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齋藤線型代数入門 第5章 [1.4] ノート

2023/07/27に公開

はじめに

齋藤『線型代数入門』を読んでいて,第5章 [1.4] の必要性の証明が頭の中できなかった.そのときに書いた証明をここにも残しておく[1]

命題と証明

命題 \enspace 行列 A が対角行列に相似である (すなわち P^{-1}AP が対角行列になるような正則行列 P が存在する) ためには,A の各特性根 \alpha に対する固有空間の次元が,\alpha の重複度に一致することが必要かつ十分な条件である.

証明 \enspace (十分性) \alpha_1, \cdots, \alpha_kA のすべての特性根とし,\alpha_i の重複度を n_i とする.A の次数を n とすると n_1 + \cdots + n_k = n である.\alpha_i に対する固有空間 W_i の次元が \alpha_i の重複度に一致するならば \dim(W_1) + \cdots + \dim(W_k) = \dim(\bm{C}^n) となるので,W_1 \dotplus \cdots \dotplus W_k = \bm{C}^n が成り立つ.よって [1.2] より A は対角行列に相似である.

(必要性) \alpha_1, \cdots, \alpha_kA のすべての固有値とし,\alpha_i に対する固有空間を W_i とする.A が対角行列に相似であるとすると,[1.2] より W_1 \dotplus \cdots \dotplus W_k = \bm{C}^n が成り立つ.W_i の次元を n_i とし,W_i の基底を E_i = \langle \bm{e}_{m_i + 1}, \cdots, \bm{e}_{m_i + n_i} \rangle (m_i = \sum_{j < i} n_j) とすると,E = \langle \bm{e}_1, \cdots, \bm{e}_n \rangle\bm{C}^n の基底となる.E_i に関する T_A\vert_{W_i} [2]の行列を B_iE に関する T_A の行列を B とすると,各 W_iT_A による不変部分空間なので,

\begin{equation*} B = \begin{pmatrix} B_1 & & O \\ & \ddots & \\ O & & B_k \end{pmatrix} \end{equation*}

となる (p.119).T_A\vert_{W_i} = T_{A_i} とすると,正則行列 P_i が存在して B_i = P_i^{-1}A_iP_i と書けるが,T_A\vert_{W_i} はスカラー変換 \alpha_i \operatorname{id}_{W_i} [3]であるから A_i = \alpha_i I_{n_i} [4]となり,B_i = \alpha_i I_{n_i} であることがわかる.B は正則行列 P が存在して B = P^{-1}AP と書けるので,

\begin{equation*} P^{-1}AP = \begin{pmatrix} \alpha_1 I_{n_1} & & O \\ & \ddots & \\ O & & \alpha_k I_{n_k} \end{pmatrix} \end{equation*}

が成り立つ.よって,A の特性多項式は

\begin{align*} \Phi_A(x) &= \Phi_{P^{-1}AP}(x) \\ &= \det(xI_n - P^{-1}AP) \\ &= \begin{vmatrix} (x - \alpha_1) I_{n_1} & & O \\ & \ddots & \\ O & & (x - \alpha_k) I_{n_k} \end{vmatrix} \\ &= (x - \alpha_1)^{n_1} \cdots (x - \alpha_k)^{n_k} \end{align*}

となるので,特性根 \alpha_i の重複度は \alpha_i に対する固有空間の次元に一致する.\enspace (証明終)

参考文献

  • 齋藤正彦『線型代数入門』東京大学出版会,1966.
脚注
  1. https://mathtod.online/@katatoshi/110741625910062325 ↩︎

  2. T_A\vert_{W_i} は写像 T_A: \bm{C}^n \to \bm{C}^nW_i への制限. ↩︎

  3. \operatorname{id}_X は集合 X 上の恒等変換. ↩︎

  4. I_ll 次単位行列. ↩︎

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