^n &= {}_nC_0 a^n + {}_nC_1 a^{n-1}b + {}_nC_2 a^{n-2}b^2 + \cdots + {}_nC_r a^{n-r}b^r + \cdots + {}_nC_n b^n \\ &= \sum_{r=0}^n {}_nC_r a^{n-r}b^r \end{aligned}

少し寄り道して,この展開式を関数のべき級数展開を使って導出してみます.まずは (1+x)^n を級数展開したものを一般式で表すと次のようになります.

(1+x)^n = \sum_{k=0}^{n}\frac{n!}{k!(n-k)!}x^k

(この式の導出については「フーリエ解析入門 フーリエ級数編」で説明していますので,そちらを参照してください)

x=b/a を代入すると

\left(1+\frac{b}{a}\right)^n = \sum_{k=0}^{n}\frac{n!}{k!(n-k)!}\left(\frac{b}{a}\right)^k

これを変形します

\begin{aligned} \left(\frac{1}{a}\right)^n(a+b)^n &= \sum_{k=0}^{n}\frac{n!}{k!(n-k)!}\left(\frac{b}{a}\right)^k \\ a^{-n}(a+b)^n &= \sum_{k=0}^{n}\frac{n!}{k!(n-k)!}a^{-k}b^k \\ (a+b)^n &= \sum_{k=0}^{n}\frac{n!}{k!(n-k)!}\frac{a^{-k}}{a^{-n}}b^k \\ (a+b)^n &= \sum_{k=0}^{n}\frac{n!}{k!(n-k)!}a^{n-k}b^k \end{aligned}

組合せの式は

\frac{n!}{r!(n-r)!} = {}_nC_r

なので,置き換えると

(a+b)^n = \sum_{r=0}^{n}{}_nC_r a^{n-r}b^r

となり,2項定理の式となります.2項係数を下のように並べたものを パスカルの3角形 といいます.

2018-11-17_02h02_49

パスカルの3角形を見ると,任意の2項係数はその上段の2数の和で求めることができます.例えば, {}_3C_1{}_2C_0 + {}_2C_1 = 1+2 = 3 となっています.これから次のような関係が成り立っていることがわかります.

{}_nC_r = {}_{n-1}C_{r-1} + {}_{n-1}C_r

例題: \left(x^2-\frac{2}{x}\right)^6 の展開

\left(x^2-\frac{2}{x}\right)^6 = \left\{x^2+\left(-\frac{2}{x}\right)\right\}^6

として,2項定理をつかって展開します.

\begin{aligned} \left(x^2-\frac{2}{x}\right)^6 &= {}_6C_0(x^2)^6 + {}_6C_1(x^2)^5\left(-\frac{2}{x}\right)^1 + {}_6C_2(x^2)^4\left(-\frac{2}{x}\right)^2 + {}_6C_3(x^2)^3\left(-\frac{2}{x}\right)^3 \\ & \quad + {}_6C_4(x^2)^2\left(-\frac{2}{x}\right)^4 + {}_6C_5(x^2)^1\left(-\frac{2}{x}\right)^5 + {}_6C_6\left(-\frac{2}{x}\right)^6 \\ &= x^{12} + 6 x^{10} \frac{-2}{x} + 15 x^8 \frac{4}{x^2} + 20 x^6 \frac{-8}{x^3} + 15 x^4 \frac{16}{x^4} + 6 x^2 \frac{-32}{x^5} + \frac{64}{x^6} \\ &= x^{12} - 12x^9 + 60x^6 - 160x^3 + 240 - \frac{192}{x^3} + \frac{64}{x^6} \end{aligned}

例題: {}_nC_0+{}_nC_1+\cdots+{}_nC_n を求めてください

(1+x)^n = {}_nC_0+{}_nC_1x+\cdots+{}_nC_rx^r+\cdots+{}_nC_nx^n

x=1 を代入すると

{}_nC_0+{}_nC_1+\cdots+{}_nC_r+\cdots+{}_nC_n = (1+1)^n = 2^n

例題: {}_ nC_0-{}_ nC_1+{}_ nC_2-\cdots+(-1)^n{}_ nC_n を求めてください

(1+x)^n = {}_nC_0+{}_nC_1x+\cdots+{}_nC_rx^r+\cdots+{}_nC_nx^n

x=-1 を代入すると

{}_nC_0-{}_nC_1+{}_nC_2-\cdots+(-1)^n{}_nC_n = (1-1)^n = 0

例題: 1\cdot{}_ nC_1+2\cdot{}_ nC_1+3\cdot{}_ nC_2+\cdots+n\cdot{}_ nC_n を求めてください

(1+x)^n = {}_nC_0+{}_nC_1x+\cdots+{}_nC_rx^r+\cdots+{}_nC_nx^n

の両辺を x で微分すると

n(1+x)^{n-1} = {}_nC_1+2\cdot{}_nC_2x+3\cdot{}_nC_3x^2+\cdots+n\cdot{}_nC_n x^n

これに x=1 を代入すると

{}_nC_1+2\cdot{}_nC_2+3\cdot{}_nC_3+\cdots+n\cdot{}_nC_n = n(1+1)^{n-1} = n\cdot 2^{n-1}

📌 多項定理

2項定理では項の数が2つでしたが,発展させて3つ以上の場合を考えます.例えば,3項式の3乗を展開すると次のようになります.

(a+b+c)^3 = a^3 + b^3 + c^3 + 3a^2b + 3ab^2 + 3a^2c + 3ac^2 + 3b^c + 3bc^2 + 6abc

各項は a^\alpha b^\beta c^\gamma の形をしています.その係数は3個の因数 (a+b+c) から a\alpha 個, b\beta 個, c\gamma 個選ぶ組合せの数になります.ここで, \alpha + \beta + \gamma = n としたとき,各項の係数は

\frac{n!}{\alpha! \beta! \gamma!}

となります.これを一般化して n 乗した場合の展開式は

(a+b+c)^n = \sum \frac{n!}{\alpha! \beta! \gamma!} a^\alpha b^\beta c^\gamma \qquad (\alpha + \beta + \gamma = n)

となります.さらに m 項式まで拡張すると

(a_1 + a_2 + \cdots + a_n)^n = \sum \frac{n!}{n_1! n_2! \ldots n_m!} a_1^{n_1} a_2^{n_2} \ldots a_m^{n_m}
(n_1 + n_2 + \cdots + n_m = n)

これを 多項定理 といいます.ここで m=2 としたとき, n_2 = n-n_1 となって,係数は \frac{n!}{n_1!(n-n_1)!} = {}_nC _{n _1} となって2項定理と一致します.

例題: (a+b+c)^8 の展開式には,何種類の項がありますか

展開式の項は a^\alpha b^\beta c^\gamma (\alpha + \beta + \gamma = n) なので, a,b,c の3文字のうちから重複を許して8文字とった積となります.よって

{}_3H_8 = {}_{3+8-1}C_8 = {}_{10}C_8 = {}_{10}C_2 = \frac{10\times 9}{2\times 1} = 45

となります.

例題: (x+y+2z)^6 の展開式で, x^3y^2z の係数はいくつになりますか

多項定理より x^3y^2z の一般項は次のようになります.

\frac{6!}{n_1!n_2!n_3!}x^{n_1}y^{n_2}(2z)^{n_3}

{n_1=3,n_2=2,n_3=1} として x^3y^2z の係数は

\frac{6!}{3!2!1!}1^3 1^2 2^1 = \frac{6\times 5\times 4}{2}\times 2 = 120

となります.

📌 確率

細工をしていないサイコロを何回も振ったときの出る目はそれぞれ偶然によって決まります.このように同じ条件で何度でも繰り返す操作を 試行 といいます.そして,試行によって起こる結果を 事象 といいます.たとえば,サイコロを振る試行の事象はサイコロの目である「1, 2, 3, 4, 5, 6」のことで,1つひとつを 標本 といいます.そして,すべての標本(ここでは 1, 2, 3, 4, 5, 6 の6つ)を 標本空間 といいます.事象は1つの標本でもいいし,標本空間でも構いません.また,標本が1つだけの事象を 根元事象 といいます.

数学的確率

標本空間 Un 個の根元事象で構成されていて,どの2つの根元事象も「重複して起こらず」,また,どの根元事象の起こることも「同様に確からしい」とします.ある事象 Aa 個の根元事象から成り立つとき,つまり, A の起こる場合が a 通りであるとき,

p = \frac{a}{n},

のことを,事象 A の起こる確率といい,P(A) と表します.これを 数学的確率 と呼びます.確率 P(A)=0 のとき,事象 A は絶対に起こりません. P(A)=1 のときは,必ず起こります.サイコロの例で1の目が出る確率は,事象 A=\{1\} で,標本空間 U=\{1,2,3,4,5,6\} なので,確率は次のようになります.

P(A) = \frac{1}{6}.

統計的確率

数学的確率は同様に確からしいという状況のもとに考える確率です.それに対して実際に試行した結果をもとに確率を考える方法があります.たとえば,野球の打率やゲームで対戦したときの勝率などは何度も試行した結果から計算し,その確からしさを予想します.このような場合,次のように確率を定義します. n 回試行を行った結果,ある事象 Ar 回起こったとします. n を大きくしていくとき, r/n が一定の値 p に近づくなら,事象 A が起こる確率 P(A)

P(A) = p = \lim_{n\to\infty}\frac{r}{n}

とします.この確率を 統計的確率 といいます.また, r/n相対頻度 といいます.現実的に試行を無限回行うのは不可能ですが, 大数の法則 (Law of Large Numbers,またはベルヌーイの定理)によって, n が十分大きいとき,相対頻度を確率 p としても誤差が小さいことが証明されています.

確率の性質

集合には和集合や共通集合,補集合というのがありました.確率の事象も集合なので同じことがいえます.事象 A または事象 B が起こる事象を A\cup B と表し,これを 和事象 といいます.また,事象 A と事象 B がともに起こる事象を A\cap B と表し,これを 積事象 といいます.事象 A が起こらないという事象を \overline{A} で表し,これを 余事象 といいます.決して起こらない事象のことを 空事象 といい, \phi で表します.標本空間を U ,ある事象 A とすると

0 \leq P(A) \leq 1

が成り立ちます.これは確率は 0 から 1 の値しかとらないということです.標本空間と空事象のそれぞれの確率は

P(U) = 1, \qquad P(\phi) = 0

となります.ここで標本空間 U = \{1,2,3,4,5,6\} を使って,和事象や積事象との関係を見ていきます.また, ベン図 と呼ばれる図を使うと見てわかりやすくなります.標本空間のうち偶数の事象を A ,3の倍数を B とします.

\begin{aligned} A &= \{x=2m|2,4,6\} = \{2,4,6\} \\ B &= \{x=3m|3,6\} = \{3,6\} \end{aligned}

AB のベン図は次のようになります.

2018-11-17_02h02_59

AB の和事象 A\cup B\{2,3,4,6\} となります.

2018-11-17_02h03_03

AB の積事象 A\cap B\{6\} となります.

2018-11-17_02h03_08

積事象 A\cap B の確率はベン図から

P(A\cap B) = P(A) + P(B) - A\cup B

となります.また,

P(A\cup B) = P(A) + P(B) - A\cap B

も成立します.もし AB が互いに排反なら積事象は空事象となるので

P(A\cup B) = P(A) + P(B)

となります.次に余事象の起こる確率について,ある事象 E の余事象 \overline{E} を考えると

E\cup \overline{E} = U \qquad E\cap \overline{E} = \phi

なので

1 = P(U) = P(E\cup \overline{E}) = P(E) + P(\overline{E})

よって

P(\overline{E}) = 1 - P(E)

となります.

例題:サイコロを2個同時に振るとき,出た目の和が5になる確率 p はいくつになりますか

サイコロは6通りの目があるので,起こり得る場合の数は 6\times 6 = 36 です.出た目の和が5となるのは,2つのサイコロの目が (1,4), (2,3), (3,2), (4,1) の4通りなので,求める確率は

p = \frac{4}{36} = \frac{1}{9}

となります.

例題:1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10 の番号が付いている玉がそれぞれ1つずつ,合計10個あります.この中から2個の玉を取り出すとき,(a)2個の玉に付いている番号の和が12になる確率と(b)2個の玉に付いている番号の和が6の倍数である確率はいくつになりますか

まず,起こりうる場合の総数は

{}_{10}C_2 = 45

です.(a)の和が12となるのは (2,10), (9,3), (8,4), (7,5), (6,6) の5通りなので

p = \frac{5}{45} = \frac{1}{9}

となります.(b)の場合,和が6になる場合は (1,5), (2,4), (3,3) の3通り,和が12になる場合は(a)から5通り,和が18になる場合は (9,9), (10,8) の2通りで,合わせると 3+5+2=10 通り.よって求める確率は

p = \frac{10}{45} = \frac{2}{9}

となります.

条件付き確率

事象 A , B の余事象を \overline{A},\overline{B} とします.互いに排反する4つの事象の起こる場合の数は右表のようになります.

2018-11-17_02h03_15

このとき,起こり得る場合の総数は

n = a+b+c+d

となります.事象 A と事象 B がともに起こる確率 p

p = P(A\cap B) = \frac{a}{n}

になります.ここで,事象 A が起こる確率を p_1 ,事象 A が起こったときに B が起こる確率を p_2 とすると

p_1 = \frac{a+b}{n}, \qquad p_2 = \frac{a}{a+b}

となりますから,

p_1\times p2 = \frac{a+b}{n}\times \frac{a}{a+b} = \frac{a}{n} = p

が成り立つことがわかります.この p_2A が起こったときの B条件つき確率 といい, P(B|A) または P_A(B) で表します.この記号を使うと

P(A\cap B) = P(A)\times P(B|A)

と表せます.式を変形して P(B|A) を求めると

P(B|A) = \frac{P(A\cap B)}{P(A)}

となります.また,

P(B|A) = \frac{P(A\cap B)}{P(A)} = \frac{ \frac{a}{n} }{ \frac{a+b}{n} } = \frac{a}{a+b} = \frac{n(A\cap B)}{n(A)}

という関係になります.事象 A が起こったときに事象 B が起こる確率が求められたので,逆に事象 B が起こる確率を p_1 ,事象 B が起こったときに A が起こる確率を p_2 に置き換えてみると

p_1 = \frac{a+c}{n}, \quad p_2 = \frac{a}{a+c}, \quad p_1\times p2 = \frac{a+c}{n}\times \frac{a}{a+c} = \frac{a}{n} = p \\ P(A\cap B) = P(B)\times P(A|B) \\ \therefore P(A|B) = \frac{P(A\cap B)}{P(B)}

まとめると

P(A\cap B) = P(A)\times P(B|A) = P(B)\times P(A|B)

となります.これを確率の乗法定理といいます.

例題:10本中に3本の当たりくじがあります.太郎が先に,次郎が後に引いたときにそれぞれ当たりくじを引く確率はいくつになりますか.くじは引いたあと戻さないことにします

太郎が当たりくじをひく事象を A ,次郎が当たりくじを引く事象を B とします.太郎が当たりくじを引く確率は

P(A) = \frac{3}{10}

また,その余事象 (\overline{A})

P(\overline{A}) = 1-P(A) = 1-\frac{3}{10} = \frac{7}{10}

次郎が当たりくじを引くのは2つの場合があり,太郎が当たりくじを引いたときと引かなかったときです.太郎が当たりくじを引いたとき,次郎が当たりくじを引く確率は

P(A\cap B) = P(A)P(B|A) = \frac{3}{10}\times \frac{2}{9} = \frac{6}{90}

太郎が当たりくじを引かなったとき,次郎が当たりくじを引く確率は

P(\overline{A}\cap B) = P(\overline{A})P(B|A) = \frac{7}{10}\times \frac{3}{9} = \frac{21}{90}

事象 A\cap B\overline{A}\cap B は互いに排反であり, B = (A\cap B)\cup(\overline{A}\cap B) なので

P(B) = P(A\cap B) + P(\overline{A}\cap B) = \frac{6}{90} + \frac{21}{90} = \frac{27}{90} = \frac{3}{10}

つまり,次郎が後にくじを引いても当たりくじを引く確率は太郎と変わらないことがわかります.

📌 独立試行

条件付き確率 P(B|A)A が起こったときに, B が起こる確率でした.ですが, AB の確率に影響しない場合があります.例えば,サイコロを2個順番に振った場合,1個目に1の出目が出る事象を A ,2個目に2の出目が出る事象を B としたとき,起こり得る場合の数は 6\times6=36 通りで, A(1,1),(1,2),(1,3),(1,4),(1,5),(1,6) の6通り, B(1,2),(2,2),(3,2),(4,2),(5,2),(6,2) の6通り, AB がともに起こる場合( A\cap B )は (1,2) の1通りなので

P(A) = \frac{6}{36} = \frac{1}{6}, \quad P(B) = \frac{6}{36} = \frac{1}{6}, \quad P(A\cap B) = \frac{1}{36} \\ P(B|A) = \frac{P(A\cap B)}{P(A)} = \frac{\frac{1}{36}}{\frac{1}{6}} = \frac{1}{6} \\ \therefore P(B|A) = P(B)

条件つき確率 P(B|A)B が起こる確率 P(B) が同じなので, B が起こる確率に A が影響していないことがわかります.このような関係から事象 AB独立 であるといいます.ここで,10本の当たりくじのときを考えてみましょう.太郎と次郎がともに当たりくじを引いたときの条件つき確率 P(B|A) と次郎が当たりくじを引く確率 P(B) は次のとおりです.

P(B|A) = \frac{2}{9}, \quad P(B) = \frac{3}{10} \\ \therefore P(B|A) \neq P(B)

この場合は太郎と次郎がともに当たりくじを引く確率と次郎が当たりくじを引く確率が一致しません.このような関係から事象 AB従属 であるといいます.これらから,事象 AB が独立のとき P(B|A) = P(B) ,従属のとき P(B|A)\neq P(B) が成り立ちます.また,式を変形して

\begin{aligned} P(B|A) &= P(B) \\ \frac{P(A\cap B)}{P(A)} &= P(B) \\ P(A\cap B) &= P(A)\times P(B) \end{aligned}

という関係になります.事象 AB が独立であるならば, A によって B の確率は変わりません.また,その逆も然りです.例えば,サイコロのように1回ごとの試行が他の試行に影響しないならば,この試行は独立していると言えそうです.まさにこのような試行を 独立試行 といいます.また, ベルヌーイ試行 ともいいます.この独立試行を何回か繰り返したとき,ある事象が何回起こるかについての確率を考えます.
n 回の独立試行のうち,事象 A の起こる回数がrで,それが何回目に起きるかは {}_nC_r 通りあります.その1つの場合の確率を考えると,事象 Ar 回起こり,事象 A の余事象が n-r 回起こるので,事象 A の起こる確率を p ,余事象の起こる確率を q=1-p とすれば,乗法定理より

p^r(1-p)^{n-r} = p^r q^{n-r}

このような確率をもつ場合が {}_ nC_r 通りあり,それらは互いに排反であるから,事象 A がちょうど r 回起こる確率 p_r

p_r = {}_nC_r p^r q^{n-r}

となります.ここで,2項定理を思い出してみましょう.

(a+b)^n = \sum_{r=0}^{n} {}_nC_r a^{n-r}b^r

さきほどの式は2項定理の一般項と一致します.独立試行と2項定理は密接な関係がありそうです.それについては2項分布のところで触れていきます.

例題:サイコロを6回振って,そのうち4回,1の目が出る確率はいくつになりますか

各試行において,1の目が出る確率は \frac{1}{6} なので,求める確率は

p = {}_6C_4 \left(\frac{1}{6}\right)^4 \left(\frac{5}{6}\right)^2 = \frac{6\times 5}{2} \frac{5^2}{6^6} = \frac{15\times 25}{6^6} = \frac{375}{46656} = \frac{125}{15552}

📌 ベイズの定理

例えば,プログラマが3人いました.彼らは単純なモジュールを量産していて,彼らが作ったモジュールであるという事象をそれぞれ A , B , C で表します.また,作成されたモジュールはそれぞれ P(A),P(B),P(C) の割合で作られています.彼らはときどきバグがあるモジュールを作成することがあり,そのようなモジュールは不良モジュールとなります.作成されたモジュールが不良モジュールであるという事象をEとしたとき,彼らが不良モジュールを作る確率を P(E|A), P(E|B), P(E|C) とし,この確率がわかっているとします.このとき,実際に不良モジュールが見つかったときに,誰がその不良モジュールを作ったかどうかの確率 P(A|E), P(B|E), P(C|E) を考えます.
まず, P(A) など,不良モジュールが作成されたときと関係がないのでこのような確率を 事前確率 といいます.また, P(A|E) など不良モジュールが作成されたときの条件つき確率なので,これを 事後確率 といいます.それでは,不良モジュールが作成されたときに,それが A であるかの確率 P(A|E) を求めます.乗法定理から

P(A)P(E|A) = P(E)P(A|E)

であるから,式を変形すると

P(A|E) = \frac{P(A)P(E|A)}{P(E)}

事象 A,B,C はそれぞれ排反なので E = (A\cap E)\cup(B\cap E)\cup(C\cap E) だから,

P(E) = P(A\cap E) + P(B\cap E) + P(C\cap E)

乗法定理から

P(A\cap E) = P(A)P(E|A)

が成り立つので

P(E) = P(A)P(E|A) + P(B)P(E|B) + P(C)P(E|C)

となります.よって,

P(A|E) = \frac{P(A)P(E|A)}{ P(A)P(E|A) + P(B)P(E|B) + P(C)P(E|C) }

となります.これを一般の n 事象に拡張することができます.ある事象 E が, n 個の互いに排反である事象 A_1,A_2,\ldots,A_n によっているとき,かつ次の条件を満たしているとき

E = \sum_{k=1}^n E\cap A_k

ある事象 A_i によって起こる確率 P(A_i|E)

P(A_i|E) = \frac{P(A_i)P(E|A_i)}{ \displaystyle{\sum_{k=1}^n P(A_k)P(E|A_k)} }

となります.これを ベイズの定理 といいます.

例題:ある生産工場で3つの機械( A,B,C )の生産量と,不良品の出る割合は表の通りです.1つの生産品を取り出したら,それが不良品であったとき, A が生産したものである確率はいくつになりますか

2018-11-17_02h03_23

それぞれの確率を求めると

P(A) = 0.1, \quad P(B) = 0.4, \quad P(C) = 0.5 \\ P(E|A) = 0.04, \quad P(E|B) = 0.02, \quad P(E|C) = 0.01

よって

\begin{aligned} P(A|E) &= \frac{0.1\times 0.04}{ 0.1\times 0.04 + 0.4\times 0.02 + 0.5\times 0.01 }\\ &= \frac{0.004}{0.004+0.008+0.005} = \frac{0.004}{0.017} \cong 0.235 \\ &\cong 24\% \end{aligned}

📌 ポーカーゲームの確率

確率計算の練習としてポーカーゲームの確率を求めてみます.
ポーカーの役は,ワンペア,ツーペア,スリーカード,ストレート,フラッシュ,フルハウス,フォーカード,ストレートフラッシュ,ロイヤルストレートフラッシュがあります.ここでは,ジョーカーを含めず,最初に5枚配られたときのそれぞれの確率を求めます.

まず,ポーカーでは,ジョーカーを除いた52枚のカードから5枚のカードを選びます.これが起こり得るすべての場合の数となります.

{}_{52}C_5 = \frac{52!}{47!5!} = \frac{52\times 51\times 50\times 49\times 48}{5\times 4\times 3\times 2} = 2598960

ワンペア

トランプのカードは1~から13までの数字と4種類のスート(ダイヤ,ハート,スペード,クラブ)があります.ワンペアは同じ数字のカードが2枚1組なので,まずペアになる数字を選ぶ方法を考えると {}_ {13}C_1 通りです.残りの3枚はばらばらの数字になっている必要があるので, {}_ {12}C_3 通りになります.よって,数字の選び方は

{}_{13}C_1\times {}_{12}C_3 = \frac{13!}{(13-1)!1!}\times \frac{12!}{(12-3)!3!} = 13\times \frac{12\times 11\times 10}{3\times 2} = 2860

次に,スートを選ぶ方法を考えます.ワンペアのカードについては4種類から2種類選ぶ方法となり, {}_ 4C_2 通りです.残りのカード3枚についてはそれぞれ4種類から1種類を選ぶので {}_ 4C_1 となります.よって,スートの選び方は

{}_4C_2\times {}_4C_1\times {}_4C_1\times {}_4C_1 = \frac{4!}{2!2!}\times 4\times 4\times 4 = 384

ワンペアの場合の数は数字とスートの選び方の積となって

2860\times 384 = 1098240

したがって,ワンペアの出る確率は

\frac{1098240}{2598960} \cong 0.4225

ツーペア

ツーペアは同じ数字のカードが2枚2組となります.まず,ツーペアとなる数字の選び方は {}_ {13}C_2 通りです.また,残りの数字は11枚の中から1枚を選ぶので {}_ {11}C_1 通りです.よって,数字の選び方は

{}_{13}C_2\times {}_{11}C_1 = \frac{13!}{(13-2)!2!}\times \frac{11!}{(11-1)!1!} = \frac{13\times 12}{2\times 1} \frac 11 = 858

次にスートについてですが,ツーペアのカードはそれぞれ2種類選ぶので {}_ 4C_2 通りとなります.残りの1枚は4種類から1種類を選ぶので {}_ 4C_1 通りです.よって

{}_4C_2\times {}_4C_2\times {}_4C_1 = \frac{4!}{2!2!} \times \frac{4!}{2!2!} \times 4 = \frac{4\times 3}{2\times 1} \times \frac{4\times 3}{2\times 1} \times 4 = 144

ツーペアの場合の数は

858 \times 144 = 123552

と与えられ,ツーペアの出る確率は

\frac{123552}{2598960} \cong 0.0475

スリーカード

スリーカードは同じ数字のカードが3枚と異なる2枚のカードになります.スリーカードとなる数字の選び方は {}_ {13}C_1 通りです.残りの2枚のカードの数字の選び方は {}_ {12}C_2 通りです.よって

{}_{13}C_1\times {}_{12}C_2 = 13\times \frac{12!}{(12-2)!2!} = 13 \times \frac{12\times 11}{2\times 1} = 858

次にスリーカードとなるカードのスートの選び方は {}_ 4C_3 通りで,残り2枚のカードのスートの選び方はそれぞれ {}_ 4C_1 通りとなり

{}_4C_3\times {}_4C_1\times {}_4C_1 = \frac{4!}{1!3!} \times 4 \times 4 = 64

スリーカードの場合の数は

858 \times 64 = 54912

と与えられ,スリーカードの出る確率は

\frac{54912}{2598960} \cong 0.021

ストレート

ストレートは5枚のカードが連続したものです.例えばJQKA2というようにキングとエースをまたぐことはできません.この場合,先頭がエースになる場合から10までの10通りとなります.次にスートは5枚それぞれ4種類から1種類選ぶので {}_ 4C_1 通りです.ただし,5枚すべて同じスートの場合はストレートフラッシュ(ロイヤルストレートフラッシュ含む)となるので,その分を差し引きます.それは数字の選び方が10通りでスート4種類分となるので40通りとなって

10\times 4\times 4\times 4\times 4\times 4 - 40 = 10200

よって,ストレートの出る確率は

\frac{10200}{2598960} \cong 0.0039

フラッシュ

フラッシュはすべて同じスートになっているものです.この場合,5枚のカードは数字はなんでもいいので {}_ {13}C_5 通り,スートは4種類から1種類なので4通り.ただし,これもストレートフラッシュ(ロイヤルストレートフラッシュ含む)を差し引きます.よって

{}_{13}C_5 \times 4 = \frac{13\times 12\times 11\times 10\times 9}{5\times 4\times 3\times 2} \times 4 - 40 = 5108

よって,フラッシュの出る確率は

\frac{5108}{2598960} \cong 0.0019

フルハウス

フルハウスはスリーカードとワンペアの組合せです.スリーカードになる数字の選び方は {}_ {13}C_1 通りで,ワンペアになる数字の選び方は {}_ {12}C_1 通りとなって

{}_{13}C_1\times {}_{12}C_1 = 13\times 12 = 156

つぎに,スリーカードとなるカードのスートは4種類から3種類選ぶので {}_ 4C_3 通りで,ワンペアでは2種類選ぶので {}_ 4C_2 通り.よって

{}_4C_3\times {}_4C_2 = \frac{4!}{1!3!} \times \frac{4!}{2!2!} = 4\times 6 = 24

フルハウスの場合の数は

156 \times 24 = 3744

と与えられ,フルハウスの出る確率は

\frac{3744}{2598960} \cong 0.0014

フォーカード

フォーカードは同じ数字のカードが4枚と異なる1枚のカードになります.フォーカードとなる数字の選び方は {}_ {13}C_1 通りです.残りの1枚のカードの数字の選び方は {}_ {12}C_1 通りです.よって

{}_{13}C_1\times {}_{12}C_1 = 13\times 12 = 156

次にフォーカードとなるカードのスートは4枚全部なので1通り,残り1枚のカードのスートの選び方は {}_ 4C_1 通りとなり

1 \times {}_4C_1 = 4

フォーカードの場合の数は

156 \times 4 = 624

と与えられ,フォーカードの出る確率は

\frac{624}{2598960} \cong 0.00024

ストレートフラッシュ

ストレートフラッシュはストレートとフラッシュの組合せです.ストレートのときに差し引いた分で,40通りとなります.さらに,ロイヤルストレートフラッシュの組合せを差し引くと, 40-4 となって,36通りとなります.

ストレートフラッシュの出る確率は

\frac{36}{2598960} \cong 0.0000138

ロイヤルストレートフラッシュ

ロイヤルストレートフラッシュはエース,キング,クイーン,ジャック,10の組合せでストレートフラッシュのものです.数字の選び方は1通りで,スートの選び方は4種類なので4通りとなります.よって,ロイヤルストレートフラッシュの出る確率は

\frac{4}{2598960} \cong 0.0000015

ノーペア

すべての役を足したものの余事象となるので,場合の数は

1098240 + 123552 + 54912 + 10200 + 5108 + 3744 + 624 + 36 + 4 = 1296420 \\ 2598960 - 1296420 = 1302540

よって,何も役がない確率は

\frac{1302540}{2598960} \cong 0.5

ポーカーの役の確率まとめ

ポーカーの役の確率を表にすると次のようになります.

2018-11-17_02h03_34

📌 参考文献

  • 村上雅人「なるほど確率論」海鳴社,2003
  • 村上哲哉「確率」ファーラム・A,1989
  • 薩摩順吉「確率・統計」岩波書店,1989