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音響学入門:スピーカーの振動板の形状と特徴(3)
ホーン形スピーカーと平面形スピーカーの形状と構造を徹底解説
スピーカーの性能は、その形状や構造によって大きく左右されます。本記事では、ホーン形スピーカーにおけるエクスポーネンシャルホーンの特性と断面積の設計理由、さらに平面形スピーカーの構造と振動モードについて解説します。
ホーン形スピーカーの形状
エクスポーネンシャル曲線のホーンフレア
ホーン形スピーカーの形状には、エクスポーネンシャル(指数関数)曲線を基に設計されたホーンフレアが使用されます。この形状では、ホーンの断面積が一定の割合で増加します。
エクスポーネンシャルホーンの特性
エクスポーネンシャルホーンは、ホーンの長さ
-
: ホーン入口の断面積S_0 -
: 拡張係数(ホーンの開き具合を決定)k -
: ホーンの長さx
なぜ断面積が比例して増加するのか?
エクスポーネンシャルホーンの設計には以下の理由があります:
-
効率的なインピーダンス変換:
- ホーン形スピーカーでは、振動板の動作による高い音響インピーダンスを空気の低い音響インピーダンスに変換する必要があります。
- エクスポーネンシャル形状では、この変換を滑らかに行い、反射損失を最小化します。
-
音響放射効率の向上:
- エクスポーネンシャルホーンは、広帯域で一定の音響放射効率を実現します。
- 断面積が適切に増加することで、音波の減衰を防ぎ、スムーズに空間に伝搬させます。
-
共振の抑制:
- 断面積が指数関数的に増加することで、特定の周波数での共振が抑制され、歪みの少ない音が再生可能です。
応用と設計上の注意点
- エクスポーネンシャルホーンは、特に中高音域での効率的な音波伝搬に優れています。
- ホーンの拡張係数
を調整することで、狙った周波数帯域に適応させることが可能です。k
平面形スピーカーの構造と特徴
円形平面振動板の振動モード
平面形スピーカーでは、円形平面振動板の特性が音響性能を決定します。特に振動モード1(節円が1つ生じる振動モード)の特性が重要です。
振動モード1の周波数
節円が1つ生じる振動モード1の周波数
-
: 振動板の厚み [m]t -
: 振動板の半径 [m]R -
: 振動板材料のヤング率 [Pa](剛性を表す)E -
: 振動板材料の密度 [kg/m^3]\rho -
: ポアソン比(材料の弾性特性)\delta
振動モード1と周波数特性
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周波数
:f_{c1} - 振動板材料の比剛性
が大きく、厚みE / \rho が大きいほど、モード1の周波数t を高くすることができます。f_{c1} - これにより、再生可能な周波数帯域が広がります。
- 振動板材料の比剛性
-
振動板材料の進化:
- 新素材の登場により、軽量かつ剛性の高い振動板が製造可能となり、平面型スピーカーの性能が飛躍的に向上しました。
平面形スピーカーの特性
平面形スピーカーには以下の特性があります:
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高精細な音響再生:
- 振動板全体が一体的に動作し、分割振動が抑制される。
-
広い再生帯域:
- 振動モード1の周波数が高くなることで、広い周波数帯域をカバー。
-
素材の重要性:
- ヤング率や密度、ポアソン比が適切な素材を選定することで、音響性能を最適化可能。
まとめ
スピーカーの形状や構造は、音響性能を決定する上で極めて重要な要素です。
-
ホーン形スピーカー:
- エクスポーネンシャルホーンフレアは、音響インピーダンス変換を効率化し、広帯域で高い音響放射効率を実現。
- 特定の周波数での共振を抑制し、滑らかな音波伝搬を実現。
-
平面形スピーカー:
- 振動モード1の周波数
を高くすることで、再生帯域を広げる。f_{c1} - 新素材の活用により、軽量かつ剛性の高い振動板が可能となり、高性能化を達成。
- 振動モード1の周波数
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