静的テスト詳細 JSTQB Foundation Level新シラバスのキーワード解説!
静的テスト概要
静的テストは、ソフトウェア開発プロセスの一部であり、テスト対象のソフトウェアを実行することなく欠陥を特定する手法です。以下は静的テストの主要な特徴とプロセスです。
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ソフトウェアの非実行 静的テストは、ソフトウェアが実行されていない状態で実施されます。これにより、コードやドキュメントを詳細に分析できます。
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人手とツールによる確認 コードやドキュメントなどの作業成果物は、人手によるレビューまたは静的解析ツールを用いて評価されます。
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多様な評価目的 静的テストは品質向上、欠陥検出、可読性、完全性、正確性、試験性、一貫性などの特性を評価するために用います。
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検証と妥当性確認 静的テストは、作業成果物が要件を満たしているか、または適切に設計されているかを確認するために使用されます。
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早期の欠陥検出 静的テストは、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)の初期段階で欠陥を検出するため、後の開発工程でのコスト削減と品質向上に貢献します。
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広範な適用範囲 要件仕様書、ソースコード、テスト計画書など、ほとんどの作業成果物に静的テストが適用されます。
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シフトレフトのサポート 静的テストは、ソフトウェア開発の早い段階での問題検出を通じて、シフトレフトアプローチをサポートします。
静的テストは、ソフトウェア開発プロセスにおいて重要な役割を果たし、早期の問題検出と修正により、コード品質の向上と開発コストの削減に貢献します。また、ステークホルダー間の共通理解を深め、コミュニケーションを改善する効果もあります。
静的解析で確認可能な作業成果物
静的解析では、作業成果物をチェックするための構造(モデル、コード、および正式な構文を持つテキスト)が必要です。
- 要件仕様書
- ソースコード
- テスト計画書
- テストケース
- プロダクトバックログアイテム
- テストチャーター
- プロジェクトドキュメント
- 契約書
- モデル
静的解析が適さない作業成果物
- 人間による解釈が困難なもの
- ツールで解析してはいけないもの(例えば法規制がある第三者の実行可能コード)
動的テストとは
動的テストは、ソフトウェアテストの一種で、ソフトウェアの実行を伴います。以下は動的テストの主要な特徴とプロセスです:
動的テストの特徴
- 実行を伴う 動的テストでは、ソフトウェアまたはそのコンポーネントが実際に実行されます。
- 結果の比較 実行時の実際の結果を事前に定義された期待される結果と比較します。
- 欠陥の検出 故障を引き起こすことでソフトウェアの欠陥を発見し、それに基づいて関連する欠陥を特定します。
動的テストのプロセス
- テストケースの導出 さまざまなテスト技法やアプローチを用いてテストケースを作成します。
- テスト実行 手動または自動のテストランを通じて、テストケースに基づいてソフトウェアを実行します。
- 結果の記録と分析 テスト結果を記録し、不正を分析して原因を特定します。
動的テストと静的テストの違い
- 動的テストは実行可能な作業成果物に適用され、実行時の動作に焦点を当てます。
- 静的テストはソフトウェアの実行を伴わず、コードのレビューや静的解析などを含みます。
動的テストの実践における考慮事項:
- 欠陥の種類 動的テストでは、静的テストでは発見しにくい特定の欠陥タイプを発見できます。
- 品質特性の測定 動的テストは実行に依存する品質特性(例:性能効率性)を測定するのに適しています。
- 欠陥レポート 動的テスト中に発見された欠陥は、詳細な情報を含むレポートで記録されます。
レビューのフィードバック
早期かつ頻繁なフィードバックは、ソフトウェア開発プロセスにおいて多くの利点を提供します。以下はその主な利点です。
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欠陥の早期発見と修正 早期にフィードバックを得ることで、欠陥や問題点を初期段階で特定し、修正することが可能になります。これにより、開発後期の修正コストや複雑さを軽減できます。
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品質の向上 早期のフィードバックにより、プロダクトの品質を徐々に改善し、最終的な製品の品質を高めることができます。
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リスクの低減 開発プロセスの早い段階で問題を発見することにより、大きなリスクや後戻りを避けることができます。
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プロジェクトの進捗の明確化 頻繁なフィードバックはプロジェクトの進行状況を明確にし、プロジェクト管理を容易にします。
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ステークホルダーとのコミュニケーションの強化 定期的なフィードバックは、ステークホルダーとのコミュニケーションを促進し、要件の変更や調整を迅速に行うことを可能にします。
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チームメンバーの学習と成長 早期のフィードバックによって、チームメンバーは継続的に学習し、スキルを向上させる機会を得ます。
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顧客満足度の向上 顧客のフィードバックを早期に取り入れることで、顧客のニーズに合った製品を作り、顧客満足度を向上させることができます。
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柔軟性と適応性の強化 早期かつ頻繁なフィードバックは、変化する要件や市場の動向に迅速に適応するための柔軟性を提供します。
これらの利点により、ソフトウェア開発プロジェクトはより効率的で効果的に進行し、最終的な製品の成功率を高めることができます。
レビュープロセス
レビュープロセスは、ソフトウェア開発プロジェクトの中で重要な役割を果たします。以下は、ISO/IEC 20246 標準に基づくレビュープロセスの主要なステップです:
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計画フェーズ
- 目的の明確化:レビューの目的を定義します。
- レビュー対象の特定:評価する作業成果物を選択します。
- 品質特性の評価:重点を置く品質特性を決定します。
- 重点領域の選定:特に注意を払う領域を特定します。
- 終了基準の設定:レビューの成功を測る基準を定義します。
- 工数と時間枠の決定:レビューに必要な時間とリソースを計画します。
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レビューの立ち上げ
- 準備の確認:すべての関係者が準備が整っているかを確認します。
- 役割と責任の理解:参加者が自身の役割と責任を理解していることを確認します。
- 必要資料の提供:レビューに必要な資料を提供します。
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個々人のレビュー
- 品質の精査:レビューアが作業成果物の品質を個別に評価します。
- 不正の特定:潜在的な問題や推奨事項を特定します。
- 質問の識別:明確でない点や疑問点を明らかにします。
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共有と分析
- 不正の分析:識別された不正を詳細に分析し、議論します。
- アクションの決定:必要な改善措置を決定します。
- レビューミーティング:参加者と一緒にレビューした内容を評価します。
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修正と報告
- 是正措置のフォローアップ:欠陥に対する修正措置を追跡します。
- 終了基準の評価:レビューの結果をもとに、終了基準が達成されたかを判断します。
- 結果の報告:レビュー結果を文書化し、関連するステークホルダーに報告します。
レビュープロセスは、作業成果物の品質を保証し、プロジェクトの成功をサポートするための重要な手段です。また、レビューは複数回行われることがあり、大規模な作業成果物の完全なカバレッジを確保するために、反復されることがあります。
レビューの役割
レビューにおける各役割は特定の責任を持ち、レビュープロセスの成功に寄与します。以下は、主な役割とその責任の概要です:
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マネージャー
- 責任:レビューする対象を決定し、必要な人員や時間などのリソースを提供します。
- 役割:レビューの範囲と優先順位を設定し、プロセスの支援を行います。
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作成者
- 責任:レビュー対象の作業成果物を作成し、必要に応じて修正します。
- 役割:品質の高い成果物を提供し、フィードバックを元に改善を行います。
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モデレーター(ファシリテーター)
- 責任:レビューミーティングを効果的に運営し、時間の管理や調整を行います。
- 役割:参加者が自由に発言できる安全な環境を提供し、議論を円滑に進めます。
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書記(記録係)
- 責任:レビュー中の不正や決定事項、新たな問題点などの情報を記録します。
- 役割:レビューの詳細を文書化し、追跡可能な記録を提供します。
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レビューア
- 責任:作業成果物を評価し、不正や改善点を特定します。
- 役割:プロジェクト関係者や専門家として、品質の向上に貢献します。
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レビューリーダー
- 責任:レビュー全体の運営と管理を行い、参加者やスケジュールを決定します。
- 役割:レビューが効率的に進行するように統括し、結果を確実にします。
これらの役割は、レビュープロセスをスムーズに進行させ、品質向上や問題の早期発見に貢献するために重要です。また、ISO/IEC 20246 標準によれば、これらの役割は状況に応じてさらに細かく分割することが可能です。
レビュー種別
形式的レビューとは
形式的レビューは、ソフトウェア開発プロセスの一部として行われる厳密なレビュー手法です。以下は形式的レビューの特徴、目的、および種類です:
形式的レビューの特徴
- 定義されたプロセス 形式的レビューは、明確に定義されたプロセスに従って実施されます。
- 文書化された出力 形式的レビューは通常、正式に文書化された結果やアウトプットを生み出します。
- 目的の多様性 形式的レビューは不正の検出だけでなく、品質評価、信頼の構築、教育、アイデア創出など、多くの目的を達成できます。
形式的レビューの目的
- 品質評価 作業成果物の品質を評価し、改善点を特定します。
- 信頼の構築 レビューされる作業成果物に対する信頼を高めます。
- 教育と合意形成 レビュー参加者間での知識共有と合意形成を促進します。
- 新しいアイデアの創出 レビュー中に新しいアイデアや解決策を創出します。
- 作成者のモチベーション向上 作成者に対するフィードバックを通じて、モチベーションの向上を図ります。
形式的レビューの種類
- ウォークスルー 作成者が主導し、レビューアが事前の個人レビューを行うことも可能ですが必須ではありません。
- テクニカルレビュー 技術的に適格なレビューアによって行われ、モデレーターが主導します。
- インスペクション 最も形式的なレビューで、汎用プロセスに完全に従います。メトリクスの収集とプロセス改善に重点を置きます。
形式的レビューの実施
- 形式的レビューは、SDLCや開発プロセスの成熟度、作業成果物の重要性・複雑度、法的・規制上の要件に基づいて選択されます。
- 作業成果物は、初期の非形式的レビューから始まり、後に形式的レビューを実施することもあります。
非形式的レビュー
非形式的レビューは、ソフトウェア開発の重要な要素で、以下の特徴を持っています。
特徴
- プロセスの柔軟性 非形式的レビューは、厳格なプロセスや手順に従う必要がなく、より柔軟に実施されます。
- 文書化の省略 正式に文書化されたアウトプットを必要としません。これにより、迅速なフィードバックと簡易な記録が可能になります。
- 主要な目的 不正の検出です。これには、設計上の問題や潜在的な欠陥の早期発見が含まれます。
レビューのプロセス
- 柔軟なアプローチ プロジェクトのニーズやリソースに応じて柔軟に調整できます。
- 簡易な実施: 複雑な準備や後処理を必要とせず、迅速な意見交換が可能です。
- 重要性と複雑度の評価 レビューされる作業成果物の重要性と複雑度に応じて、非形式的レビューが適用されます。
適用の場面
- 初期のフィードバック 作業成果物の初期段階で意見を集め、方向性を調整するのに適しています。
- 低リスクのドキュメント 法的または規制上の要件が低く、監査証跡の必要性が少ないドキュメントに適しています。
ウォークスルーとは
ウォークスルーは、ソフトウェア開発プロセスの一環として行われる特定のレビュー手法です。以下はウォークスルーの主要な特徴と目的です。
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作成者主導 ウォークスルーは、作業成果物の作成者が主導し、その内容をレビューアに説明します。
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多目的 このレビュー手法は、品質評価、作業成果物に対する信頼の構築、レビューアの教育、合意形成、新しいアイデアの創出、作成者のモチベーション向上と改善、不正の検出など、多岐にわたる目的を達成することが可能です。
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対話的アプローチ ウォークスルーは対話形式で行われ、レビューアと作成者間のアイデアの交換や問題の解決を促進します。
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レビューアの参加 レビューアはウォークスルーに参加することで、作業成果物に関する深い理解を得るとともに、フィードバックや改善提案を提供します。
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柔軟性 レビューアはウォークスルーの前に個人的なレビューを行うことができますが、これは必須ではありません。
ウォークスルーは、特に新しいアイデアや概念の共有、合意形成、共同作業の促進を目的とした状況に適しています。これにより、チームメンバーは共通の理解を深め、作業成果物の品質を向上させることができます。また、ウォークスルーは比較的非形式的なアプローチであるため、より柔軟で参加しやすい環境を提供します。
テクニカルレビューとは
テクニカルレビューは、ソフトウェア開発プロセスにおける一種の形式的レビューで、主に技術的な問題に焦点を当てたレビュー手法です。以下はテクニカルレビューの主要な特徴と目的です:
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技術的専門性 テクニカルレビューは技術的に適格なレビューアによって実施され、専門的な知識が求められます。
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モデレーターの役割 レビューはモデレーターによって主導され、レビューの進行と効果的な結果の確保に役立ちます。
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目的の多様性 テクニカルレビューは、技術的な問題の解決だけでなく、不正の検出、品質評価、信頼の構築、新しいアイデアの創出、作成者のモチベーション向上など、多岐にわたる目的を達成することが可能です。
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コンセンサス形成 レビューの過程で技術的な判断について合意を得ることが重要で、これにより作業成果物の品質が向上します。
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協力的アプローチ レビューア間の協力と意見交換により、作業成果物の理解を深め、改善を図ることができます。
テクニカルレビューは、特に複雑で技術的な内容を含む作業成果物の評価に適しており、品質保証の一環としてソフトウェア開発プロジェクトにおいて重要な役割を果たします。これにより、開発プロセス全体の効率と品質が向上し、リスクの軽減が図られます。
インスペクションとは
インスペクションは、ソフトウェア開発のプロセスにおけるフォーマルなレビュープロセスの一つです。この手法は、1970年代にMichael FaganによってIBMで開発されました。インスペクションは、ソフトウェアの要件、設計、コード、その他のドキュメントを精査し、欠陥や問題点を早期に特定することを目的としています。
※インスペクションを説明すると分厚い本一冊分になります
インスペクションは、最も形式的なレビューの一種であり、以下の特徴を持ちます。
- プロセスの従順 汎用プロセスに完全に従って行われます。
- 目的 主な目的は不正を最大数発見することですが、品質評価や作業成果物に対する信頼の積み上げ、作成者のモチベーションの向上と改善も目指します。
- メトリクスの収集 メトリクスを収集してインスペクションプロセスを含むSDLCを改善するために使用します。
- 作成者の役割制限 インスペクションでは作成者はレビューリーダーや書記として活動することはできません。
インスペクションは、品質の高いソフトウェアや製品を確保するための重要なプロセスであり、厳格なチェックと詳細な分析を通じて欠陥や問題を特定することに焦点を当てています。
インスペクションのプロセス
インスペクションは、以下の基本的なステップからなるプロセスを経て行われます:
- 計画 参加者の選定、役割の割り当て、タイムラインの設定など、インスペクションの全体的な計画を行います。
- 概要セッション ドキュメントの作成者が参加者に対して、検討対象の内容について概要を提供します。
- 個別のレビュー 各参加者は、事前に提供されたドキュメントやコードを個別に精査します。
- インスペクションミーティング 参加者全員で集まり、発見された欠陥や問題点について議論を行います。
- 修正 作成者は、インスペクションミーティングで議論された欠陥を修正します。
- フォローアップ 指摘された欠陥が適切に修正されたかを確認するための追跡活動を行います。
インスペクションの利点
- 早期の欠陥検出 インスペクションは、開発ライフサイクルの早い段階で欠陥を発見するのに非常に効果的です。これにより、後の段階での修正コストを削減することができます。
- 品質の向上 インスペクションを定期的に行うことで、全体的なソフトウェアの品質を向上させることができます。
- 知識の共有 インスペクションプロセスは、チームメンバー間での知識や情報の共有の機会としても機能します。
インスペクションを成功させるために
- インスペクションのプロセスを事前に組織やプロジェクトで定義し、チェックリストのテンプレート作成する
- 公式性の高いインスペクションのレビューミーティングでは、各レビューアは気がついたことを指摘する
- インスペクションの工数は実績として記録しておき、レビューのコスト削減を目的として、インスペクションのプロセスの評価と継続的な改善に利用する。
レビューの成功要因
レビューの成功にはいくつかの重要な要因があります。これらはレビュープロセスを効果的にするために必要な要素です:
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明確な目的と測定可能な終了基準の定義
- レビューの目的を明確にし、その目的を達成したことを示す具体的な基準を設定する必要があります。
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目的に合ったレビュー種別の選択
- 作業成果物の種類、レビュー参加者、プロジェクトのニーズや状況に応じて、最も適したレビューのアプローチを選択します。
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レビュー対象の分割と集中力の維持
- レビューは、参加者が集中力を保てるような小さな部分に分割して実施することが重要です。
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フィードバックの提供と改善の促進
- ステークホルダーや作成者に対して有益なフィードバックを提供し、プロダクトや活動の改善を支援します。
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十分な準備時間の確保
- 参加者がレビューに十分に準備できるように、適切な時間を与えます。
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マネジメントの支援
- レビュープロセスに対する組織のリーダーシップ層からの支援が必要です。
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レビューの組織文化への統合
- レビューを組織の文化の一部として定着させ、継続的な学習とプロセスの改善を促進します。
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適切なトレーニングの提供
- 全ての参加者が自分の役割を理解し、適切に果たせるようにトレーニングを提供します。
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ミーティングのファシリテーション
- 効率的で生産的なレビューミーティングを実施するためには、適切なファシリテーションが必要です。
これらの要因は、レビュープロセスが効果的に進行し、期待される結果をもたらすために重要です。
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