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オールインワンな開発環境をanyenvで構築する

2021/03/26に公開

はじめに

anyenvはバージョンマネージャと呼ばれるツール群を一元管理可能にするツールです。公式が"All in one for env"と謳っており、anyenvだけをインストールすればほとんどのバージョンマネージャを一言管理できるというシンプルさがあります。今回はそんなオールインワンなツールanyenvを紹介します。

なぜバージョンマネージャが必要なのか

世の中には数多くのプログラミング言語が存在し、必ず開発環境を構築することは避けて通れません。プログラミングの環境構築中によくある問題として、特定のバージョンによって動かないパッケージの存在など、プロジェクト毎に異なるバージョンを使いたいといったケースが存在します。またプログラミング言語がバージョンアップするたびに開発環境の構築方法が変わったりすることも多くあるため、複数のバージョンを使用するときに苦労を強いられることもあります。

そんな時に活躍するのが、env系ツール、通称バージョンマネージャとなります。

Rubyならrbenv,Node.jsならnodenvといったように各言語にはOSSとして公開されている有名なツールが存在します。

バージョンマネージャを使用することでプログラミング言語、バージョンをコントロール簡単にコントロールできるようになるので多くの開発現場で採用され根強い人気を誇っています。

anyenvでインストールできるもの

最新版のv1.1.5(2024年4月現在時点)では以下のバージョンマネージャをanyenv経由でインストール可能です。

ツール名 対象の環境・言語
Renv R
crenv Crystal
denv D
erlenv Erlang
exenv Elixir
goenv Go
hsenv Haskell
jenv Java
jlenv Julia
luaenv Lua
nodenv Node.js
phpenv PHP
plenv Perl
pyenv Python
rbenv Ruby
sbtenv sbt
scalaenv Scala
swiftenv Swift
tfenv Terraform

インストール

実行環境

  • Ubuntu 22.04 LTS (WSL2)
  • macOS Sonoma 14.4.1

手動インストール

anyenvはGitHub上で公開されているため、GitHubから直接クローンしてセットアップできます。
https://github.com/anyenv/anyenv

GitHubからクローンするメリットとして特定のパッケージマネージャや、環境に依存しないことが挙げられます。

早速anyenvを手動でセットアップしていきましょう。

まず、Gitを使いリポジトリをローカルにクローンします。Gitコマンドを使うため、事前にGitコマンドがインストールされている必要があります。

# Gitのバージョンを確認
$ git --version
git version 2.34.1

Gitが使用できない場合は別途セットアップを行う必要があります。セットアップ方法についてはGitHubが公開している以下の資料を参考にしてください。
https://docs.github.com/ja/get-started/getting-started-with-git/set-up-git

gitが使用できることを確認したら、anyenv本体をローカル環境にクローンします。

$ git clone https://github.com/anyenv/anyenv ~/.anyenv

クローンが終わると、ユーザーのホームディレクトリに.anyenvディレクトリ生成されます。

$ ls -a

. .. .anyenv

クローンしただけでは、パスが通っていないためパスを通します。
シェルにbashを利用している場合は以下のコマンドを実行。

bash
$ echo 'export PATH="$HOME/.anyenv/bin:$PATH"' >> ~/.bash_profile

zshを使用している場合は以下のコマンドを実行します。

zsh
$ echo 'export PATH="$HOME/.anyenv/bin:$PATH"' >> ~/.zshrc

コマンドを実行したら設定を有効化するためシェルに再ログインします。以下のコマンドで再ログインできます。

# シェルを再起動
$ exec $SHELL -l

つづいて、anyenvの初期化をしていきます。ターミナルで以下のコマンドを実行。

$ anyenv init

# Load anyenv automatically by adding
# the following to ~/.bash_profile:

eval "$(anyenv init -)"

コマンドを実行すると設定の手順が表示されます。指示に従い、設定ファイル(この場合は.bash_profile)へ初期化処理を記述し初期設定を完了させます。

$ echo 'eval "$(anyenv init -)"' >> ~/.bash_profile

コマンド実行後、シェルに再ログインします。

続けて複数のenvをインストールするために必要なセットアップをしていきます。

$ anyenv install --init
Manifest directory doesn't exist: /root/.config/anyenv/anyenv-install
Do you want to checkout https://github.com/anyenv/anyenv-install.git? [y/N]:

Do you want to checkout...と確認されるのでyで続行します。Completed!と表示されれば完了です。これでanyenvのセットアップは終了です。

Homebrewを使ったインストール

macOSなど、パッケージマネージャとしてHomebrewを使用している場合、簡単にインストールして使い始められます。

brewコマンドが使える状況で以下のコマンドを実行します。

$ brew install anyenv

インストールが完了したら初期化処理をします。

$ anyenv init

設定ファイルに初期化処理を記述するように促されるので、.zshrcへ記述します。

.zshrc
$ echo 'eval "$(anyenv init -)"' >> ~/.zshrc

これで初期化ができました。以下のコマンドで再ログインします。

# シェルを再起動
$ exec $SHELL -l

続けてanyenvのセットアップをします。

$ anyenv install --init

コマンドを実行途中で確認を求められたら続行します。Completed!と表示されれば完了です。

インストール可能なバージョンマネージャを一覧表示

以下のコマンドで現在のanyenvで使用できるバージョンマネージャを一覧表示できます。

$ anyenv install -l
  Renv
  crenv
  denv
  erlenv
  exenv
  goenv
  hsenv
  jenv
  jlenv
  luaenv
  nodenv
  phpenv
  plenv
  pyenv
  rbenv
  sbtenv
  scalaenv
  swiftenv
  tfenv

現在インストール可能なバージョンマネージャがずらっと表示されました。ここから必要なものを指定して個別にインストールできます。

バージョンマネージャのインストール

例としてNode.jsのバージョンマネージャである、nodenvをインストールしてみます。

$ anyenv install nodenv
...

Install nodenv succeeded!
Please reload your profile (exec $SHELL -l) or open a new session.

インストールが成功すると設定の再読み込みを求められるため、指示に従いexec $SHELL -lでシェルの再読み込みを実行します。

実行後インストールしたバージョンマネージャが使用可能になります。さっそく、インストールしたnodenvを使用しJavaScriptランタイムであるNode.jsを新規にインストールしてみます。

例では、nodenvを使用しますが、他のバージョンマネージャでも手順はほとんど変わりません。

インストールできるバージョンの表示

$ nodenv install -l
  ~
  # インストール可能なすべてのバージョンが表示される

バージョンを指定してのインストール

# Node.js 20.12.2(LTS)をインストール
$ nodenv install 20.12.2

# インストールされているバージョンを一覧表示
$ nodenv versions
  20.12.2

システム全体で使うバージョンを指定

インストールしただけではまだNode.jsは使用できません。
システム全体で優先的にで使用するバージョンを明示的に指定する必要があります。

# システム全体で使用するバージョンを指定
$ nodenv global 20.12.2

# システム全体で使用するバージョンを確認
$ node --version
v20.12.2

nodenv glbalを一度実行したあとは自動的にシステム全体で指定したバージョンが優先的に使用されるようになります。

複数バージョンの切り替え

env系ツールを使う醍醐味である複数バージョンの切り替えです。
ここでは新しい別のバージョンを新たにインストールして切り替える例を紹介します。

# 異なるバージョン(21.7.3)をインストール
$ nodenv install 21.7.3

~
Installed node-v21.7.3-linux-x64 to /home/user/.anyenv/envs/nodenv/versions/21.7.3

# バージョン21.7.3のインストールが完了
# システム全体で適用されている20.12.2は先頭に '*' がつく
$ nodenv versions
* 20.12.2 (set by /home/user/.anyenv/envs/nodenv/version)
  21.7.3

# システム全体で使うバージョンを21.7.3に変更
$ nodenv global 21.7.3

# 切り替わったか確認
$ node -version
  21.7.3

# システム全体で使うバージョンが21.7.3に変更されている
$ nodenv versions
  20.12.2
* 21.7.3 (set by /home/user/.anyenv/envs/nodenv/version)

プロジェクトごとに使いたいバージョンを切り替える

先程設定したバージョンと 異なるバージョンをプロジェクト内で使いたいという前提でバージョンを切り替える例を紹介します。

Node.js 21.7.3を20.12.2に切り替えてみます。

# 現在適用されているバージョンを確認
$ node --version
  21.7.3

# 異なるバージョンを使用したいプロジェクトへ移動
$ cd ~/Documents/example-project

# プロジェクト内で使用したいバージョンを指定
$ nodenv local 20.12.2

# バージョンを確認
$ node --version
  20.12.2

# バージョンを指定するとプロジェクト内に .node-version ファイルが作成される

上の流れでバージョンを切り替えることができます。

なお、上記で設定したローカルバージョンはプロジェクト内のみで有効となる点に注意が必要です。
ディレクトリを移動するとglobalで設定したバージョンが優先的に使用されます。

# ホームディレクトリへ移動
$ cd

# システム全体で使うバージョンが表示される
$ node --version
  21.7.3

Node.js以外のenv系ツールを使用する

anyenvでは例で紹介したnodenv以外にも、多言語のenv系ツールをまとめて管理できます。以下のコマンドでanyenvにて管理しているenv系ツールを表示します。

$ anyenv versions

nodenv:
  system
* 20.12.2 (set by /home/user/.anyenv/envs/nodenv/version)
phpenv:
  7.4.15
rbenv:
* 2.7.2 (set by /home/user/.anyenv/envs/rbenv/version)
  3.0.0

バージョンマネージャの一括アップデート

ここまで、env軽ツールのインストールとバージョン管理について紹介してきました。

anyenvで管理できるバージョンマネージャもそれぞれ独立しているため不定期にアップデートが行われます。バージョンマネージャ自体のアップデートを行わないと新しいプログラミング言語などに対応できないこともあるため定期的にアップデートが推奨されます。

しかし、バージョンマネージャのアップデートを確認して場合それぞれ個別にアップデートするのは大変です。anyenvで管理しているバージョンマネージャを一括アップデートできるanyenv-updateプラグインがあるため、併せて紹介します。

anyenv-updateプラグインのリポジトリはこちらになります。
https://github.com/znz/anyenv-update

# プラグイン管理用のディレクトリ作成
$ mkdir -p $(anyenv root)/plugins

# anyenv-updateプラグインのリポジトリをGitHubからクローン
$ git clone https://github.com/znz/anyenv-update.git $(anyenv root)/plugins/anyenv-update

# anyenvで管理しているバージョンマネージャの一括アップデート
$ anyenv update
  ...
  Updating 'anyenv'...
  Updating 'anyenv/anyenv-update'...
  Updating 'nodenv'...
  Updating 'nodenv/node-build'...
  Updating 'nodenv/nodenv-vars'...
  Updating 'anyenv manifest directory'...

アップデートがあってもanyenv updateとひとつのコマンドを実行するだけなのは非常に便利です。

おわりに

今回は、オールインワンなバージョンマネージャ「anyenv」についてまとめました。これ1つでバージョン管理はバッチリというぐらいに柔軟にツールの管理ができてとても便利だと感じました。anyenvを使うことでcomposerやbundlerといったおなじみのパッケージマネージャも合わせて導入されたりと痒いところに手が届くの便利です。anyenvを使うことで誰もが通るプログラミング環境構築という大きな壁も柔軟に解決できそうな気がしました。開発環境に時間をかけることなく開発の方に集中したほうが望ましいため、このようなツールは積極的に活用していきたいところですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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