SKILL化する、というマインド
SKILL化する、というマインド
3行まとめ
きっかけ
私は書籍をPDF化(自炊)するときに ScanSnap[1] を使っている。
ただ、自炊PDFにしおりが付いていなくて不便だった、エンジニア的アプローチで何とかできないかと考えた。
最初は、目次を読み取ってPDFにしおりを付けるスクリプトを書けばよいと思った。だが、実際にはそこまで単純ではなかった。
自炊PDFの品質には揺れがある。表紙や扉で目次上のページ番号とPDF上のページ番号がずれる。OCRが間違うこともある。落丁や重複スキャンもありうる。つまり、決定的な処理として書くには、意外と面倒な作業だった。
エージェントにやらせる
そこでCodex CLIに作業させた。ツールは Codex CLI、モデルは gpt-5.5。
ざっくり頼むとローカルの環境や実現方法を調べてやってくれた。それっぽいものはすぐにできた。
ただし、最初から完璧ではない。ページがずれていたり、階層が崩れていたりする。そこを確認し、ミスを伝え、直させる。やりなおしたり指示の伝え方を工夫したりしてなんとか実用レベルになった。
gpt-5.5 は2026年5月時点で OpenAI のフラッグシップモデル。それでもある程度の試行錯誤は必要だった。
この過程から「この作業では何を事前情報として与えるべきか」「どこで間違いやすいか」が見えてきた。今後もこの作業が繰り返し登場するのであれば手順書に落とせるのではと考えた。再現性の向上。つまり、SKILL化である。
SKILL化
SKILL[2]は、プログラムより抽象度の高い再利用できる手順書である。
Agent Skills are a lightweight, open format for extending AI agent capabilities with specialized knowledge and workflows.
専門知識やワークフローを通じて拡張するためのものというのがポイント。LLM の汎用知能へ、特定状況で必要になる知識を付与するのだ。
プログラムと SKILL の違いをまとめる。
| 観点 | プログラム | SKILL |
|---|---|---|
| 前提 | 入力とルールが決定的 | 入力や作業過程に揺れがある |
| 実行 | 同じ入力なら同じ結果になる | 状況に応じた判断が入る |
| 例外 | エラー | 中断 or 確認観点としてユーザーへ渡す |
| 人間の役割 | 仕様を書く | 判断軸と確認方法を渡す |
大きな違いは 決定性 である。
決定的に処理できるならプログラムで十分。
一方で、入力が毎回少し違い、途中で判断や確認が必要になるなら、SKILLの方が向いていることがある。
SKILL を作ること自体は簡単
大事なのは、SKILLを作る技術そのものではない。多くの場合作ること自体は難しくない。Codex CLI には $skill-creator という SKILLを作るSKILLがデフォルト搭載されている。だから「SKILLを作って」と指示すれば、それなりのものを作ってくれる。前述のPDFにしおりを付ける SKILL でも作業が成功したらその過程を参考に SKILL化するというのは効率の良い方法の1つだろう。
そしてさらに、そもそも自分で作らなくても $skill-installer という SKILLをインストールするSKILLがデフォルト搭載されている。誰もが欲しいと思っているもの、つらみを感じているものについては、世の中にすでに解決策がある可能性も高い。
難しいのは、「これはSKILL化できる作業だ」という気づきだと思っている。
SKILL は作ることよりも「作ることができる」と気づくことが大事
SKILL を作ることができる、つまり汎用化可能だと気づくことができること。
これは、エンジニア文脈で言うと抽象化や仕組み化などの用語と関連深いのではないだろうか。
その姿勢を自分の中に育てるためのコツを列挙してみる。
まずはメタ認知
以下はメタファーとしての作業者と管理者の違いである。
作業者としては、目の前の作業を正しく終わらせることが重要になる。
一方で管理者としては、その作業が継続的に再現される仕組みを整えることが重要になる。
SKILL化を考えるときは、自分の視点を作業者から管理者へ一段上げる必要がある。「この作業を未来の自分や他の人が再現するには、何を残せばよいか」と考える。
PDFのしおりを付けさせてみた。そこから、「手順書があれば一連の作業が再現可能ではないか」と気づくこと。
メタ認知が高ければ、効果的にSKILL化の可能性を検討できる。
怠惰な姿勢
1回の面倒を我慢するのではなく、2回目以降の面倒を消すための怠惰。
古から言われているプログラマーの3大美徳。「怠惰(Laziness)」「短気(Impatience)」「傲慢(Hubris)」。このうち怠惰が重要なのである。
無駄な繰り返し作業を嫌い、全体の労力を減らすために自動化や効率化にエネルギーを注ぐという性質。怠惰な人はその閾値が低い。 すぐに怠けたくなるので仕組み化に気づきやすくなる。
PDFのしおりを付けさせるための指示がめんどくさい。「この一連の指示を二度としたくない」と感じること。
この傾向が強い人は SKILL化 の検討頻度が上がる。
AIエージェントのできることを更新する
SKILL化に気づき検討するとしても、今のAIエージェントに何を任せられるかを知っていないと正しく SKILL化できない恐れがある。
昨日までこと細かにAIエージェントに指示する必要のある作業が、今日のモデルなら「手順書を渡してやらせる」で足りることがある。逆に、今日うまくいったSKILLも、モデルや周辺ツールが変わればすぐに古くなることもある。
SKILLは、永久に使う資産というより、その時点での Better。
使ってみてズレたら直す。不要になったら捨てる。もっと良い方法が出たら置き換える。
だから、この 進化著しいAI時代、SKILLはおそらく短命である。
しかし、それで良い。
PDFのしおりを付けさせるにはどうすれば良いかを考え、現状のモデルならどれくらいの粒度で任せられるか把握しておくこと。
この解像度の高い人は効果的に SKILL化 できるし、賞味期限の把握も妥当だろう。
まとめ
AIに仕事をやらせること自体は、もうそこまで特別ではない。
大事なのは、その仕事を再現できる形にしておけるか、そしてその可能性に気づけるかということ。
定期的に筋よく自分の作業/仕事を振り返りたいものである。
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