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音響学入門:スピーカーの振動板の形状と特徴(3)

2025/02/16に公開

ホーン形スピーカーと平面形スピーカーの形状と構造を徹底解説

スピーカーの性能は、その形状や構造によって大きく左右されます。本記事では、ホーン形スピーカーにおけるエクスポーネンシャルホーンの特性と断面積の設計理由、さらに平面形スピーカーの構造と振動モードについて解説します。


ホーン形スピーカーの形状

エクスポーネンシャル曲線のホーンフレア

ホーン形スピーカーの形状には、エクスポーネンシャル(指数関数)曲線を基に設計されたホーンフレアが使用されます。この形状では、ホーンの断面積が一定の割合で増加します。

エクスポーネンシャルホーンの特性

エクスポーネンシャルホーンは、ホーンの長さ xに対して断面積 S(x) が次式で表されます:

S(x) = S_0 e^{kx}

  • S_0: ホーン入口の断面積
  • k: 拡張係数(ホーンの開き具合を決定)
  • x: ホーンの長さ

なぜ断面積が比例して増加するのか?

エクスポーネンシャルホーンの設計には以下の理由があります:

  1. 効率的なインピーダンス変換:

    • ホーン形スピーカーでは、振動板の動作による高い音響インピーダンスを空気の低い音響インピーダンスに変換する必要があります。
    • エクスポーネンシャル形状では、この変換を滑らかに行い、反射損失を最小化します。
  2. 音響放射効率の向上:

    • エクスポーネンシャルホーンは、広帯域で一定の音響放射効率を実現します。
    • 断面積が適切に増加することで、音波の減衰を防ぎ、スムーズに空間に伝搬させます。
  3. 共振の抑制:

    • 断面積が指数関数的に増加することで、特定の周波数での共振が抑制され、歪みの少ない音が再生可能です。

応用と設計上の注意点

  • エクスポーネンシャルホーンは、特に中高音域での効率的な音波伝搬に優れています。
  • ホーンの拡張係数 k を調整することで、狙った周波数帯域に適応させることが可能です。

平面形スピーカーの構造と特徴

円形平面振動板の振動モード

平面形スピーカーでは、円形平面振動板の特性が音響性能を決定します。特に振動モード1(節円が1つ生じる振動モード)の特性が重要です。

振動モード1の周波数

節円が1つ生じる振動モード1の周波数 f_{c1} は次式で表されます:

f_{c1} = 0.421 \frac{t}{R} \sqrt{\frac{E}{\rho (1 - \delta^2)}}

  • t: 振動板の厚み [m]
  • R: 振動板の半径 [m]
  • E: 振動板材料のヤング率 [Pa](剛性を表す)
  • \rho: 振動板材料の密度 [kg/m^3]
  • \delta: ポアソン比(材料の弾性特性)

振動モード1と周波数特性

  • 周波数 f_{c1}:
    • 振動板材料の比剛性E / \rhoが大きく、厚み t が大きいほど、モード1の周波数 f_{c1}を高くすることができます。
    • これにより、再生可能な周波数帯域が広がります。
  • 振動板材料の進化:
    • 新素材の登場により、軽量かつ剛性の高い振動板が製造可能となり、平面型スピーカーの性能が飛躍的に向上しました。

平面形スピーカーの特性

平面形スピーカーには以下の特性があります:

  1. 高精細な音響再生:
    • 振動板全体が一体的に動作し、分割振動が抑制される。
  2. 広い再生帯域:
    • 振動モード1の周波数が高くなることで、広い周波数帯域をカバー。
  3. 素材の重要性:
    • ヤング率や密度、ポアソン比が適切な素材を選定することで、音響性能を最適化可能。

まとめ

スピーカーの形状や構造は、音響性能を決定する上で極めて重要な要素です。

  1. ホーン形スピーカー:

    • エクスポーネンシャルホーンフレアは、音響インピーダンス変換を効率化し、広帯域で高い音響放射効率を実現。
    • 特定の周波数での共振を抑制し、滑らかな音波伝搬を実現。
  2. 平面形スピーカー:

    • 振動モード1の周波数 f_{c1} を高くすることで、再生帯域を広げる。
    • 新素材の活用により、軽量かつ剛性の高い振動板が可能となり、高性能化を達成。

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