[Rust] トレイトオブジェクトから元の型に戻す
Box<dyn Trait> から元の型を得る方法を調べてみました。
お題
以下のような Draw トレイトと、それを実装した Triangle を用意し、 Box<dyn Draw> を用意します。
ここから、&T, &mut T, Box<T> を取り出す方法を考えてみます。
pub trait Draw {
fn draw(&self);
}
#[derive(Debug)]
pub struct Triangle {
pub size: f32,
}
impl Triangle {
const fn new(size: f32) -> Self {
Self { size }
}
}
impl Draw for Triangle {
fn draw(&self) {
println!("Triangle (size: {})", self.size);
}
}
fn main() {
let triangle = Box::new(Triangle::new(1.5)) as Box<dyn Draw>;
triangle.draw(); //=> Triangle (size: 1.5)
}
&Box<dyn Trait> -> &T / &mut Box<dyn Trait> -> &mut T
downcast_ref<T> / downcast_mut<T> が使えます。
これは、impl dyn Any とトレイトオブジェクトに対して impl されています。
通常の具体型であれば、トレイトオブジェクトに変えるのは as するだけでできますが、トレイトオブジェクトを別のトレイトオブジェクトに変えるのは意外？と面倒です[1]
ここでは、新たに AsAny というトレイトを用意し、dyn Any を得る方法をトレイトオブジェクトに与えておくことで実現します。
pub trait AsAny {
fn as_any(&self) -> &dyn Any;
fn as_any_mut(&mut self) -> &mut dyn Any;
}
pub trait Draw: AsAny {
fn draw(&self);
}
impl AsAny for Triangle {
fn as_any(&self) -> &dyn Any {
self
}
fn as_any_mut(&mut self) -> &mut dyn Any {
self
}
}
例えば以下のようにすることで AsAny の実装は楽になります。
ただ、これをすると Box<dyn Trait> にも AsAny が実装され、as_ref 等を明示的に呼ばないと、Box<dyn Trait> から直接 &dyn Any に変換され、&T へのダウンキャストに失敗する[2]ことには注意です。
impl<T> AsAny for T
where
T: 'static,
{
fn as_any(&self) -> &dyn Any {
self
}
fn as_any_mut(&mut self) -> &mut dyn Any {
self
}
}
使用例は以下の通り（型がわかりやすいように少し冗長に書いています）
fn main() {
let mut triangle = Box::new(Triangle::new(1.5)) as Box<dyn Draw>;
triangle.draw(); //=> Triangle (size: 1.5)
let triangle_mut: &mut Triangle = triangle.as_mut().as_any_mut().downcast_mut().unwrap();
triangle_mut.size = 2.5;
triangle.draw(); //=> Triangle (size: 2.5)
}
Box<dyn Trait> -> Box<T>
以下の downcast が使えそう、と思いきや Box<dyn Trait> から Box<dyn Any> への変換がさらに大変そうです。自分では unsafe なしで書く方法は思いつきませんでした。
どうせ unsafe 使うならと、 downcast の実装をほぼそのまま参考にして以下のように書けました。
impl dyn Draw {
fn downcast<T: Draw + 'static>(self: Box<Self>) -> Box<T> {
assert!(self.as_ref().as_any().is::<T>());
unsafe {
let raw = Box::into_raw(self);
Box::from_raw(raw as *mut T)
}
}
}
もう少し実用的な例
この記事を書くきっかけとなったより実用的？な例を以下に載せておきます。
あとがき
トレイトオブジェクトは最終手段みたいなところはあるので、使わないにこしたことはないかと思います。
かく言う私も、最近書いていたコードでトレイトオブジェクトを使うつもりでしたが、面倒になって結局 enum にしました。
参考
使ったことはありませんが、そういうことをしたいときのための crate もあるみたいです。
-
trait upcasting という unstable な機能としてはあるみたいです (https://doc.rust-lang.org/beta/unstable-book/language-features/trait-upcasting.html) ↩︎
-
AnyはTypdIdを使って、自身の型と外から渡された型パラメータの照合をしています。Box<dyn Trait>とTは型としては全くの別物であるため、TypeIdも異なります。照合を成功させるためには、as_ref等により&dyn Traitにしてから&dyn Anyにする必要があります。 ↩︎
Discussion