計画の進め方とヒューマンスキルの厳しさ、逃げていい現場の見分け方
①はじめに
この記事は車載ソフトウェア開発、特にBSW開発において計画を立てたのに思い通りに進まないと感じている方に向けて書いています。
前回の記事では計画の立て方を書きました。今回はその続き、計画の進め方についてです。
計画は立てて終わりではありません。進めながら見直し続けるものです。そして計画を進める上で技術スキルと同じくらい重要なのがヒューマンスキルです。
この記事は技術だけでは解決できない問題と、逃げていい現場の見分け方についても正直に書きます。
②計画は作って終わりではない、進めながら見直すもの
計画を立てた後、見直しが必要な状況は必ず発生します。その原因は大きく2つに分類できます。
自分のコンディション(自分で解決すべき問題)
体調・集中力・モチベーションなど、自分の状態が計画に影響を与えるケースです。これは外に原因を求めず、自分で対処すべき問題です。
外的要因
InputやOutputの変化、上位者の決済待ち、同僚の進捗、顧客要求の変化など、自分以外から発生する問題です。
この2つを混同すると対処を誤ります。自分のコンディション問題を外的要因のせいにしたり、外的要因を自分一人で抱え込んだりすることが計画破綻の原因になります。
まず「これはどちらの問題か」を判断する習慣を持つことが計画を進める上での第一歩です。
③早すぎる進捗が引き起こす問題
計画より進捗が早いことは一見良いことに見えます。しかし理想とする進捗よりも実際の進捗が早すぎることは問題です。
早すぎる進捗には複数の問題が隠れています。
計画と違うことをやっている可能性
作業に没頭するあまり、本来のOutputから外れた作業を進めているケースです。
計画が間違っている可能性
見積もり過多や作業の見落としにより、計画自体の精度が低かったケースです。
上位者・同僚へのプレッシャー
決済待ちが増えることで多忙な上位者の心理的余裕が削られます。精神状態をお互いが心配できる状況であれば問題発生前に食い止められますが、その余裕がない現場ではプロジェクトの品質低下につながります。
早すぎる進捗に気づいたら、作業を止めて計画に立ち返る勇気が必要です。
④遅すぎる進捗への対処法
進捗が遅い場合、原因は大きく2つに分類できます。
計画が間違っている場合
Inputの精査やOutputの定義が曖昧なことが原因です。この場合は第4回で紹介した提案型のアプローチで計画を立て直します。
指摘によって差し戻されている場合
2つの対策が有効です。
- Inputの精査:そもそものInputが不十分でないかを確認する
- Outputの10%先行確認:Outputの一部だけを先に提示して「これで良いか」を前もって確認する
特にOutputの10%先行確認は有効です。完成してから差し戻されるより、早い段階で方向性を確認することで手戻りを最小化できます。
どちらの場合も黙って遅れるのが最も悪い対応です。遅れの原因を特定して早めに発信することが計画を守る上で最も重要です。
⑤ミクロからマクロへの視点切り替え
作業に没頭しているとき、人はミクロの世界にいます。専門性の高い情報を扱い、細部に集中している状態です。
計画を見直すとき、人はマクロの世界に移る必要があります。ビジネス上での一般的な解釈、進捗・コスト・リスクという言葉で状況を語る世界です。
この切り替えが難しい理由があります。ミクロは計算能力、マクロは言語能力という、脳の違う部分を使う作業だからです。
作業中に突然「計画を見直してください」と言われても、すぐに切り替えられない。これは能力の問題ではなく、脳の使い方を切り替えるコストが高いという生理的な問題です。
対策としては切り替えのタイミングを計画に組み込むことです。作業時間と計画見直し時間をあらかじめ分けておくことで、切り替えのコストを下げることができます。
⑥ヒューマンスキルの厳しさ、約束を守ることの意味
車載プロジェクトは小規模でも10人以上が言葉と文字で密な連携を取り続けます。会議・チャット・成果物・レビューを通じて、常に複数の人間と同時進行でやり取りが発生します。
このような環境では信頼を前提にチームが構成されています。
誰かが期限を守らない、報告が遅れる、約束した成果物が出てこない。これらは単なる個人の問題ではありません。その人を起点にした連鎖が発生し、チームどころかプロジェクト全体が危うくなります。
技術スキルは後から習得できます。しかし報連相と自分が出した計画(約束)を守るヒューマンスキルは、現場は甘く見てくれません。
専門技術の習得には時間がかかることを優良な企業ほど理解しています。しかしヒューマンスキルの欠如は技術力では補えないと判断されます。
約束を守ることは最低限の信頼の担保です。それができて初めて、チームの一員として認められます。
⑦逃げていい現場の見分け方
逃げることは負けではありません。逃げていい現場を見極めることも重要なスキルです。
明確なサインが一つあります。
未経験であることを申告しても、学習時間を計画に組み込むことを承認しない文化があるときです。
車載BSW開発はネットで習得できない専門技術が多い分野です。優良な企業ほどこの現実を理解しており、専門技術の習得時間を計画に織り込みます。
しかしその余裕すら与えられない現場は構造的に問題があります。人手不足を個人の犠牲で補っている状態であり、そのような組織は人手不足倒産に向かいやすいです。
ヒューマンスキルの厳しさは前章で述べました。しかしそれはあなたが約束を守れる環境が前提です。学習時間すら与えられない環境で約束を守れと言われても、それは無理難題です。
逃げることで収入と成長の両方を守れるなら、それは正しい判断です。
⑧まとめ・次回予告
この記事で伝えたかったことを整理します。
- 計画の見直しが必要な原因は「自分のコンディション」と「外的要因」に分類して対処する
- 早すぎる進捗は計画の誤りや周囲へのプレッシャーを引き起こす
- 遅すぎる進捗は原因を特定して早めに発信することが最善
- ミクロからマクロへの視点切り替えは脳の使い方が違う、タイミングを計画に組み込む
- ヒューマンスキルの欠如は技術力では補えない、約束を守ることが信頼の最低条件
- 学習時間を計画に入れない文化の現場は逃げていい
ここまで紹介したスキルを身につけたあなたは一人前です。就職も転職もIT業界全般で引っ張りだこになるレベルです。自信を持って次のステージへ進んでください。
次回は「企画書と開発日程からロードマップを描く」について書きます。技術を覚え、計画を立て、チームの信頼を得た先に何が見えるのか。続きを楽しみにしていてください。
※この記事は自身の経歴をAIを活用して整理しながら記載しています。
このシリーズの記事
- #01 車載BSW開発で誰も教えてくれなかった設計工程のリアル
- #02 車載BSW開発の配属直後にやるべきこと、コミュニケーションコストを制する者が生き残る
- #03 自分の工程を正しく把握するための、上位工程との向き合い方
- #04 計画の立て方、OutputからInputを逆算する
- #05 計画の進め方とヒューマンスキルの厳しさ、逃げていい現場の見分け方(本記事)
- #06 企画書と開発日程からロードマップを描く
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