ここでは従業員エンゲージメントパルスサーベイの運用の流れについて説明します。
従業員エンゲージメントパルスサーベイの運用の流れ
従業員エンゲージメントパルスサーベイの運用の流れは以下のようになっています。
1. アンケートの実施
従業員エンゲージメントを確認するためのアンケートを実施します。
アンケートは
- 10問前後の設問
- 設問ごとに5段階でスコアリング
- 月次
- アンケート期間は1週間程度
で実施されるのが一般的です。
設問の例
設問の1例として以下のような内容が考えられます。
Q. 仕事を進めるために必要となるリソース(人、時間、予算、情報、権限、設備等)が提供されている
1. リソースは不足しており、何も対策されていない
2. リソースは不足しており、対策しているが不十分だ
3. リソースは不足しているが、対策が功を奏している
4. リソースは十分だが、しばしば不足する
5. リソースは十分で、不足することもほとんどない
この例の場合、回答の選択肢は個別の文章になっていますが、
- 全く感じない
- やや感じる
- どちらともいえない
- やや感じる
- 強く感じる
などのようにすべての設問で共通の選択肢にする場合もあります。
2. サーベイの分析レポートの配布
サーベイの運営担当は、分析レポートを作成し、各部の改善責任者[1]に配布します。
分析レポート
分析レポートは2種類あります。
単月レポート - サーベイの実施月に関する結果がまとめられたレポート
以下のような内容を扱うのが一般的です。
- 平均値
- 中央値
- 分散
- 最高値
- 最低値
推移レポート - 過去からの推移や前月からの変化がまとめられたレポート
以下のような内容を扱うのが一般的です。
- 推移のグラフによる過去からの変化の傾向
- 前月からの変化が大きな項目と変化率
3. アンケートの結果分析
各部の改善責任者は、関係者と協力し、分析レポートを確認し、アンケート結果の分析を行います。
- 前月から大きくスコアが低下した設問がなぜ低下したのかを話し合う
- 前月から大きくスコアが上昇した設問がなぜ上昇したのかを話し合う
- 低スコアの設問のうち、解決対象として取り扱う対象を選択する
- 大きくスコアが低下した設問のうち、解決対象として取り扱う対象を選択する
- 組織施策を実施していた場合、その影響を確認する
改善対象のフォーカス
従業員エンゲージメントパルスサーベイは毎月実施します。
そのため、改善対象を広く扱いすぎると改善しきれなくなってしまいます。
基本的には、最も重要と考えられる問題1つに常に注力することをおすすめします。
問題の解決と理想の実現
従業員エンゲージメントパルスサーベイは従業員エンゲージメントが高い状態を実現するためのものです。改善対象として、問題の解決と理想の実現の側面があります。
問題の解決は、従業員エンゲージメントが特に低い部分に着目し、普通以上にする動きにあたります。これは退職リスクの低減など、過度に質の低い状態からの脱出と言えます。
一方で、従業員エンゲージメントパルスサーベイは高いエンゲージメントを実現するのが目的です。目的に立ち返った場合、問題の解決は初手に過ぎず、理想の実現が必要です。
理想の実現は各設問において最高の状態になっていないものを最高に近づける動きにあたります。
例えば、「強みの発揮」という項目があった場合、そもそも強みを発揮してもらうことにつながる施策がなにもなく、スコアが低い状態から最低限の施策を開始し、どちらかというとポジティブなスコアになっていくのが問題の解決にあたります。
そこにとどまらず、強みを発揮できる状況を意図的に作り出し、実際にほとんどの従業員が常に強みを発揮できている、と実感し、スコアにも反映されている状態が理想の実現にあたります。
そのため、「概ねポジティブな状態だから対応は特に不要」という判断をするのではなく、「いかに最高の状態を実現していくか」という判断をしていくのが、従業員エンゲージメントパルスサーベイの本当の活用法と言えるでしょう。
4. 追加調査の実施
各部の改善責任者は、関係者と協力し、解決対象の設問について追加調査[2]を実施します。
これにより問題を明確化するための情報を集めます。
追加調査の例
例えば、設問の例で紹介した「リソース」に関する設問のスコアが低かった場合、
- どんな種類のリソースが不足しているのか?
- なぜ不足しているのか?
について関係者から情報を得ることになります。
5. 問題の明確化
各部の改善責任者は、関係者と協力し、追加調査で得た情報をもとに問題を明確化します。
問題の明確化の例
例えば、設問の例で紹介した「リソース」に関する設問のスコアが低く、それに関して追加調査をした結果、
- 開発~導入~運用の3チームで連携している業務において、各チーム間の連携として必要となる定型の流れがあるが、その内容が手順化されていないために、毎回手探りで実施されている
- 結果としてトラブルが発生しやすく、そのリカバリーのための工数が膨らんでいる
という情報があった場合、「チーム連携の手順化不足」という形で明確化します。
また、明確化した内容を関係者で認識合わせし、ズレがない状態になったらいよいよ改善に進みます。
6. 解決策の立案
各部の改善責任者は、関係者と協力し、明確化した問題に対する解決策を立案します。
解決策の立案の例
例えば、問題の明確化の例で紹介した「チーム連携の手順化不足」の問題があった場合、
- チーム間の連携時に必要となる業務の流れを洗い出す
- 洗い出した結果を整理し、質・効率の高いプロセスに落とし込み、手順化する
- 整えた手順を文書化し、各部内の業務プロセスに組み込む
というような解決策が考えられます。
7. 解決策の実施
各部の改善責任者は、関係者と協力し、解決策を実施します。
8. 改善結果の確認
各部の改善責任者は、解決策の実施後に、問題が解決したことを関係者と確認します。
また、解決を確認した翌月以降の従業員エンゲージメントパルスサーベイにおいて、該当する設問のスコアが上昇していることを確認します[3]。
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改善責任者はサーベイの結果を確認し、組織改善を主導する主担当者。通常、各部門の部門長や、その下にあるグループのマネージャーなどが改善責任者になります。部門長であれば、部門全体に関わる改善を推進し、グループマネージャーであればグループ内の改善を推進します。 ↩︎
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多くの場合、スコアだけでは問題点を把握できないため、追加調査が必要になります。追加調査の方法には「関係者による対話」「追加アンケート」「個別インタビュー」などがあります。 ↩︎
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従業員エンゲージメントパルスサーベイは実施頻度が高いため、10問程度の少ない設問数で実施します。そのため、問題を解決したはずが、別の要因でスコアが低下する場合もあります。 ↩︎