システム部門における技術広報の役割
はじめに
みなさん、こんにちは。ウェルスナビのCTOの保科です。
ウェルスナビでは、2023年(今から2年半ほど前)に、システム部門の組織力強化のためにエンジニアリングエンゲージメントというチームを設立し、そのチームの活動の一部として技術広報を始め、現在も継続をしています。
アドベントカレンダーの最後の記事として、この機会に、ウェルスナビの技術広報を、どういった目的で、どのような考え方で実施しているのかを説明します。
現在、技術広報に関わっている方、今後技術広報に力を入れようとしている方の参考になればと思います。
技術広報に力を入れるきっかけ
まずは、どういった背景があって、技術広報に力を入れることになったのかという部分について話をします。
当時のシステム部門の組織体制としては、既存の資産運用サービスのみを今後も提供し続けるのであれば、特段大きな課題はない状態でした。
しかしながら、ウェルスナビとしては、働く世代のお金に関する悩みを解決すべく、資産運用だけではなく、その他の金融サービスも提供したいと考えていました。
そうすると、当時の人員だけでは不足しており、さらなる人員の増強が必要ということになります。
そういった背景の中、ウェルスナビの採用力を強化するための施策の1つとして、技術広報に力を入れ始めるようになりました。
技術広報に力を入れると、本当に採用力が強化されるのか?
これに関しては、YesでもありNoでもあると考えています。
自らが働く会社を決める要素としては、「会社の目指すビジョンへの共感」、「会社が提供するプロダクトやサービスの魅力」、「会社の雰囲気や環境」、「自らが実際に行う業務の内容」、「報酬などの労働条件」などがあると思います。
これらの要素が組み合わさって会社選びの判断に至るため、まずはこれらの要素が候補者にとって魅力的な状態にする必要があります。
その上で、技術広報を行うことにより、システム部門の採用力がさらに強化できると考えます。
「会社の雰囲気や環境」や「自らが実際に行う業務の内容」は、会社案内や求人情報などで知ることはできますが、そこから実際に自身がその職場で働いている姿をイメージすることは困難です。
そのため、解像度が低い状態で会社選びをするケースが発生したり、就職後のミスマッチなども発生します。
技術広報を実施することにより、候補者が解像度が高い状態で会社選択できるようになり、ミスマッチが発生するかもしれないという候補者の懸念も低減できます。
その結果として、採用力が強化されると考えています。
じゃあ、技術広報をやるしかない
「よしやるぞ!」となったところで、技術広報を採用力につなげられるかというと、そう簡単ではありません。
社内で外部発信をしたい人というのは一定数いるかと思いますが、技術広報として成果を上げるためには、定期的かつ継続的に外部発信をし続ける必要があります。なぜなら、最終更新日が5年前のエンジニアブログは、候補者にとって逆に不安にさせる要素でしかないからです。
ウェルスナビも開始当初は、外部発信への意欲が高い人の数も限られており、技術広報の継続性に関しては、かなり不安のある状況でした。
そのため、開始当初は「採用力への貢献度」を、あえて無視をしました。まずは、「定期的かつ継続的に外部発信をすることが習慣化している組織」に変わることを目標にし、社内で外部発信活動が活発化するための施策を行いました。
それらの施策を継続し、2025年はウェルスナビのエンジニアブログへの記事投稿、社外イベント登壇、外部媒体の掲載、社内でのLT登壇の合計数が1年間で100件を超えました。これはシステム部門の正社員数とほぼ同数に達する状態です。
その結果、最近では、候補者の方から、外部イベント登壇やエンジニアブログでウェルスナビに興味を持ったという声や、エンジニアブログを見て面接実施前に社内の雰囲気や業務内容への解像度が上がったなどの声をいただけるようになりました。
技術広報を継続する期間が長くなればなるほど、採用力強化への貢献度が高まっているのを感じています。
短期的な成果ではなく、中長期視点で継続して活動することが、技術広報においては非常に重要であり、また中長期で活動できる組織体制を構築することが重要であると実感しています。
採用のためだけに技術広報をするのはもったいない
現在、ウェルスナビのエンジニアブログ全記事のレビューに私が関わっています。
エンジニアブログに掲載される記事数もかなり増え、全てに目を通した上でフィードバックを行うのは、正直なところ、かなり負担が大きいです。
ですが、これからも時間の許すかぎり、エンジニアブログの全記事のレビューに関わっていきたいと思っています。
もちろん、採用が重要ミッションであるからという理由もありますが、技術広報により得られる効果が、そこだけにとどまらず、その他にも大きな効果・役割があると考えているからです。
その中のいくつかを、お話ししたいと思います。
フィードバックにより、執筆者の成長に寄与できる
エンジニアブログの開始当初、私はネガティブチェックがメインの役割とするレビュアーのつもりでいました。
当初想定していた主なレビュー観点
- 外部に公開してはいけない内容が含まれていないこと
- 事実に反する内容が含まれていないこと
- 文章全体の整合性が取れていること
- 冒頭のメッセージと結論がずれていない
- 論理の飛躍がない
- 社内や業界など閉じた環境では通じるが、社外や様々な業界の人にわかりにくい用語等が説明なく使われているケースがないこと
- 読み手に不快な思いをさせる内容が含まれていないこと
当然、上記の観点における指摘をすることもありますし、そういった観点でのレビュー指摘をすることで、執筆者の一般的な文章力の向上に貢献できる部分もあります。
ちなみに、試しに上記の観点でAIにレビューをさせたところ、それなりのクオリティで指摘事項として出せました。そのため、この部分に関しては、私自身が関与することによる付加価値はほとんどないと思っています。
しかし、実際に書かれたブログをレビューをしている中で、私が一番感じたのは、「ここはもっとアピールできる箇所なのに、簡潔に書きすぎていて、面白さを伝えきれていない」、「もう一歩踏み込んだ説明を追加した方が、読み手にもっと興味を持ってもらえるのに」、「もう少し具体的な例を追加すれば、読み手にもっと共感してもらえるのに」というところでした。
そのため、ネガティブチェック部分も実施しながら、上記のようなポイントを意識してフィードバックするようにしています。
こういったフィードバックを通じて、エンジニアブログという範囲に止まらず、執筆者が、より魅力的で、よりわかりやすく、より理解しやすい説明を行う能力そのものを高め、日常の業務における能力を高めることに貢献できるのではないかと思っています。
大きくなるシステム部門の情報共有
現在、ウェルスナビのシステム部門の正社員の数は100人を超える数になっています。
CTOとして、各チームで実施している取り組み、その進捗と結果については報告を受けているので、そのレベルでの把握はしていますが、実際にその取り組みを行う過程で発生した苦労、難しさ、それを乗り越えるための工夫に関して、把握していないものの方が圧倒的に多いです。
また、小さいながらも創意工夫にあふれた案件も、組織の規模が大きくなるにつれ、どうしても大きな案件に隠れて、私のところまではなかなか届かない状況になっています。
ところが、エンジニアブログの発信本数が増えるにつれて、さまざまな取り組みの過程における課題と工夫の解像度が非常に高まりました。
日々、システム部門内の様々な場所で直面している、様々な課題と、それを克服するための工夫の解像度が上がったところ、「それらに類似する課題が別のところでもありそうなのでシステム部門全体の方針としてこうした方がいいのでは?」、「解決するための工夫に手を加えれば他の場所の課題も解決できるのでは?」というアイデアが湧いてきました。
普段のレポーティングからだけでは把握できない情報をキャッチするためにも、非常に有効だと感じています。
私のようにCTOの立場になくても、組織が大きくなると、他チームの取り組みを深く理解する機会も作りにくいと思うので、そういったきっかけづくりにも一役買っていると思います。
技術広報の役割とは
ここまでの話で、ウェルスナビでは技術広報は以下の役割を果たしていることが伝わったかなと思っています。
- 採用力の強化
- 執筆者や発表者の能力向上
- 社内の情報把握・共有手段の多様化
これ以外にも技術広報で得られる効果や役割はまだまだあります。
その効果と役割を見い出し、引き出すためには、「技術広報 = 採用力強化」というわかりやすい図式にとらわれず、最終的なアウトプットとなる記事等だけでなく、その過程で生み出される無形の資産にも目を向けることが大事なのではないかと、私は考えています。
おわりに
ウェルスナビでは、技術広報を採用活動のためだけでなく、その他の役割も含めて実施しています。
冒頭にも書きましたが、技術広報に関わる方の参考になればと思います。
あと、あたりまえすぎて、本文中ではあえて書かなかったのですが、念のために。
ウェルスナビのエンジニアブログの1番の役割は、読んでくださる読者の方の役に立つことです。
ウェルスナビのエンジニアブログが、皆様のお役に立てれば幸いです。
今後もウェルスナビでは、さまざまな情報を皆様にお届けしていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。
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