面取りの大きさを測る簡単な方法
1. はじめに
身の回りにある製品の角は,手をケガしないように必ず何らかの丸み,あるいは45°の面が付いています.これを面取りといいます.最近では 3D プリントの流行によりモデリングに取り組む方も多いようなので,個人レベルでできる面取りの大きさの測定方法をいくつか書いてみます.
面取りの大きさによって製品の印象がガラッと変わってしまうくらい面取りは大事なものです.したがって,あまりそのへんのものから引き写してくるのも良くないのですが,身の回りに実物として存在するモノと(おそらくパソコンの中にしかない)自作のモデルを定量的に比べることができるようになるとデザインをするうえで便利です.
2. 使用する道具
非接触3次元測定器などを使えば手間なく高精度に測れますが,個人でそうしたものを所有している方はほとんどいないでしょう.また,安価な道具で思いついたときにぱっと測れることも大事です.さしあたって,今回は以下のようなわりあい原始的なツールで測ってみます.
- ラジアスゲージ ミツトヨ RG-S 3 186-105
- 目盛つき顕微鏡 PEAK ポケットメジャリングマイクロスコープ 50x
3. 面取りの簡単な説明
C面とR面
通常,図左のように45度で削り落としたような面をC面,丸く磨いたような面をR面(またはフィレット)と呼びます.
C面の寸法は,削り落とす面の寸法で表します.R面は半径で表します.(説明のために長さ寸法を入れていますが,通常は C1 と書きます)
C面は定規や三角関数などを使えば測れそうな見た目をしていますが,あまりに小さいC面は測りづらいです.また,R面を定規で測るのはかなり面倒そうです.このような場合は,専用の道具を使って測ります.
4. 測ってみる
ラジアスゲージを使う
たとえば,デジタルカメラの手前側のR面の大きさを測ってみます.ラジアスゲージを測りたい面に当て,光に透かすなどして当てはまりのよいものを探します.この場合は大体 R5.0 と読めます.
顕微鏡を使う
みなさん大好き MacBook Pro の筐体は,手を怪我しないギリギリのラインで面を取ってあります.こうした微細なフィーチャーを測る場合,目盛つき顕微鏡を使うのが便利です.
上の画像は顕微鏡の接眼レンズにスマホを押し当てて撮影したものです[1].だいたい C0.15 程度であることがわかります.工具がズレるなどしてうっかり面取りがなくなってしまうと消費者はケガをしますから,それなりに勇気のいる決断といえるでしょう.市販の CNC 製品はもう少し大きく面を取っていることが多いようです.
5. 測りづらい面:G2以上のフィレット
一部の製品では,上のような単純な数字では表せないような方法で面を取っていることがあります.このようなもののひとつに G2 以上[2]のフィレットがあります.こうしたものは測定しづらいのですが,Apple 製品をはじめとする見た目の良い製品のデザインでよく見かけるので存在を知っておくことは有益でしょう.
こうしたフィレットは,場所により面の曲率(丸み)が異なります[3].
左のR面(または G1 フィレット)では,あるところまでは平面だったものが突然円筒面になり,また平面に接続されています.この場合,面の継ぎ目で曲率が不連続になります.モデリングや意思疎通が簡単になるという利点がありますが,光を当てたときに境目がはっきり見えてしまうのが欠点です.右はG2フィレットです.面の継ぎ目で曲率がなめらかに変化します.こちらは,境目がなめらかに見えます.
見た目の印象もそれなりに違うことがわかります.左はR面(G1フィレット),右はG2フィレット[4]です.左はジオメトリックな印象,右は自然な印象を受けます.
このような面はR面のように1つの値で代表して表すことはできませんが,ひとつの目安として最小の曲率半径を知っておくことはできます.以下は iPhone の充電器ですが,このように平らな面がある場合は,内側からラジアスゲージを当てると最小Rがだいたい読めます.
Happy modelling!
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