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英文法(68):to不定詞と-ing形

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to不定詞と-ing形の本質的理解

はじめに

英語学習において、to不定詞-ing形_動名詞の使い分けは永遠のテーマです。しかし、この2つは文法だけでなく、感覚的な理解、つまり "時間軸" と "ニュアンス" に強く関係しています。この記事では、学習書の内容を踏まえながら、それぞれの形が持つ感覚を明確にしていきます。


1. to不定詞の基本:「これから」と「一般論」

A. 主語としてのto不定詞

To make new friends is not so easy.

  • /tu meɪk nu frɛndz ɪz nɑt soʊ ˈiːzi/
  • (新しい友達を作ることはそれほど簡単ではありません)

この文では、「to make new friends」が 一般論 を表しています。現実に誰かが友達を作っているという生々しいリアリティではなく、抽象的な行為を語る語り口です。

B. 「これから」のニュアンス

I want to be a policeman.

  • /aɪ wɑnt tu bi ə ˈpoʊlisˌmæn/
  • (僕、おまわりさんになりたい)

"want" という未来志向の動詞と一緒に使うと、これからの行為を示すのがto不定詞の特徴です。

C. 意味上の主語とforの使用

For anyone to drink and drive is unforgivable.

  • /fɔr ˈɛniˌwʌn tu drɪŋk ənd draɪv ɪz ˌʌnfərˈɡɪvəbəl/
  • (誰にとっても飲酒運転することは許されない)

意味上の主語 "for anyone" を加えることで、行為の主体を明確にできます。


2. -ing形の本質:「今、目の前にあること」

A. 動名詞としての-ing:リアリティ

I enjoy playing video games.

  • /aɪ ɪnˈʤɔɪ ˈpleɪɪŋ ˈvɪdioʊ ɡeɪmz/
  • (テレビゲームをするのが好き)

"enjoy"のような感覚動詞と一緒に使われるとき、-ingは 現実に存在する、あるいは思い浮かべられる具体的な状況 を描写します。

B. 具体性を必要とする動詞との相性

  • admit, deny, consider, imagine, enjoy, finish, avoid, mind, suggest...

これらの動詞は、状況が見えてこないと成立しないため、リアルな感触を持つ-ing形が好まれます。

Would you mind opening the window?

  • /wʊd ju maɪnd ˈoʊpənɪŋ ðə ˈwɪndoʊ/
  • (窓を開けていただけますか?)

3. 意味の変化に注意する動詞

remember, forget, regret, try

  • Remember to lock the door.(これから鍵をかけることを忘れないで)
  • Remember locking the door.(鍵をかけたことを覚えている)

to不定詞と-ingで時間軸が変わるのがこれらの動詞です。


4. to不定詞 vs -ing:ネイティブの感覚的選択

ネイティブは文法項目として区別していません。あくまで "to" = 指し示す / これから、"-ing" = 生きてる感 / 現実性 という感覚で選びます。

  • to不定詞は抽象・未来・方向性。
  • -ing形は具体・現在・リアルタイム。

-ing形のみを目的語に取る動詞(リアリティ動詞)

これらの動詞は、具体的で現実的な状況を連想させるため、-ing形との相性がよいとされています。

動詞 発音記号 例文 発音記号(例文) 日本語訳(例文)
admit /ədˈmɪt/ She admitted cheating on the test. /ʃi ədˈmɪtɪd ˈʧiːtɪŋ ɑn ðə tɛst/ (彼女はテストでカンニングしたことを認めた)
deny /dɪˈnaɪ/ He denied breaking the vase. /hi dɪˈnaɪd ˈbreɪkɪŋ ðə veɪs/ (彼は花瓶を割ったことを否定した)
enjoy /ɪnˈʤɔɪ/ I enjoy reading novels. /aɪ ɪnˈʤɔɪ ˈriːdɪŋ ˈnɑvəlz/ (小説を読むのが好きです)
avoid /əˈvɔɪd/ She avoided talking to him. /ʃi əˈvɔɪdɪd ˈtɔkɪŋ tu hɪm/ (彼女は彼と話すのを避けた)
mind /maɪnd/ Would you mind opening the window? /wʊd ju maɪnd ˈoʊpənɪŋ ðə ˈwɪndoʊ/ (窓を開けていただけますか?)
finish /ˈfɪnɪʃ/ He finished writing the report. /hi ˈfɪnɪʃt ˈraɪtɪŋ ðə rɪˈpɔrt/ (彼はレポートを書くのを終えた)
suggest /səˈʤɛst/ She suggested going to the park. /ʃi səˈʤɛstɪd ˈɡoʊɪŋ tu ðə pɑrk/ (彼女は公園に行くことを提案した)
recommend /ˌrɛkəˈmɛnd/ I recommend trying this dish. /aɪ ˌrɛkəˈmɛnd ˈtraɪɪŋ ðɪs dɪʃ/ (この料理を試してみることを勧めます)

to不定詞と-ingで意味が異なる動詞

一部の動詞は、to不定詞と-ingを使い分けることで意味が変わります。以下の表でそれぞれの意味の違いを確認しましょう。

動詞 発音記号 to不定詞の意味 -ing形の意味 例文(to不定詞) 例文(-ing形)
remember /rɪˈmɛmbər/ ~することを忘れずにする(これから) ~したことを覚えている(過去) Remember to lock the door. I remember locking the door.
forget /fərˈɡɛt/ ~するのを忘れる(未来) ~したことを忘れる(過去) Don’t forget to call her. I’ll never forget meeting her.
regret /rɪˈɡrɛt/ 残念ながら~する(丁寧な言い回し) ~したことを後悔する I regret to say this. I regret saying that.
try /traɪ/ 試しに~してみる 実際に~してみる(経験的) Try to open the window. Try opening the window.

おわりに

to不定詞と-ing形の選択は、英語という言語がもつ "時間" と "意識の向き" を反映しています。使い分けを文法ではなく「語感」で捉えることが、英語習得の本質に近づくカギとなるでしょう。

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