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「エンジニアのためのマネジメント入門」を読んだ感想文

2023/07/18に公開

はじめに

「エンジニアのためのマネジメント入門」
https://www.amazon.co.jp/エンジニアのためのマネジメント入門-佐藤-大典-ebook/dp/B0BWDT77BT/ref=sr_1_1?adgrpid=144000458577&gclid=CjwKCAjw-7OlBhB8EiwAnoOEk2M5fGATMBhUQ2pkqvroPzoE94LRj7HocdZrxFvWU2EsVl_CXxlZFBoCJKgQAvD_BwE&hvadid=664260454751&hvdev=c&hvlocphy=1009250&hvnetw=g&hvqmt=e&hvrand=8352912369224470081&hvtargid=kwd-1966966680428&hydadcr=1822_13625308&jp-ad-ap=0&keywords=エンジニア+の+ため+の+マネジメント+入門&qid=1689144951&sr=8-1

という本を読みました。
エンジニアのキャリアパスの1つである「マネジメント」の基礎知識を解説して、エンジニアがマネージャーとして働くための第一歩を解説した本です。

きっかけとしては以前お世話になったマネージャーの方からプレゼントしていただき、一通り読みました。
せっかくいただいたのでレビュー(というかほぼ読書感想文)みたいな形でまとめたいと思います。

私はそもそもマネージャーという業務に特別興味が無く、可能であれば避けたい…と考えていたため、そんなヘッポコエンジニアの目線からの感想となります。

概要

著者のコメントによると、「エンジニアがマネージャーに興味を持てるように」という本らしいです。
エンジニアにとって結構未知な部分が多い業務ですが、基本的な知識であったり、具体的な進め方みたいなのを解説しています。

対象としては

  • マネジメントに興味のあるエンジニア
  • 昇進して,マネジメントの必要性が出てきたエンジニア
  • 新人エンジニアリングマネージャー
  • マネジメントの基礎をおさらいしたいマネージャー

とのこと。

評価

結論から言うととても良かったです。
本書を読んでマネジメント業務に興味も持ったか否か?でいうと、「どちらかというと出た!」みたいな感想になります。
ためになった、と言うよりはマネージャーという仕事や自身の所属する組織の他の業務に関する解像度がとても上がったかと思います。

おそらく、多くのエンジニアがマネジメント業務に興味が無い1番の理由は、そもそもどんな業務なのか具体的に分かりづらい所にある気がしています。
その点、本書では網羅的に業務内容が記載されているため、かなりイメージがしやすかったです。

また説明の内容も論理的というか、有名な法則であったり理論学者の提唱するプロセスを例に出して分かりやすく結びつけていたり、ソフトウェアの設計に例えた説明がされたりと、エンジニアに分かりやすく、また興味を持ちやすくする工夫がなされている印象を持ちました。

個人的に良いと思った点

それから個人的なマネジメントに対するモヤりポイントを言語化してくれている部分が多かったのも、安心して読み進めることができた理由の一つです。
例えば、エンジニアリングとマネジメントは業務として大きく違うはずなのに、これまでのエンジニア人生を振り返ってみると、エンジニアという仕事の延長線上にステップアップするような形でマネージャーという立場があるように錯覚してしまうことが多いです。
事実、そういった流れでマネージャーになったエンジニアも見てきましたし、会社や上司からそう説明されるケースも多くありました。

しかしこの本の冒頭では、
エンジニアが初めてマネージャーになることは違う世界へ足を踏み入れる必要があり、全く異なる分野の知識を駆使してマネジメントを行う必要があり、「ゲームで例えるとレベル1からのスタートになる」
とあり、転職するといっても過言では無いと記載されています。

この文だけでは、やはりエンジニアからマネージャーになるのを踏みとどまりたくなりますが、その後

安心してください。今日に至るまでに学んだエンジニアリングの技術は、決して無駄にはなりません。それどころか、マネジメントでも有効なスキルになるでしょう。

と続きます。
実際に読み進めると、エンジニアリングの技術がどういった形で役立つのかも多く解説されているため、モチベーションを引き出しやすく感じました。

主に学べた知識

本書の第一章には、

プログラミングは「自分が動く」ことでソースコードなどを直接的にアウトプットできます。しかし、マネジメントは「人を動かす」ことで間接的にアウトプットをしなければなりません。

とありますが、本書はとにかくこの間接的なアウトプットのやり方を幅広く解説していました。
「一つ一つをとことん深く」という訳では無さそうですが、これからマネージャーに挑戦するという人にとっては道標になりそうだと思います。

とはいえマネジメントの本として良い本なのか否かは、正直私自身に知識があまりないため、実践してみないことには正確な判断が下せないと思いました。

具体的にどんなことが書かれてる?

マネジメント業務の対象となる領域はどんなものか

私が抱いていたマネージャーに対する違和感として、会社や現場によって仕事の内容がまあまあ異なる、というのがありました。
技術に関することを理解していて、実際に実装レベルまで干渉するゴリゴリのプレイングマネージャーから、あくまでのチームのリソース管理や顧客折衝に徹する方まで幅広くいる印象です。

これに関して本書では一つの回答を用意していて、

組織ごとに必要とするマネジメントの領域が異なるためです。マネジメントの領域が異なれば、業務内容も異なります。ある組織ではラインマネージャー、また別の組織ではプロジェクトマネージャーというように、組織ごとにさまざまです。したがって、「これがエンジニアリングマネージャーの業務である」と定義するのは困難です。

としています。
そしてその上で、このマネジメントの領域を「マネジメントドメイン」と呼称して、どういったマネジメントドメインが存在するのか?を挙げて説明しています。
正直これが結構数があって面食らいますがその上で組織ごとによく対象とされるドメインを抽出して重点的に解説されていました。

マネージャーという業務を1から10まで完璧に、というよりは、
「マネージャーって範囲広いけど、その中でも対象とされやすい領域の基本を丁寧に説明している」という印象です。

一部詳細を紹介

内容の雰囲気をお伝えするためにも、例えば第2章の「対話の基礎を学ぶ」でどんなことが書かれているか紹介してみます。
この章では主にコミュニケーションに関して記載されています。
コミュニケーションというと範囲が広く少し抽象的ですが、具体的にいうと新人教育や1on1、会議の進行やファシリテーションの技術といった内容です。

この中で例えば1on1の解説を取り上げてみると、

  • 1on1にはどういった効果が存在するのか?
  • そもそもなぜ今多くの企業に導入が進んでいるのか?

といった背景やメリット等の説明から始まり、その後具体的に効果を最大限に引き出すためのプロセスとサイクルや、実際の1on1の進め方等が解説されます。

進め方に関してもう少し詳細に紹介すると、

1on1の基本的な型としては
「①テーマ決め②話を聞く③行動を促す④励ましとサポート」のようにステップを4つで分けられる。
①のテーマ決めでは、最初にアイスブレイクをして話しやすい空気を作りつつ、
クライアントにテーマを選定してもらう。

特にクライアントからテーマがない場合は、マネージャーからテーマを出すのは問題なし。
テーマはクライアントの状況に合わせて選定するが、例えば
- 直近の仕事の振り返り
- 悩みや不安の解消
- 課題の明確にしてフィードバック
- キャリアを描くサポートをする

というように、(ちょっと実際より省略してますが)具体例を出しつつ説明しています。

私も今まで色んな会社でマネージャーに1on1していただいた経験は何度かありますが、
思い返してみると「やってよかった」と思えるような1on1は本書で記載されているような形式であったことが多く、内容的にはすごく信憑性があるなと感じました。

その他の章について

その他も、章によって学べる内容が違ってくるのですが良いチームを作るための方法、組織の構造の説明、組織におけるマネージャーの役割等の話に広がっていきます。
さらには人材の採用、面接といった内容にまで触れています。

細かい目次に関しては、著者のブログで記載されているのでこちらを見るとどんな内容なのかが大体掴めるかと思います。
https://steam.place/entry/2022/12/24/084715#目次

1on1の進め方をはじめとした説明はほとんど「あくまでも基本的な型」であり、実際には組織に合った形で応用していくことになるとは思いますが、確かにまず最初に学んでおくべきことがしっかりとまとまっている印象でした。

まとめ

全体的に、マネージャーを目指す方が最初の一歩として読むのに非常に相応しいのではないかと思いました。

…本当はイマイチだった点とかも書けたら良いと思うのですが、こういった本は全然読んだことが無かったのと、私自身は「これから挑戦する」というつもりでなくあくまで読み物として読んだ感じなので、終始「なるほど!そうなんだ!」と小学生みたいな感想ばかりがどうしても出てしまいました。

もう少し知識を身につけたら、改めて読み返したいです。

勿論一切身にならなかったかというとそんな事はありません。
会社の中でもファシリテーターや採用など、自分とは遠い業務に関する説明や、それがエンジニアリングとどう結びつくのか?
みたいな点を学ぶことができて、社内で点在している業務が線で結びつくような感覚を覚えました。

自身の会社にも絶対存在する業務で、ただ内容をあやふやにしか理解していない部分を論理的に解説しつつ、適宜フレームワークのように型にはめることで理解しやすくなっていたと思います。
確かに普段プログラムばっかり考えてるエンジニアも楽しく読むことができそうな印象です。

実際に自身が業務として行うつもりが無くとも、この辺の基礎を知ることで所属する組織を俯瞰して見ることができ、
この業務をおこなっているメンバーの仕事ぶりを見て「どのくらい基本に忠実で、どのような応用を行なっているのか?」といったことが分かるようになり、自らが学べる領域が増えるメリットがあると思いました。

余談

ちなみに、この本に書かれている知識は、ドメイン駆動設計にそのまま役に立つ!と言うセミナーがあったそうです。
https://modeling-how-to-learn.connpass.com/event/285856/

めちゃくちゃ見たかったのですが見逃した。。。誰か試聴した方がいたら詳細教えてほしい。。。

私はドメイン駆動という開発手法に手放しに賛成で心酔してる…というわけでは無いのですが、確かにドメイン駆動を理解しプロジェクトで推進していくためにはこの辺りのマネジメントの知識というのは不可欠なのではないかとは思います。

というのも、日本でのドメイン駆動の分かりやすい書籍とかはどうしても「戦術的」ドメイン駆動の部分に触れているものが多く、本当に重要な戦略的なドメイン駆動に触れているものが少ない印象で、
実際に開発の現場でもプログラムレベルのアーキテクチャや設計がまず重要視されるケースが多いように見受けられます。

とはいえ戦略的な部分は抽象的で分かりづらく、エンジニアの興味の薄いマネージャーの知識や経験が不可欠になってくるために敬遠されがちなのかもしれません。
かくいう私もこの辺の興味が薄いためにドメイン駆動はそこまで…という印象を持っていたのですが、今回の読書でモヤってた部分がある程度明瞭になり興味が出てきた部分もあるのでちょっとぼちぼち向き合っていきたいなって感じです。

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