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音響学-騒音: 騒音制御の概要と空気伝搬騒音・固体伝搬騒音(2)
空気伝搬騒音制御
1. 空気伝搬騒音とは?
空気伝搬騒音とは、音源から発せられた音波が空気を介して伝播し、受音点に到達する騒音のことを指す。一般的な例として、以下のような音が挙げられる。
- 交通騒音(自動車、鉄道、航空機)
- 工場や建設現場の騒音
- 屋内での会話や音楽
- 住宅街における生活騒音
このような騒音を効果的に制御するためには、遮音・吸音・防振・浮床構造などの対策を適切に組み合わせることが重要である。
2. 遮音構造(Sound Insulation)
遮音構造は、音の伝播を物理的に遮る構造のことを指し、音のエネルギーが透過しにくい材料を用いることで、音を遮断することを目的とする。
遮音の基本原理
遮音性能は、以下の2つの要素によって決定される。
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質量則(Mass Law)
- 壁や床の質量(単位面積あたりの重量)が大きいほど遮音性能が高まる。
- 鉄筋コンクリートや厚みのある石膏ボードが有効。
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多重構造(Double Wall)
- 二重壁構造にすることで、音波の透過を低減。
- 間に空気層や吸音材(グラスウールなど) を挟むことでさらに効果を向上。
遮音構造の実践例
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開口部の遮音
- 窓やドアの隙間を防ぐために防音ドアや防音サッシを使用。
- 気密性の高いゴムシールを使用して音漏れを抑制。
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遮音壁の設置
- 壁面の厚みを増やし、コンクリートや石膏ボードを多層化することで透過損失を向上。
- LGS(軽量鉄骨)+ グラスウール + 二重石膏ボード構造が一般的。
3. 防音壁(音障壁)
防音壁(音障壁)は、音源と受音点の間に障壁を設置し、音の伝播を物理的に遮る手法である。
防音壁の設計要素
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壁の高さと距離
- 遮音効果は壁の高さが高いほど増すが、設置距離によっても変動。
- 適切な距離と高さを計算して設置する必要がある。
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吸音処理の有無
- 片面吸音型:音源側に吸音材を配置し、反射音を抑える。
- 両面吸音型:両側に吸音材を配置し、二次反射音をさらに低減。
防音壁の設置場所
- 高速道路沿線(道路交通騒音の低減)
- 鉄道の線路沿い(鉄道騒音の遮断)
- 工場の敷地境界線(作業音の外部拡散を防ぐ)
4. 吸音構造(Sound Absorption)
吸音構造は、音波のエネルギーを吸収し、反射を抑制することで室内の残響をコントロールするための手法。
吸音材の種類
- グラスウール:繊維状の構造を持ち、広帯域で優れた吸音性能。
- ロックウール:密度が高く、特に中低周波の吸音性能に優れる。
- 多孔性吸音材(ウレタンフォーム、パンチングメタル):音を通しやすいが、内部で散乱しエネルギーを消費。
吸音構造の活用例
- 音楽スタジオや映画館の壁・天井
- オフィスの天井パネル
- 工場や体育館の残響対策
5. 防振(振動絶縁)
振動が建物構造に伝わると、それが**二次的な騒音(固体伝搬騒音)**として発生するため、振動を遮断する防振対策が必要。
防振材の種類
- 防振ゴム:小規模な振動を吸収し、機械の振動伝播を防ぐ。
- 防振スプリング:工場や発電所など、大型の機械設備の防振に使用。
- 浮床構造(後述):大規模な防振対策として使用。
防振構造の活用例
- エアコンや換気扇の振動遮断
- 工場のプレス機の振動対策
- 音楽スタジオの床振動対策
6. 浮床構造(Floating Floor)
浮床構造は、建築内部にもう一つの遮音層を作り、それを防振材(スプリングやグラスウール)で浮かせることで、振動伝播を極限まで低減する手法。
浮床構造の特徴
- 二重床構造にすることで振動が下階に伝わらない
- 固体伝搬音(床衝撃音)を低減し、階下への音漏れを防ぐ
- スタジオ、コンサートホール、映画館などの高度な音響環境で必須
浮床構造の実践例
- レコーディングスタジオ
- 高級マンションの遮音フローリング
- コンサートホールの舞台床
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