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プロジェクトマネジメントの勉強をしてみて、新規ゲーム開発プロジェクト立ち上げ時に大事だと思ったこと

2020/12/01に公開

Happy Elements Advent Calendar 2020 1日目の記事です。

背景

あんさんぶるスターズ!!Musicのエンジニアリーダーをしています。
エンジニアリーダーとしての成長を目指すため、プロジェクトマネジメントについて学習することにしました。
まずはプロジェクトマネージャ試験に向けて学習していくことで、知識を得ていくことに決めました。

ゲームの新規開発は多くの困難を抱えており、プロジェクトマネジメントの知見が成功率を上げると考えられます。
特に立ち上げ部分でのつまづきを事前に解消するための知見を、いくつかピックアップして紹介したいと思います。

プロジェクトマネージャ試験について

プロジェクトマネージャ試験は年に一度春に行われる試験です。
今年はコロナの影響で開催が延期され、10月18日に行われました。

試験対策としては、PMBOK(ピンボックと読むらしい)というプロジェクトマネジメントの知識を体系化した本を理解することが最優先ですが、過去問から出た頻出部分の理解も重要です。
自分の場合は、PMBOKと過去3年分の過去問を行なっていたので、そこから新規立ち上げで大事な部分をピックアップして紹介したいです。

未来を予測する方法 (デルファイ法)

新規ゲームを作り始めるに当たって最も重要なのは、「どんなゲームを作るか」という部分です。
数年前まではゲーム開発を数ヶ月で行うことができる場合もあったのですが、最近のゲーム開発は最短でも2年以上かかることが多くなってきました。
開発費用も数億~数十億円程度かかるのが普通になってきており、失敗した場合のリスクも高くなってきています。

2年後、3年後に流行るゲームは何なのか。
それを何かしらの方法で予測し、それに基づいてコンセプトを固めていく必要があります。
2年後、3年後に流行るゲームを予測できる方法があるとしたら、新規ゲーム開発の成功確率がグッと上がると思いませんか?

実はそれがあるんです。
未来を予測する方法、デルファイ法です!
プロジェクトマネージャ試験でも頻出で、3年間で2回出題されています。

デルファイ法とは

デルファイ法とは、複数の専門家に繰り返し同一のアンケートを追って意見を収れんさせ集約させていく予測技法で、未来予測が代表的な用途である。
2回目以降のアンケートでは前回の調査結果を回答者に開示するため、回答者は全体傾向をすることになり、自らの回答にそれが影響し、徐々に意見が収れんされることになる。

2020 徹底解説プロジェクトマネージャ本試験問題 H29 春・高度 午前I回答より

上記にあるように、デルファイ法では複数の専門家にアンケートを複数回行なっていきます。
社内のプランナーやゲームデザイナー・プロジェクトリーダーの方などに、2年後、3年後流行るゲームについてアンケートを取っていくイメージだと思っています。
それを何度も繰り返すことで、未来に流行るゲームが予測できてしまうということです!

デルファイ法の注意点

デルファイ法の特定の弱点は、将来の開発が専門家のコンセンサスによって常に正しく予測されるとは限らないことです。無知の問題に関するこの欠点は重要です。パネリストがトピックについて誤った情報を与えられた場合、Delphiの使用は彼らの無知に自信を与えるだけかもしれません。

Wikipedia翻訳より

当然のことですが、アンケートを行なった専門家が知らない部分については不確実性が増します。
また、「未来に流行るゲームはこれだ!」などと誤った情報が与えられていた場合、その情報に結果が収れんされてしまう可能性があり失敗することがありそうです。

そもそも社内で行なったら、社内で売り上げの多いプロジェクトに収れんされる可能性ありそうですよね。
アンケートする側でそういった注意点をうまく回避できるよう設定する必要があります。

チームの発展段階 (タックマンモデル)

どんなゲームを開発するかが決まれば、チームメンバーを集めモックを作っていく段階になります。
ゲーム開発を行なっていく中で徐々に問題となってくるのは、メンバーごとに「おもしろい」の基準が異なることによるコンフリクトです。
こんな時に、タックマンモデルについての理解が各メンバーにあれば、プロジェクトの失敗を防げるかもしれません。

タックマンモデルとは

タックマンモデルは、チームの発展段階を以下の5段階に分けて定義している。
①成立期 (Forming): メンバが顔を合わせ、チームの内容と公式な役割と責任について学ぶ段階
②動乱期 (Storming): チームの目的、各自の役割を話し合い、作業に取り組み始める段階
③安定期 (Norming): チームのメンバーがチームを支援するために自らの習慣や行動を調整し始める段階
④遂行期 (Performing): チームが、よく組織されたグループとして機能する段階
⑤解散期 (Adjourning): 作業を完了してプロジェクトから転出していく段階

2020 徹底解説プロジェクトマネージャ本試験問題 H29 春・PM 午前II回答より

パフォーマンスの高いチームを分析した結果、上記の5段階を経ていることがわかりそれを体系化しています。
動乱期で大きな混乱が起きることが多く、メンバー同士の衝突が起きたり、離脱するメンバーが出たりします。

ここで注意したいのは、動乱期を避けようとするとパフォーマンスの高いチームを構成できないということです。
衝突や離脱のような最悪のケースに到ることなく、素早く成立期・動乱期を乗り越えて、遂行期を目指すべきです。
各メンバーがタックマンモデルについて十分に理解することで、動乱期を適切に乗り越えることができるかもしれません。

ゲーム開発は"ほぼ確実に"コンフリクトが起きます。
大事なのは、その時にしっかり話し合い、動乱期を乗り越えるための適切な行動を行うことです。
(メンバーが増えるごとに同じ段階を踏むことも覚悟しておくと良いでしょう)

プロジェクト憲章

PMBOKによると、プロジェクト統合マネジメントにおいて最初に行うプロセスに「プロジェクト憲章の作成」があります。
既に書いている通り、ゲーム開発は長期に渡ることが増えてきました。
プロジェクトが長くなってくると、最初にどのような条件のもとでプロジェクトが始まったのか不明瞭になることも多く、それらを定期的に振り返るためにもプロジェクト憲章の作成が重要だと考えています。

プロジェクトの規模や、社風などによって、数百ページに渡るプロジェクト憲章を作る場合もあれば、A4の紙1枚程度の場合もあるようですが、開発にあたって必要な情報を事前に書いておくことが重要です。

プロジェクト憲章とは

プロジェクト憲章は、プロジェクトの存在を正式に認可する文書であり、プロジェクトのイニシエーターまたはスポンサーが発行する。プロジェクト憲章は、プロジェクト・マネジャーが母体組織の資源をプロジェクト活動のために使用する権限を与える。プロジェクト憲章は、プロジェクトが満たすことを意図しているプロジェクト、およびプロダクト、サービス、または所産についてのハイレベルの情報を文書化する。情報には次のものがある。

・プロジェクト目的
・測定可能なプロジェクト目標と関連する成功基準
・ハイレベルの要求事項
・ハイレベルのプロジェクト記述、境界、および主要成果物
・プロジェクトの全体リスク
・要約マイルストーン・スケジュール
・事前承認された財源
・主要ステークホルダー・リスト
・プロジェクト承認要求事項 (例: プロジェクトの成功を判断する事項、プロジェクトの成否を判断する人、プロジェクトの受入承認をする人)
・プロジェクト終了基準 (例: プロジェクトまたはフェーズを終結またはキャンセルするために満たすべき条件)
・任命されたプロジェクト・マネージャー、その責任と権限のレベル
・プロジェクト憲章を認可するスポンサーあるいは他の人物の名前と地位

プロジェクト憲章は、ハイレベルな記述で、主要成果物、マイルストーン、およびプロジェクトに関わる全員の役割と責任へのステークホルダーの共通理解を確実にする。

PMBOKより

上記のように、プロジェクトが何のために立ち上がったのかの条件を書いたり、どうなったら成功なのかを記述しておくことになります。
特に、プロジェクトに関わる人たちの中で、重要な部分についての共通認識を持つことが大事です。

どんなゲームを作っていく想定でプロジェクトが始まったのか、どうなったら成功と言えるのか(あるいは失敗となるのか)を明確にしておくことで、認識の違いなどができた時にプロジェクト憲章を見ながら振り返ったり、改めてプロジェクト憲章の変更をしていったりできそうです。

ゲーム開発はプロトタイプ開発・α開発・β開発・と進んでいく中で、多くの迷いが出てくる段階があります。
その時に、プロジェクト憲章を確認しながら今後の進め方を決めていくことで、ブレずにゲーム開発が進めていけるのではないかと思います。

終わりに

ゲーム開発の難しい部分は「おもしろい」の基準が人によって様々で、迷いや衝突が起こりやすい部分だと思います。
プロジェクトマネジメントの知識を活用することで、同じような問題に取り組んだ過去の知恵を借りることができ、ゲーム開発の成功率を上げることができると思います。

各チームに合うようにテーラリング(仕立て直し)しながら、より良いゲームを作っていきたいです!

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