音響学-騒音:騒音の心理評価法と会話への影響
騒音の心理評価法と会話への影響
騒音は、人間の生活やコミュニケーションに大きな影響を与えます。本記事では、騒音の心理評価法と会話への影響について解説します。
🎙 1. SIL(Speech Interference Level)とは?
SIL(Speech Interference Level、会話妨害レベル)は、騒音による会話の妨害度を示す物理的指標です。
騒音を分析し、500Hz、1kHz、2kHz、4kHz のバンドレベルの算術平均を SIL(dB)とします。
SIL が高いほど、騒音による会話の理解度が低下します。
🔢 SILと会話可能な距離
ISO Technical Report 3352 (1974) では、SIL に基づく 95%以上の会話理解度が得られる最大距離を以下の表のように示しています。
SIL (dB) | 普通の声 (m) | 大声 (m) |
---|---|---|
35 | 7.5 | 15 |
40 | 4.2 | 8.5 |
45 | 2.5 | 5.0 |
50 | 1.3 | 2.7 |
55 | 0.75 | 1.5 |
60 | 0.42 | 0.85 |
65 | 0.26 | 0.50 |
70 | 0.13 | 0.26 |
この表から、SIL が 60dB を超えると通常の会話が困難になり、65dB 以上では大声でも聞き取りにくくなることが分かります。
📊 2. 騒音の心理評価法
騒音の評価には、物理的な音圧レベルだけでなく、人間の聴覚特性に基づいた心理評価が必要です。
2.1 dB(A), dB(C)とは?
騒音の測定では、等ラウドネス曲線(周波数ごとに異なる聴感感度)を考慮した A特性・C特性 が使用されます。
-
dB(A)
- 人間の聴覚感度に合わせた補正(A特性補正)
- 1000Hz〜4000Hzの範囲で最も感度が高く、低音と高音は補正される
- 日常的な環境騒音の評価に用いられる
-
dB(C)
- よりフラットな周波数特性(C特性補正)
- 低周波音や大きな騒音の評価に適している
- 工業用騒音やコンサート音響評価などで用いられる
📌 dB(A)は日常環境音向け、dB(C)は大音量や低周波騒音向け という使い分けが一般的です。
📈 3. 周波数補正特性
人間の聴覚感度を考慮するために、A特性補正値が用いられます。以下は 計量法施行令 に基づく補正値の例です。
周波数 (Hz) | A特性補正値 (dB) |
---|---|
31.5 | -39.4 |
63 | -26.2 |
125 | -16.1 |
250 | -8.6 |
500 | -3.2 |
1000 | 0.0 |
2000 | +1.2 |
4000 | +1.0 |
8000 | -1.1 |
この補正値により、低周波音は補正が大きく、高周波音は補正が少ないことが分かります。
📌 まとめ
- SIL(会話妨害レベル) は、騒音が会話に及ぼす影響を示す指標であり、SIL が高いほど会話が困難になる。
- dB(A)とdB(C) は、聴覚特性を考慮した騒音評価法であり、dB(A)は日常環境向け、dB(C)は大音量向け である。
- A特性補正値 を適用することで、人間の聴覚特性に即した騒音評価 が可能になる。
🎯 1. 学習の目的
✅ SIL(Speech Interference Level) を理解し、騒音が会話に与える影響を説明できるようになる。
✅ dB(A)とdB(C)の違い を理解し、それぞれの騒音評価の適用範囲を説明できるようになる。
✅ 周波数補正特性(A特性) を理解し、騒音測定における重要性を説明できるようになる。
📝 3. 学習のポイント
🔍 SIL(会話妨害レベル)は、500Hz・1kHz・2kHz・4kHz の平均値を用いる。
🔍 dB(A) は日常環境騒音、dB(C) は大音量や低周波騒音の評価に適している。
🔍 A特性補正値は、低周波音が人間の耳で感じにくいため適用される。
📌 4. まとめと確認クイズ
✅ 4.1 まとめ
- SIL(会話妨害レベル)が高いと、会話の理解度が低下する。
- dB(A) は日常環境騒音評価に、dB(C) は低周波音の評価に用いられる。
- A特性補正値を適用することで、騒音の聴感的評価が可能になる。
❓ 4.2 確認クイズ
-
SIL(会話妨害レベル)が 65dB の場合、普通の声での会話可能距離は何メートルか?
- a) 0.75 m
- b) 0.26 m
- c) 1.3 m
-
dB(A) と dB(C) の違い について正しいものはどれか?
- a) dB(A) は工業用騒音に用いられる
- b) dB(C) は街の騒音評価に適している
- c) dB(A) は日常環境騒音の評価に適している
-
A特性補正 について正しい説明はどれか?
- a) 低周波成分が補正され、高周波成分の補正は少ない
- b) 低周波成分は補正されず、高周波成分が強調される
- c) すべての周波数が均等に補正される
📝 解答:
- b) 0.26 m
- c) dB(A) は日常環境騒音の評価に適している
- a) 低周波成分が補正され、高周波成分の補正は少ない
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