『エンジニアリングリーダー』読了:DEIの視点があるとより刺さる実践ガイド

TL;DR
- キャリア迷子になってた自分にとって、マネージャーにコミットする道しるべとなった
- 途中まで著者が女性だと気づかなかった。自分の先入観が露呈してヒヤッとした(そして学びになった)
- 「役に立ちたい」呪縛→バーンアウト→賢く(戦略的に)働く、が今の自分にドンピシャ
- ミッション / 戦略 / 戦術 / 実行 の4階層フレーム、TPM的な仕事でも使える
- 採用・評価・育成の話が、DEI活動の「答え合わせ」になった
- 結論:良い状態 = 持続可能。これを最上位に置く
きっかけは、fukabori.fmにゲスト参加したこと
iwashiさんがホストを務めるPodcast、 fukabori.fmにゲストとしてお声がけいただき、Tech業界のDE&Iの話をしました。
iwashiさんは本書の翻訳者でもあり、その時は確かちょうど翻訳中と仰っていたと思います。
その流れで、ありがたいことに献本いただいたのでした。
自分が話したDEIの話が、翻訳のどこかで1ミリでも役に立っていたら…と思うと、普通に嬉しいし光栄だなと。
改めて、iwashiさん貴重な機会をありがとうございました🙏
最初は女性著者だと気づかなかった
実はなんと、途中まで「著者が女性」って気づいてませんでした。
正しくは、聞いたはずだったのにすっかり忘れてて読み進めてる途中で「同性のロールモデルが少なく〜」的なパートでそうだった!と思い出したという。
これだけDEIの話してるのに、「無意識に“エンジニアリングリーダーの本=男性”って刷り込まれてたんだな」っと。自分の無意識バイアスにも改めて気付いた瞬間でした。
この本自体は、ジェンダーギャップやマイノリティをテーマにしてはいません。
ただ読み進めると、ところどころに「ロールモデル」や「ジェンダーバイアス」の話が散りばめられています。
わかりみが深い場面が多い一方で、DEIを勉強してなかったら
「優秀な人でも自信を持てない」「辛い状況に置かれる」の背景が、もうちょい “個人の問題” に見えてしまってたかも…と思います。
点と点が線で繋がる感覚、久々に味わいました。
何より同性のロールモデルの本を読むって、普通にエンパワーリングですよね。
これは知識として知ってたけど、オライリー本でこの体験はなんだかんだ初めてな気がします。Cate Hustonさんに感謝。
今の自分にとってもタイムリーなトピックが多かった
ICの未練が捨てきれず、マネージャー本を避けてきた
バックグラウンドがソフトウェアエンジニアということもあり、これまでずっとIC的な動きを捨てきれずにいる自分がいたため、正直マネージャー本を避けて通ってきました。
ところがマネジメント業務が大半を占めるようになった近年、ある種強制的にこの手の本を読む機会をいただいたことで、キャリア迷子に陥っていた私にとって道しるべとなり、完全にマネジメントに吹っ切れましたw
もう少し詳しく言うと、本書に出会う前から(momit.fmでもいつも雑談してる通り)AI全盛期になり、自分の強みはICではなくPM寄りなんだろうな…と漠然とは気づいていました。
wantとしてはICだけど、shouldとしてはPMである。という矛盾に答えを出し切れずにいたのでした。
ただ、ICとしてはいくらでも個人開発ができる。むしろ好き勝手できる個人リポジトリでの開発with AIが楽しくてしょうがないので、
「開発は個人でやってたら良いじゃん」
と結論付けました。仕事ではPM/マネジメントにコミットして、開発欲は趣味で満たす。
第一編で繰り返し書かれていた「自分自身のキャリアのDRIになる」。まずは自分が幸せで持続可能であることを軸にキャリアを描こうと決心したのでした。
今の役割にドンピシャだった
現在、新規立ち上げ組織のマネージャーだったり、ハイレイヤーのエンジニアとチームを組んで、横断的に組織を導くようなポジション、いわゆるTPM的な動きをしています。
「自信がない箇所」「言語化できてなかった箇所」「感覚でやってたけど構造化されてなくて再現性なかった箇所」
「戦略を描いてチームを導く」みたいなことを、これまで割と感覚でやってたのが、体系的な理論展開がされていて腹落ち感が強かったです。
特に、チームを4層で捉える考え方:
• ミッション:なぜやるのか(Why)
• 戦略:どのようにやるのか(How)
• 戦術:何をやるのか(What)
• 実行:実際にやること(Do)
ミッションって意図的に広いから、放っておくと “自分の好きなプロジェクト” を正当化できてしまう。
なので、何をやる/やらないを決める(=意思決定する)ことが戦略。
若手の頃の勘違い:成果アピールは悪手だと思ってた
若手の頃の私:
- 上司はちゃんと見てくれてるはず
- 成果をアピールするのはダサい(謙虚が正義)
で、マネージャーをやってみてわかったのが、 人は忘れる(私も忘れる)。
なので今は、特に女性メンバーを持つことが多かったこともあり、意図的にこう言っています。
私「インパクト出たやつ、ちゃんとメモって評価の時に言ってね。私、忘れるからw」
メンバー「あ、これアピールしていいやつなんですね」 <- わかる。私も言えないと思っていた。
この本を読んで、それでいいんだと背中を押された感覚がありました。
なんでかと言うと、私の場合は LEAN IN を読んだあたりで
「インポスターシンドロームに陥ってたんだな」と認識できたのがかなり大きく。
そこからは、
• 成果をアピールする(正しく伝える)
• そもそも “アピールできる成果” を作る
• インパクトって何?を考える
というマインドセットになれたのですが、
この本はその一連の流れを、かなり実務寄りに整理してくれてる印象でした。
「役に立ってないといけない」の呪縛
p.138 あたりの「役に立ちたい」の落とし穴、こちらもわかりみが深い章でした。
私も以前は、
• “メンバーのストレス軽減”
• “気持ち良く働ける環境”
に意識が偏りすぎて、
中長期の戦略とか、正直あまり立てられてなかったなと思うことがあります。
もちろん心理的安全性は大事なんだけど、
それだけだと チームをどこに連れていくか が曖昧になる。
あと p.137 付近の「過労から抜け出すには賢く(戦略的に)働くしかない」の話、
奇しくも私が最近寄稿した「やらないことリスト」で書いた内容とシンクロしてて、
納得感が深かったです。
削る。
手放す。
そもそも無くす。
そして “持続可能” を優先する。
採用とDEI:インクルージョン→多様性 の順でしょ話
この本、DEI本ではないのですが。
採用の章が、DEIの観点でも示唆に富んでました。
女性比率の指標(プロセスの健全性として)
採用プロセスの「候補者プールや通過率における女性比率」が一定を下回るなら、
それは「個人の問題」じゃなくて プロセスが壊れてる という話。
これ、DEIやってると “なんとなくそう” は思うんだけど、
本の中で指標として言語化されてるのがありがたかった。
- 「ジュニアは採れててもシニアが極端に低いなら、それもプロセスが壊れてる」みたいな視点も、現場あるある。
- 多様性を上げる前に、まずインクルージョン(ほんそれ案件)
- 「活躍できない環境に人を採用すべきではない」実務的にも人道的にも。
- 多様性の前に、「このチームで活躍するのに “ある特定のタイプの人” である必要があるか?」
をまず疑う。ここが整ってないと採用はただの消耗戦になる話。 - レインボーウォッシュ( “パフォーマンスアートとしての多様性” と呼ぶやつ)についても触れられています
- 正しいことは、少数派の人たちが 実際の仕事で評価されてる 状態を増やすこと。
- 「DEIページに載せる」じゃなくて、会社ブログや発信で “仕事そのもの” を紹介する。そこで “楽しそうに活躍してる姿” を見せることが、次の人を呼ぶ。
などなど。ここまで本書でDEIプロジェクト責任者としても腑に落ちまくることになるとは思ってなかったので、これぞ点と点が線につながる案件でした。
こんな人におすすめ
🟢 おすすめ
• テックリード/EM/TPMなど、チームを前に進める役割の人
• 「気合いと根性」で回してきたけど、そろそろ持続可能にしたい人
• 自分のキャリアを “自分で握りたい” 人(DRIの話が効く)
🟡 刺さるかも
• マネージャー1年目で、毎日溺れてる人(たぶん全員)
• DEIを学んでて、採用や育成でモヤついてる人(答え合わせになる)
🔴 たぶん違う
• いまは完全にIC志向で、チームや組織の話はまだ早い人
参考
紹介した書籍
紹介したPodcast
- fukabori.fm #129(DE&Iの話をした回)
- momit.fm(自身のPodcast。キャリアやDEIの話多め)
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