統計学・機械学習向け数学文献リスト
はじめに
統計学や機械学習には数学がつきものであることは割と知られた事実。
しかし、おススメの文献を見ると、数学科でもしんどい書籍が並ぶ事実…。
「これ、ホントに薦める気ある?」
「これ書いてる人、ホントに理解してる?」
のいずれかに該当する文献リストが多いよなぁ…というのが個人の感想。
ここでおススメしてる文献もその色が強い可能性があることは否定しない。
個人の主観満載かつ多少ガチり目なのは否定しないが、ある程度気持ちがわかる系のリストを提示する。
具体的なゴールとしては、高校数学は分かっており、PRML等を読むのにちょうどいいレベルに達するための書籍群を紹介するものとする。
複数の書籍を紹介するが、図書館や大型書店にて内容を確認したうえで、目的や個人の直感に応じて使い分けることをお勧めする。
論理・集合
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たいていは線形代数と微分積分からスタートさせるケースが多いが、最初はやはり論理からの集合の扱いからスタートして欲しい。
一番の足回りに相当する部分であり、「そもそも何を議論してるの?」という部分がわからなくなるのはさすがにまずいと考えるためである。
本来は濃度がそれとなく分かる所まで持って行って欲しい(ひとまず加算集合と非可算集合がわかるのが目標)が、集合の基本的な演算ができればまずはよいとした。
おススメする書籍
ここでは以下2著をおススメする。
中内 伸光・著「ろんりと集合」(日本評論社, 2009)
中島 匠一・著「集合・写像・論理: 数学の基本を学ぶ」(共立出版, 2012)
いずれも初学者の気持ちに沿ったスタイルかつ、わりとモダンなスタイルで書かれているのが特徴。
おススメから除外する書籍
よくあるおススメは以下の2著。
いずれも押しも押されぬ名著ではあるが、密度が濃く、論理展開も上記2著に比べると飛躍する点が多く、独学ではハードルが高い面があるため、あえて除外している。
松坂 和夫・著「集合・位相入門」(岩波書店, 2018)
内田 伏一・著「集合と位相(増補新装版)」(裳華房 ,2020)
微分積分
コメント
微分積分は文献も多い分、チョイスが難しい面がある。
微分積分のゴールとしては、ラグランジュの未定乗数法をいったんのゴールとした。
学習におススメする書籍
ここでは以下をおススメする。
宮島 静雄・著「微分積分学 I: 一変数の微分積分」(共立出版, 2003)
宮島 静雄・著「微分積分学 II: 多変数の微分積分」(共立出版, 2003)
黒田 成俊・著「微分積分」(共立出版, 2002)
いずれも
また、一般的な議論のスタートにも差が出るところが問題になりがちだが、その辺もうまくかわした記述をしており、ざっと眺めるだけでも勉強になるし、ある程度読んでいけば力になる書籍である。
辞書的に使いたい書籍
杉浦 光夫・著「解析入門 Ⅰ」(東京大学出版会, 1980)
杉浦 光夫・著「解析入門 Ⅱ」(東京大学出版会, 1985)
ガウスの公式やベータ関数、ガンマ関数に関する計算も詳しければ、それに至るプロセスも詳しい。
しかし、導入そのものが非常に重く、理論の重ね方に関しても非常に精緻であることから、まずはそこまでやらなくても…というのが正直なところ。
もししっかり学びたいとなったときにしっかり読んで欲しいと思う。
線形代数
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個人的には線形代数というよりかは、行列代数と言いたい。
誤解を恐れずに言うと、この分野の話は抽象線形空間論と行列から成り立っている。
そのなかでもいったんは行列からの以下の流れがひとつのコースとなる。
行列式→固有値と固有ベクトル→特異値分解
いったんは固有値と固有ベクトルをゴールとするのがよいかと思う。
その上で必要に応じて特異値分解を学習すればよい。
学習におススメする書籍
まずは、全般的に応用を意識して書かれた以下の書籍をセンターに据えることをおススメする。
高松 瑞代・著「応用がみえる線形代数」(岩波書店, 2020)
この書籍は上記コースに対して、応用も含めた形で一通り取り扱われており、全体像が見えるという点で強いオススメとなる。
以下2著は固有値と固有ベクトルの話までが中心であり、そこに至るまでがていねいに記述されている。
柴田 正和・著「科学者・技術者のための 基礎線形代数と固有値問題」(森北出版, 2013)
藤岡 敦・著「手を動かしてまなぶ 線形代数」(裳華房, 2015)
特に柴田氏の著書はさまざまな応用も書かれていることから、分野をまたいだ理解にも一役を買うであろう。
余談だが、↓のインプレでバズった影響なのか、年明けに書籍が一気に売れた模様。
また、特異値分解に関しては、以下の書籍も記述が丁寧でおススメできる。
金谷 健一・著「線形代数セミナー: 射影,特異値分解,一般逆行列」(共立出版, 2018)
ここでは絶対におススメしない書籍
線形代数の名著だが、ここのテーマに沿わないにも関わらず、なぜかおススメされる事案が多い2著を紹介する。
齋藤 正彦・著「線型代数入門」 (東京大学出版会, 1966)
佐武 一郎・著「線型代数学(新装版)」(共立出版, 2015)
抽象線形空間論はつらいです、それがすべてです。
(個人的には関数解析よりつらく感じます…)
個人的には4年かけて何度も読み直すべきレベルの書籍だと思ってますが、応用上はまずはここまでは知らなくてもいい気はします。
さいごに
独断と偏見で選んでるので、かんたんなだけの書籍は選んでませんし、当然向き・不向きはありますが、ひとつの基準にしていただけたらと思います。
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