音響学-騒音:騒音の影響の属性分類と評価値
🎵 騒音の影響の属性分類と評価値 🎵
騒音の心理的影響には 感覚的影響 と 精神的影響 があります。
感覚的影響を表す言葉は多様ですが、基本的な属性に分類すると、以下の表のようになります。
🔎 騒音の影響の属性分類
属性 | 第1属性 | 第2属性 | 第3属性 |
---|---|---|---|
用語 | ラウドネス (Loudness) | ノイジネス (Noisiness) | アノイアンス (Annoyance) |
説明 | 音の大きさ | やかましさ、うるささ | うるささ、迷惑感、不快感、神経質になる程度 |
🎯 定義
- ラウドネス: 音の強さに対応する 聴感的属性
- ノイジネス: 音の強さとその他の物理的特性に対応する 心理的属性
- アノイアンス: 騒音の心理的影響の全体評価
🎚 2.2.1 ラウドネスとノイジネス
ラウドネス (Loudness) は、音の物理的な強度に対して 耳がどのように感じるか を示す感覚指標です。
ラウドネスの測定は 等ラウドネス曲線 を基準として行われます。
📊 ラウドネスの基準
- 基準音 (1 kHz, 40 dB) の音圧を 1 sone と定義
- 音圧が 10 dB 増加すると、ラウドネスは約2倍になる
- 単位は phon (dB) で表記
📈 ラウドネス計算式
-
: ラウドネス (sone)S -
: ラウドネスレベル (phon)L_N
関係式の範囲
- 約 20 phon 〜 120 phon の範囲で成立
この関係は、Stevens の法則 から導かれています。
📢 ノイジネス (Noisiness)
ノイジネスは、音の「やかましさ」や「うるささ」を表す指標です。
🔢 ノイジネスの尺度
- 単位は noy
- 1 noy = 基準レベル として、N 倍のノイジネスは N noy
- 等ノイジネス曲線 に基づいて評価
📏 ノイジネスレベル (PNL)
- 知覚騒音レベル (PNL, dB) として表記
- 中点周波数 1kHz の 1オクターブバンドの音圧レベル で決定
ISO 532 におけるラウドネス評価手法:Zwicker法とStevens法の詳細解説
ISO 532 は、音の大きさ(ラウドネス)を定量的に評価するための国際規格であり、主に以下の2つの計算法が規定されています。
- 方法 A(Stevens の方法)
- 方法 B(Zwicker の方法)
本記事では、これらの計算法の詳細と特徴について解説します。
方法 A(Stevens の方法)
方法 A は、S.S. Stevens によって提案された計算法であり、音の強さから直接ラウドネスを求める手法です。この方法では、音をオクターブバンド分析し、ラウドネスおよびラウドネスレベルを図表から算出します。しかし、現在ではほとんど使用されていません。
🔍 特徴
- 分析手法: オクターブバンド分析を使用
-
計算手順:
- 音をオクターブバンドに分割
- 各バンドの音圧レベルを測定
- 図表を用いてラウドネスを算出
この方法は、音の強さから直接ラウドネスを求めるため、計算が比較的簡単ですが、精度の面で制約があり、特に複雑な音響環境では適用が難しいとされています。
方法 B(Zwicker の方法)
方法 B は、E. Zwicker によって提案された計算法であり、音の強さに反映される聴覚系の特性を考慮してラウドネスを求める手法です。この方法では、音を1/3オクターブバンド分析し、チャートを用いてラウドネスおよびラウドネスレベルを算出します。
🔍 特徴
- 分析手法: 1/3オクターブバンド分析を使用
-
計算手順:
- 音を1/3オクターブバンドに分割
- 各バンドの音圧レベルを測定
- 聴覚の等ラウドネス曲線を考慮し、ラウドネスを算出
この方法は、聴覚の周波数特性やマスキング効果を考慮しており、より人間の聴覚に近いラウドネス評価が可能です。そのため、現在では方法 B(Zwicker の方法)が主流となっています。
📊 計算式
🎯 Stevens のラウドネス関係式
Stevens の法則によるラウドネスの関係式は、以下のように表されます:
-
: ラウドネス (sone)S -
: ラウドネスレベル (phon)L_N
🎯 Zwicker のラウドネス関係式
Zwicker 法では、1/3オクターブバンドごとにラウドネスを計算し、総和を求めることでラウドネスを決定します:
ここで、
🎯 まとめ
手法 | 解析手法 | 精度 | 適用範囲 |
---|---|---|---|
Stevens 法 | オクターブバンド分析 | 低い | 簡易的な評価向け |
Zwicker 法 | 1/3オクターブバンド分析 | 高い | 詳細な評価向け |
📌 現在は、Zwicker 法(方法 B)が主流となっており、Stevens 法はほとんど使用されていません。
- ラウドネス は「音の大きさ」の感覚的属性
- ノイジネス は「うるささややかましさ」の心理的属性
- アノイアンス は「騒音の総合的な心理評価」
📌 騒音環境の評価では、ラウドネス (phon) やノイジネス (PNL) が重要な指標となる!
🎯 学習目標
- 騒音の心理的影響と感覚的影響の違いを理解する
- ラウドネス、ノイジネス、アノイアンスの特性を明確にする
- 騒音の測定方法と評価指標(等ラウドネス曲線、PNLなど)を学ぶ
📌 ポイント:
- ラウドネス → 音の強度に対する聴感的な指標
- ノイジネス → 音の強度に加えて心理的要素も考慮
- アノイアンス → 騒音の総合的な不快感や迷惑度を評価
- ラウドネスは Stevens の法則 に基づいている
- 音圧が上がると ラウドネス感覚は対数的に増加する
- 航空機騒音の評価 に長年使用されてきた
- 近年は 等価騒音レベル に統一される傾向
- 8時間暴露の基準は 85dB で、それ以上では聴力保護が必要
- 騒音性難聴や健康影響を防ぐため、基準値を守ることが重要
- ISO 226:2003 等ラウドネスレベル曲線
- 日本産業衛生学会 騒音の許容基準
- JIS T 1201 オージオメータによる聴力測定基準
- Stevens (1957) ラウドネスの心理測定モデル
- Zwicker (1961) ノイジネスの評価基準
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