このチャプターについて
ここまで Promise chain でのマイクロタスク発行による非同期処理を見てきました。「単一タスクを実行したら、すべてのマイクロタスクを処理する」というのがイベントループの重大ルールです。
このチャプターでは、タスクによる非同期処理と、マイクロタスクをかませることで逐次処理やエラーハンドリングをやりやすくする "Promisification" という手法について解説しておきます。
タスク発行
『非同期 API と環境』のチャプターで説明したとおり、setTimeout()
は非同期の Web API です。
setTimout(cb, delay)
の形で cb
にはコールバック関数、delay
には遅延時間をミリ秒が単位で指定することで、その時間が経ってからコールバック関数を実行できます。つまり、このコールバック関数は非同期的に実行されます。
この処理はコードのスケジューリングをするわけですが、処理の実態は「並列的に環境側で指定した時間を計測して、時間経過後に登録したコールバック関数をタスクキューへ送信する」というものです。登録したコールバック関数は実際に処理されるタイミングは、イベントループの機構においてタスクキューからコールスタックへと配置されてスタック上でトップとなった瞬間です。
// timeout.js
console.log('🦖 [1] MAINILNE: Sync');
setTimeout(() => {
console.log('⏰ [5] TIMERS: 3000ms でタイムアウト');
}, 3000); // 3000ミリ秒後に実行したい(3000ミリ秒後にタスクキューへ発行)
setTimeout(() => {
console.log('⏰ [4] TIMERS: 2000ms でタイムアウト');
}, 2000); // 2000ミリ秒後に実行したい(2000ミリ秒後にタスクキューへ発行)
setTimeout(() => {
console.log('⏰ [3] TIMERS: 1000ms でタイムアウト');
}, 1000); // 1000ミリ秒後に実行したい(1000ミリ秒後にタスクキューへ発行)
console.log('🦖 [2] MAINILNE: Sync');
実行すると次の出力を得ます。
❯ deno run timeout.js
🦖 [1] MAINILNE: Sync
🦖 [2] MAINILNE: Sync
⏰ [3] TIMERS: 1000ms でタイムアウト
⏰ [4] TIMERS: 2000ms でタイムアウト
⏰ [5] TIMERS: 3000ms でタイムアウト
Visualizer で可視化してみたので次のリンクから確認してください。
- setTimeout.js - JS Visualizer
- ⚠️ 注意: JS Visualizer ではグローバルコンテキストは可視化されないので最初のマイクロタスク・タスク実行のタイミングについて誤解しないように注意してください
- ⚠️ 注意: タスクキューへのタスクを入れるタイミングに実装ミスと思われる部分があるので注意してください (タイマーの指定時間が経過した順番にタスクキューへ入れられるはずのところが、タイマーの起動順番にタスクキューへと入れられてしまっています)
タスクキューへと追加されるのが分かると思います。
タスクベースの非同期 API について
MDN のドキュメントでは、非同期 API の理想はコールバックのスタイルでタスクを発行するよりも、Promise を返してマイクロタスクを発行するものであることが望ましいという旨 が読み取れます。
そして、タスクを発行するタイプの Callback-based API を Promise でラップすることでエラーハンドリングなどが行いやすくなります。
Promisification
上で述べたように Promise インスタンスによってタスクベースの非同期処理 (つまり古いタイプの非同期 API) をラップする手法は "Promisifying" または "Promisification" と呼ばれます。
ただし、最近は手動でやることはあまりやらないらしいです。というのも、単純に非同期 API 自体 Promise-based であるものが出てきています。また、古いタイプの API をラップするのでも、例えば Node 環境では promisifying
関数というのが util module にあり、これを使うことで手動ラップすることなく Promisification ができるようになっています。
Deno 環境などではほとんどすべての非同期 API が Promise インスタンスを返しますし、setTimeout()
でさえも Promise で手動ラップする必要も実はなく、Promise を返すタイマーが std の1つとして提供されています。
Node 環境でも Promise-based な非同期 API が色々提供されており、Promise を返すタイマー処理も存在しています。
とは言っても内部で、Promise でラップしていることもありますし、手動でラップする方法を学んでおいて損はないので解説します。単純に new Promise()
によってラップするだけです。
なるべく低水準でラップして直接的に呼び出さないようにします。
const promiseTimer = (delay) => {
return new Promise((resolve) => {
setTimeout(() => {
resolve();
}, delay);
})};
promiseTimer(1000)
.then(() => console.log("Timeout"))
.then(() => console.log("Next action"));
これで、特定時間が経過したら何かする、それが完了したらまた何かするというのがやりやすくなります。
Visualizer で可視化したので、確認してみてください。
- promiseTimer.js - JS Visualizer
- ⚠️ 注意: JS Visualizer ではグローバルコンテキストは可視化されないので最初のマイクロタスク・タスク実行のタイミングについて誤解しないように注意してください
はじめにタスクが発行されてタスクキューへと送られていますね。タスクキューからコールスタックへと送られて、resolve()
が呼び出されます。それによって待機状態の Promise は履行状態となるため、.then()
メソッドのコールバックがマイクロタスクキューにマイクロタスクとして送られます。そしてマイクロタスクがコールスタックに積まれ実行されることで更にマイクロタスクが発生して、すべてのマイクロタスクが処理されてコールスタックが空になるとイベントループは終了します。
Promise でラップして使わない場合にはコールバックをいくつもネストする必要がでてくるので、いわゆる Callback Hell になります。その形から "Pyramid of doom" とも呼ばれます。
setTimeout((value) => {
console.log(value, "[1]");
setTimeout((value) => {
console.log(value, "[2]");
setTimeout((value) => {
console.log(value, "[3]");
setTimeout((value) => {
console.log(value, "[4]");
setTimeout((value) => {
console.log(value, "[5] 頂点");
}, 1000, value);
}, 1000, value);
}, 1000, value);
}, 1000, value);
}, 1000, "タイムアウト");
/* 出力結果
❯ deno run pyramidDoom.js
タイムアウト [1]
タイムアウト [2]
タイムアウト [3]
タイムアウト [4]
タイムアウト [5] 頂点
*/
また、Promise でラップすることによって、Async function にて await
式を使って完了を待てるようになります。
// simplePromisify.js
const promiseTimer = (delay) => new Promise((resolve) => setTimeout(resolve, delay));
(async function doAsync() {
await promiseTimer(1000);
console.log("timeout!");
await promiseTimer(1000);
console.log("timeout!");
})();
// 即時実行関数
例えば、これで何が嬉しいかというと次の関連する処理まで一時的に時間を置きたいという要望を叶えることができます。上で定義した promiseTimer()
を sleep()
という名前で再び定義して考えてみます。複数回のリクエストをおこなような操作を対象となるサーバーに負荷をかけないように時間間隔を置くことである程度分割して行うようにしたい場合、この sleep()
によって async 関数内の次の処理を指定時間以上あけるようにできます。
function sleep(time) {
// resolve の名前は何でもよいので短い r にしておく
return new Promise(r => setTimeout(r, time));
}
(async () => {
await multipleFetch(); // 複数の fetch を行う async 関数だとする
await sleep(3000).then(() => console.log("3秒以上経過したから再度リクエスト"));
await multipleFetch();
await sleep(3000).then(() => console.log("3秒以上経過したから再度リクエスト"));
await multipleFetch();
console.log("async 関数内のすべての処理が終了しました");
})();
async 関数の外側で何らかの別の処理が走っている可能性もありイベントループのマイクロタスクキューで別の待ちタスクなどがあれば、3秒よりももっと多くの時間遅延します。
実際に Deno では標準モジュール (std) の async
モジュールで提供される delay()
関数はこのように作られています。リポジトリでは次の場所に存在しています。上で定義したものより緻密に作られていますが内部的には setTimeout()
をちゃんと使っていることが分かります。