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PC-1210の液晶を交換する

2023/01/30に公開

PC-1210とは

シャープのポケコンのこと。世界初のポケコンと言われている。
http://retropc.net/ohishi/museum/pc1211.htm)
RAMがたった1kbしかない4bitのポケコンだが、BASICが動くのでとても面白い。高校生の頃、父親から譲り受けて使っていた。

液晶劣化について

この頃のシャープのポケコンは、液晶枠を固定している両面テープの基材(又は溶剤)が悪さをし、液晶を犯してしまう。そのせいで、どの機種もだんだんと液晶が潰れて、ついには全く見えなくなってしまう。私が持ていた個体も、ドンドン状態が悪くなってしまい、ここ数年は全く文字が判別できない状態であった。

写真のように、文字の判別が非常に困難で、上部のインジゲータは全く見えない。

10年ほど前は、劣化していく液晶をただ眺めるしかなかった。とうとうゴミの日に捨ててしまおうかと思っていた矢先、交換用の互換液晶を販売している海外の熱狂的なユーザがいることがわかった。そこで、交換用液晶を入手し、液晶のリプレイスを行う。

分解


まずは本体を分解する。分解前のネジ配置などはこれを参考に。

ネジを外して、穴の横に置いてみたところ。分解すると戻すべきネジがだんだんわからなくなるので、こういう写真をとっておくと心強い。


本体基板を取り去ったところ。この黄色いプラスチックは不要なので外す。枠の部分は再利用するので、プラスチップだけ外すようにする。といっても、自分の場合黄色いプラ+枠ごと外れてしまい、それらを更に分解してもとに戻し、マスキングテープで固定する羽目になった。


基板から液晶を分離する。写真に取れていないが、実際には金属の爪をマイナスドライバやペンチ・ノーズプライヤなどを用いて持ち上げて分離する。基板は2枚重ねになっているので、50~70度くらいまで思い切って開いて作業すると良い。爪の周囲はパターンもそこまで走っておらず(現代の基板よりは、という意味だが)、作業リスクは比較的少ないが、基板周囲にマスキングテープを貼って保護すると安全性が高い。指をけがしてしまわないように気をつける。

ついでに、透明のカバー(プラ板)をコンパウンドなどで清掃しておくときれいになって気持ち良い感じになる。

液晶が分離できたら、裏面にあるゼブラゴムを取り外す。伸ばして長さが変わってしまわないように、そして油分がつかないように慎重に行う。私自身はこの工程でゼブラゴムを外し忘れてしまい、後工程でペイント薄め液に誤ってそのまま漬けてしまったことから、ゼブラゴムをだめにしてしまった。部品取りで良かった。

ゼブラゴムを外すとこのようになる。

液晶のユニットをアセトンにつけて3時間程度まつ。3時間待ったら、外の金属枠と液晶を分離する。私ははじめ、アセトンが入手できずペイント薄め液を使ったが、灯油状の激臭に一晩悩まされた上、全然効果がなかった。その上、ゼブラゴムを装着したままだったためゴムが油を吸って伸びてしまった。ゼブラゴムを外してアセトンに漬け込むのが良い。ある程度時間をかければ、分離自体は難なく行える。


分離が終わったら、液晶外枠の清掃を行う。ここの両面テープが液晶劣化の原因とされているので入念に。まず、割り箸などをカッターで切って先を整えておき、大まかに除去する。その後、燃料用アルコールやIPAなどで清掃を行い、しっかりきれいにする。


枠の穴が開いている方を右に置き、液晶のガラス凸部分を左にしてセットする。凸部分に隙間ができるため、紙で埋める。上下にも多少動くがあまり問題ない。

液晶の端子部分をアルコールなどで清掃し、ゼブラゴムを装着する。まっすぐ装着するとゴムが余ってしまう事がある。というより多少余るようだが、多少うねらせるように装着すると良い。寸法誤差で吸収される。ゼブラゴムの導通ピッチにたいして、液晶の導通ピッチのほうが十分大きいため、多少ゴムが歪んでいても誤差が吸収される。

液晶を注意深く基板に戻し、金属の爪を元に戻す。筐体に組み込んでネジを戻せば作業完了。

すべての作業が終了し、組み込んだところ。新品同様になった。なお、液晶コントラスト調整のための半固定抵抗を調整したほうが良いとの情報があったが、私の個体は行わなくても十分だった。

駆動用電池

駆動用水銀電池は手にはいらないので、空気亜鉛電池(PR44)やアルカリ電池(LR44)を用いる。PR44が1.4v、LR44が1.5vに対し、指定の水銀電池が1.35vであるので、高い方の電圧誤差が発生し、誤動作・故障・動作不良の原因になるそうである。そのため、1本はダミーを入れ、3本で使用することがセオリーだそうだ。私は1本はアルミホイルなどを丸めて詰めることにした。3本駆動でPR44、LR44ともに問題なく動作することがわかった。

水銀電池4本だと5.4vに対して、PR443本だと4.2v(4本の場合5.6v)、LR44が3本だと4.5v(4本の場合6v)なので、PR44であれば4本で使っても問題ないのかもしれない。面倒なので未確認。年代物の機器なので、過電圧はよくないだろう。

所感

  • 部品取りに使ったPC-1211の海外モデル(TRS-80 PC-1)と若干構成が異なることに驚いた。SRAMの個数が少ないことと、PC-1の方は外部基板(写真に写っている茶色のドーターボード的なもの)が装着されていない。PC-1210もほうがより初期のモデルということもあるのか、興味深い。

  • リプレイス用の液晶には、もう捨てようと思ってまさにゴミ袋に入れ、あとはゴミの日を待つばかりというところまで行ったところで発見したため、たいへん感慨深かった。まさかオリジナルで特注の液晶を発注した変態がいたなんて、普通考えない。捨てなくてよかった。有益な情報を掲載してくださったTwitterの方に感謝です。

  • 高校生の頃あれだけやったBASICを全部忘れてしまった。何もできない。マニュアルはネット上でちらほら転がっていので、また暇を見てチャレンジしてみようか。

先輩の記録

大変参考にさせていただきました。ありがとうございます。
https://abura-chan.hateblo.jp/entry/2020/11/23/233253

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