付録A マクローリン展開

 関数f(x)が無限回微分可能であるとき、関数列\{1, x, x^2, x^3, ...\}を使って級数展開すると

\tag{A.1} f(x) = \sum_{n = 0}^{\infty} \frac{f^{(n)}(0)}{n!}x^n

が得られる。この級数によって、xが十分に小さいときにf(x)の近似式を得ることができる。式(A.1)をマクローリン展開という。

付録B 関数の内積と直交性

 区間[a, b]で定義される関数f(x)、g(x)について、関数の内積を

\tag{B.1} <f(x), g(x)> = \int_a^b f(x)g(x) dx

と定義する。このとき、自分自身以外との内積が0になる性質を直交性という。三角関数は積和の公式より直交性を有しているため、

\tag{B.2} \begin{aligned} \int_{-\pi}^{\pi}(\sin nx \cdot \sin mx) dx &= \begin{cases} 0&(n \neq m)\\ \pi&(n = m) \end{cases} \\ \int_{-\pi}^{\pi}(\cos nx \cdot \cos mx) dx &= \begin{cases} 0&(n \neq m)\\ \pi&(n = m) \end{cases} \\ \int_{-\pi}^{\pi}(\cos nx \cdot \sin mx) dx &= 0 \end{aligned}

が成り立つ。

付録C 区分的に滑らか

 区間[a, b]上の関数f(x)が次の条件を満たすとき、f(x)は区間[a, b]において区分的に連続であるという。

  1. [a, b]に属する有限個の点を除いてf(x)は連続である
  2. 各不連続点において左側極限\displaystyle\lim_{a \to x-0}f(a)と右側極限\displaystyle\lim_{a \to x-+0}f(a)は有限な値が存在する

さらに、導関数f'(x)が区分的に連続であるとき、f(x)を区分的に滑らかであるという。

付録D 絶対可積分

 関数f(x)の絶対値|f(x)|-\inftyから\inftyまでの積分が有限となること、つまり

\tag{D.1} \int_{-\infty}^{\infty}|f(x)| dx < \infty

を満たすとき、f(x)は絶対可積分であるという。

付録E デルタ関数(単位インパルス関数)

 ある区間[-r, r]の間だけ高さを持つ矩形関数

\tag{E.1} \delta_r(t) = \begin{cases} \frac{1}{2r} &(t \in [-r, r]) \\ 0 &(t \in (-\infty, -r) \cup (r, \infty)) \end{cases}

が与えられたとき、r \to 0で得られる極限関数(極限を用いて定義される関数)を\delta(t)とする。
 式(E.1)における\delta(t)を(ディラックの)デルタ関数、もしくは単位インパルス関数と定義する。この時、\delta(t)は積分を行なうと常に1となる関数、つまり面積が常に一定な関数と定める。ここで、デルタ関数の定義式を式(E.2), (E.3)に示す。

\tag{E.2} \delta(t) \coloneqq \lim_{r \to 0}\delta_r(t) = \begin{cases} \infty &(t = 0) \\ 0 &(t \neq 0) \end{cases}
\tag{E.3} \int_{-\infty}^{\infty}\delta(t)dt = \int_{-\varepsilon}^{\varepsilon}\delta(t)dt = 1 \quad (\varepsilon \in \mathbb{R})

 デルタ関数の定義において式(E.2)と式(E.3)は矛盾した関係である。\delta(t)t = 0のとき\inftyを取るが、値として\inftyを取るのではなく、t = 0のときにのみ値を取ることを表現しているにすぎない。そのため、式(E.2)を用いずにデルタ関数を定義する理論も存在する。
 デルタ関数は関数のように扱えるが、通常の関数では許されない特徴を持っており、このような関数を超関数という。ここで、ある区間において値を取る関数を考え、この関数をデルタ関数との積の形にすることで、近似関数を考えることができる。これにより、不連続な関数についても、近似的に微積分を考えることができる。
 デルタ関数の関数としての基本的な性質として、次の3つが成り立つ。

\tag{E.4} (I) \quad f(0) = \int_{-\infty}^{\infty}f(t)\delta(t)dt

証明)
\delta(t)t \neq 0のとき0を取るので、積分区間(-\infty, \infty)の積分において関数f(t)が積分の結果に寄与するのはt = 0のときのみである。よって、

\begin{aligned} \int_{-\infty}^{\infty}f(t)\delta(t)dt &= \int_{-\infty}^{\infty}f(0)\delta(t)dt \\ &= f(0)\int_{-\infty}^{\infty}\delta(t)dt \\ &= f(0) \end{aligned}

(証明終了)

\tag{E.5} (I\hspace{-.1em}I) \quad f(a) = \int_{-\infty}^{\infty}f(t)\delta(t - a)dt

証明)
 式(I)の右辺より、x = t - aとするとt = x + aとなるので、

\begin{aligned} \int_{-\infty}^{\infty}f(t)\delta(t - a)dt &= \int_{-\infty}^{\infty}f(x + a)\delta(x)dx \\ &= f(a)\int_{-\infty}^{\infty}\delta(x)dx \\ &= f(a) \end{aligned}

(証明終了)

\tag{E.6} \begin{aligned} (I\hspace{-.1em}I\hspace{-.1em}I) \quad f(t) &= \begin{cases} f[n] & (n \in \mathbb{Z}, t = n) \\ 0 & (otherwise) \end{cases} におけるf(t)とf[n]の関係は、 \\ f(t) &= \sum_{n = -\infty}^{\infty}f[n]\delta(t - n) \end{aligned}

証明)
 不連続な関数f[n] (n \in \mathbb{Z})についてある区間を考え、この区間においてf[n]n_1, n_2, \dots, n_NN個の値を取るものとする。このとき、連続な関数f(t)を次のように考えることができる。

\begin{aligned} f(t) &= f[n_1]\delta(t - n_1) + f[n_2]\delta(t - n_2) + \cdots + f[n_N]\delta(t - n_N) \\ &= \sum_{n \in \{n_1, n_2, \dots, n_N\}}f[n]\delta(t - n) \end{aligned}

ここで、右辺についてt = nのとき\delta(t - n)が値を持つため値f[n]を取り、t \neq nのとき\delta(t - n)0を取るため値0を取る。よって、f[n]が整数全体で値を取るものとすると、

f(t) = \sum_{n = -\infty}^{\infty}f[n]\delta(t - n)

が成り立つ(証明終了)。