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技術士(情報工学部門)の情報共有

2023/03/13に公開約5,800字

はじめに

対象読者=技術士志望×コンピュータ工学×中堅
もしかしたら日本に100人ぐらいしかいないかも…

2023年に技術士第二次試験(情報工学部門)に合格しました。情報工学部門全体、特にコンピュータ工学については、あまりにも情報が少ないため、メモ書き程度ですが残しておきます。
個人の見解ですので、参考程度に留めて下さい。

自己紹介

関西のメーカーで主任技術者として機器の組込みシステムの開発をしています。大学の専攻は電子工学で、社会人からプログラミング始めました。
IT系の保有資格は基本情報、エンベデッドシステムスペシャリスト、システムアーキテクトです。
技術士を取ろうと思った最初のきっかけは、社会人10年目の区切りに何か目に見える成長の証が欲しかったからと、博士を取れる状況にないものの、名刺に何か書きたかったからです。
途中からは、割に合わないように思える技術士(情報工学部門)を他の人がどんなモチベーションで取ったのかを聞くことがモチベーションになっていました。
これからはそれを話してくれる友達を探す旅に出ます。

年表

まず技術士取得に至るまでの道のりを時系列で示します。コストは交通費を含みます。

年月 行動 コスト
2021/06 技術士一次願書提出 0
2021/06 技術士一次/二次試験参考書購入[1] 6900
2021/11 技術士一次試験 13000
2022/01 システムアーキテクト参考書購入[2] 10000
2022/02 技術士一次試験合格発表 0
2022/04 筆記用具購入[3] 3000
2022/04 技術士二次試験願書提出 0
2022/04 IPA システムアーキテクト試験 7500
2022/04 技術士二次試験参考書購入[4] 10300
2022/06 システムアーキテクト合格発表 0
2022/08 技術士二次試験(筆記) 12300
2022/10 技術士二次試験(筆記)合格発表 0
2022/12 技術士二次試験(口頭) 36000
2023/03 技術士二次試験(口頭)合格発表 0

総額:99000円
会社からの資格取得報奨金:100000円
=1000円ゲットだぜ!

技術士一次試験

技術士一次試験は特に問題ない試験なので割愛します。専門免除ですし…
久しぶりにテイラー展開したわ(ミサワ顔)

システムアーキテクト試験

この試験が間に挟まっている理由は、技術士二次試験の情報がなさすぎたためです。参考書を2冊買った程度では、何をどう勉強していけば合格出来るのか全く掴めませんでした。
論文試験の経験もなかったため、慣れる目的もありました。結果的にこの判断は私にとっては正解でした。

準備

システムアーキテクトはIPA高度試験の中ではマイナーですが、最低限の参考書はあります。ただし、購入したものの中には組込みに関する情報が全くない参考書もありました。絶対に許さない。
午前1,2は参考書で基礎知識を勉強し、過去問をランダムに出題するアプリがあったのでそれで対策しました。
午後1はひたすら過去問を解いて自分の得意・不得意な分野を探ることに注力しました。組込み系だからといって、高得点が取れるわけではないという気付きを得ることが出来ました(つらい)
午後2について、合格論文の書き方・事例集は技術士論文を書くにあたっても参考になると思います。私が買ったのは第5版で少し問題が古かったのですが、最近第6版が出たようなのでこれだけ買っておけばよいのではないでしょうか。私はセキュリティについて知識を補足しておけば論文の肉付けに活かせると思ったので、情報安全確保支援士の参考書も買いました。技術士の時にも役立ちました。

本番と振り返り

午後1が一番の不安でしたが、当日の問題との相性がよかったためなんとかなりました。結果的に組込み系の問題は選択しませんでした。
午後2はIoTかセキュリティを主軸にしておけば、だいたいどんな問題が来ても対応できると思っていたのですが、関係の薄いテーマで焦りました。組込みは問題の選択権がないのが不平等です。
なお、論文を書く前に当該システムのコード行数や開発人数・期間などの前提情報を明記する必要があります。自分の担当するシステムの規模は知っていても、一般的なシステムの規模については見当がつかない人がいると思います(私です)。ざっくり勉強しておきましょう。

技術士第二次試験(論文)

準備

勉強方法

基本的にはNotionを使って勉強内容をまとめていくという勉強法でした。
論文試験は紙に書くので、時間・量・体力の配分に関する試行錯誤は必須です。
とはいえ、改定回数やWebサイトへのリンク、PDFの埋め込み、Notion内での相互リンクなどを考えると、情報収集を手書きで行う選択肢はないと思います。

振り返って大事だと思うことは、

  • 専門技術の詳細情報収集に拘泥せず、切り捨てる範囲を徐々に決めるのも大切
  • 白書などを通した大枠の理解と専門技術の詳細理解を交互に繰り返していく
  • 解答の流れと観点抽出をある程度パターン化出来るように勉強を進める
  • 参考書や個人の情報提供など何でもよいので合格論文を読んでおく(ほぼないけど)

見せたい気持ちと恥ずかしい気持ちの折り合いがついた解像度になっています。


余談

これが勉強といえるかは微妙ですが、出題対象になりそうな技術に触れるために色々なものを2022年のタイミングで買いました。IoT機能がある家電についても、全て登録して使い方を工夫してみたりしました。実際に触れた経験が論文記述に役立つこともあるかもしれないと思ったのです。業務を行う上での参考にもなったかもしれません。出先で空気清浄機のコンディションを確認するためだけにクソ面倒くさいユーザー登録は普通はしないな、とか。

  • スマートウォッチ
  • ロボット掃除機
  • NAS
  • 3Dプリンタ
  • トイドローン
  • モンハンライズ+サンブレイク

本番

ユンケルを飲んで臨みましたが、流石に疲れました。不正防止の観点から仕方がないのかもしれませんが、手書きはナンセンスだと思います。
救いであり、落とし穴だったことは、自作した予想問題がかなり当たったことです。とはいえ、白書と過去問を読み込んでいけば、大枠で予想を当てることは難しくないと思います。

振り返り

論文の結果はAABでした。恥ずかしながらBの言い訳をさせて下さい。
選択した問題は遠隔医療に関するもので、ほぼ完ぺきに予想問題と一致していたので、喜んで飛びつきました。問題2-2の時間を残すためにも問3を先に着手しました(問題2-1はLPWAが予想問題そのままだったので瞬殺した)
落とし穴には骨子を書き上げ、実際に書き始めた段階で気づきました。私はこのテーマを問題1として予想していたのです。プライバシー保護を最重要課題に設定し、セキュリティ向上を方策として書いてしまっていました。問題1であれば情報工学部門全体の専門知識に基づいて書けばよいと思いますが、問題3ではコンピュータ工学の専門知識に基づいた回答が求められます。急遽方策をコンピュータ工学に関するものに変更しましたが、端末中心のセキュリティ対策は最重要課題とまでは言えなかったかもしれません。
問題の趣旨を正しく理解するという基本的なことを見落としてしまったという例でした。
時間もない中で手書きだと微妙な修正すらも困難です。骨子の時点でのチェックリストを事前に挙げておいてもいいかもしれません。
あとは課題の説明の中で問題を書いてしまった所がありました…ありがちだと思うので注意が必要です。

技術士第二次試験(口頭)

準備

業務経歴

私が業務経歴を書き始めたのは、システムアーキテクト試験直前の3月でした。
特に困った点は大きく2点です。

  1. 選択科目選定の妥当性に自信がない
  2. 文字数制限が厳しい

選択科目の選定について、妥当性がない(他の部門・科目の方がよりふさわしいと考えられる)場合は、不合格にされることがあるという点が、ずっと気になっていました。

組込みシステム(設計、実装、評価、保守)

の指し示す範囲がよく分からなかったのです。具体的には、私は機械や流体の制御について、業務の中で工夫した点がありましたが、それらをPRポイントとすることで、機械部門と見做されることを恐れていました。結局それらに触れる勇気が出ず、レガシーシステムに関する業務を題材に業務詳細を書きました(なのに、論文の問題3でレガシーシステムを選ばずB判定を取った…)

文字数制限について、ここまで制限が厳しいと書く内容を絞らざるを得ません。必然的にコンピテンシーの正しい理解が必要になってきます。この時点でコンピテンシーの理解を深めておくことは極めて重要だと振り返って思います。
私は参考書に一通り目を通していたのですが、問題と課題の区別がついていないかのような記述や、マネジメントについての理解のずれに、論文合格後苦しめられました。
内容が分かりづらい場合は面接時に説明を求められ、その回答内容はコンピテンシーの証明(=得点)に繋がりづらく、限られた面接時間を圧迫するという情報もプレッシャーになりました。

まずは技術士会で公開されている修得ガイドブックを読むことをお勧めします(令和になってから改定がありませんが)。ここでのコンピテンシーの説明は社内研修などの内容とも一致することが多く、受け入れやすいと思いました。そのベースを作った上で、技術士として特に重要な観点について、某有名サイトなどで理解を深めればよいと思います。
ちなみにですが、願書には上司の承認が必要なので、業務詳細を盛りすぎると恥をかきます。

口頭試験練習

口頭でも変わらずNotionを使ってまとめていきました。
WebサイトやKindle Unlimitedに落ちている口頭試験の情報をかき集め、想定問答集を作りました(試験が終わった解放感からKindleの解約を忘れた)

振り返って大事だと思うことは、

  1. 実際に発声して適切な分量や表現になっているか定期的に確かめる。
  2. テクニック集などを鵜呑みにして偏った考えを持たない。

適切な分量は30秒~60秒だと思います。人によるのではないでしょうか。
短ければ時間内に多くの質問に答えられますし、長すぎる話で面接官の理解度が下がるリスクも低減できます。ただし、想定外の深堀質問を食らうリスクも上がります。
私はほとんど30秒で回答を作成して臨みましたが、本番はもう少し長く話していたような気がします。それでも多分60秒は超えていません。

偏った考えという表現は誤解を招くかもしれません。伝えたいのは、例えば中庸案の提示によるステークホルダー間の利害調整だけがリーダーシップではなく、3義務2責務だけが技術者倫理ではないということです。重要点を抑えつつ、全体像を把握しておくことが大切です。また、管理職かどうかによってもスタンスは変わると思います。

模擬練習は迷いましたが受けませんでした。理由は多分コンピュータ工学の面接官がいないことと、令和形式での試験を受けていない人が面接官になると思ったからです。専門技術の知識不足を指摘された場合、カバーが間に合うタイミングではないので、金と自信を失うことになると思いました。

本番と振り返り

まず、試験会場が東京しかないということに試験3週間前に気づきました。根本的に人材不足なのか、金銭的な理由なのか。せめて大阪で開催して欲しかったです。交通費や宿泊費を考えると余計に落ちることが許されないプレッシャーがかかりました。
本番での質問内容は詳説しませんが、基本的にコンピテンシーを順番になぞるような形でした。業務経歴に関する質問がなかったので、そこで緊張がほぐれました。
レガシーシステムを題材としたのは正解だったように思います。私が開発する機器について詳しい情報工学部門の技術士は存在しないと思いますが、レガシーシステムにまつわる苦労は誰でもしていると思いますし、コンピテンシーの発揮とも絡めやすいように思います。
結果的に和やかな雰囲気で14分ぐらいで終わったので、不合格の心配をあまりせずに済み、よかったです。

脚注
  1. 技術士第一次試験基礎・適正対策’21年版、「技術士試験」勉強法、技術士第二次試験論文の書き方 ↩︎

  2. 合格論文の書き方・事例集、最速の論述対策、ALL IN ONEパーフェクトマスター ↩︎

  3. なんかTwitterでおすすめされてたシャープペンシル(太くて濃いの、疲れにくいの) ↩︎

  4. 情報通信白書令和3年度版、技術士第二次試験必須科目小論文回答事例集(情報工学部門)H19~24, R1~3、令和3年度技術士第二次試験「情報工学部門」全解答事例集 ↩︎

Discussion

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