📚

探索フェーズでのエフェクチュエーション的チェックリスト

に公開

はじめに

エフェクチュエーションの実践プロセス概論 を実践するにあたり、私自身長年の思考様式を変えるのは難しいと感じたので、目標を立てて行動に移すまでの各段階で使えるチェックリストを作ってみました。

探索フェーズでのエフェクチュエーション的チェックリスト

はじめにチェックリスト全体を示します。

  1. 目標を立てる前
    • 目標に対して今不完全な仮説を置きたくない理由がありますか
    • 情報収集の範囲と量は決まっていますか
    • 集めた情報で、仮説としての目標が変わる見込みはどれくらいですか
      • 高い / 低い / 分からない
  2. 目標を立てた後
    • 今の時点で“達成したい状態”を一文で言えますか?
    • 目標の前提に関する追加質問:
      • それは、未来の外部環境に対してどんな前提を置いていますか?
      • その前提の「別の実現の仕方」を複数挙げられますか?
      • その前提が崩れたとき、軌道修正の余地はありますか?
    • 目標の大きさに関する追加質問:
      • 目標をいつまでに実現したいですか
      • 期待する期間内で目標が実現する可能性をどう感じますか
        • 非常に高い / 非常に低い / どちらともいえない
      • 今あなたやチームに知識・能力・リソースが十分にあればその実現が早まると感じますか
      • 誰かが加わることで、あなたやチームの持つ制約が外れるとしたら誰ですか?
      • 達成したい状態を実現するためにあなたやチームが"やらなくてよい"仕事はありますか
  3. 目標に向かって行動する時
    • その行動によって得られる情報は、いずれかの仮説を疑うものとなっていますか
    • この行動で失うものが、事前に定義されていますか?
    • それを失っても耐えられますか?
    • 失敗しても“情報だけは確実に得られる”設計になっていますか?

目標を立てる前の質問

  • 目標に対して今不完全な仮説を置きたくない理由がありますか
  • 情報収集の範囲と量は決まっていますか
  • 集めた情報で、仮説としての目標が変わる見込みはどれくらいですか

探索が必要な状況でありがちなのは、目標を決めるために情報収集をし続けてしまうことだと思います。情報収集をし続けてしまうのは、「全体像を理解して正解を見つけたい」というコーゼーション的な思考によるものかもしれません。そもそも不確実な状況下で他者を巻き込む前提の目標は必ず見直されます。現時点のあくまで仮説であるとして、仮説の候補を挙げたり絞り込むことを目的として取り組むのが良いでしょう。

また情報収集にかける時間には区切りを置きましょう。例えば「30分だけ○○資料を確認する」「同僚数人にちょっと△△について聞きに行く」といったことです。止めどころが分かっていれば大丈夫です。

目標を立てた後

今の時点で“達成したい状態”を一文で言えますか?

ここでの目標とは、パートナーを巻き込んで彼らからコミットメントを獲得することで達成できるものを指します。具体的にどうやって巻き込むかはそのあと考えるのですが、そのためには目標を簡潔に説明できる程度には理解しておかなければならないでしょう。

目標の前提に関する追加質問:

  • それは、未来の外部環境に対してどんな前提を置いていますか?
  • その前提の「別の実現の仕方」を複数挙げられますか?
  • その前提が崩れたとき、軌道修正の余地はありますか?

コーゼーション思考は理想の未来像から逆算して計画を立てるもので、目標に向かってぶれなく進むことができますが、環境が不確実で目標が揺らぐことを予期している場合にはうまく当てはめられないとされています。未来が不確実だと認めているのに、未来を一点で予測してそれが当たることに賭けていないか?を確認する質問を置きました。

前提が「別の実現の仕方」をする、というのはちょっと分かりにくい表現かもしれません。例として「AIが社会に普及する」という前提でAIありきの新規事業を始める、という状況を考えます。この前提はあまり疑いようがない気もしますが、疑う余地はあります。そしていつ頃どのような形態で普及するかまでは限定していません。したがって、この後の行動は普及の進行に合わせて変わるのは明らかですし、事業目標も変えうると認識できるはずです。

それと比較して、「〇年以内にほとんどのアプリが大手AIサービスのマーケットプレイスを通じて利用されるようになる」というのは具体的に踏み込んだ予測と言えますが、それを信じて販路を狭めるのは危ういと思われます。

目標の大きさに関する追加質問:

  • 目標をいつまでに実現したいですか
  • 期待する期間内で目標が実現する可能性をどう感じますか
  • 今あなたやチームに知識・能力・リソースが十分にあればその実現が早まると感じますか
  • 誰かが加わることで、あなたやチームの持つ制約が外れるとしたら誰ですか?
  • 達成したい状態を実現するためにあなたやチームが"やらなくてよい"仕事はありますか

目標が大きすぎるとその難しさにひるんでしまい、行動を先送りしやすくなります。逆に小さすぎる目標に向かって進むことは、代わりに実現できたかもしれない未来の可能性を失うことにもつながります。

目標の大きさを判断するのは、OKRに習い目標に対する自信度を見るのが良いと考えました。OKRではストレッチ目標は達成見込みが5分5分であると良いとされています。ここでの見込みは目標の大きさを主観的にどう捉えているかを確認するためのもので、感覚で構いません。見込みが高い、あるいは低いときにはなぜそのように感じるか考えてみると、目標を見直す理由が見つかるかもしれません。チームでお互いの意見を聞いてみるのもよいでしょう。

また目標を小さくする原因には「自分で何とかする」という思考の癖があるなと思っています。これは私が良く陥る失敗で、能力や知識を身に付けるまで目標に向かうのを先送りさせます。自分が全部できなくても良いなら、勉強したり訓練する代わりに他のことができたのに。これを防ぐのが「クレイジーキルト」の原則です。誰かの力を借りることを忘れないために、勢い質問が多くなってしまいました。

目標に向かって行動する時

  • その行動によって得られる情報は、いずれかの仮説を疑うものとなっていますか
  • この行動で失うものが、事前に定義されていますか?
  • それを失っても耐えられますか?
  • 失敗しても“情報だけは確実に得られる”設計になっていますか?

エフェクチュエーションでは、行動を起こす前に「許容可能な損失の原則」に沿って評価をし、行動を起こした後に「レモネードの原則」に従い行動の結果を次に活かせるよう評価します。不確実な仮説に基づく行動の価値を最大化するには、なるべく失敗しそうなところから始めること、失敗しても次につながる情報を得るという備えが重要です。

同時に失敗した時のコスト、賭けた時間や資金、失敗によるステークホルダーの失望などを事前に予想し、それが致命的でないときに踏み出しましょう。

おわりに

コーゼーション思考で成果を出せる人は、エフェクチュエーションの考え方に違和感を覚えるかもしれません。どちらが良いかということではなく、不確実な状況だから今はエフェクチュエーションで考えてみよう、という切り替えが大事なのだと思います。また、コーゼーションから離れようとするあまり、無謀な挑戦に走ったり、すべての思考や行動を疑い続けるのも、別の意味で道から逸れてしまった状態と言えます。私自身、その切り替えができているか、道の中を歩いているかを確かめる足場として、このチェックリストを使っていきたいと思います。みなさんのお役にも立てば幸いです。

Discussion