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【経営18年の独白】量子コンピュータに捧げた12年。私が「最初から黒字を目指すべきだった」と痛感する理由

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【経営18年の独白】量子コンピュータに捧げた12年。私が「最初から黒字を目指すべきだった」と痛感する理由

「夢を追うのがベンチャーの仕事だ」
「ディープテックは赤字を掘ってこそ価値がある」

そんな言葉を信じ、私は経営者として18年、そして量子コンピュータという未知の領域に12年を投じてきました。しかし、今振り返って思うのは、もっと泥臭く、もっと冷徹に「商売」と向き合うべきだったという深い後悔です。

最先端技術に挑む後輩たち、そしてかつての自分へ。私が18年かけて学んだ、持続可能なベンチャー経営の「3つの鉄則」を書き残します。


1. 基礎研究をビジネスの稼ぎで補填してはいけない

最先端のベンチャーは、しばしば「基礎研究の不足」を資本金で埋めようとします。しかし、これは経営判断として「やってはいけない」ことだったと痛感しています。

基礎研究とは、いつ花開くかわからない、あるいは花開かないかもしれない不確実なものです。一方でビジネスは、明日・来月の支払いを支える確実性が求められます。この性質の違う二つを混ぜてしまうと、現場は疲弊します。

「自分たちが必死に稼いだ利益が、出口の見えない研究に消えていく……」

この構造では、現場のモチベーションは持続しません。基礎研究は、あくまで「余剰金」の研究開発費用でやるべきものです。あるいは、リターンを求めない公的資金や長期的なグラントに任せるべきでした。現場に「研究のリターン」まで背負わせることは、生存戦略として間違いだったのです。

2. 「応用」を磨き、何が何でも収益性を確保せよ

量子コンピュータのようなディープテックにおいて、「いつか来る未来」を待つだけの姿勢は自殺行為です。

基礎研究の逆を突き、徹底的に「今、金になる応用」を磨くべきでした。なぜなら、ベンチャーにとって最大の敵は「資金調達の途絶」だからです。昨今の不安定な金融情勢を見ればわかる通り、継続的な調達が約束されているベンチャーなど存在しません。

  • 技術のダウングレードを恐れない: 完璧な量子計算を待つのではなく、今の技術で解ける古典最適化やハイブリッド手法で、一刻も早く顧客から対価を得る。
  • 「おかわり」を前提にしない: 投資家からの資金は、あくまでボーナス。事業が生むキャッシュこそが、企業の真の筋肉です。または黒字を拡張する手段。赤字を拡張してもいいことありません。

応用を磨き、収益性を確保すること。それだけが、急な景気後退や投資環境の変化から会社を守る唯一の盾になります。

3. 「理想」は、手元の利益の先にしか存在しない

「最初から黒字を目指せばよかった」ーーこれが18年間の最大の結論です。

若い頃の私は、「高い理想を掲げれば、金は後からついてくる」と考えていました。しかし、現実は逆です。**「理想は、余裕がある人だけが追求できる贅沢品」**なのです。

手元の利益を追求し、会社が安定して初めて、私たちは自分のやりたいことに純粋に向き合えます。赤字を抱えた状態での理想は、どこか言い訳めいて聞こえ、投資家の意向に左右され、形を変えてしまいます。

利益を出すことは、魂を売ることではありません。むしろ、自分の理想を守るための「自由」を買い取ることなのです。手元の利益を徹底的に追求すれば、理想は後から、勝手に付いてきます。


二年前にそれに気づいてから組織をどんどん変えていきました。今ではだんだん満足できる形になってきたかなと思います。


結びに代えて

18年前、12年前の自分に伝えられるなら、私はこう言います。
「もっと商売をしよう。誰よりも稼ごう。その稼いだ金で、誰にも文句を言わせずに、お前の好きな量子コンピュータの研究を続けろ」

ベンチャーの生存確率は、技術の高さではなく、経営者の「生き残る執着心」に比例します。これからディープテックの荒波に漕ぎ出す皆さんが、私と同じ轍を踏まないことを切に願います。

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