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音響学-騒音:騒音制御における二つの基本概念

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騒音制御における二つの基本概念

はじめに

音の制御は、建築、音響設計、エンジニアリングの分野で非常に重要です。本記事では 「遮音」「吸音」 の二つの基本概念について詳しく解説し、音響透過損失(Transmission Loss, TL)の計算方法についても触れます。


遮音の概念

遮音とは?

遮音とは、壁や仕切りなどを用いて 音エネルギーを反対側に透過させないこと を指します。音を遮断するためには、基本的に 遮音性能の高い材料 を使用する必要があります。

遮音性能は、音響エネルギーの透過率(\tau を用いて表されます。透過率 \tau とは、入射音エネルギーに対する透過音エネルギーの割合 を示す値です。

例えば、透過率 \tau = 0.0001 であれば、音エネルギーの 0.01% が透過し、99.99% は遮音される ことを意味します。


透過損失(Transmission Loss, TL)

TLの定義

透過損失(TL)とは、音エネルギーがどの程度遮音されるかをデシベル(dB)で表したものです。TLは次の式で定義されます:

TL = 10 \log_{10} \frac{1}{\tau}

ここで:

  • TL:透過損失 [dB]
  • \tau:音響エネルギー透過率(0 < \tau < 1)

透過損失が高いほど、音の透過が少なく、遮音性能が優れていることを意味します。


遮音の具体例

例えば、厚さ10cmのコンクリート壁500 Hz の音波 が入射した場合、音エネルギーの 0.0001(0.01%)が透過するとします。

このとき、透過損失は:

TL = 10 \log_{10} \frac{1}{0.0001}
= 10 \log_{10} 10000
= 40 \text{ dB}

つまり、この壁は 40 dB の透過損失 を持ちます。

さらに 高い遮音性能 が求められる環境(例:レコーディングスタジオ、劇場、住宅の防音壁)では、透過損失が 80 dB 以上 となるような構造が必要です。


遮音材の選定基準

遮音性能を高めるために、以下のポイントに注意する必要があります:

1. 材料の質量を増やす

遮音性能は 質量則(Mass Law) に従い、材料の密度や厚みが大きいほど、音の透過が減少 します。

2. 多層構造を利用する

空気層を挟んだ 多層構造(例:二重壁) にすると、遮音性能が向上します。

3. 吸音材と組み合わせる

遮音だけでなく、内部の音の反射を抑える 吸音材(グラスウール、ウレタンフォームなど) を併用すると効果的です。


まとめ

本記事では、音響透過損失(Transmission Loss, TL) の概念とその計算方法について解説しました。重要なポイントは以下の通りです:

  • 遮音とは 音エネルギーを透過させないこと
  • 透過損失 TL は、透過率 \tau を基に計算できる
  • 高い遮音性能を得るためには 厚みのある材料、多層構造、吸音材の活用が重要

音響設計を行う上で、適切な遮音対策を施すことで、快適な音環境を実現できます。


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