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音響学入門:スピーカーの基本動作

2025/01/30に公開

動電形と電磁形スピーカーの基本動作を徹底解説

スピーカーは電気信号を音響信号に変換する重要なデバイスです。本記事では、スピーカーの2つの主要な変換方式である動電形(ダイナミック形、ムービングコイル形)電磁形の基本動作について詳しく解説します。


動電形スピーカーの基本動作

動電形スピーカーとは

動電形スピーカー(ダイナミック形、ムービングコイル形)は、スピーカーの中で最も一般的な形式です。ボイスコイル(可動コイル)に電流を流すことで駆動力を発生させ、振動板を動かして音を放射します。

駆動力の原理

動電形スピーカーの駆動力はフレミングの左手の法則に従います。この法則により、磁界中の導体に電流が流れると、力が発生します。この力は次の式で表されます:

F = B \cdot I \cdot L
  • F: 駆動力 [N]
  • B: 磁束密度(磁界の強さ)[T]
  • I: ボイスコイルに流れる電流 [A]
  • L: 磁界中の導体の有効長 [m]

動作の仕組み

  1. ボイスコイルに電流を流す:
    電気信号がコイルに入力され、電流が発生します。
  2. 磁界との相互作用:
    ボイスコイルが磁界内にあるため、電流によって駆動力Fが発生します。
  3. 振動板の動作:
    駆動力が振動板に伝わり、振動板が空気を振動させて音波を放射します。

電流と駆動力の関係

電流が増加すると駆動力 F も比例して増加します。これにより、振動板の振幅が大きくなり、より大きな音圧レベルが得られます。


電磁形スピーカーの基本動作

電磁形スピーカーとは

電磁形スピーカーは、コイルに電流を流すことで発生する磁束によって駆動力を生じる方式です。動電形とは異なり、コイルが固定され、磁束による吸引力の変化が振動板を駆動します。

駆動力の原理

電磁形スピーカーでは、コイルに流れる電流によって磁束が発生し、磁極間の吸引力が変化します。この吸引力の変化が振動板を駆動する力になります。

F = k \cdot \Delta \Phi
  • F: 駆動力 [N]
  • k: 比例係数(スピーカーの構造による)
  • \Delta \Phi: 磁束の変化量 [Wb]

動作の仕組み

  1. コイルに電流を流す:
    入力信号がコイルに流れることで磁束が発生します。
  2. 吸引力の変化:
    磁束が変化することで吸引力が変動し、振動板が動きます。
  3. 音波の放射:
    振動板が空気を振動させ、音波を生成します。

電磁形スピーカーの課題

  1. 非直線性による歪み:
    磁束と吸引力の関係が非線形であるため、入力信号が増加するにつれて歪みが発生しやすいです。
  2. 振幅の限界:
    入力信号がさらに大きくなると、振動板が磁極に接触する可能性があり、これが電磁形スピーカーの欠点の一つです。

動電形と電磁形スピーカーの比較

特徴 動電形スピーカー 電磁形スピーカー
駆動原理 磁界中のボイスコイルを駆動 磁束による吸引力の変化で駆動
動作の直線性 高い 非直線性が強く歪みが発生
用途 一般的な音響機器 特殊な用途(例: 小型スピーカー)
メリット 高効率・広帯域対応 構造が簡単
デメリット コストが高い 歪みや振幅制限が多い

まとめ

  • 動電形スピーカーはフレミングの左手の法則に基づき、磁界中のボイスコイルに流れる電流が振動板を駆動する力を生成します。直線性が高く、一般的な音響機器に広く使用されます。
  • 電磁形スピーカーは、磁束の変化による吸引力で振動板を駆動しますが、非線形な動作による歪みや振幅制限が課題です。

スピーカーの動作原理を理解することで、それぞれの特性を活かした音響機器の選択や設計が可能になります。専門性がだんだん高くなってきましたが、めげずに頑張っていきましょう!

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