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音響学入門:電気インピーダンス
スピーカーの電気インピーダンス特性を深掘り
スピーカーの電気インピーダンス特性は、アンプとのマッチングや音響特性に影響を与える重要な要素です。本記事では、電気インピーダンス特性の基本概念から、低音域と高音域におけるインピーダンスの振る舞い、さらにインダクタンスと磁極における懸垂状態について解説します。
電気インピーダンス特性とは
基本定義
電気インピーダンス特性は、スピーカーの入力端子から見た電気インピーダンスの周波数依存性を表します。これはスピーカーの動作に大きく影響し、アンプ側でのインピーダンスマッチングを難しくする要因となります。
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インピーダンスの変化:
- 周波数ごとに異なる振る舞いを持つため、帯域ごとに異なる負荷をアンプに与えます。
スピーカーの構造とインピーダンス特性
コーン形スピーカーにおける基礎
直接放射型のコーン形スピーカーでは、以下の要素が電気インピーダンス特性に寄与します:
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ボイスコイル:
- 磁気回路が無い単独コイルとしては、直流抵抗
とわずかなインダクタンスを示します。R_v
- 磁気回路が無い単独コイルとしては、直流抵抗
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振動板の影響:
- 振動板が音を放射する際、その動作がボイスコイルのインピーダンス
に影響を与え、わずかに増加させます。Z_0
- 振動板が音を放射する際、その動作がボイスコイルのインピーダンス
低音域のインピーダンス特性
低音域では、振動板と支持部の特性がインピーダンスに大きく影響します。
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振動系の共振周波数
:f_0 - スピーカーの低音域における共振周波数は、以下の式で表されます:
f_0 = \frac{1}{2\pi} \sqrt{\frac{S_0}{m_0}} -
: 振動板を支持するエッジやダンパーのスティフネス(剛性) [N/m]S_0 -
: 振動板の質量m_0 、ボイスコイルの質量、および空気負荷質量の和 [kg]m_c
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- スピーカーの低音域における共振周波数は、以下の式で表されます:
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共振時のインピーダンスのピーク:
- 共振点
ではインピーダンスが大きなピークを持ちます。f_0 - これは、振動板が効率的に動作する領域を示します。
- 共振点
高音域のインピーダンス特性
高音域では、ボイスコイルのインダクタンスが主にインピーダンス特性を決定します。
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インダクタンスの増加:
- 高周波数になると、ボイスコイルのインダクタンスが増加し、インピーダンスが上昇します。
- このインダクタンスの振る舞いはコイルの材質や構造に依存します。
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磁性材料の影響:
- 磁気回路の材料が磁性の場合、コイルの特性がさらに複雑化します。
インダクタンスと磁極の懸垂状態
インダクタンスの役割
インダクタンス
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周波数依存性:
- 高周波ではインダクタンスが支配的となり、インピーダンスが増加します。
- インダクタンスは次式で表されます:
Z_L = j\omega L -
: 角周波数\omega = 2\pi f -
: インダクタンスL
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磁極の磁束密度:
- 磁気回路の設計により、ボイスコイルのインダクタンス値が変化します。
磁極と懸垂状態
ボイスコイルが磁極に懸垂した状態で振動する場合、次のような現象が発生します:
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音放射による負荷:
- 振動板が動作すると、音放射による空気負荷がボイスコイルの動作に影響を与え、インピーダンスを増加させます。
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磁極設計の影響:
- 磁極の形状や素材がコイルの動作を決定します。
- 特に真因性の磁気材料は、磁界の立ち上がりや減衰特性に影響を与え、コイルのインダクタンス特性を複雑化させます。
まとめ
スピーカーの電気インピーダンス特性は、以下の要因によって周波数ごとに複雑に変化します:
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低音域:
- 振動系の剛性
と質量S_0 により共振周波数m_0 が決まり、ここでインピーダンスがピークを持つ。f_0
- 振動系の剛性
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高音域:
- ボイスコイルのインダクタンスが増加し、インピーダンスが周波数に応じて上昇。
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インダクタンスと磁極の懸垂状態:
- ボイスコイルのインダクタンス特性は、磁極の設計や音放射負荷に影響される。
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